PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

シナリオ
17
「引退騎士と無欲な野盗」

 ラウス、フィック、エムリの三人は、「境界都市と商人の町との境に出没するという野盗の討伐を手伝って欲しい」との依頼を受けた。
 依頼人は引退騎士のサイン。40歳ほどの年齢の、人間の男だ。
 三人は、かれの拠点に向かった。



オラン

 くすりと笑うと、馬車の中を覗き込む。

ラウス<

「さて……準備ができたのかな?
 そろそろ、弓の弦に蜜蝋を塗っておくことにするよ」


GM

「了解した、すぐに持ってこさせよう」
 サインはそう言って席を外し、しばらくして、複数の人足をつれて戻ってくる。
 人足たちが協力して、ラウスの細工した樽に、少々の空きを残して、たっぷりと酒が注がれた。
 ラウスの指示で、樽は、細工をした部分を上にして馬車に積み込まれる。
「一番、安い酒にしておいたが、問題ないのだろう?」
 ふと、金入れと睨めっこをしていたサインが、思い出したようにラウスに訊ねた。


ラウス

 ラウスは細工がうまくいったことに満足そうに頷くと、ナイフをまた服の中に仕舞い込んだ。

サイン<

「そうですね。それではお酒を入れて置きましょう。満杯にはせずに8分目か9分目程度で」

オラン<

「いや、なるほど。確かにそうだ。良い友人と良い隣人は宝ですからね」
 オランの世故長けたセリフに、内心で感心しながら笑い返す。竜追いとしては善良であること以上に、したたかであるのに越したことはないのだろう。
「器用なのがちょいとした自慢でしてね。かわりに刃のついてもので扱えるのはこれくらいのものです」


オラン

ラウス<

「いやいや、ぼくたちの仕事だと思ってもいいんじゃないかな」
 にやりと笑って応じる。
「役人だろうと何だろうと、友達が多いのは良いことだからね。
 ……どんなときに便宜を図ってもらえるか分からないしね」

 それから、ラウスの手付きを見て、感心して言う。
「随分、刃物の扱いに慣れているね。
 ぼくは長物ならとにかく、ナイフは苦手なものだから、矢を作る時にも一苦労なんだよ」


サイン

ラウス<

「ふむ……」
 要領を得ないような顔で話を聞いている。
 作業を見守りながら、何か分かったようだ。
「とすると、もしや、これらの樽は空ではなく、中に何かを注いでおいた方がいいのだろうか?」
 入れようと思えば、酒なり油なりがあるが……と、続ける。


GM

 技能判定:分類/細工・細かな指先
  ラウス:優秀な成功!


 ラウスは、考えていたとおりの小細工を、一切のミスもなく、施してのける。
 細工で日々の糧を得ている分けでもないのに、見事な短刀捌きだった。


ラウス

オラン<

「できるだけ、そうですね。余裕があるなら一人生け捕りにして事情がきけるといいと思いますよ。彼らがどことどういう繋がりがあって、どう荷物を捌いていたのか……ま、我々の仕事のうちではないですが」
 ジョークをいうように少し笑って続ける。
「善良な竜追いとしては役人に協力できるのに、越したことはない」

サイン<

「例の細工ですよ。帯鉄の裏から樽に傷をつけるか、帯鉄を少し緩めるかすれば見た目にはわからないように中身が漏れるようにできるでしょう。傷のついた部分を上にして転がらないように木材でも噛ませておけば、馬車の中では中身は出ないようにできると思います」
 説明しながらラウスはスローイングナイフを一本取り出して、帯鉄を叩いて傷をつけ始めた。外側から傷のついた部分がわかるようにするためだ。


ウール コモンキャラクター

オラン<

「そうだな、よろしく頼む。」
 と握手に応じる。



オラン

ウール<

「君も追跡組か。よろしく頼むよ」
 と、握手を求める。

ラウス<

「追跡の最中にもしも戦闘になったら――なるべく、生け捕りにするように努力した方がいい?
 あんまり器用な戦い方は苦手なんだけどね」
 あはは、と笑う。


サイン

「了解した」
 頷いてみせる。
 それから、樽に近づいていくラウスを興味深そうに見る。

ラウス<


「別段、気にはしないが。何をするつもりかね?」


GM

樽<

 空樽は三つあり、一つは他の物よりも小柄で、栓が付いている。ワイン樽のようだ。他の二つは雑貨を運ぶ際に使われたものらしい。
 帯鉄(フープ)はしっかりと締まっている。
 樽の外側にずらすことで緩めることもできそうだ。だが、慎重にやらなければ、樽はすぐにバラバラの板に分解してしまうだろう。


