PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

神聖王国ミノッツ
騎士王国シルヴァードと領土を面した国家。
国土を治めるのは国王であり教皇であるパルマ四世。

:神聖王国 竜追いギルド:
 竜追い達を援助するために、多くの国がギルドを置いている(置かなければ外聞がよろしくない)。そして、この国ミノッツも例外ではない。
 シルヴァード首都のそれ、またその他の多くのギルドが酒場と一体化したような風情であるのに比べ、こちらはまるで事務所めいた雰囲気をしている。

 パルマ四世の発布した「竜追い登録制」により、竜追いの冒険者たちは、このギルドで登録し、その証明を持っていなければそれと認められず、本来竜追いの冒険者用に割り引かれている施設の料金が通常になる。つまり全体的に二割程増してしまう上に、他なら無料で利用できるようなものに料金を取られるようになることさえある。

 とはいえ、交渉の際にいちいち竜追いの確認を取る店ばかりではない(そのような店では自分から登録していないと公言さえしなければ良い)ため、他国からやってきた竜追いの中には、この登録を無視するものも多い。登録料は100Rdと安値だが、登録には審査があって、少なからず時間を食うのである。
 それに、冒険者というのはたいてい自由志向なのだ。

投稿(件名…神聖王国 竜追いギルド)
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ギルド張り紙




GM

 リューイは深々と一礼し、ギルドを後にした。


ギルド員

リューイ<

「はっは、まあ、がんばってくれよ」
 いって、リューイに場所を伝える。
 大きな赤い三角屋根が目印の、貴族の館が自警団の本拠地だという。


リューイ

ジョセフ<

 少し困ったように眉を下げ、ギルド員を見た。
「『勇気ある冒険者』・・・何か緊張してしまいますね。」
 顔を見てがっかりされないといいんですけど、と呟きながら、押し抱くようにして羊皮紙を受け取る。
「ありがとうございます、早速行ってきます。
 ――ええと、どこへ向かったら良いでしょう?」
 大切そうに紹介状をしまうと、視線をもう一度ギルド員へ戻した。


ギルド員

リューイ<

「『ドン・ブラウン自警団』っていうんだ」
 鵞ペンをもてあそびながら答える。
「紹介か。ああ、もちろん何でもない。ちょっと待ってろよ……」
 羊皮紙を取り出すと、さらさらと何事かを書き連ねていく。
 最後にギルドの紋章を取り出して、脇で燃えていた蝋燭を使って印を捺す。
「これでいいだろ。“黒衣の魔女”事件を解決した勇気ある冒険者って触れ込みだ。紹介する手前、お前さんには、なんて言うかこう、ピシっとして行ってもらわないとな」
 冗談めかして笑いながら羊皮紙を渡す。


リューイ

ジョセフ<

 上品、と呟きながら、もう一度自分の姿を見直す。
「・・・そうでしょうか。いまいち自分ではわからないというか・・・」
 首をかしげながら、不思議そうにギルド員へと視線を戻した。
「いろいろな人の役に立てる機会があるのなら、僕も嬉しいです。」
 何でも屋という言葉に、少し面白そうに声を弾ませる。
「この国の人間じゃなくても大丈夫なんでしょうか?
 もし平気なら、紹介してもらえませんか。ええと・・・」
 そう言って少し言葉を切る。
「・・・そこは、何という名前なんですか?」


ギルド員

リューイ<

「いや、褒めてるんだぞ。うん、上品な感じがするっていうことだよ」
 けらけら笑う。
「町の様子か。それなら、ちょうど良さそうな団体があるな。
 普段は町中の見回りやら警備をしたりしているんだが、冒険者に頼む余裕はないような市民のために、魔物退治や調査やらの何でも屋まがいのことまでやるっていう、それこそ冒険者と何が違うんだっていうような奴らだよ。
 この町の情報が入ってくるのが良いなら、そこが一番お勧めかも知れないな」


リューイ

ジョセフ<

「・・・がんばって冒険者、ですか。」
 苦笑めいたものを浮かべて、自分で自分の体を見渡す。
 それなりに鍛えてはいるつもりだけれど、腕も脚も体格も、確かにあまり強そうに見えない。
 冒険者と言ってもらえたんだし、まあいいか。
 そんな風に考え直して、視線を上げる。
「仕事は、僕にできることならなんでも。ただ、ええと・・・この町の様子とか、住んでいる人達のことを知っていきたいんです。
 だから、なるべくいろいろな情報に触れられる方がいいんですけど・・・」


ギルド員

リューイ<

「そうか、そりゃ良かった。
 あんまり宿に行った奴が感想を教えてくれることも多くなくてね。青い跳ね魚亭だったか。覚えておこう」
 嬉しそうな顔をする。
「へえ、自警団」
 意外そうに、
「なんだか、自警団っていう感じじゃないのにな。何というか貴族の護衛とか、せめてがんばって冒険者、って風だからな。
 紹介して欲しいっていうことなら、お前さんは腕が立ちそうし実績もあるからいくらでも任せてやれるけど、どうだろうな。
 郊外の治安維持、町中の見回りとか、やっている仕事にも違いはあるが、どんなのが希望だい?」


リューイ

「おはようございますジョセフさん。
 いい宿を紹介してくださってありがとうございます。
 部屋も綺麗だったし、主人も良い方でした。
 久しぶりの寝台だったので、少し寝過ごしてしまいましたけど。」
 軽く頭を下げた後、小さく笑みを浮かべてそんな言葉を返した。
「実は、しばらくミノッツに滞在することになったので仕事を探しているんです。
 僕はこの剣くらいしか特技と言えるものがないので、自警団か何かに参加させてもらえないかと思っているんですが。
 ・・・適当な場所があれば、教えていただけないでしょうか。」
 生真面目な表情と口調でそう言うと、返事を待つ。


