PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

大魔術師王国イ=サード
ロトッカ地方の大国、自然を重んじる緑の国。
若王セイフレイが統治する。彼は緑色の賢王と呼ばれており、
その名に恥じない素晴らしい政を行っている。

:大魔術師王国 南の木立:
 大魔術師王国の王都の南側。小広い丘があり、木立がある。
 木立の中には小さな泉があって、動物たちが良く訪れる。

投稿(件名…大魔術師王国 南の木立)
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GM

 三人は、竜追い達の唄に戻っていった。


リゼル

「はい!」
竜追いギルドに移動する。


ノト

リゼル&アルバ<

「そうですね、戻りましょうか」

 そう答えて、弓から弦をはずす。
 二人について町に戻ろう。


アルバ

リゼル&ノト<

 リゼルの挙動から、そろそろ良い時間だということに気が付く。
「今日はこのくらいで戻るとしようか」


リゼル

ノト<

「うん、わかった。ありがとう。」
 アルバには、コクンとうなづく。
 再び、アルバレストを振り上げると射撃の動作を繰り返す。
「練習に次ぐ練習ですね。」

 さて、そろそろ戻ろうかな?テスさんたちも待っているだろうし・・・


アルバ

ノト<

 お言葉に甘えて、ノトの弓を取る。
「古樹の枝、なるほど。確かに相当な樹齢を刻んだ雰囲気がある」
 試しに何度か弦を引いてみる。
「これは――」
 何とか手元をぶれさせずに弓を引くことができるが、やはり強弓だ。それでいながら、弓は軋みもしない。柔軟な素材なのだろう。
「いい弓だ。
 大切にすると良い」
 礼をいいながら弓を返す。


ノト

アルバ<

「この弓の材料は…確か“古樹の枝”って呼ばれてました。よくは分からないんですけど、魔法とは関係ないみたいです。
 “黄金の大樹”の枝だったら魔力も持っていそうなんですけどね。残念ながら、そこまで特別ではないようで」

 アルバの興味津々な表情に、なぜだか少しうれしくなった。

「よかったら手に取ってみてください」

アルバ

リゼル<

「それはよかった」
 にっ、と笑う。
「反復かな。ノトのいうように、落ち着くことが重要だ。
 特に実戦で意外と厄介なのが、手が震えることかな。
 槍だとかはわたしも使うが、弓よりも繊細じゃあない。多少手が震えようが気にせず振り回せば済むことが多いが、弓矢の場合は手の震えがそのまま命中精度の劣化に繋がる。
 震えなくするには、自然に撃てるようになるまでひたすら動作を繰り返すことだな」

ノト<

 興味深げにノトの弓を見る。
「ふむ、ふむ」
 好奇心がうずき、他人の得物に思わず手を出す無礼をしそうになる。
「大森林でしか採れない材料か。森人の使う弓の逸話は神秘的なものばかりだが、そういった魔法に関わる弓なのかな?」


ノト

リゼル<

 アルバのアドバイスにうんうんとうなずきながら、言葉を続ける。

「ゆっくりでもいいから、落ち着いて狙うことですよ。
 実戦では接近してくるまでに1発撃てればいいんです。
 あとは構えるだけで、威嚇にもなりますしね。」

 言いながら自分の長弓をかかげて見せる。
 正確には2m50pに達し、一般的な長弓よりもひと回り以上大きい。
 弓を引絞って見せるだけで野盗の類を追い払ったこともある。

アルバ<

「さすが、お見事です。
 言うだけあって、いい弓ですね。丈夫そうだし、狙いやすそうだ。」

 言いながらアルバの横に立ち、弓を並べてみぜる。

「僕は体が大きいんで、自然と使う弓も大きいものになりました。
 これは故郷を出る時に、選別に作ってもらったんです。
 材料もちょっと特別なんですよ。大森林でしか取れないらしくて」