ラウス

「馬車に残るのが……僕とフィックでいいでしょう。万一戦いになったときに人手が必要ですから、オランとウール、そして幻術使いの方は追跡組です。サインさんは追跡組といっしょに降りて、あとから僕達と合流するということにしましょう」
 ラウスは考えながら空樽のほうに近寄ってあちこちを調べました。

サイン<


「この樽に細工するとしましょうか。ちょいと使い物にならなくなるかもしれませんが」
 言いながら帯鉄を緩められないなどを調べ始めた。


GM

 ウールは、何事か考えている。
 フィックはラウスの指示を待っているようだ。
 自分はどうしようか、という風な視線を、ラウスに送っている。
 幻術士は、自分の役目はよく分かったらしい。


オラン

ラウス<

「なら、ぼくは追跡組にまわることにするよ。
 ぼくは軽装だし、野伏の技術について学んだこともあるからね」


サイン

ラウス<

「ふむ……」
 改めて頷きながらいう。
「私は、追跡組には参加はしない方が良さそうだな。
 私の戦い方は重い剣や盾、鎧を身に付けているときに有効なものだ。それらの装備は戦闘では頼もしいが、騒がしい音を立てるからな。
 外で隠れていて、後から合流する方が良さそうだ」


ラウス

ALL<

「手順はだいたい、こんな按配ですね。まず野盗を追いかける人は先行するか馬車の陰から、襲撃ポイントに潜んでもらう。そこで彼に」
 と、幻術使いを手でしめす。
「うまく姿が隠れるように魔術を使ってもらう。馬車は相手に荷物を渡したら一旦立ち去りましょう。しばらくいった所に馬車を隠して追跡組の残す痕跡を辿って追いかけ、合流します。野伏風に木の枝でも折るなりするといい。相手の根城に辿りついたらあとはゲンコツで勝負です」
 手順を考えながら、馬車を指でコツコツと鳴らした。


オラン

ウール<

「ああ、そうか。君は話し合いの途中で戻ってきたんだったね」
 かくかくしかじか、と、話の成り行きを教える。


ウール コモンキャラクター

オラン<

 そうだな、と頷いた。小細工については詳しくないウールだが、どのように仕掛けを仕込むのか興味はあるようだ。

 酒樽・食料を用意しているところをみて、なにやら自分で納得した。確認するかのように口に出す。

「囮作戦のようだな。」



オラン

ウール<

 馬車の中を覗き込んでにやりとし、傍らにいたウールの腕を拳で突いた。
「こういった小細工は、なんだか子供の頃にやった遊びを思い出して、わくわくするよ」


 周囲を見ながら、誰にともなく言う。
「ぼくは――少なくとも作戦がはじまってからは――馬車から離れたところでついて行く方がいいのかな?
 幌馬車の中から弓を射る訳にもいかないしね。武器を剣に持ち替えてもいいけれど。
 いや、それはサインさんかウールがやるのかな。
 最終的には、どんな話になったんだったっけ」


GM

 一行は、サインの館を出る。
 なるほど、表門の前には、立派とはいえないがそれなりには値の付きそうな(値を判断できたのはラウスだけだったが)馬が二頭と、かなり使い込んだ様子の幌馬車が彼らが来るのを待っていた。
 馬車の中には、先ほどサインが言ったとおりに、幾つかの樽や箱、袋などが放り込まれている。
 傍らには、事前にサインから紹介のあった幻術士の姿がある。


ラウス

サイン<

「手回しがいいですね」
 ラウスは感心したように頷くと立ち上がった。
「では行きましょう」


サイン

ALL<

「表に、幌馬車の用意ができている。
 一応、空箱や空樽も含めて、あるだけの酒樽やら食料品は積み込んであるが……」

ラウス<

「先ほどの作戦で行くなら、君が御者台にいるべきなのだろうな。
 他のものの配置も細かく決めなければならないが……まあ、まずは馬車のところに行くとしようか」


GM

 皆の準備ができていることを確認したサインは、手伝いのものを呼んで、何かしらを言いつけていた。
 一旦出て行ったお手伝いは、しばらくすると戻ってきて、サインに準備が完了したことを告げる。