ギルド員

リューイ<

「どうも、お待たせしました」
 と、順番を待っていたリューイに声を掛ける。
「おや、お前さんか。宿はどうだった?」
 ジョセフという名前のギルド員だった。


GM

 もう少しでリューイの順番が来そうだ。


リューイ

 とりあえず、この町の自衛団を紹介してもらおうとギルドへ入る。
 相変わらずの喧騒に、扉を開けたリューイは掠めるように苦笑を浮かべた。
「・・・奥までたどりつくのが、一苦労だな・・・」
 小さく呟いた後、人波をすり抜けるようにしてカウンターへと向かう。
 受付の順番を待ちながら、顔見知りのギルド員を探したり、掲示板の張り紙に目を通して時間をつぶす。
(・・・自衛団、か。入団試験とかあるのかな・・・)
 ぼんやりと考えながら、前に立つ男性の白いコートに目をやる。
 色合いからアルファンを思い出し、魔術師の人なんだろうか、などと思いながら自分の順番が来るのを待った。


GM

 ドアを開け、また一人の冒険者がギルドに入ってきた。
 青い跳ね魚亭からやってきた、リューイだ。


ギルド員

テフィス<

 急にテフィスの様子が所在なげになったのを見て取って、不安を覚える。
「出発の準備がいいんなら、呼んでくるが……本当に大丈夫か?
 ちなみに、シーアは22歳でな。おれの知り合いの冒険者の子供でそいつも冒険者になっちまったんだが、それから5年後に大きな怪我をしてな。何とか命は取り留めたんだが、まあ、それで、怖くなったんだ。
 そいつの親もだが、本人も思うところがあったようで、ギルド員になったのさ。
 そんなわけで、冒険者としちゃあ基本的なところは身につけているし、お前さんといても特に本人が気にすることはないだろう。
 が、まあ。
 お前さんが気になるっていうんなら、今回の護衛はなかったことにしても大丈夫だが……」


テフィス

ギルド員<

「…女性、ですか?」

 彼は、声を小さくし、目を上や下にキョロキョロと動かした。
 やっぱりきちんと話を聞いていなかったテフィスは、まず運ぶものが人であることに驚いたのと、尚且つそれが女性だと言うのに驚いた。
 彼は、女性が苦手である。
 嫌いではないのだが、なんとなく怖いもののように感じるのだ。
 その女性と、約200日も一緒にすごさなければいけない…

 しかし、せっかくの移動をふいにするわけにはいかないと、自分を何とか納得させ、

「はい、わかりました。」

 声の音量を元に戻し、いつもの柔らかいつもりの笑顔を見せながら、ギルド員に返事をした。
 だけどやはり、女性への恐怖がなくなったわけではないようで、

「それで、すぐに出発したいのですが、その…女性、の方は…」

 質問になると、また声が小さくなり、特に「女性」の言葉を発するあたりでは言葉が途切れ途切れになった。


ギルド員

テフィス<

「人だ、人。
 ギルド員。
 おれたちの仲間の一人が、ボン・ノドンに行くことになったから、その護衛を頼む。と、そういうことだ。分かってるか?」
 とぼけているのか、真面目に言っているのかはいまいち分からない。
(本当に任せて良いのか?)
 不安があるが、実際問題として、シノン街道は危険な道ではないし、大体、武装をした旅人を襲うことにはほとんど何のうまみもない。そもそもが一人旅には不安があるから、誰かを護衛に付けようという程度の依頼だ。
「シーア・テオフィス。一年前からうちのギルドで働いていた奴でな。女だよ」


テフィス

ギルド員<

「そうですか、ありがとうございます。」

 彼は満足気に、その場から去ろうとする。
 目的地も聞いたし、道も大体わかった、あとは向かうだけだ、と。
 しかし、何歩か歩いた後、すぐに戻ってきて、

「あぁ、そう、何を運べば良いんでしたっけ?」

 目的を貰うのを忘れていることを思いだす。
 しかし、運ぶものが人だと言うのをいまいちわかっていないようで、物でも運ぶかのような言い方をした。

 ちなみにこの間、彼は満面の笑みを浮かべている。
 やっと進むことが出来る、それが嬉しくて仕方ないらしい。


ギルド員

テフィス<

「えーとな」
 ギルド員には、なんとなく、この青年のことが分かってきたような気がした。
「シノン街道という道があってだな。栄えある神聖王国を出発点として、西へ西へと続く大陸随一の道なんだが、この道の上を延々と、まあ順調に行って200日もあれば商人の国に到着するかな」
 とりあえず道について答えることにする。


テフィス

ギルド員<

 彼は、ギルド員が言い終えた後、すぐに、

「西北西へ行きます。」

 と、答えた。

 少し考えれば、「護衛」がどれだけ大変な事か、わかったはずだろう。
 しかし、彼にはどうも目的地のことしか耳に入らなかったようで、

 1.「もっと遠く」は、「書類を調べて見なきゃ」だったので、消去
 2.「東西」は「遠くない」だったので、消去
 3.残る選択肢は「西北西」

 そんな、簡単な消去法で決めてしまった。

 普段の彼なら、ギルド員の少しの沈黙にさえ、何故沈黙をする必要があるのか、と、深く考え込むだろう。
 だけど、今の彼には、自分の一番したいことが近づいてきたせいか、他の事を考えられなくなっている。

「それで、これからどうすればそこに向かえますか?」

 まるで、道でも聞くような質問の仕方。
 やはり、今の彼は、目的地のことしか頭にないらしい。


ギルド員

テフィス<

「そうか」
 頷く。
 …………。
 それから、頭を抱えた。
 しばらくその体勢でいてから、
「まあいい、まあいいか。分かった。
 ええと、何だ。それじゃあ、宅配の仕事なんかはどうだ?
 護衛なんてのもあるぞ。
 宅配は遠くはないが南西の騎士王国まで、護衛は西北西の彼方の地であるところの商人の国ボン・ノドンまでだ。
 そういうのじゃない方が良いのか?
 もっと遠くまでとかだったら、ちょっと書類を調べて見なきゃならんが、どうだ?」


テフィス

ギルド員<

 彼は一瞬、不思議そうな目でギルド員を見た後、また目をそらした。

 彼はどうして、このギルド員がまた自分と同じことを繰り返したのかがわからなかった。
 彼にしてみれば、自分の言ったこととギルド員の言ったことは全く同じなのだから、繰り返す必要はないのだ。
 それともこのギルド員は、無駄が好きなのだろうか?
 もしそうなら、何とも変わった生物だ。
 少なくとも、自分には理解不能だ。
 いや、しかし、世の中にはたくさんの生物がいるのだから、そういう考え方をする生物も、中にはいるのだろう。