リゼル

ノト<

「そんなぁ・・、やっぱり、まぐれですよ。」苦笑する。

 アルバの発射の動作を見て、感心する。
 ノトの動作と同じで、全ての動作が滑らかだなあ。
 あたしの場合は、照準の段階で動作がぎこちなくなってしまう。

 矢を装着しない状態で、もう一度アルバレストを振り上げ、発射までの動作を繰り返して見る。

「ふむ・・、この一連の動作が淀みなく行えるようになれば良いのかな。」

 上達のための手かがりが掴めたように感じて、嬉しくなる。

アルバ<

「ありがとうございます。何か、どのように訓練すれば良いのか、その方向性が見えたような気がします。」

 にっこりと笑って、御礼をいった。


アルバ

ノト<

「全くだ」

 うなずいて、リゼルを見る。

リゼル<

「クロスボウを持つ腕を、石の台座のように意識するんだ。微動だにせず、発射の振動をすべて吸収できるように。
 発射の際に照準をずらしてしまうと、当然、矢も見当違いのほうに飛んでいく。
 まずは練習を積み重ねて、弓と自分が一体化する感覚を持てるようにすることから始めたほうがいいかもしれないな」

ノト<

「綺麗なアーチだ。見た目もそうだが、なかなかの強弓を使うんだな。
 わたしの場合はどちらかというと、弓自体の強度が欲しい。貧乏性なんだ」
 笑うと、弓に矢を番える。

リゼル<

「機械弓と弓とは根本から違うが、根本は一緒だ。
 『よく狙って撃つこと』」

 言うと、いかにも気軽に、ひょいと矢を放つ。

 矢は滑らかに飛んで、二人が狙った木の真ん中の木に命中する。

「うーむ。まあまあ。70点といったところか」
 矢は、アルバが狙った、特徴的な木の節から、少しばかりずれたところに刺さっている。


ノト

リゼル<
 
「上手いじゃないですか、リゼルさん」
 
 ニコニコしながら声をかける。
 
「充分実戦でも使えますよ、それなら」
 
アルバ<
 
「ね、アルバさん」



リゼル

 あれっ、当たった!
 まぐれかな。

 うーん、やっぱり、最後の照準合わせだけど、当たるか当たらないか、良く分からないや。
 何か、ちょっとした体のブレでも、数十メートル先では大きな的からの外れになってしまいそうだ。
 戦闘で緊急な時に、そのような微妙なオペレーションが自分には出来るだろうか?
 自信がないなぁ・・・。

 次に、アルバがどうするか、待っている。


アルバ

ノト&リゼル<

「お見事!」


リゼル

 右手で持ったアルバレストを真上に振り上げると、目的とする木に向かってゆっくりと降ろしていく。ターゲットの木と照準器がぴったり合うように片目をつぶって方向の微調整を行う。狙いが定まったのち、静かにトリガーを引いてみた。

 命中判定:分類/グリフィン・ヘッド(アルバレスト)・遠距離
  リゼル:通常の成功!


 がちゃりと音を立てて機構が作動し、弦が弾ける。
 しっかりとした手応え、同時に太矢が飛び出す。
 矢は見事なアーチを描いて、的に突き刺さる。



GM

 続いて、リゼルも射撃する。


ノト

リゼル&アルバ<

「じゃあ、僕から。あの右側手前の木を狙いますね。」

 足元を確かめ、一呼吸し、2mを超える長弓をまっすぐに構える。
 腰に下げた矢筒から矢を取り出し、つがえ、引いて、撃った。
かなりの力が要ったはずだが、その一連の動作は流れるようで、速い。

 命中判定:分類/ロングボウ・中距離
  ノト:完全な成功!