フィック

ALL<

「問題ありません」

エムリ<

 エムリを見て、首を傾げる。
「エムりんは、大丈夫ですか?」


ラウス

 ウールの様子を見て、ラウスも自分の格好を確認した。フリックアウトナイフを外套の下に隠し、買ったばかりの投擲武器も服の下に隠す。服の着こなしもあちこち直し、最後にフェザーキャップの羽の角度を念入りにチェックしたあとしっかりと被りなおした。

サイン<

「僕もOKです」
 すっかり商人らしく装束を整えていう。


ウール コモンキャラクター

 サインに言われて、軽く自分の身の回りのものを確認する。
 斧はすぐに引き抜ける位置にあるのか、
 防具はその身を守ってくれるように着られているか、
 楯は敵の攻撃を防ぐよう、すぐに構えることができるか、
 などなど。
 最後に、被ってる帽子を軽く直して。

「出発でかまわない」

 とだけ告げた。



サイン

ラウス<

「ふむ」
 ラウスの呟きを聴いて、頷く。

エムリ<

「そうだな。
 馬車くらいならいつでも出せるし、偽装のための小道具も問題なさそうだ。
 出発しようと思えば、すぐに出発することも可能だが」

ALL<

「ではこれから準備ができ次第、出発、ということで良いかな?
 それとも、もう少し作戦を詰める必要があるなら……」
 言葉を句切ると、周囲を見渡す。


エムリ

フィック<

「へー、そう言ってくれるとうれしいなぁ。
 魔術の技を一つの「技」として見てくれるって言うのは中々気持ちのいいもんだよ。
 怯えられて何だか良く分からないもの扱いじゃ悲しすぎるぜ、ここだけの話」
 フィックの言葉に笑みを浮かべて答える。

ラウス<

「ふーん、いろんな事考えつくんだなぁ、兄ちゃん。
 そうじゃなくても、幻影を別の方向に走らせて矢が飛んでくる向きを反らせれば、野盗の一群を叩くのも楽になるとか、いろいろ出来そうだ」
 新しい物を見つけた子供のように、あれやこれやと考えている。

サイン<

「で、隊長さーん。おれが幻術、ラウスの兄ちゃんが隊商の振り、で。大体作戦も決まった気がするけど、出発は何時頃にする予定な訳?」
 早く実地で幻術を試してみたい、といった表情だ。


ラウス

独り言<

「……必要なのは馬と幌付の馬車、古めの酒樽にうまいエールってところかな」
 交渉事なら自分の出番もあるかと、ラウスのほうでも簡単に整理した。

エムリ<

「やられたな。だけどどっきり大作戦も面白いかもしれないな。ある程度近づけば相手の視界を塞いで飛び道具を封じる手もあるよ」


フィック

エムリ<

「あ、堅いですよ、ぼく。故郷では堅い堅い言われていましたし」
 なんだかよく分からないことを主張する。
「ただ、魔術が邪術だって言われると、首を傾げてしまうんです。この世界に存在するものである以上、それもまた自然なものなのじゃないかって。
 どちらかというと、絵画みたいなものなのじゃないかと思うのです。今の幻術も、芸術に近いものなんじゃないでしょうか」


サイン

エムリ<

「ふうむ、なるほど、なるほど……」
 二度、三度と頷いて、頭の中を整理しているらしい。


GM

 幻影が消え去り、あの存在感も嘘のようになくなる。


エムリ

サイン<

「術を使うのがしんどい、ってほどじゃねーんだけどね。集中が途切れたらそこで終わりな感じの術だからさ。集中勝負なワケ」
 そこで言葉を切って。
「要所要所で使う形にすれば、こっちにかかる負担も減るかな。例えば馬車の中から人が降りてくる幻を作る、というのと、ずっと幻影の一団を歩かせておくんじゃ、結構負担も違うだろうし」

フィック<

「へー、フィックは案外こういうのも好きなんだ。聖職者って言うともっとお堅い奴らばかりかと思ってたんだけどなー」
 相手のぽかんとした顔には、満足そうな表情を浮かべる。
「実を言うとおれも結構この幻影、出来が気にいってるんだよなー」

ラウス<

「へっへー、ビックリしただろ。名づけて流血ドッキリ大作戦! ってのは冗談だけど、こういう芸当は出来るよってことで」
 一部始終をニヤニヤしながら見ている。

ALL<

「じゃ、そういう訳でそろそろ消すよー」
 そう言いながら、イリュージョンの魔法を解こうとする。


ラウス

エムリ<

 急に幻影から血が流れてくるのに気付いて、ラウスは慌てて杖を引いた。もちろんそれでどうにかなるというわけではないが反射的な行動だ。
「うわ……と、なるほど」
 幻影をしばし観察してから一つ頷く。
「OK.。僕ももう十分見せてもらったよ」