 彼は自分なりに考えをまとめ、やっとギルド員のほうに顔を向け、いつもよりは柔らかい笑顔で返事をする。

「はい。」


ギルド員

テフィス<

「……………んあ?」
 惚けた顔で聞き返す。
 よく、言いたいことがわからなかったらしい。
「えーと。
 ちょっと整理していいかい?」
 相手の目線がどこにあるのかも曖昧だったが、とりあえず、自分に向かって訊ねてきたのだと思うことにする。
「あんたはどこかに行きたくて、どこかに行けるような依頼がないかと探している。
 その、“どこか”はどこでも構わないが、なるべく遠くがいい。
 でもって、そのどこかに行く手段はなるべく複雑でなく、できれば危険もない方がいい。
 と、こういうことかい?」


テフィス

 彼は周りを見渡す。
 が、人がたくさんいて、中のものをはっきり見取れない。
 何となく見取れたのは、いくつかの紙が貼ってある掲示板と、受付らしきもの。

 さて、どうするか。
 掲示板を見てみようか。
 まず掲示板を見て、その後受付に向かい、やっと依頼を受ける…それでは少し面倒だ。
 それよりは、受付に行き、直接受付から仕事を貰いたい。
 これなら、無駄も少なく済む。
 しかし、もし掲示板からしか依頼を貰えないのなら、逆に時間の無駄になるのではないだろうか。
 大体あれは本当に受付なのだろうか。
 もし違えば、なんて無駄な…

 …いや、考えるな。
 とにかく受付に向かうのだ。
 少しぐらいの無駄は、ここでは許さなくては。
 そうでなければ、また動けなくなってしまう。

 彼は器用に人を避け、受付に辿り着く。
 そして、低い声で言った。

「依頼をいただけませんか。
 出来るだけ簡単で、尚且つ遠い場所へ行けるような…」

 なんとも無茶苦茶な要求である。
 その上、その目には誰も写っていない。
 これでは誰に向かって話しているのかわからない。

 彼は本当に依頼を受けるつもりがあるのだろうか。
 少し不安だ。


GM

 テフィスは竜追いギルドに移動し、中に入った。
 中は整然とした様子だったが、今はごった返す人で何が何やら判別が付かない。
 奥の方にカウンターがあり、ギルド員によって受付がされている。中にいる人の多くはそれぞれで会話をしていたり、依頼の張り出された掲示板を見、相談などをしている。


テフィス

 彼にとっては、何もかもが無意味だ。

 彼には行くべき場所があり、出来るだけ早くそこに辿り着きたい。
 だけどその目的地は、彼自身にすらわからない。
 その結論として、彼の行動は全て無意味になる。
 何故なら、移動以外の動きをすれば、時間を無駄していることになるし、移動だって、その目的地に近づいているとは限らない。

 そう、やはり彼にとっては、何もかもが無意味なのだ。

 そして彼は、あまり無意味な行動はしたくない。
 出来ることなら、全ての行動に意味を持たせたい。
 意味のないことはしない、それが彼の美学である。

 …あまり自己を持たないはずのミラージュが、美学に基づいて行動するとは。
 何とも変わった話である。

 まぁそれはどうでもいい。
 話を戻そう。

 まず優先すべきは移動だ。
 移動しなければ、どこかにあるはずの目的地に辿り着くことは出来ない。
 しかし彼は彼の美学により、意味のない移動は出来ない。
 ようは移動をするなら、その移動にそれなりの目的を持たなくてはいけないのだ。

 もう1つ注意しなければいけないのは、その先で起こる厄介ごとへの対応。
 特に戦闘だが、普通であれば、自分の身を守るために行動を起こすのは当たり前である。
 しかし彼は、自分を守ることに意味を見い出せない。
 敵に遭っても、逃げることすらせず、攻撃を受けながらでも進むしかしないのだ。
 もちろんそんなことを続けていれば、いつかは消えてしまうだろう。

 なので、その両方に意味を持たせなければ、彼は動けないことになる。
 現に今、彼は考えることはしていても、その場から1歩も動いていないのだ。

 さて、どうすれば良いものか。
 ようは、自分が無事に移動しなければならない状況を作ればいいのだが…

 そうか。
 自分で目的を見出せないのなら、他人に目的を作ってもらえば良い。
 目的を、誰かから貰えば良いのだ。

 丁度この世界には、他人から目的を貰える機関がある。
 そしてその目的を貰うため、その場所に必然的に移動しなければいけない。

 これで移動することに、彼の納得できる程度の意味が出来た。

「竜追いギルド…」

 彼は目的を得るために、竜追いギルドを目指すことにした。


GM

「はい、参りましょうか」
 アルファンが微笑み、ノーイも頷く。
 二人はリューイのあとをついて行く。

 リューイたちは、“青い跳ね魚”亭へ移動します。


ギルド員

 くっくっく、と笑い声を漏らす。

リューイ<

「そりゃあ、ありがたい」
 にっと、笑顔を作る。
「君、おれが思った通り、良い子だよ。こんなにまっすぐに育った奴はこのあたりじゃあんまりいない。よっぽど良い親御さんに恵まれたんだろうね。
 がんばんなよ」


リューイ

ジョセフ<

「いえ、とてもいい名前だと思います。」
 真剣な顔でそう応えると、にこりと微笑を浮かべる。
「今回の仕事のことでも、ノーイのことでも、ジョセフさんにはとてもお世話になりましたから。
 絶対に忘れたりしないです。」

ノーイ<

 軽く目を見張り、苦笑するようにして頬をかいた。
「・・・変な場所を選ばないよう、努力します。」
 悪戯っぽい眼差しに、口元が僅かにほころぶ。

「それじゃあ、宿の方に行ってみましょう。」
 ノーイとアルファンに声をかけ、カウンターのジョセフに頭を下げる。
 どんな宿なんだろう、と、先ほどのノーイとの会話を思い出しながら、リューイは宿へ向かった。