 弓と矢、それから目標の木までの軌跡までが自分の身体の一部のように感じられる。
 射撃が最も上手くいくときの感覚だ。


「よっし!」
 脳裏に浮かんだ軌跡を正確に追跡し、矢が綺麗な放物線を描いて目標の木に突き立つ。


アルバ

 二人の様子を見守っている。



リゼル

 ノトの長弓やアルバの合成弓を珍しそうに見ている。まあ、どのように使うかよりも、どのように製作するかの方に興味があるのだけれど・・・

「おっと、自分も射撃の準備をしなくっちゃ!」

 一人呟くと、アルバレストに動物の筋から作ったと言う弦を装着する。そして、鐙に足を掛けると両手で弦を思いっきり引っ張ってトリガーの所まで引き上げた。そこに太矢をセットした所で、ノトがどうするか様子を見た。
 えーと・・、私が最初にやっていいのかな?それともノトのあと?ノトとのタイミングを見て、自分も打つことにする。



アルバ

ノト<

「うん、わたしのかい?」
 ノトと並んで弓を準備する。
 結構な力を込めて弓をたわめて弦をつけている。
「わたしのは、ユウを主材にして、動物の骨などで補強してある」
 こういった、複数の材料からなる弓を合成弓という。
 張りが強い分、扱いづらいが射程が長く、威力も格段に向上する。
「特に、弦に気を遣ってるよ。
 オウロは多湿でね」

リゼル&ノト<

「よし、それじゃあ、木立の前で、中射程の射撃を訓練するとしよう」
 適当な場所まで移動すると、二人に言う。
「まずは、適当な木を選んで撃ってみてもらえるかな」


ノト

アルバ<

「そうですね、あの木立で狙いをつける練習、の方が良さそうですね。」

 アルバが見ていた木立の方向を指さしながらリゼルにも振り返って確認をする。
 そして木立ちに向かって歩きながら、弓から外してあった弦を取り付け始める。
 手慣れたものだ。

「ところで、アルバさんの弓ってどんなですか?」


アルバ

リゼル<

「そうだな、あそこの木立でやるか、それとも見晴らしの良い場所で遠射でもしてみるか……」

ノト<

「どちらがいいかな?」
 ノトの手にした長弓を興味深そうに見ながら訊ねる。


リゼル

 太陽の日差しを体いっぱいに浴びて深呼吸する。

「うーん、気持ち良いな。」

アルバ<

「どこら辺で始めましょうか?」

 適当な場所がないかどうか、アルバレストを構えて場所探しをする。


GM

 リゼルやノト、アルバは町の南側にやってきた。
 太陽がやや西側にあり、暖かな陽射しを大地に注いでいる。
 東から来る風が、すがすがしい空気を運んできていた。


GM

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *1 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP1.3/3.0 1/3到達!
    : 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-18 気配感知 SP0.4/3.0


 泉は、木のウロ亭へ移動しました。



 静かに木から下りると、木のウロ亭へ戻る。当然、あとにどのような痕跡も残さないように隠蔽と感知の訓練を続けながら。


GM

 まだ低い位置にあった太陽が、徐々に徐々に、高度を上げていく。頼りなかった光が強く、暖かくなっていく。
 あたりの草木には朝露が付いて、穏やかに輝いている。
 鳥たちも目覚めて歌いざわめき、リスや兎などの小動物の姿も見られるようになってきた。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *1 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP1.2/3.0 1/3到達!
    : 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-18 気配感知 SP0.3/3.0




 朝か、そういえば少しお腹がへってきた。いったん、木のウロ亭に戻って食事をしようか。いや、やはり午前中いっぱいは此処で隠蔽と感知の集中の訓練をしよう。今いる木の上で楽な姿勢を取りながら時が過ぎるのを待つ。


GM

 どうやら、朝日が昇っている。いつの間にか、夜が明けていたらしい。
 周囲に何か変化があったかどうか、泉は感覚を働かせる。
 ――特に異変は起きてはいないようだ。
 今は明け方よりほんの少し時間がたった程度だろう。
 野の動物たちも、行動を開始する頃かも知れない。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *1 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 失敗!
   > SP0.0 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP1.1/3.0 1/3到達!
    : 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-18 気配感知 SP0.2/3.0




 ゆっくりと覚醒していく意識の中でイズミは必死に何かを求めようとする。それは失われたジョードヌの記憶の断片なのか、それとも今獲得しようとしている気配隠蔽と感知の技なのか。あるのは漠然とした焦燥感だけだ。