ウール コモンキャラクター

 じろじろ幻影を見回していたウールは、満足そうに幻影から離れていった。


フィック

エムリ<

「あ、私は大丈夫です。
 それにしても、魔法というのは、すごいものですね……」
 ぽかんとした顔をしている。
 神学では魔術は不遜な学問だとされており、その中でも特に幻術のたぐいは外法中の外法と考えられている。
 そのため、少なくとも立場上は、この部屋の一連のことに反対しなければならないのだが、フィックは、素直に作戦や今の“目くらまし”にも、感嘆するばかりだった。


サイン

 オランが頷き、サインも了解する。

ラウス<

「なるほど。
 ……触れられさえしなければ大丈夫ということか」

エムリ<

「ああ、大丈夫だ。私の知的好奇心は満足しているから」
 含み笑いをして、頷く。
「どのようなものかは分かったつもりだ。
 術を継続するのは辛いものなのかな?
 だとすれば、それも作戦上、考慮しなければならないな」


エムリ

「ふぅ、我ながらいい出来、いい出来」
 予想以上の呪文の効果に、にんまりと笑みを浮かべて喜ぶ。
 実は本人でもビックリしているのだが、それは心の中だけに隠しておく。

サイン<

「と、いう訳で。こんな感じだけどいいかい? 顔は適当に作っちゃったけど、なんか希望があったら宜しくー。さすがに絶世の美女とかぼいんばいんの姉ちゃんとかはしんどいけどさ」
 鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌の声で話し掛ける。

ラウス<

「実体はないけど、ちょっとした細工なら可能なはず。血が出たり、物が刺さったりとか」
 そう言って、「杖の刺さった場所から血が出る」というイメージをに幻影に投じてみる。
「ミスさえなければ、そこに居るようには感じられるだろうさね。モチロン相手に触れられたら終わりだけど」

全員<

「で、こんな感じでいい訳? 良いんだったらそろそろ幻影を消すよ」
 そう言って全員の姿を見回す。


GM

 その際、幻影は小揺るぎもしない。
 このとき、もし術者であるエムリがそのつもりであれば、杖が、まるで槍のように突き刺さっていくような演出もできるはずが、そうでなければ、幻影は水よりも柔らかく、空気のように平然と杖を受け入れる。
 ただ、いずれにしても、ラウスの手には何の感触も伝えない。


ラウス

エムリ<

「考えることが僕の武器だからね」
 エムリの賛辞にまんざらでもないように、にやりと表情をかえる。

三人の幻影<

 どこか自分達に似た旅装束の幻影をみて、わずかに驚きの声を上げる。
「うまいね! 完璧だ。これなら遠目には絶対にばれない。ただし、たしかこの術は」
 そう言いながら、自分の杖を幻影に向かって突き出してみる。
「光を操作するものだから、音や実体はないはずだね」
 独り言を言うようにしながらも、周りの人間にもわかるように確認する。


サイン

幻影<

「ほう! これは!」
 感嘆の声を上げて、幻影と、元になった三人を見比べる。
 身をかがめてフードの中をのぞき込み、後ろへと周り、子供が新しいおもちゃを見つけたときのような趣だ。

エムリ<

「なるほど、これは、目くらましと言うには精妙過ぎる。まるで生きた人間にしか見えない」


ウール コモンキャラクター

 幻影をみて、エムリをチラッと軽く睨んだ。

「・・・・」

 そして表情を緩め、満足そうに頷いた。


GM

 エムリが魔法の焦点とした、その周辺の光景にひずみが生じる。空中に絵の具を垂らしたような染みが広がり、徐々に形を作っていった。

 ざ、ざざ、と、色が明滅し、そして、幻像が零れ出てくる。

 そこには、三人の男性が立っている。
 幻術だと分かっているものたちにさえ、息づかいさえも感じ取れそうなほど、精密な姿だった。


エムリ

ラウス<

 しばらく作戦を聞いてウンウンとわかったような顔をして頷いていたが。
「すごいなぁ、兄ちゃん。そこまでおれは考えがまとまらねーよ」
 照れ隠しの苦笑いを一つ。
「とりあえず、おっきい魚はまずは罠で捕まえるか、疑似餌で捕まえるか、って案で行くんだよな」