ギルド員

リューイ<

「はいよ。良い仕事があれば融通してあげよう。
 こちらも、よろしく。リューイさん」
 それから、きょとんとした。
「おれの名前? 珍しいな。名前を訊ねてきたお客は滅多にいないから。みんな、『ギルドの人』だとか『そこの兄ちゃん』で済ますのさ。
 おれはジョセフっていうんだ。大した名前じゃないけどね。ま、覚えてくれていたらありがたい」


ノーイ

リューイ<

「分かりました」
 笑って頷く。
「でも、リューイが選んでくれる方が嬉しいです。いい宿だったらもちろん、嬉しいし。悪い宿だったら、誰かの所為にできるから」
 横目で、悪戯めかしてリューイを見る。


リューイ

ノーイ<

 僅かに頬を染めて、困ったように笑う。
「――うん、そうやって決めてしまうかも。
 験担ぎということもあるけど、そうでもしないと選ぶ基準がわからなくて・・・。」
 そう言って、もう一度ノーイとアルファンを見る。
「・・・あ、だから、二人が好きな場所があったら言ってくださいね。」
 同じ勘で選ぶのでも、自分のそれよりノーイやアルファンの方が信用ができる。
 言いながら、そんな風に思っていた。

ギルド員<

 もう一度、「青い跳ね魚」までの道のりを確認する。
「・・・それじゃあ、本当にお世話になりました。
 しばらくミノッツに滞在するつもりなので、またこちらに伺うことになると思いますけど・・・その時はよろしくお願いします。」
 深々と頭を下げたあと、明るい色の目を相手に向けて言葉を続ける。
「あなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか?
 僕は・・・もうご存知でしょうけど、リューイといいます。」


ノーイ

 くすりと笑うと、頷きで答える。
 それから、首を傾げた。

リューイ<

「それじゃあ、『青い跳ね魚』が問題なかったら、次に宿を探す必要があったときにも色が付いた名前のところにする?
 良い験があるのかも知れないから」
 と訊ねると、また、おかしそうに笑った。


ギルド員

リューイ<

「そりゃそうだ」
 ひょいと肩をすくめる。
「女性連れの男ってのは、色々と気を遣わなきゃならないもんさ。特に、風呂があるかどうかっていうのは重要みたいだね。
 幸い、ここと提携している宿で、風呂を用意してくれないところはないけどね」
 ラームナードでは、入浴の習慣は、それなりには一般的である。


リューイ

ギルド員<

 泊まってみないと善し悪しはわからない、という言葉に小さく笑う。
「―そうですね。
 僕だけなら、とりあえず眠る場所があればいいんですけど・・・」

ノーイ<

「・・・うん。僕も、ミノッツはあまり詳しくないから・・・どちらというのはないのだけど。」
 生真面目に、考え込むように一度言葉を切る。
「だけど、そうだね。
 どちらでもいいのなら、『青い跳ね魚』でもいい?
 アルファンと会ったのが『黒衣の魔女』という依頼だったから・・・ただの験担ぎみたいなものだけれど。」
 僅かに照れたように微笑んで、どうかな、と首をかしげた。


ノーイ

 少し考えてから。

リューイ<

「わたくしは、どちらでも構いませんよ。剣士殿」
 にこりとして、応じる。
「ギルドの方がお勧めというのなら、大丈夫だろうから。――それなりには。
 リューイは、どちらがいい?」


ギルド員

リューイ<

 軽く笑ってみせる。
「まあ、迷ったら、コインでも投げて決めればいいさ。
 泊まってみない限り、宿の善し悪しなんて分からないんだから。別に時間はたっぷりあるから、いくら考えても良いだろうけどね」


リューイ

ギルド員<

 はあ、と、相槌を打って軽く首をかしげた。
 考えるように数秒、瞳を伏せる。
(・・・どんな場所でも、「絶対」の安全なんてわからない、ということなのかな)
 そんな風に考えて、視線をあげた。
「・・・わかりました。
 あなたのおすすめなら、どちらも問題ない場所なんでしょう。
 少し、待ってください。 彼女、にも、相談してみます。」
 生真面目な表情でそう言うと、ノーイたちの方へ向き直った。

ノーイ&アルファン<

 にこにことしている様子に、軽く顔をほころばせる。
「おすすめの宿は二つ、“兎とチョウゲンボウ”亭と“青い跳ね魚”だそうだよ。
 どちらもギルドと提携している宿屋だから、割安だし安心だって。」
 それなりには、と、ギルド員の言葉を真似て付け加えた。
「おふたりは、どちらの宿がお好みですか?」
 軽口めいた、丁寧な言葉遣いでそう問いかけると、にこりと笑う。


ノーイ

 アルファンと寄り添って、どんな話をしているのか興味深そうに、にこにことリューイの方を見ている。


ギルド員

リューイ<

「まあね、それなりには」
 ひょい、と肩をすくめる。
 基本的に、厳格で、几帳面、事務的に物事をこなしていくミノッツのギルド員の中では、珍しくさばけた態度だ。
「何しろ、おれは宿には泊まったことがないから。まあ、苦情もないから、問題はないだろうとは思うんだけど。
 あ、念のため。書類上は全く健全な宿だよ」


リューイ

ギルド員<

「ギルドと提携を・・・そういう仕組みもあるんですね。」
 通りの東と、ギルドの裏――と場所を確認するように呟いて、小さく頷く。
「割安にしてもらえるなら、ありがたいです。しばらくミノッツに滞在するつもりなので・・・」
 それから、ふと視線をあげ、軽く首を傾げるようにして、
「・・・『それなりには』・・・?」
 言葉の中の、何か気になった部分を復唱する。
 何かあるときがあるんだろうかと、不思議そうに瞳で問いかけた。


ギルド員

リューイ<

「ああ、なるほど」
 ノーイを見てから、頷く。
「もちろん、おやすい御用だよ。
 冒険者の手伝いをするために、ギルドがあるっていったろう? そういうことも、援助の一つだから。
 宿なら、このギルドのある通りを……東に向かってすぐにある、“兎とチョウゲンボウ”亭か、それとも、裏にある“青い跳ね魚”が良いだろうな。
 どちらも、ギルドと提携をしている宿だ。君はもう、登録は済んでいるから、割安だし、それなりには安心に泊まれるはずだ。」