 少し意識がはっきりしてきた。さて、現在の技学習のペースだと習得するまでにどれほどの時間を必要とするのだろうか?限りある時間を有効に使わなければ いけない。やはり自習では限界があるのだ。誰か既に気配隠蔽と感知の技を持っている人、例えばベテランの狩人にでも教えてもらうのが近道なのだろう。しか し、そんなに都合の良いことがおいそれと起きるわけがない。

 そこまで考えた時に完全に意識が覚醒して周囲を認識し始める。そうだ、自分は今、泉の側の木の上にいる。気配隠蔽と感知のための集中を開始し泉の辺りに異変が起きていないかどうか観察し始める。


GM

 水音を探し、水の匂いを感じようとしながら進んでいた泉は、知らず知らずの内に、木立の中心に入っていった。
 結局のところ、それを発見するのは難しくはなかった。
 月明かりに、深い青い色をした水がたたえられている。脇に、ごつごつとした岩が盛り上がっており、そのてっぺんのあたりから、微かな音を立てながら水が沸きだし、流れている。
 泉は、その水の淵に立って、周囲に生き物の気配がないかを探った。

 技能判定:分類/気配感知
  泉:技能なし -20%
   > 手応えに自信なし


 周囲の気配を探った泉だったが、実際に生物がいないのか、彼女の技がまだ足りないのか分からないが、何かを感じ取ることは出来なかった。
 仕方なく、泉は水辺にかがみ込むと水を一口だけ飲み、付近の木に登って夜を明かすことにする。
 そのままの状態で、水辺の様子を探りながら、気配を覆い隠す訓練を続ける。
 夜中には、あまり、水を飲む必要に駆られる動物がいないということだろうか。何かを見付けることはなかった。
 泉は、しばらくした後、眠りにつく。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *1 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP1.1/3.0 1/3到達!
    : 失敗!
   > SP0.0 獲得
   > E-18 気配感知 SP0.1/3.0




 辺りには何も生き物の兆候は無さそうだ。ちょっとがっかりする。するすると木から下りると夜の散策を継続する。
 そうだ、確かこの林には泉があると聞いた。夜の泉を探そう。泉の気配を求めて水音に耳を澄ませたり、水源の匂いを探したりしながら夜の木立を徘徊する。当然、意識して集中作業は継続する。


GM

 泉は慎重に、眼下の様子を探る。
 ……特には、目立った異常は見付けられない。
 今のところ、周囲にも別の生き物は見あたらなかった。



 少し遊び疲れた。小さな動物にこれ以上かかわると迷惑で可哀想かもしれない。
 オニゴッコをやめて再び気ままな夜の散策をつづけよう。
 夜の別の生き物に出会うように感知と隠蔽の集中を継続して行う。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *1 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP1.0/3.0 1/3到達!
    : 失敗!
   > E-18 気配感知 SP0.1/3.0


 しばらく歩いて、あたりで一番幹の太くて背の高い木を選ぶとよじ登り始める。
 危険でないぎりぎりの高さのところまで達すると幹に寄りかかって周囲を眺望した。
 周囲の木の梢が大分下の方になり、障害物なしであたり一面を見通すことができる。
 ここの夜景にはまるで濃密な生き物の生命力が秘められているようにイズミには感じられた。

 夜空と遠く影のような木立とが交わる遥かな境界線をぼんやりと見つめる。
 故郷のジョードヌもあのどこか彼方の西方にあるのだろうか。
 多くの知人友人をあちらに残したままだが再び彼らに会うことが出来るのだろうか。
 何時か必ずジョードヌにかえろう・・・。

 しばらく、ぼうーと遠くを見つめていたが、はっと我にかえり再び感知と隠蔽に集中すると、少しずつ視線を下へ、自分の足元の方に移動させながらあたりに不可思議な兆候がないかどうか観察した。


GM

 探索に成功して翼のある猫を見つけることが出来たため、泉はそれと遊び始める。
 翼のある猫と思えたものは、よくよく見てみると、猫のようではないようだった。どちらかといえば、リスに近いだろうか。
 それは、羽ばたくというよりは、空中を滑るように飛び、梢と梢の間を行き来している。

