PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

“商人の国”ボン・ノドン
イ=サードの隣国にして経済大国。
国王自身が商売人としての経験が豊富で、豊富な外交技術を誇る。

:商人の国 錬金術師オウドノの工房:
 錬金術師であるオウドノ・シュバルターの工房は、商人の国の大会堂の近くにある。
 評議会員たちの家ばかりが並ぶ、人があまり通らない区画にある、大きな煙突が特徴的な建物。それがオウドノの工房だった。

投稿(件名…商人の国 オウドノの工房)
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GM

 ウェルブムは、オウドノの工房を出て、商人の国から目的地目指して出立した


オウドノ

ウェルブム<

「うむ、頼んだ」


ウェルブム

オウドノ<

「ありがとうございます」
 思いがけない贈り物をありがたく受け取り、瓶の一つを光にすかして覗いてみる。

 灰色の濁りが見える、透明な液体だ。
 油のような粘りもなく、さらさらとした水のように見える。


 “炎の水”という物質をウェルブムは知らなかった。夏草のような効果を持つのだろうか。

 まさしく、夏草そのものかそれに関係する物を使用しているのではないかと、ウェルブムにも推測がついた。だが、水そのもののようにも見えながら、逆に燃えるというのは不可思議だ。

 ともかく、これがあれば火口を手に入れる必要もなさそうだ。割れぬようそっと鞄にしまう。

「それではこれから向かいます。
 灰ノ草の他にもなにか見つけられたなら採取します」
 軽く頭を下げてあいさつし、オウドノの部屋を退出しようとする。


オウドノ

ウェルブム<

「容器などは何でも問題ない。もしおぬしが秘術の壺を持っているのであれば良いが、むろん望むべくもないからな。であれば、布袋に詰めようが箱に放り込もうが何も変わらないはずだ」
 秘術の壺というものが何かというのは、ウェルブムにはすぐに分かる。
 まさしくオウドノが先ほどまで覗き込んでいた、部屋の中に鎮座している巨大な壺だ。
 確かに、これを持ち歩けるならば材料の劣化はそこまで気にしなくて良いのだが……。

 それから、ウェルブムに詳しい場所を告げる。
 のんびり旅をしても、三日あれば充分辿り着ける場所だ。
「必要なことか……ふうむ。
 必要というわけではないが、“三音草”や“紅スズラン”は分かるか?
 秘術の材料となるが、幾つあっても問題ないからな。ちょうど道中にも生えているだろう。採取してきたら、それに応じた報酬を渡そう。
 それから、ふむ」
 何かを思い立ったらしく、部屋の隅にある大きなチェストを開くと、中から三本の瓶を持ってくる。
「“炎の水”だ。秘術によって爆発する薬も作れるが、これは爆発まではしない。ただ、激しい衝撃を与えれば燃え上がる。
 少量を着火剤に使っても構わんし、いざというときに投げつければ武器にもなろう。
 これは依頼人としてではなく、秘術の先達としてのわたしからの贈り物と思えば良い。わたしの技術に触れることは良い勉強になるだろうからな」


ウェルブム

オウドノ<

「わかりました。善処します。
 では、準備を整えてから出発しようと思います。
 灰ノ草を保存するための容器は特別なものが必要ですか?
 詳しい場所と、他に必要なことあれば教えてください」


オウドノ

ウェルブム<

「3株だな。それだけあれば今考えておることはすべて試せる。
 だが、まあ、1株しか取れんでも仕方あるまい。代価は支払おう。そうだの、あとは秘術の使徒への餞別をやろう。
 もしも5株以上取れればいうことはない、その場合は追加報酬をやってもよい。
 つまりどの場合でも、1株で銀貨1枚、合金貨5枚。
 5株以上の場合は1株で銀貨1枚、合金貨8枚。これではどうかな?」


GM

水の精霊<

 精霊によっては意思の疎通は取れないこともない。
 高い自我と知力がある精霊であれば人族と交流を持ち、ときには貴重な情報源ともなりうる。
 だが、アレインは大抵が極めて自我の希薄な精霊であり、突然変異的に自我を獲得したようなものを除けば、野生動物と同様の生態しか持たないはずだ。むしろだからこそ、火などで対策することで容易に対処できるのだろう。

北海沿岸<

 知識判定:分類/動物知識(地域:ロトッカ地方北部)
  ウェルブム:知識の守護者+20% 成功!


