PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

神聖王国ミノッツ
騎士王国シルヴァードと領土を面した国家。
国土を治めるのは国王であり教皇であるパルマ四世。

:神聖王国近郊 クェスト草原:
 神聖王国の南にはクェストという草原地帯があり、ホルンの森まで続いている。
 東に行けばカルネニア山脈――山脈の名はあるが、例えばサイーディア山脈やサーマヴァーロフ山脈に比べれば丘のようなものだが――が峰を連ね、その麓にはノーム森林があるはずだ。

投稿(件名…神聖王国近郊 クェスト草原)
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通:通路 出:出口 *:バルコニー ↑:登り階段




ダニエル

リューイ&アッガ<

「うむ、それがしも斯様に思う。
 然らば、参ろうかっ」
 気合いを入れて小声で叫ぶ(?)。


アッガ

リューイ<

「後ろから切られるのはごめんですからね。
 一、二の三でなだれ込むのがいいんじゃないですかね。
 何か厄介な相手でも、なにをさせる時間もやらなきゃ大丈夫でしょう」


リューイ

アッガ<

 何かいたか、という言葉に小さく頷く。
「・・・かすかに、だけど。気配がある。」
 目を眇めるようにして右手の扉を――正確にはその奥を――見る。

ダニエル&アッガ<

「・・・探索するのには、不安はできるだけ排除したほうがいいと思います。」
 なだれ込むか、というダニエルの言葉に頷く。
 相手は気付いているのだろうか?
 油断だけはしないでおこう、と胸中でつぶやくと剣の柄を握りなおす。


ダニエル

リューイ&アッガ<

「不埒者がいるか。しからば、開けてみて、なだれ込むのが良いかもしれん」


アッガ

 左のドアを開けようとするが、リューイが声を掛けるならば立ち止まる。

リューイ<

「……なんかいましたか?」
 小さな声で尋ねる。


リューイ

アッガ&ダニエル<

 左手側の扉を開けてみようか、という声に頷きかけて。
 何か、違和感のようなものを感じリューイは眉をひそめた。
「・・・待ってください。」
 ささやくような声、それでも僅かに低く鋭さを増した声で同行者に告げる。
「右手側に、何か・・・います。」
 視線を右の扉に固定し、剣の柄を確かめるように握る。
「――確認しますか?」


ダニエル

「なるほど、ううむ」
 何かが潜んでいるかも知れないときにはどうすればよいのだろうかと、探索になれない団長は困ったりしていた。

アッガ<

「然らば、左を開けてみる、か」


リューイ

アッガ&ダニエル<

 特になんの気配も感じない。
 すでに誰もいないのか、自分達に気付いて気配を消しているのか・・・。
(まだどちらとも言えないけれど)
 なんにでも対応できるようにしておこう、と心の中で呟く。
 扉が見え、ダニエルの声に頷き。
「・・・中に誰かいるんでしょうか?」
 こちらもささやきに近い声で呟く。
 意識を研ぎ澄ませて、気配を探る。

 敏捷判定:分類/気配感知
  リューイ:成功!


 リューイが探ったところでは、とくにどちらにも気配は感じられなかった。
 ……いや?
 右手側に何か、いる…か…?


アッガ

ダニエル<

「扉ですねえ」
 当たり前のことを言い返す。
「左を開けてみますか?」


GM

 一行はそこを探索するが、とりあえずは先に続く道も、潜む敵もいなかった。
 階段を下り、もとの通路に戻っていく。
 通路の先を覗くと、両向かいに扉が見える。
「ふむふむ、扉のようであるな」
 当たり前のことをダニエルが呟く。


リューイ

アッガ<

「わかりました。」
 背後はお任せください、と生真面目に呟き、後方に移動する。

 露台の上からは、先ほどまで自分たちがいた場所が見えた。
(こちらが見えるということは、相手からも見える・・・ということかな。)
 剣の柄に手をやりながら、気配を探る。
 何か感じたらすぐに動けるよう、体の力を適度に抜きながら。


アッガ

リューイ<

「ああ、なるほど」
 きょろきょろと周りを見る。
「入り口から入ってくる敵をここから射落とすんですね。
 防衛用の場所ですかね」


GM

 リューイたちは通路を左に折れ、館の中を進んでいく。
 通路は狭く、暗い。
「明かりを付けた方が良かろうな」
 ダニエルがいい、持ってきていたらしいランタンに火を付ける。
 通路の途中で、右手に上へと続く階段が見える。
 通路自体も、先へ続いており、右へ折れている。