サイン<

「おーけぃおーけぃ。任せといて。朝飯作るみたいにちゃちゃっとやるからさ」
 承諾した、といった風に手をひらひらと振り、目を閉じて集中を始める。
(あんま細かいのはやった事ないんだけど……でも、やるしかない。頑張れ、おれ!)
 脳裏に浮かべるのは帽子やフードを目深に被って顔を隠した三人の男。三人とも違う色の薄手のマントで服を覆っている。マントの下は町で見たような普通の服。顔は……ええい、どこかで見たような顔でいいや。周囲の三名(フィック、オラン、ウール)の顔を浮かべてモデルにする。

「光の織物、夢の建物。右手で光を、左手で影を。二つを紡いで、作るは人形」
 言葉はリズムを取りながら心を落ち着けるためのもの。
 イメージを脳裏で慎重に具体化させながら、動作魔術でイリュージョンを行おうとする。

 魔術判定:分類/イリュージョン・動作魔術
  エムリ:優れた成功!



フィック

オラン&ウール<

 二人に挨拶をすると、後はおとなしくして、皆の作戦会議を聴いている。


サイン

ラウス<

「…………なるほど」
 聞き終わってから、思案をし、それから、頷いた。

ALL<

「悪くない。良さそうだ。
 その場合、まずはラウス殿とエムリ殿が囮役になるわけだな。ラウス殿が野盗との交渉……というか、会話を行い、エムリ殿は幻術を担当する。
 襲撃するなら、残りの者は荷物に紛れていれば良いし、追跡するなら、別の場所に伏せておくのも良い」

 言葉を句切り、エムリを見る。

エムリ<

「やはり、君の幻術は作戦の肝となりそうだ。
 どれだけのものなのか、興味もある。
 この場で、幻術をお願いできるかな?」


ウール コモンキャラクター

ラウス<

「・・・・」
 ラウスの、よろしくという挨拶にこくりと頷いた。

 地図を眺めながらラウスの策に耳を傾けている。


ラウス

オラン<

「心強い言葉ですね。飛び道具がこれだけあれば大して不利でもないって気がしてきましたよ」

ウール<

「よろしく。頑張りましょうね」
 その様子からして、馴れ合いの好きな様子でもなさそうだと判断し、ラウスは軽い挨拶に留めた。

サイン<


「そこまで分かってるなら、待ち伏せるのも悪くないですね。まず、相手の襲撃を待ち構えて反撃するか、相手を追跡して一網打尽にするかを決めましょう」
 地図を見つめながらラウスは考えをまとめ始める。
「待ち構えるなら、あらかじめ幻影を使って隠れれば、万が一鉢合わせしてもある程度はごまかせますし、幸い遠くからでも攻撃できる。馬車に堂々と乗って幻影でいないように見せかけることもできそうですね。ただ逃げられる可能性もあります。
 追跡のほうはわざと積荷を持たせて野盗を泳がせ、隠していた密偵でそれを追いかける。方法は……そうですね。麦の袋に穴をあけたり酒樽の留め金を緩めておく。険しい山道を運べば少しずつ中身が漏れる程度に。そうすれば多少距離や時間をおいても追跡できないこともない。うまくやれば野盗が酒盛りしているところに乗り込むのも」
 とこれは言葉を切った。そこまで都合よくいくとは限らない。
「いや、それは少し期待しすぎかな。ともかくあとは連中の隠れ家を囲んでしとめる。こちらの思惑にさえ気付かれなければ何度か試せるし、成果が望めないようなら反撃策に切り替えてもいいでしょう」


サイン

男性<

「ああ、戻ってきたか。ウール。
 これでメンバーは揃ったな」
 ウールにラウスやエムリ、フィックの紹介をして、それから他のものに向き直る。

ALL<

「かれはウール・リードロード殿。
 斧を得意としているそうだ。
 無口だが、そのあたりは気にしないで欲しい」


男性 コモンキャラクター

 玄関から誰か入ってきて、居間へと足音を響かせた。まっすぐに居間へとやってきた人物は普通の体格をした人間の青年で、多少鍛えられているようだ。カバーに収めた片手斧などで、軽く武装もしている。