 泉は、ある時は闇の中からそれを探し、ある時は悟られないようにそれに近づく。
 気づかれたら再び離れて気配を消す。
 遊びの感覚でこのような動作を繰り返し時間がたつのを忘れた。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *3 気配感知・習得 *1 教授者なし
  泉: 成功! 成功! 成功!
   > SP0.3 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP0.9/3.0 1/4到達!
  泉: 成功!
   > SP0.1 獲得
   > E-18 気配感知 SP0.1/3.0




 獣化した高揚感で二回ほどとんぼ返りを打つ。そして、唐突に動きを止めた。
 このまま獣化していても精神力が減耗していくだけでどうやら訓練にはならないようだ。
 多少心残りではあるが獣の魂を封印して獣化をやめることにする。

 人の姿に戻り衣服を身に着けると再び集中の訓練を開始する。
 獣化した状態での肉体の静けさを思い出しながら、一方で感覚を研ぎ澄まして気配感知のための集中も行う。
 そうだ。先ほど見かけた翼のある猫を見つけよう。あの静かな生き物と遊べばかなりの訓練となるだろう。
 翼のある猫を見かけた梢のところまで引き返して気配感知と探索の試みを行う。

 技能判定:分類/捜索(追跡・動物知識・気配感知) > 翼のある猫
  泉:-20% 成功!



GM

 泉は、完全に肉体を猫へと獣化させた。
 身に付けていたものがするりと脱げ落ちる。
 活性化した獣の魂が、何か手の届かないものを渇望して、激しく脈動する。
 理性の防御がたわみ、働きながら同時に外れようとするきわどい快感が身体を包み込む。そして、獣の制御を行う泉の精神力は、知らない内にも磨り減っていく。
 果たして、この状態で訓練を行うのはどうだろうか。長時間、この状態でいることすら、身が危ういというのに。
 けれども、人間の殻に切り込みをいれ、裡に押し込めることのこの開放感は、余所では決して味わえないものだった。彼女は今、人間でありながら、同時に野生であるのだ。
 この姿ならば、訓練をしようとするまでもなく、気配を殺すことは簡単にできるだろう。猫は影の生き物であり、“雑音”を立てることはない。気配を見つけ 出すことまでは、専門ではないが。だが、今のこの肉体の静けさを良く覚えておくことが、気配を沈めるあの技の訓練にも、何かしらの結果を与えるかも知れな い……。



 静かではあるが生命力に満ちた夜の気配の中で、もう一つの魂が妙に波打つのを感じる。そういえば、久しく獣化していない。
 人前では恥ずかしいので余程のことがない限り獣化はしないが、今の状況ならば獣の魂を開放してやっても良いだろう。
 獣の鋭く研ぎ澄まされた感覚でもって、気配隠蔽や感知のための集中をしばらく続けてみるのも良いかもしれない。
 ゆっくりとだが制御された方式で獣の魂に力を与え開放していく。そして、夜の木立の中をまさしく獣となって疾走していく。世界中の全てを手に入れたような全能的な気分になり、心底リラックスして自由な雰囲気を楽しむ。もう何者も怖くない。


GM

周囲の生物<

 夜は多くの動物が眠りにつく時間だ。
 鳥は羽を休めているし、日常見かける、馴染みのある生き物は皆、ねぐらに入り込んでいる。
 今、目に映るのは、闇の影に隠れる、静かな生き物たちだ。
 こそりとも音を立てずに、枝葉の陰と陰を飛び回る、翼のある猫や、ぎょろりとした目で泉を見下ろしてくる猛禽たち。
 気配を探ろうとするまでもなく、あたりには、夜の生命力が溢れているようだった。

同時の訓練<

 泉は考える。
 気配を捉え、探る技と、自らの気配を絶ち、闇に沈み込む技、どちらも同時に鍛えるのは不可能ではないだろう。
 だが、片方に集中して鍛練を積むときと比較すれば、その効率は落ちるのは間違いない。