ダニエル

アッガ&リューイ<

「是非もなし。
 警戒し、参ろうぞ」


アッガ

リューイ<

「そうですね。
 たぶん、左側の通路から塔に行くんじゃないかと」
 ちらちらと周囲を警戒しながら言う。
「他の探索もしたいところですが。
 ただ、それで発見していたはずの相手に後ろから襲われてもかっこわるいですからね。
 なので、おれは背後に敵を残すのは嫌ですね」


リューイ

 がらんとした室内に、するどい視線を走らせる。
 何か生き物の気配ー敵の気配はあるだろうか?
 部屋の様子を、耳と目で確認していく。
(上から狙われたら厄介だな・・・)
 何か片付けられでもしたような後に、思案気な色が目に浮かぶ。
「・・・何かが、いるんだ・・・」
 「何を」しているんだろう。こんなところで。

アッガ&ダニエル<

「人影が見えたのは上ですよね?
 ・・・上がりますか?」
 声を潜め、ささやくような声で問いかける。


アッガ

(おっと!)
 倒れかける扉を見て思わず声をあげそうになる。
 リューイが押さえるのを見て、ほっと息をつく。
 部屋の中も気になるが、みんなが見ている間は外を警戒しておくことにする。


GM

 一行は正面から入っていく。
 辺りは背の高い草が茫々と生えており、ふくらはぎまでを覆っている。
 魔物との戦いで破壊され放棄された割には、建物の形は多くがそのまま残っている。
 ……さて、よく見れば芝生のあちこちがへこみ、えぐれている。恐らく、アッガが見つけたあの巨人が付けた足跡だろう。

 正面の居館はだいぶ、元の形そのままだ。
 扉は破壊されかけ、穴も開いており、そういった部分から風雨が吹き込んで朽ちてはいるものの。
 辺りを夕闇が包み込んでいく。
 周囲は風が吹いているばかりで、生き物の気配はほとんど感じられない。

 ダニエルが押すと、扉は開くというよりもゆっくりと倒れていく。咄嗟にリューイがそれを支えた。
 小声でダニエルが謝意を表し、扉を開いて、改めて置き直す。

 中はがらんとしている。
 簡単な集会場にも使えるような小広い部屋で、吹き抜けとなった二階から胸壁付きの露台が伸びている。
 部屋からは人が一人二人、ようやく通れるほどの通路が延びている。
 敵の侵入を許した場合、ここで防ぎながら、二階から矢を射るような構造になっているのだろう。

 通路が左右に続いている。
 部屋の北側と南側には二階部分から入れるとおぼしきバルコニーがある。
 部屋全体、古びてはいるが朽ちてはいない。何か片づけでもしたような後が見える。


ダニエル

リューニ<

「しっかりと訓練されているものと見える。
 然らば、皆共に参ろう」


リューイ

ダニエル<

「オニキスは待つのに慣れているので、大丈夫です。
 イエロースターも、連れがいれば退屈しないで待ってくれますよ。」
 身軽な仕草で馬から降りると、同じように木につなぐ。
 オニキスの首を軽く叩くと、「言ってくるよ」と声をかけた。
「僕のアッガさんに賛成です。
状況があまりわからないから、皆で動いたほうがいいと思います。」

アッガ<

「大丈夫です。いつでもいけます。」
 にこりと、控えめながらもはっきりとした微笑を浮かべた。



アッガ

ダニエル<

「まあ、せっかくみんなでいるんです。みんなで行きましょうよ。
 二人のお手並みも見たいですしね」

リューイ<

「リューイはいかがです?
 準備もいいですか」


ダニエル

アッガ&リューイ<

「然らば、参ろうぞ。
 ……我らの愛馬は、ここに残しておくが良かろう」
 言うと、降りて馬を木につなぐ。
 リューイのオニキスをちらりと見て、
「それがしの馬は優れた戦士でもあるのだが、いまいち先走る癖があって、こうしてつながねばどこへ行くか分からぬ」
 と、なにやら恥ずかしげに白状した。

「塔は、この位置(A)と、兵舎のこの位置(C)から入ることができる。
 挟撃を避けるならば手分けした方が良いかも知れぬが、まとまらねば各個に撃破はされる恐れもある。
 行ってみねば分からぬと、とりあえず突撃する手段もある」