「・・・・」

 何も言わず、壁によりかかる。


サイン

エムリ<

「そうだな」
 頷く。
「護衛の数を水増しして見せかける事の他にも、荷物を偽装することも考えている。幻術が使えるとなると、戦術の幅が広がるな」
 それから、首を傾げる。
「実験ができるならやってもらいたいな。
 魔法を使った後は休息が必要だったと思うが、どちらにしても、準備の時間は取るつもりだ。早くても明日の出立になるだろうから」

ラウス<

「馬車くらいなら仕立てることができるから、その案も悪くないかも知れないな。
 襲撃場所については、ある程度は分かっているんだ」
 地図を取り出してきて、テーブルに広げる。
 境界都市と商人の国との間に通っている道を記した簡単な地図だ。この地図には、それが三本だけ書き込まれている。まず一本が、両国で管理されている(宿を含むあらゆる商売に税金が掛けられるものの、治安維持活動を行う警備隊が常駐しており、街道沿いの森などもある程度、伐採されている)主要なもの、他の二本が、国の管理はされていないものの、比較的、頻繁に使われている道だ。
 サインは、その二本の、中程を指さして見せた。
「大体、このあたりを中心としている。
 こういった道は見通しが良くないのが常だが、その中でも比較的開けた場所に来たときに、襲撃を受けているようだな」


オラン

エムリ<

「そうか、うらやましいな。ハーフリングっていうのは適応能力が高いとはいうけど。
 ぼくは未だに慣れなくてね。たまに北に戻るとほっとするよ」

ラウス<

「弓なら任せて欲しい。大陸に名高い森人にはかなわないまでも、一応、専業は弓使いだからね。
 ――向こうは短弓くらいしか使ってこないようだから、こちらが先に捕捉できれば、矢戦の主導権を握ることができるんだけどね」


ラウス

オラン<

「ええ、ラウスでいいですよ、オラン。戦いのほうは期待にそえるか分かりませんけど、全力で戦いましょう。相手が飛び道具を使ってきますから、あなたの弓の腕にも期待してますよ」
 ラウスの方も微笑みながら答えた。

エムリ<

「まあ言ってみれば、小細工が得意なのさ。商人は頭を使ってなんぼだからね」

サイン<

「弓の使い手までいるとなると、離れたところからでも相手をある程度、攻撃できますね。幻術の使い手を馬車か馬に乗せれば、移動しながらでも幻を維持できる……」
 あごに手を当てながら考える。
「相手が襲撃してくる位置が限られていれば、待ち伏せるような真似もできそうですね。襲われやすい場所などの話はあるんでしょうか?」


エムリ

オラン<

「へー、ミネアンか。 おれも何度か行った事あるけど寒そうだったなー」
 うんうんうなずきながら話を聞く。暑いんじゃないか、という問いには。
「うん、こっち来てしばらくはひーひー言ってた。でも元々暑いのとか寒いのとか慣れやすい体みたいなんで、今じゃ結構慣れちまったさね。えっへん」
 何故か胸をはって答える。

サイン<

 目くらましで人間を出せるかどうかには
「出来るんじゃねーかなー。やっぱり出したことないから分からないけどさ。何なら今ここで試しに出してみる? あんま魔力を無駄遣いすんな、ってことだったらやめるけど、さ」
 杖をいじりながら考え考え答える。
 ラウスとのやり取りを聞いて、
「あ、そんじゃラウスの兄ちゃんを商人の親玉に見せかけて、その取り巻き連中を幻でだして、集団に見せかける、とかも悪くねーよな。多分おっさんも同じ事考えてると思うけどさ」
 独り言のように呟く。



サイン

エムリ<

「そうか……。
 ふむ。
 いもしない人間を二、三人。
 目くらましで、居るように見せかけることもできるだろうか」

屋敷の中<

「ああ、私はあまり飾り立てるのは好きではないのだが、さすがに応接間くらいはそれなりのものにしなければならないからな。
 知り合いの商人に頼んで、取り寄せてもらった」

ラウス<

「器用なのだな」
 感心して、頷く。
「私は杖を得物にしている人物を見たことはないが、なるほど、色々と役に立つ局面がありそうだ」
 囮役に適任、との言葉に、考え込む。
「…………
 なるほど」
 強く頷いた。
「小規模の隊商を率いる若旦那でも通じるし、荷馬やロバを調達できれば、若い旅商でも通せるな」