リューイ

アルファン<

 冗談めかした謝罪に、くすりと笑う。
 その後、アルファンの「お勧めの宿が教えてもらえる」という言葉に軽く頷いた。
「じゃあ、早速聞いています。
 少し待っていてください。」
 そう言って踵を返し、カウンターへ向かった。

ギルド員<

「すみません、ちょっとお尋ねしたいんですが・・・」
 僅かに首を傾げるようにして、問いかけた。
「しばらくミノッツに滞在したいと思っているんですが、僕はこの国には不案内で」
 振り返り、ノーイとアルファンを見て――視線を戻す。
「彼女た・・・彼女、も、一緒ですし。
 いいところがあれば、教えてもらえませんか?」
 アルファンが「自分のことは見えていない」と言っていたことを思い出し、やや言葉に詰まりながらそう言った。


アルファン

リューイ<

 あら、とおかしそうに呟いた。
「すっかり忘れていた疲れを、思い出させてしまったみたいですね。余計なことをしてしまいました」
 ごめんなさい、と冗談めかして謝る。
「残念なことに、ミノッツ王都のこのギルドは宿は、急病人以外への宿は貸していないはずだから――探さなければいけませんね。彼に尋ねてみれば、すぐにお勧めの宿を教えてくれると思いますよ」
 ギルド員を示して見せた。
「私も、休まなければいけませんし。ご一緒します。
 魔法を使うのには、事前に充分な休息を取っておくことが必要ですからね。今日は、ノーイも休ませておきましょう。
 明日から、この子には頑張ってもらうつもりですから」


ノーイ

 ぱっと、華やかに笑う。

リューイ<

「うん、是非」
 手を合わせて、頷いた。
「リューイの育ったところでしょう?
 気に入らないことはないと思います。
 魔法の勉強も熱心にやらないと。早く、その国に行けるように」


リューイ

ノーイ<

 覗き込んでくる瞳に、僅かに頬を赤らめながらも笑みを返す。
「・・・そう、だね。いつか・・・」
 家族、という言葉をかみしめるように呟いて、軽く瞳を伏せる。
「・・・いつか、機会があれば、行ってみようか?
 シルヴァードはとても綺麗な国だから・・・ノーイもきっと気に入ると思う。」
 視線を上げ、ふわりと、柔らかな微笑を浮かべた。

アルファン<

 疲れてはいないか、という言葉に軽く目を見開き、その後小さく笑った。
「・・・言われてみると、確かに。
 いろいろあって忘れていたけど、そういえば強行軍でした。
 そういえば、ずいぶん疲れているような気がする・・・かな。」
 筋肉をほぐすように肩をまわすと、苦笑するように笑った。


アルファン

リューイ<

「無数の糸が縒り合わさって、一枚の大きな布になる」
 謎かけめいていうと、にこりとした。
「何が何につながるか、分かりませんものね。
 あなたのお仕事が、このはかりごとの切り札になったとしても、私は驚きませんよ」
 ええと、と呟く。
「それでしたら、とりあえずは宿を取りませんか?
 ノーイはさほどでもないでしょうけれど、リューイは確か、ほとんど丸一日を起きて活動しているはずですから。
 あの町からノームの森林に向かって、日が暮れた頃に私の館にいらして、そして、今。
 お疲れではありませんか?」


ノーイ

 不思議そうな表情をして、首を傾げる。
 それから、口元に笑みをかたどって、リューイの顔を覗き込んだ。

リューイ<

「一度、お会いしてみたいな。リューイのご家族と。
 機会があれば、いつか」
 冗談とも本気とも付かない口調だった。


リューイ

ノーイ<

「・・・積極的というか、なんというか・・・」
「荒っぽいのと紙一重」とは言えず、なんとなく言葉を濁し、苦笑を浮かべた。

アルファン<

「全力を尽くすよ。」
 頼りにしている、という言葉に生真面目に返す。
 続けられたアルファンの言葉に、考えるように首をかしげて
「・・・それなら、何か仕事を受けようかな。
 三ヶ月時間があるのなら、僕も少しでも腕をあげたい。
 それに、ミノッツの中で仕事を請けていれば、少しは情報収集になるかもしれないし。」
 そんなふうに言った。


アルファン

リューイ<

「リューイならそういってくれるだろうと思っていましたよ」
 笑い返す。
「では、頼りに、させてくださいね。
 私は、もう、てんで、無力なものですから」
 あ、でも、という。
「今はまだ、することはないのですけれど。
 このようなことをいうと、私が陰謀事に慣れているみたいで嫌なのですが――先に、情報を集めてみようと思うのです。下手に動くと、怖いですから。
 ちょっとした協力者もいますから、その人にお願いをしています。
 その情報収集にちょうど、三ヶ月はかかるでしょうから、私も、暇なのです。
 リューイは、どうなさいますか?」


ノーイ

リューイ<

 家訓を聞いて、くすりと笑った。
「何だか、面白いです。
 リューイはこんなに穏やかで、優しいのに。とても積極的なご家庭。わたしまで、力がわいてくるような気がする」


リューイ

ノーイ<

「・・・うん。がんばって。」
 笑い返すと、思い出したように微笑を深くする。
「――『やりたいこと』は『やればできる』ことだから。
 なりたい自分があるのなら、全力でやれって・・・うちの家訓。」
 自信満々で、胸を張ってその言葉を言った人のことを思い出す。

アルファン<


 少し驚いたように目を見張ってアルファンを見る。
「・・・すごいことを言うんだね。」
 そう言った後、表情をほころばせる。
「そういうことなら、僕にも手伝わせてほしい。
 ・・・今回の件に関わった者として、あの依頼内容には納得がいかないから。」
 にこり、と笑ってそう言葉を続けた。