 一眠りして夜の闇の中で目を覚ます。
 覚醒する意識の中で周囲の状況をそれとなく確認する。
 虫の声、風と草の音・・・静かでおだやかな夜だ。

 イズミはこのような夜は好きな方だ。暗視の技能もあるので視界にもさほど苦労しない。
 夜の散策も悪くないだろう。

 今いる場所から離れて木の下に下りる。
 そこから、夜の木立の散策に出発する。

(忍び足は宣言するものですが、暗視は自動的に働く技能です)

 当然、気配隠蔽の訓練を続行するための集中も欠かさないが、イズミは新たな試みを行った。
 気配隠蔽のための集中と同時に気配感知の技能習得のための集中が両立するかどうか試して見ることだ。
 どうしてかと言うと、より効率的に気配隠蔽の訓練をするための対象として生き物が必要ではないかとイズミは考えたのだが、その生き物を探すためには気配感知の技能が役に立つだろうからだ。
 これらの二つの異なる集中が両立しない場合は、もちろん気配隠蔽の訓練を優先することにする。

 寝ぐらにしていた木を中心にして、おおざっぱに200mくらい範囲をゆっくりと探索することにする。
 木の陰から陰へ忍び足で身体を滑らせるように移動していく。
 何か生き物に出会えるだろうか?



GM

 夜は、特に何事も起きることはなく、ただ、更けていく。
 虫の声に、風と草の音。
 この異郷の大陸にあっても、夜の匂いは故郷とさして変わらない。
 幸い、空は澄み渡って晴れている。ただし、星は見えない。今宵は、夜の神の機嫌が優れないようだった。
 泉が眠ったまま、何をすることもなければ、このまま朝が来て、目覚めの時が来るのだろう。
 明日は、また良い天気だろう。


GM

 泉は、適当な木を幾つか発見する。

 そして、やがて一本の木に決めるとそれに登り、4mくらいの高さのところにある太い横枝に腰掛けると幹を背にして夜空を仰ぎ見る。
 周囲の夜の気配の中、自然と眠りに落ちていく。少し休んだら、また練習を再開しよう。そんなことを考えながら・・・。



 まだ、まだ、練習を続けていたいが少々疲れた。休むことにする。
 夜にざわめく虫の声を乱さないように、静かにすっと立ち上がると周囲を見回した。
 木に登ってその上で休みを取ろうと思う。丈夫で適切な形の枝ぶりの木を探す。


GM

 泉は、穏やかな呼吸を繰り返し、身体から発散される、大気の動きを阻害するあらゆるものを抑えていこうとする。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *2 教授者なし
  泉:±0% 成功! 失敗!
   > SP0.1 獲得


 気がつけば、もう日は暮れて、周囲はすっかりと夜に包まれていた。
 途端、今までは聞こえていていなかったらしい虫の声がさざめき、あたりに満ちていく。
 泉の集中力も、そろそろ限界のようだ。



「練気」の訓練をしながら次は呼気の制御にとりかかった。
 静かに鼻から吸ってゆっくり口からはく。この時にムダな力が体にはいってはいけない。
 通常、人の呼吸回数は一分当たり十回程度であるが、呼気の鍛錬では呼吸の間隔を少しずつ伸ばして行き最終的には一分間に3呼吸程度にする。達人になると一分間に1呼吸になるらしいが今はとりあえず3呼吸になることを目指して呼気を整えることにする。
 約一時間ほど、呼吸が自然のリズムと一体化して静かに推移するようになるまで鍛錬を続けた。



GM

 泉が行ったのは、大陸の、格闘術のある一派の教える、「練気」と呼ばれる技法に酷似していた。
 それと知ってか知らずか、彼女は隠行を続ける。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *2 教授者なし
  泉:-10% 成功! 成功!
   > SP0.2 獲得
   > E-17 気配隠蔽 SP0.6/3.0 1/5到達!