アッガ

ダニエル<

「賛成ですよ。
 もとよりおれは突入するくらいしかできませんしね」


リューイ

アッガ<

「生粋の戦士なんですね。」
 こちらもなんとなく感心したような顔でアッガを見上げる。
 その鍛えられた体躯を見て、羨ましそうにため息を付いた。
「・・・どんな大きな敵でも、アッガさんなら倒せそうだ。」
 そんなふうに呟いた後、気持ちを切りかえるよう小さく首を振った。

アッガ&ダニエル<

 ます塔の人影を追おう、という二人の意見に頷く。
「・・・そうですね。これ以上暗くなると、僕たちは足元も怪しくなります。
 今なら相手に気付かれないよう、塔に入れるかもしれない。」


ダニエル

アッガ<

「無事で何より」
 ねぎらいながら、アッガの胸を叩く。

アッガ&リューイ<

「こちらが少数なれば、括弧撃破するに如くはない。
 然らば、塔に突入するのが良かろう。
 暗くなれば、アッガ殿以外の戦士は視界が効かなくなるが故。朝まで待つことも有用ではあろうが、吉となるか凶となるか」


アッガ

リューイ<

 ふふんと口の端をあげる。牙が突き出す。
「おれたちにとっちゃ、戦いは遊びみたいなもんです。
 おれは狩りの氏族ですからね」
 なんとなく胸を張る。
「まず人影を追うのがいいかもしれませんね。
 巨人との戦いは大騒ぎになりそうだ」


リューイ

アッガ<

「おかえりなさい――ご苦労様でした。」
 力強く羽ばたく翼に目を細めたあと、いくらかほっとしたように声をかけた。
 地図を指しながら報告をするのに、自分もそれ覗き込みながら耳を傾ける。
「巨人と、もうひとり・・・。塔の中からだと、こちらの動きも把握されやすいですね。」
 拳を唇の下に押し付けるようにして、考え込む。
「大変ですね」というアッガの声に顔をあげ、彼の顔を見て僅かにぽかんとした表情をする。
 その後、小さく笑みのようなものを浮かべた。
「・・・でも、『とても楽しみだ』という顔ですね?
 僕は竜人の一緒に闘うのは初めてなので、そちらの方が楽しみです。」

ダニエル<

 視線をダニエルの方へ向ける。
「塔の中の人影が敵だったら、合流されると厄介ですね。
 ――分断されているうちに叩きたい。」
 空の様子を見た後、暗くなるのを待ったほうがいいのかなと呟く。


アッガ

リューイ&ダニエル<

「異常なし!」
 といいながら翼をたたんで地面に降り立つ。
「といいたいとこですがね、多少問題がありました」
 と、偵察をして分かったことを教える。
 ダニエルが描いた地図を指さしながら。
「このへんに巨人がいました。
 寝てたみたいですね。
 この塔の窓にも人影が。魔族かなんかですかね……塔の中にいるんだから巨人じゃなさそうです」

リューイ<

「巨人なんですが、身長が4メートル近くありましたよ。
 ありゃあ、相手をするのは大変ですね」
 言葉と裏腹にわくわくした様子でいう。


GM

 アッガは南の木々の間から空へ舞い上がり、砦の偵察へと向かった。
 夕暮れ時、真っ赤に染まった空に、アッガの黒い影が映っている。

 砦の周囲は、木の一本も見あたらない。
 リューイたちが砦に近づく際に、もしも敵が見張りを建てていたならば、幸運に恵まれない限りは見つかってしまうだろう。

 砦に近づくと、大体の構造が分かる。
 大方は、ダニエルが伝えていたとおりだ。
 倒壊した塔に、打ち壊された建物、ぼうぼうに生え茂った下草に瓦礫。人が快適に過ごすには、かなり手を入れなくてはならないだろう。

 視覚判定:分類/観察力・夕暮れ
  アッガ:成功!


 東南側から、東側、北東側へと飛行したアッガは、足元にその姿を見つける。
 木や瓦礫がうずたかく積まれた小山のような場所に横になっている、生き物の姿だ。
 遠くのために判然としないが、大体身長3.5mほどの巨人。

 幸運判定:分類/不幸な偶然
  アッガ:成功!