アルファン

リューイ<

「他の子を探すのは、少しだけ時間を置いてからにしようかと思っています」
 唇に指を当てて、答える。
「ノーイを見ていて、他の娘たちにも、機会があれば、それが一番望ましいと分かりましたから。
 わたしがすぐに会いに行ってしまったら、もしも名前も手に入れられるはずの娘がいても、その前にすぐにわたしのところに帰ってきてしまいますもの。
 だから、ちょっと、様子を見てみようと思います。
 それから、一人、一人に会いに行きます。
 きっと、名前をもらえない娘もいて、例えよりどころを得ても、愛されることのない娘もいることでしょう。わたしは、そんな娘たちを迎えに行こうと思うんです。
 ノーイのお勉強の時間は、ちょうど良いです。

 そうですね。
 なので、当面は……」
 首を傾げた。
 それから、唐突に、空恐ろしいことを言った。
「この国の中に混ざってる、不穏なものを取り除かなければと考えています。ほら、わたしを討伐する依頼にも、何だかおかしなところがあったでしょう? それを、暴いてみようと思います。

 ……あ、でも、今は、わたしも特にすることはないんです。リューイにお任せします」


ノーイ

リューイ<

「ありがとう、リューイ」
 安心したように、微笑んだ。
「それなら、頑張って、勉強できます」


リューイ

アルファン<

 ほんの少し戸惑ったような顔で、アルファンの言葉を聞いている。
「・・・そう、なのかな?
 僕にとっては、とても大切な名前だけれど・・・ノーイの記憶が戻った今では、「本当の名前」があって、そちらを呼ぶべきなんじゃないのかと、そう思ったりもしていたのだけれど。」
 そう言って、僅かにはにかんだような微笑を浮かべた。

ノーイ<

「僕はかまわないよ。アルファンと、ノーイと。一緒に行くと決めたんだから。」
 少し申し訳なさそうなノーイに、安心させるように笑いかけた。

「それじゃあ、僕も何か仕事を探そうかな。
 ノーイががんばるんだから、僕も負けてはいられないね。
 ・・・アルファンは、他の人を探すの?もしそうなら、僕に何か手伝えることはありますか?」


ノーイ

リューイ<

「三ヶ月。
 魔術師になるための素質は充分すぎるほどだから、それだけで済むみたいです」
 少し、誇らしそうに答える。
 それから、申し訳なさそうに。
「その、リューイが待っていてくれたら、嬉しいです。
 でも、大丈夫? そんなに時間を遣わせてしまっても?」


アルファン

リューイ<

「見えますよ。でも、それを、見えない人と分かち合うことはできない。見える人が私と話をしたり、私のことを見えない人に告げたりしても、見えない人には何も分からないし、何も通じません。不便ではありますけど、しばらくは、このままでいようかと思っています」
 ノーイを見て、それからまた見返してくるリューイに対して、再度、笑顔を向けた。
「あら、与えましたよ。
 リューイは、あの子に、名前を付けて、それを呼びました。
 名前は、すべての根拠になるんです。
 誰かが呼んでくれる名前があるということは、それだけで、確たるよりどころになるんですよ」

 リューイの「何をしようとしているか」という問いには、少し考えたあと、つい、と視線を外して、ノーイに向かう。


リューイ

アルファン<

 首を傾げ彼女の話を聞いていたが、「存在が変質した」と言う言葉に軽く目を開く。
「・・・魔力というのは不思議なものなんだね。
 じゃあ、今のアルファンを始めて見た人には、あなたがきちんと見えるんですか?」
 不思議そうに思っているのがわかる口調で、そんな風に言った。
 アルファンにつられるようにノーイを見、その後またアルファンを見る。
「よりどころ・・・って、僕は別に、何も・・・」
 きょとん、としたような顔で彼女を見た。

ノーイ<

「−ああ、そうか。
 そうだね、何を覚えるにしても、最初は落ち着いた環境で基礎を覚えたほうがいいもの。」
 軽く頷いて、そんな台詞を言った。
 困ったような顔に気付き、励ますように微笑む。
「大丈夫だよ。アルファンの知り合いの人なら、きっと良い先生だろうし。
 僕もアルファンも、きみを置いて何処かに行ったりはしないから。」
 そう言った後で、もう一度軽く首を傾げた。
 何かを考えるように腕を組み、軽く目を伏せる。

ALL<

 顔をあげると、ふたりを順に見つめながら尋ねた。
「具体的に、その修行期間はどのくらいの予定なの?
 その間、アルファンは何をするつもりですか?」



ノーイ

 困った風にしている。
 確かに、リューイが考えたとおり、事前にノーイとアルファンとで、何かしらの話を交わしていたのだろう。

リューイ<

「母さんが、せめて見習いと呼ばれるようになるまでは、しっかりと腰を据えていないと勉強なんてできない、というんです。
 だから、悩んだのだけれど。
 しばらく、母さんの友達という人に師事して、基礎を仕込んでもらおうと思います。
 その間――わたしは、この町に留まらなければいけなくなると思う」



アルファン

リューイ<

 くすりと微笑む。
「魔女ではありますよ。もちろん。
 何というのでしょう。そうですね、魔女としての力の量が、少なくなってしまったというのでしょうね。
 ただ、それだけではなくて……以前通りの『黒衣の魔女』ではなくなったのです。
 力を落としただけではなくて、存在として変質しました。
 『私』は『私』ですけれども、『この町の人々や、ノーム森林の近隣の住民たちが知っていた魔女』はいなくなったのです。複数存在する、私の面の内、一つがなくなったのですね。
 今までの私を見たことがあったり、昔の私の魔法の影響を強く受けていた人たちは、今の私を認識できないのです。少なくとも、私が改めて認識させようとしない限りは。
 彼は……」
 と、ギルド員を示す。
「ちょっとした理由で、以前に、あったことがありましたから。だから、私は今、あなたと話していますけれど、彼から見たら、あなたがぼんやりとしている風になっているのでしょうね」

ノーイ<

 素養があるという言に、娘を見やる。
 それから、面白そうにリューイに向かった。

リューイ<

「私の娘ですから、当然ですよ。
 この子が自立した精神を持っていなかったらとても無理ですけれど、リューイがよりどころを与えてくれましたからね」


リューイ

アルファン<

 今までのように魔法は使えないけど、という件に軽く目を瞬かせる。
「僕には、あなたは最初の印象とかわらず、『高貴な魔女』に見えるけど・・・」
 言いながら、ギルド員に軽く手を振ったりしているアルファンを見て、不思議そうに尋ねた。
「・・・今も魔法を使っているんですか?
 彼には、アルファンが見えていないように思える。」
 いくらか声を潜めて、そう言った。