 北海沿岸に出没する危険な野生動物や魔物について、ウェルブムには知識があった。
 野生動物では、
  ・虎
  ・ジャッカル
 魔物と呼ばれるものであれば、
  ・ショートホーン
  ・クラッパー
  ・ポーンプラント
 これらが思い当たる。
 もっとも、いずれも「遭遇する可能性がないわけではない」といった程度ではあるが。


ウェルブム

オウドノ<

 あの帳面に名前を書かれるとそのうち材料と一緒に錬成されてしまいそうだな
、とオウドノが書き込む様を面白がって見ている。
 続くオウドノの言葉にうなずく。
 考えてみれば、オウドノほどの高齢であれば自分で材料をとりにいくのは難儀だろう。このくらい立派な居を構える学者が人を雇うのも当然のことか。
(実際に水の霊鳥と出会った人の話も聞きたかったんだけどな)
 南東というのが対魔物戦線が集めているというあれのことならば、腕に自信がある者なのだろう。
 ウェルブムとしては極力、精霊と戦わずに済むよう進めるしかなさそうだ。
 とはいえ、水の精霊を見ることが出来るかもしれないというのは楽しみでもある。
 彼らと意思の疎通は出来ないのだろうか。
 彼らの他にも北海沿岸の辺りで特に危険な動物や魔物はいなかっただろうか。
 記憶をたぐる。

 オウドノの話が一段落ついたところで尋ねる。
「灰ノ草はどのくらい採取すればいいのですか?
 最低限、どれくらいの量があれば実験に足りますか?」


オウドノ

ウェルブム<

「ふむ。ウェルブム、ウェルブムとな。うむ、覚えたぞ」
 といいながら、手元の帳面、夏草だとか爆発水だとか書かれているところに“ウェルブム”と書き加える。
「昨年、そのまた昨年もハンターを雇っておったのだ。
 といっても、あれだ。おぬしのような冒険者だったのだが、いうなればわたしはそやつの常連客でな。
 よくよく、北へ南へと材料を採集しに行ってもらったものだ。
 文明人でないにしてはなかなか見込みのある奴で、わたしが“紅スズラン”といえば他に何をいわずとも採りにいき、“ハルの羽”といえば七日もあればその鳥の羽をむしってきたものだった。
 惜しいことに南東で戦があるなどといって旅だってもう何ヶ月にもなるはずだ。
 で、そやつがいっていたが……なんだったか、火を焚けば火には寄ってこないし、いざとなったら精霊とはいっても剣で斬れぬことはないからどうとでもなる、だったか」


ウェルブム

オウドノ<

「ウェルブムといいます」
 なんというか、忙しない人なのだな、とオウドノの顔を眺めながらもう一度名乗る。
 オウドノの言からみるに、ボン・ノドンに錬金術を学ぶものは皆無らしい。齧ってみればなかなかに深い、面白い学問なのだが。
 たまたま立ち寄ったボン・ノドンの竜追いギルドで、アスタの消息が判ったり、多くはないだろう錬金術師の依頼を見つけたり。不思議な巡り合わせもあるものだと思った。

「水の霊鳥…。水の精霊アレインの名なら聞いたことがあります。
 精霊と灰ノ草を取り合うわけですか。
 出来ることなら、面と向かって争う様なことにはしたくない。
 昨年はどのように対処したのですか?」
 腕力が必要になるなら、自分の技量では心許ない。


オウドノ

ウェルブム<

 ウェルブムの台詞を聞いて、目を丸くする。
 ぽかんと口を開き、手を震えさせている。
「なんと……いるではないか」
 呟くと、天を仰いだ。
「もはや文明人に会うこともなく、秘術への思いを語るものもおらぬとおもっておった……おお。いるではないか!
 何とすばらしきことか! この国にも文明人がいたとは!」
 感激して頭を振ると同時に眼鏡がずり落ちる。
 紅潮した顔のまま眼鏡を直し、
「名を何といったか、秘術の徒よ。是非とも、覚えておきたいものだ」

 ウェルブムの質問に我を取り戻した。
「ああ、うむ。そのとおり。採取したならば我らが秘術の壺に保管する必要があるし、保管してもそう長くは保たんのだ。年間を通して、わたしはこの季節が待ち遠しい。試してみたいものはいくらでもあるからな。
 灰ノ草を見分けるのは簡単だ。全身が白い草を探せば良い。
 しかし、問題があってな。あの辺りの地面は一面が砂丘のように砂だらけの上、その砂がまた白いとくる。
 分かるか? 他の植物と見分けるのは簡単だが、灰ノ草の存在自体が探しにくい。
 それともう一つ問題があるのだ。
 灰ノ草は火の力を消す力を持つが、それと関係あるのか。偶然か。いや、偶然のわけもない。灰ノ草は水の霊鳥が好んでついばむのだ。
 水の霊鳥は知っておるか?」


ウェルブム

オウドノ<

 勧められた椅子に腰掛け、オウドノの説明に耳を傾ける。
「ほんの触りですが錬金術を学びました。基礎的なことは理解できます。
 灰ノ草を用いれば、火の材料の隠れた性質も使え微調整も行える、ということですね。とても興味深い。
 ギルドで、効果は採取してから1週間ほどしか持たない、とききました。
 灰ノ草を用いた錬成が出るのは育成される今の時期だけ、短時間に手順をそろえて採取しないと無駄になってしまう。やっかいですね」
 出来うることなら一日中でもいろいろ話を聞いていたいところだが。そういうわけにも行かない、と思うと実に残念だ。
「僕は灰ノ草を見たことがありません。簡単に見分けることは出来ますか?」