オラン

ラウス<

「うん、どうも、よろしく。
 杖を使う人は珍しいね。
 一度、訓練につきあってもらった人がやはり杖を使っていたのだけど、間合いも、攻撃、防御も自由自在で、さんざん翻弄された覚えがあるよ。
 そんなに恐ろしい武術なのに、武器とも思われないんだから。相手にとっては確かに厄介だ」
 握手に応じて、にこりとする。
「ラウスと呼んで良いかな?
 ぼくの事もオランと呼んで欲しい」

エムリ<

「じゃあ、君はエムリかな。よろしく」
 出身地について聞かれると、首を振る。
「そこまで大きな都市じゃあないんだ。
 氷湖畔のミネアンで生まれて、そことシノンを船で何度も行き来しながら育ったんだ。
 だからきっと、君よりは寒さに弱いだろうね。
 シリィン生まれだっていうんなら、このあたりも少し暑いんじゃないかな?」


ラウス

オラン<

「オランさんですね。よろしく」
 ラウスは笑顔で挨拶して、やはり握手を求めた。

サイン<

「僕はこの――」
 言いながら持っていた杖を示す。
「得物で軽くなら立ち回りもできますし、初歩の魔法も使えます。本業の密偵ほどではありませんが身を隠して行動するのも。ただ生家が商売をやっていたもので、一番得意なのは交渉ごとですけれどね。荒事はそれほどではありません」
 一拍おいて続ける。
「ただ囮役をやるんなら適任かもしれませんね。武器が棒っきれなら相手も警戒しないし、商売にも詳しいですから」


エムリ

サイン<

「えーと、幻の形は想像力次第、大きさはここからあそこくらいまでしか出来ないけど、結構離れた場所から発動させる事が出来るかな」
 身振り手振りに加えて走りまわりながら、イリュージョンの作用可能距離や作り出せる大きさを説明する。
「それ以上大きくなるか、とか、遠くからできるか、とかは……やった事ないからわかんねえ。やれるだけやってみようとは思うけど、さ」

屋敷の中<

「ほへー、案外いろんな物が置いてあるんだなぁ」
 うろうろしながら屋敷の中を観察していたが、先客の姿を見つけて、側に近寄る。

オラン<

 サインに紹介されて、ぴょこんとお辞儀をする。
「ってわけで、色々やってるエムリでーす。おれのことは好きに呼んでくれてかまわねーからな。仲良くいこー、仲良く」
 そこまで喋って思い出したように手をぽんと打ち。
「ところで北方ってどこの生まれ? 俺はシリィンなんだけどさー、同じだったら嬉しいかな、なんて」
 非常に個人的な話題を振ろうとする。

ラウス<

「へぇ、兄ちゃん、ただの凄腕商人ってだけじゃねーのか」
 わくわくしながら得意分野を聞こうとする。


サイン

男<

「お待たせした、オラン殿。
 幸いなことに、今日だけで三人も集まってくれた。人員の面だけならば準備万端整った、といったところだ」

エムリ&ラウス&フィック<

「まだ一人が席を外していて戻ってきていないが、先に紹介だけ済ませておこう。
 かれは、弓戦士のオラン殿。
 北方出身で、弓の扱いに長けているそうだ。他にも、剣もよくするようだな」

オラン<

 サインは、三人を紹介していく。
 旧帝国での礼儀に従って、年少者から順番にだ。
「この三人は、こちらから、エムリ殿、フィック殿、ラウス殿だ」
 エムリが年少者ではないのはサインももう分かっていたが、反射的にしてしまったらしい。
「エムリ殿はハーフリングで、様々な術を学んでいるそうだ。魔術に盗賊技、あとは錬金術だそうだ。
 フィック殿は使徒で、神の奇跡を賜わることができる。
 ラウス殿は知恵冴え走る人物で――」
 そこまで来て、ふと気づく。

ラウス<

「そういえば、君の得意分野についてはまだ聞いてなかったかな?」


GM

 会話をしながら、サインは三人を館の中へ伴っていった。
 館といっても侍女が出迎えるわけでもない。サインは、まるで若者が友人を家に連れてきたかのような気軽な調子で、奥の部屋へと向かう。

 そこは、居間のようだった。
 唯一まともに、装飾用の調度品が置かれている。たとえば客の気持ちを安らげるための絵画だとか、陶器の飾り物だとかだ。
 意外なことに、質素ながら趣味がよい。

 技能判定(目利き):分類/交易品
  ラウス:成功!