ノーイ<

「魔術の勉強?」
 改まったノーイの視線を、軽く首をかしげながらもまっすぐに受ける。
「そういえば、ここのギルドの人にも『魔術師じゃないのか』と言われていたっけ。
 アルファンから『素質がある』といわれるなんてすごいね。」
 そう言って、柔らかな笑みを含んだ瞳でノーイを見た。
「やってみればいいじゃないか。
 きみが魔法を使うところを、僕も見てみたいもの。」
 にこりと、明るい笑みを浮かべる。

「その、魔術の勉強というのは、具体的にどうするの?
 誰かに師事するとか・・・魔術師ギルドのようなところで教えてもらえるのかな。」
 ふたりで計画でも立てたのだろうかと、ノーイとアルファンに視線を送る。


ノーイ

 迷うように視線を泳がせる。

リューイ<

「ちょっと――リューイを追いかけたがっていただけ。
 我がままなんて言ってませんよ」
 目をそらし、恥ずかしがるような表情をしている。

 それから、リューイとアルファンの視線を受けて、息をつく。
 リューイに改まった視線を向け、

「魔術を勉強したいんです、リューイ」
 といった。

「母さんが言うには、わたしには十分な素質があるし、無意識のうちに魔術の使い方も分かっているはずなんだって。
 一定期間、集中して、魔術の勉強に励めば、何とか見習い魔術師を名乗れるようにはなる、みたい、なんです」


アルファン

ギルド員<

 かれが全く、自分がそこに存在しないという態度でいるのを、面白そうな目で見ている。
 軽く手を振ってみて、やはり反応がないので、満足した様子で頷いた。

リューイ<

 気にしなくていいのですけど。
 呟いてから、首を傾げ、それから微笑んだ。
「では、預かっていてください。
 けれど、リューイが必要になったときにはいつでもそこから使ってくださいね。いいですか?」
 魔力に付いての問いに、
「妖精族だったらそう言うこともあり得ますけれど。かれらは、身体そのもの働きの重要な一部分に、魔力の活動がありますから。
 私の場合は、今まで杖を突いて歩いていた人が、突然、杖をなくしてしまったような感じでしょうか。別に、それで倒れるとか、めまいが起きるとかはありませんから、大丈夫ですよ。
 元から杖がなくても歩けていたのに、怠けていたものだから。なまっていると表現した方が近いでしょう。
 ――今までのようには魔法は使えませんけれど、それはそれで大した問題ではありませんし」
 そう言ってから、また、ちらりとノーイを見る。


ギルド員

リューイ<

 一瞬、きょとんしてしてから、ぱっと笑顔になる。
「そりゃ一番の幸いだよ。良かったな」
 リューイの謝意に手を振って、
「リストをさらっただけだから、大した手間じゃなかったしね。
 冒険者の援助を行うのがギルドなんだ、気にすることはないって」
 とかいいながら、そそくさと資料をしまい込む。


リューイ

ギルド員<

 にやにやとした笑いに何か反論しようと口を開けるが、結局どう言い返したものかわからない。
 困ったように視線をそらし、咳払いをしただけに終わった。
 しかし、続けられた言葉に顔をあげ、相手に向き直る。
「−ありがとうございます。お忙しかったでしょうに、そんなに調べていただいて。
 ・・・あの、実は・・・彼女の記憶、なんですが。少し戻ったんです。
 身内がいることがわかったので・・・会いにいってみようと思っています。」
 そう言って、謝意を表すために頭を下げた。

 彼の視線がアルファンを捉えていないことに気付き、軽く目を見張る。
 困惑したような視線をアルファンへ向けた。

アーキス<

 リューイ、と、名前で呼ばれたことに表情をほころばせた。
「・・・はい。僕も、次に会うときにはもっと腕をあげたいと思います。」
 元気で、と付け足して、去っていく後姿を見送った。

ノーイ<

「何もしていないなんてことない。
 あの森に魔法がかかっているというのを、最初に気付いたのはノーイだろう?
 だから、それは君の取り分だよ。」
 当然のようにそう言って、微笑を返す。
 アーキスに舌をだしているのを見て、面白そうに目を見張った。
「・・・アーキスさんに、わがままを言っていた?」
 いくらか笑いを含んだ声で、問いかける。

アルファン<

 返された銀貨に、僅かに困ったようにアルファンを見返す。
「・・・僕が受けたのは、『ノーム森林の魔物の沈静化』という依頼です。
 あの森が元通りになったのは、アルファンの力だと思うのだけど・・・」
 悩むように手の中の銀貨と、彼女とを見やって―しばらく考えた後にこう言った。
「−じゃあ、こうしよう。この銀貨は僕が預かることにします。
 あなたに必要になるまで、ちゃんと、責任を持って預かるから・・・」
 それでいいかな、と、表情を伺うようにアルファンの顔を見て、首をかしげた。

 ちゃんとした魔法を使うには、苦労するだろう、という言葉に、僅かに眉を寄せる。
「・・・大丈夫、ですか?魔法のことはよくわからないけど・・・魔力が少ないと体調が崩れるとか、病気などへの抵抗力が落ちるとか・・・?」
 心配そうにそう言いかけるが、アルファンの視線に気付き。
「・・・?」
 戸惑ったように、瞬いた。


アルファン

「…………」
 きょとんとした顔を作り、無言で手を伸ばす。
 ちゃりん、ちゃりん、と、リューイの差し出したお金から半分を取り出し、ノーイの手の中に落とす。
 それから、自分は何も取らないで、リューイの掌を両手で包み込んで握らせると、そのまま彼の元へ返した。
 結局、リューイの手元には1300Rdが残ったことになる。
 そうしてから、リューイを見て、微笑んだ。