オウドノ

ウェルブム<

「ふむ、うむうむ」
 木札を受け取ると、中身もろくに確かめずに懐にしまう。
「灰ノ草とはな、良かろう。説明してやろう。
 とはいえ、秘術を学ぶでもないものが聞いても、大半のところはまったくもって意味をなさんだろうが……まあ良い、その椅子に座るが良い」
 オウドノは、着替えの塊や何やらが密集した、その下に埋もれていたテーブルと椅子を引っ張り出すと、ウェルブムに勧めつつ自分も腰をおろす。

 ウェルブムが説明されたところによると、灰ノ草とは次のようなものだった。

 灰ノ草は北海沿岸の中でも、境界都市オウロからボン・ノドンに掛けての特定の地域でのみ見られる、葉から草、根までが、青みがかった白色の草だ。
 薬師の間では解熱剤として知られている場合もあり、新鮮な葉をすり潰し、服用して使用する。
 錬金術においては、火の力を排除する力を持つ。
 この力を利用して材料から不要な『火』を排除することで、錬金術において別の反応を得る事ができる。

「反応とはな……いや、分かるわけもないが、材料の全くの素の部分、それもとりわけ純粋な魔力に近い物、これを“魔素”というが、魔素と魔素を共鳴させ、融合させることをいう。
 魔素は物体の根幹をなす物であり、魔素が変化することで物の形、性能すらも変化し、別の名を得るのだ。
 灰ノ草は中でも“火の魔素”と反応させることで、それを分解し中和してしまう。通常の材料にはない性能なのだ。
 なぜならば。分かるか? 我々秘儀の信徒がなす技の多くの場面において、魔素は混ざり合うだけで、減ることはない。
 だが、灰ノ草やその他、ほんの幾つかの材料は減らし、取り除く。これこそが、この灰ノ草の重要性を示している。
 ふむ、こんなところか。どうだ。分かったか?」


ウェルブム

オウドノ<

「はい、そうです。ウェルブムといいます。
 これをギルドから預かりました」
 床に散らばる様々な品を踏まないよう気をつけて、オウドノの近くまで進む。
 カバンからギルドで渡された木札を取り出し、オウドノに見せる。
 
 つづけて依頼を見つけた時から気になっていたことを尋ねた。
「灰ノ草とはどのような植物なのですか?」


ローブの男

「ん、むっ」
 ウェルブムの気遣いがあってか、帳面を取り落とすことも壺の中に落っこちることもなく、目をしばたたかせて驚きをあらわすだけで、振り返る。

ウェルブム<

「おお、冒険者か」
 大陸では珍しい眼鏡を直しながら、笑みを浮かべる。
 ウェルブムの容貌はまったく気にもとめた様子がない。
「話に聞いていると思うが、わたしがオウドノ。秘術の道を究めんとするものだ」
 オウドノは高齢の人間で、長い灰色のローブをまとっている。ローブにはあちらこちらに染料のあとや何かの汚れが着いていて、また全体的に形がくたびれている。

「えーと、ふーむ、何の依頼をしたんだったかな。
 猿の尾だったか、三音草……は足りてるな。ふぅむ。
 月の石は精製しておる最中だしな」
 手元の帳面をぱらぱらとめくり、手を打つ。
「そうだ、灰ノ草の収穫だったな。灰ノ草でよいな?」


ウェルブム

「失礼します」
 声をかけて室内を覗く。
 傍目には乱雑としか思えない室内だが、当の本人はどこに何があるのか把握しているのだろうなあ、たぶん、とぼんやり思う。
 
 散らばる巻物のタイトルや、転がる鉱物や植物に素早く目を走らす。
 初めての場所での癖のようなものだ。
 
 判断のつかぬものやらつくものやら。
 ここにある巻物をすべて読むことが出来れば相当の知識を得ることが出来るだろうな。
 それにぞんざいに置かれたあのガラス瓶や工具の数々。うらやましくもある。
 極めつけはあの大きな壷だ。さぞかし大量の材料を蓄えておけることだろう。

 寝そべる猫と作業中であろう主を驚かさないよう、もう一度静かに声をかける。
「失礼します。
 こちらはオウドノさんの工房ですか。
 竜追いギルドで依頼を請け負った者です。
 詳しいお話お聞かせいただけますか」


GM

 もくもくとした煙を上げる建物の中は、乱雑を極めている。
 広くもない一間の隅に、羊皮紙の巻物が散らばっており、その下に辛うじて寝台らしきものが顔を覗かせている。
 床の上には様々な工具、何本ものガラスの瓶(この世界では高級品だ)、鉱物や金属の塊、乾いてパサパサになった何かの植物などが散らばっており、それらの中で悠然と昼寝をしている灰色の猫の姿が一匹。
 壁の隅には煉瓦造りの暖炉と、それと一体化した調理場らしきものがある。そこにもフライパン、鍋、すり鉢などの物が転がっている。
 何より目立つのは部屋の中央に鎮座している、真っ黒い、煤まみれの大きな壺だ。

 この部屋の持ち主は今、その壺の前に立って、その中と手元の帳面と見比べながら何事がぶつぶつと呟いている。