 ラウスが見るに、どれも安い品ではない。
 質も造りも、全体的なコーディネートも悪くなかった。
 館の他の部分とこの部屋を比べると浮いて見えてしまうのだが。
 その部屋には先客が一人いた。
 布でくるんだ弓らしきものを傍らに、落ち着けぬげに空のティーカップをもてあそんでいる、人間の男だ。
 四人が来るのを見て、そっとカップをテーブルに置いた。


サイン

ラウス<

「うーむ、その通りだ。
 まあ、一度失敗したとして、それでまったく任務達成が不可能になる話ではないから、試しにぶつかってみるのも悪くはないが」
 顎に手を当てる。
 その仕草はあまり堂に入っていない。どうも、考えることとか作戦を練ることはかれの本業ではないらしい。
「うまく追う方法、か……」

エムリ<

「ああ、もちろん構わない」
 と、先生と呼ばれることをあっさりと受け入れる。
「なるほど、先ほどもいっていた目くらましの術か。私はあまり目にしたことがないのだが、どれくらい便利なものなのだ?」

 エムリはもちろん、ラウスも知っていることであったが、光の術である“イリュージョン”は、初級に属する魔法ながら、かなり自在に映像を操ることができる。作用させることのできる距離も15m(50feet)と、そこそこ長い。通常では、幻像の大きさが、半径2mほどまででしか作られないのが欠点といえば欠点だ。
 だが、術者が気力を振り絞れば、その大きさも拡張できる。


エムリ

サイン<

「せんせー、意見良いっすかー?」
 誰が先生だか知らんが、片手をぶんぶん上げて意見のあるのを主張してみる。
「囮作戦は悪かないけど、人数が足りないのがモンダイ。ってことは、幻術で囮らしい物を作り出して、それにふらふらつられてきた所でこっちから襲いなおせばいーんじゃねーの? 罠とかナニとかで。」
 そこまで言って、区切り。
「弓で射掛けるばっかりだったり、第一おれの幻が上手く出来なかったりしたら元も子もないけど、さー」
 ううむ、と考えるように大きく腕組をする。


ラウス

サイン<

「囮は僕も考えましたが、相手はなかなか慎重ですからね。戦えれば不利でもまだいい方です。だが、相手はあっという間に逃げ出してしまうかもしれない……」
 言いながらサインの家を、ちらりと見る。手入れされていない様子にしても、話す様子にしても磊落な騎士なのだという印象を受ける。
「逃げた相手をうまく追う方法でも考えてみましょうか。囮作戦と合わせれば……」
 思考の渦に沈みそうになる前に言葉をきる。残りの二人に会うのが先決だと考えたのだ。


サイン

ラウス<

「ふむ」
 目を瞠って、立ち止まる。
「それはそうだ。しまったな。
 私は、人員を揃えたら、囮の隊商にでも化けておびき出せば良いと思っていたが……。
 きみのいったとおり、相手は少人数だと踏んでいたからな。
 だが、確かに、首尾良く襲撃を招くことができても、一方的に主導権を握られては話にならん。しまったな。
 むう。
 見つけられるのではなく、見つけなくてはならないわけか」
 眉根を寄せて考え込んだ。

「何か作戦が必要かも知れんな。囮作戦は悪くはないと思っていたのだが……」


ラウス

サイン<

「なにしろ、未熟者なので確かなことは言えませんが」
 正直に前置きしながら続ける。
「相手は大人数ではないと思います。しかし相手から一方的に弓で射られますからね。どうにか先手をとれれば……いや少なくとも対等に戦えるように引っ張りだせれば、なんとかできるんじゃないかと思いますね。まずは尻尾を掴ませないその野盗を、うまく見つける事ですか」
 ラウスはむしろ戦うよりも、見つけ出すことの方が大変そうだと思いながら、これから相手にする野盗に思いを巡らせた。


サイン

 玄関に案内しながら、一行を振り返る。

ALL<

「あと二人が先に来ていて、くつろいでいるはずだ。
 これで、君たちを含めて六人になった訳だな。
 五人集まれば良いと思っていたから、なかなか良い按配だ。話だけ聞きに来て、結局、受けずに帰っていったものの中には『せめて十人は欲しい』とか言っていたがな。

 私はそこまでは必要ないと思うのだよ。
 どうだろうか?」


GM

 そこは、境界都市の一画にある館だった。
 小さくはないが、さして大きくもない。壁にはツタが這っているし、好き放題にされた林に半ば埋もれかけている。
 このサインの家に、他の連中も集まっているのだという。