リューイ<

「私を大人しくさせる依頼だったのに、その依頼の報酬を、私が受け取るわけにはいきませんもの」
 そんなことをいってから、リューイの質問に首を傾げる。
「少し、寂しい感じがします。
 娘たちが出て行ってしまっているからというのとは違っていて、たぶん、私の魔力がほとんど流れ出てしまっているからでしょうね。
 これまでの知識はありますけれど、ちゃんとした魔法を使う分には、苦労するでしょう」
 他人事のようにいって、ノーイの視線に気が付き、その視線をそのまま転送するように、ちらり、とリューイの目を見た。


ノーイ

「何もしていないですよ、わたしは」
 にこりとしながらいう。

リューイ<

「でも、受け取っていて良い?
 少し、考えていることがあって、そのためには、ちょっと、お金も必要になるのだと思うから」

 そこで、アーキスが妙なことをいって立ち去っていくので、それを睨み付けると、べっと、舌を出した。

 向き直ると、
「わたしの身体は大丈夫です。
 結局、母様の魔法が流れてきていたのが原因だったようだから。今では、体力が余ってしまってるみたい」
 ちらりとアルファンを見やる。


アーキス

リューイ<

「守るというほど、たいしたことはしていないですよ。
 強いていえば、まあ、彼女自身からは守れましたかね」
 くすくすと笑い出す。
「本当に、誠実な方ですね、剣士殿。
 その様子では心配してしまいますよ。世の中にはいい人ばかりではないんです」
 ちらとアルファンを見て、
「もっとも、今の仲間が一緒にいる限りは、簡単には悪人に騙されることはないでしょうけど」

 ふと、考え込む。
 そして、受け取ったお金から銀貨一枚(100Rd)をリューイに、軽く投げ返した。

「僕の働きからいったら、リューイが評価してくれていてもこのくらいでしょう。
 報酬は正当な分だけ、多からず、少なからずで受け取るのが、魔術師の流儀です」
 剣士殿、とはいわなかった。
「きっとまた会いますよ。
 一度重なった道が、二度と重ならないということはそんなにはないはずです。冒険者なんていう職業なら、尚のこと。
 そのときには、もっと優れた技を見せられるといいんですが」
 手を握ると、優雅に一礼する。

ノーイ<

「あまり我が儘をいわれないように。
 リューイは僕よりも我慢ができる人でしょうけどね」
 意味ありげな視線をリューイにやると、ばいばい、と手を振って出口に向かう。
 アルファンの横を抜けていく途中で立ち止まり、彼女に対して最上級の敬意を払う仕草をし、そして、出て行った。


ギルド員

リューイ<

「なんだ、なんだ、頼もしいじゃないか。
 この前よりも、男らしい目つきだよ」
 最初にリューイの姿を見たときとは少し違った雰囲気に、にやにやと笑ってみせる。
 このギルド員の性格は軽い。
「女性と一緒だと、男の子ってのは強くなろうとするもんだしな、よし、そのときは知らせるよ。まあ、基本的にはこっちの仕事だ、知らせがなくても、仲間はずれにしたとかは思わないでくれよ」
 それから、思い出したように手を打った。
「そういえば。そのお嬢さんのことを調べるっていう約束だったろ。
 ちゃんと調べたんだ。名簿から、同じくらいの年頃の、同じ髪と目の色で登録されている冒険者の名前と、最近の所在地を抜き出してあるんだ。該当者はまあ、このギルドでは三十名ってところだ。
 魔術師だったら、どんな見習いでも、魔術師ギルドには登録されているはずだから、そのあたりからも調査しようと思ってるんだけどな。ちょっと時間が足りなかった、悪いな」

 ところで、リューイは気が付いたかも知れない。
 このギルド員も、他の誰も、アルファンに目を向けることがない。視線をやったとしても、彼女を見ようとしたのではなく、その後ろや近くにある別のものを目に捉えようとしているだけなのだ。


リューイ

ギルド員<

 飛んできた皮袋を驚いたように受け止め、その後、僅かに笑みのようなものを見せた。
「ありがとうございます。
 ・・・もし、難癖をつけてくる人がいたら僕にも教えてください。」
 そこで一度言葉を区切ると、物静かな顔に、それまでとは少し違った微笑を浮かべる。
「僕も、その時には―対抗していきたいと思っているので。」


「何かとても長い間、一緒にいたような気がするけれど・・・これでやっと依頼達成という感じだね。
 皆のおかげで最後までやり遂げられたと思う。あらためて、お礼を言わせてください。」
 生真面目な仕草で頭を下げる。
 顔を上げ、あらためて全員の顔を見渡すと、ほんの少し照れたように微笑んだ。

 皮袋の中身を確認すると、4等分しそれぞれに手渡す。

アーキス<

「お世話になりました。
 ノーイを守ってくださって・・・ありがとう。また、どこかでお会いしたいですね。」
 真摯な表情でそう言うと、握手を求めて手を差し出した。

アルファン・ノーイ<

「二人とも、お疲れ様。・・・体は大丈夫?」
 どこか似た雰囲気を持つふたりの女性を見て、軽く首を傾げるようにして問いかけた。


ギルド員

リューイ<

「やあ」
 答えると手を挙げ、カウンターの中から革袋を取り出し、リューイに向かって放る。
 そして、にっと笑った。
「もう、あの町に滞在していたギルドの派遣員から連絡を受けてるよ。ノーム森林の魔物は静かになったそうじゃないか。
 国からの指示とは多少違うけど、大丈夫だろ。
 これで何か難癖を付けてくるようだったら……そっちの方がおかしいってもんだ。そのときは、ミノッツのギルド全体で対抗してやるさ。
 お疲れ様」

 革袋の中には2000Rdが入っている。

「みんなで分けてくれよ」

 - 長期シナリオ達成! -

リューイ:
 SP7.0(+騎士道のSP差分により、SP2.0)
 BP7.0
 PP3.5 



リューイ

 わずかに緊張した表情で、ギルドの扉を開く。
 周りを見渡し、見知ったギルド員の顔を見つけると、その表情が緩んだ。
 足早に受付に近づくと、彼の前に立つ。

ギルド員<

「こんにちは。ノーム森林での依頼を受けたものですが・・・」


GM

 リューイたちはギルドに戻ってきた。
 現在、受付にいるのは、このギルドの看板娘として知られるリア受付嬢ではなく、リューイたちに依頼をまわしてきた、あの軽薄そうなギルド員だった。

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