 気配を絶つ練習をしながら、イズミは昔子供の頃、ジョードヌで習った気の鍛錬の方法について思い出した。
 忍術を習う上で心と体についての基本的な教えだ。
 一般的には心と体は別々の異なるものとして認識されている。
 しかし実際のところは心と体は連続的につながったものであると教えられた。
 心と体には何か境界面があって、ここからこっちが心であっちが体であると言うふうに分かれているわけではない。
 心で感じたことは体の何処かに所作として表出する。
 逆に体に起きたことは心のありように影響を及ぼす。
 したがって、心と体を一体なものと制御することが肝要なのであって、そのための訓練法を色々と教わった。
 今、その内の一つを試してみることにする。

 座禅を組みながら臍下(セイカ)の一点を強く意識する。
 臍下の一点とは、臍からだいたい一寸ほど下の腹の部位を指す。
 臍下の一点を中心にして、先ず気を放出する。
 放出された気が身体を離れ、そこの木の梢を通り過ぎ、あの野原の向こうを越えて、地平線に近い所に浮かんでいる雲もさらに超えて天地の果まで到達するように意識する。
 次に気を急速に収束させていき一気に臍下の一点に小さく小さく集めるようにする。
 何回かこの気の拡大と収斂を繰り返してから、最後に収斂したままで気を鎮めた状態になった。

 この状態では収斂した気の一点を中心として、自分は天地の狭間に何にも頼ることなく、ぽっかりと浮かんでいるような心持となる。
 心をこのような状態にすることによって身体から出る気配を絶ち周囲の環境に溶け込むことが出来るはずだ。
 静かに時が過ぎていく中で、イズミは次に何かが起きるのを待つことにした。


GM

 あらゆる光を吸収してしまう闇の中で、泉は気配を沈めようとする。
 例えば、この闇と同一化を計るようにすれば良いのだろうか?
 試行錯誤しながら、泉は気配を隠蔽する技を、習得しようと努力していった。



 気配隠蔽の技を訓練するために、もう一工夫することにする。
 忍術の暗闇の術を使って自分の姿を闇の中に隠してしまうことにする。
 あとはより一層こころを静め気配絶ちを行うよう努める。

 発動判定:分類/忍術・暗闇の術
  泉:成功!


 泉の術は成功した。
 空間に墨汁を一滴垂らしたような闇が滲み、徐々に広がっていく。それは、揺らぎ、拡大と収縮を繰り返しながら、泉を包み込んだ。


 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *2 教授者なし 近似技能なし
  泉:-15% 失敗! 成功!
   > SP0.1 獲得



GM

 泉は、何となく、自分の発している気配を沈め、存在を周囲に溶かし込む感覚を得られたような気がした。
 だが、まだまだ、近くに野生動物が寄ってくるようなことはない。



 顔を上げて常緑樹の梢から漏れてくる柔らかな光を浴びてみる。
 そして、ゆっくりと何度か深呼吸を繰り返して、この場に満ちている生命力を全身に取り込もうと試みる。
 これから試みようとしている気配隠蔽の技の習得には最適な場所だ。
 ひとしきり辺りを見回して、ちょっと引っ込んだ目立たない木の根元を見つけると、そこに腰を下ろした。
 ジョードヌで昔覚えた座禅を組んで瞑想に入る。
 辺りの自然と一体化し、この木立の一部になるように努める。
 あとは動物たちがやってきても、気づかれずにいることができるように気配を断つ訓練をするだけだ。
 落ち着いた気持ちで時が過ぎるのを待つ。

 訓練判定:分類/気配隠蔽・習得 *2 教授者なし 近似技能なし
  泉:-20% 成功! 成功!
   > SP0.2 獲得




GM

 常緑樹が青々とした葉を茂らせ、その隙間から、柔らかな陽射しが漏れている。
 これは、広々とした草原の中に、ぽっかりと開いた深緑だ。
 この木立には、様々な小動物、鳥たちがやってくる。
 街道沿いからは外れているために、旅人がやってくることは少ないが、このような木立を守ることを使命としているエルフが、様子を見に来ることはある。