 幸い、巨人はうたた寝でもしているらしく、アッガの姿に気がつくことはない。

 アッガはそのまま予定どおり、北西へと周り、西、南西へと進む。
 その最中、中央西部にある大きな塔の、その最上階の窓に、人影があるのが見える。人影はすぐに塔の中に戻ってしまうため、正体は分からない。

 その他、特段の異常は見つけられない。
 アッガはリューイたちの元へ戻ってきた。


アッガ

 すぐに翼を広げて、空に羽ばたいていく。
「さて、砦の様子はどんなもんでしょうかねっと」
 右下の塔から、反時計回りにぐるりと一周するつもりだ。


ダニエル

 リューイの言葉に、ダニエルも頷く。
「しからば、アッガに偵察の任を任せると致そう。
 我らはここで待機するが、なにがしかの問題があればすぐに呼んでもらいたい。駿馬にて、駆けつけよう」


アッガ

リューイ<

「いやぁ、こっちも」
 こちらはこちらで苦笑いをする。
(卵姉弟というか幼なじみというか。
 リューイのおばさんもあんな感じだったのかね)
 思い出しつつ、ぶつぶつと呟く。

 リューイの答えを聞いて、ダニエルを見る。
 ダニエルが良さそうなら、すぐにも飛び出すつもりだ。


リューイ

アッガ<

 わかるような気がする、という台詞に双眸を瞬かせた。
「・・・え、アッガさんも・・・」
 いるんですかそんな身内が、と言いかけて口をつぐんだ。
 いる、と言われても反応に困るし、大体、そこまで立ち入った質問は失礼だろう。
「――いえ。なんでもありません。
 ・・・お気遣いありがとうございます」
 こちらも苦笑に近い笑みで答えた。

ダニエル<

 ダニエルの言葉に、少し考えた後頷いた。
「ええ、いい考えだと思います。
 建物の中にいるとかでなければ、空からすぐに確認できる」


ダニエル

アッガ<

「ふむ、なるほど」
 そういえば、この竜人は力強い翼を持っている。
 空を自由に使えるとなると、戦術的な可能性は大きく広がるが……。

リューイ<

「如何致そうか、リューイ?」


アッガ

リューイ<

「ほほう」
 話を聞くと、ちらりと浮かぶ故郷のとある顔。
「なるほど」
 思い出すのは気を抜くと、鞭のように飛んでくる尻尾の一撃。
 何となく理解できたような気がする。
 複雑そうに口を曲げる。
「おれにも分かった気がしますよ。
 相棒ってのはやめときましょう」

ダニエル<

「いいと思います。
 ああ、でもなんなら、おれが空から偵察してきましょうか?
 何、高いところからざっくりと見渡してくる程度ならバレやしないでしょう」


ダニエル

アッガ<

「さて、しかとは」
 渋い顔をする。あまり情報収集に時間をかけなかったのに気がついたのだ。
「しかしながら、それがしが目撃者から聞いた限りでは、天をつくほどの魔物ではなかったと思われた。
 巨人とは申せ、その身の丈は高くとも3mほどであろう。なれば、塔に入れぬとは思われぬ」

リューイ<

「然り然り」
 嬉しそうに頷く。
「それがしもそう思い、何度か国に具申致した。なれど、現在は南方に大きな脅威がないとの理由にて、修繕はできぬとのことだった。
 しかしそれがしが思うに、国は金貨を惜しんでいるのではなかろうか」
 嘆息する。

アッガ&リューイ<

 ある程度砦に近づいたところで、ふと立ち止まる。
「簡単に砦の構造をお教えしてから参ろう」
 と、足元に槍の石突きで簡単な図を描いていく。
 慣れた手つきだ。

「所々が破壊された外壁に沿って、四つの見張り塔。これはいずれも破壊されている。
 内部、通路にて繋がった二つの塔(と、北側に大きな円を二つ描き、間をつなげる)。東側は破壊されている。
 真ん中、兵舎すなわち簡素な防衛拠点と繋がったひとつの塔。
 東側、居館。破壊されている」

「まずは外壁の内側へ入り、建物の外を全て探索することを提案するが、如何か?」


リューイ

アッガ<

 気遣って追求をやめてくれたらしい。
 おかしな反応をしていることに気付き、すみませんと呟いた。
 青ざめた表情になんとか笑みを浮かべる。
「・・・・・・いえ、あの。槍使いは僕の叔母なんです。
 とても強い人で、稽古をつけてもらったりして・・・・・・尊敬も、しているんですが・・・・・・・」
 どうしようもなく荒っぽいんです、とはさすがに言えず、口をつぐむ。

 ようやく目の前に現れた砦と、周りの様子を慎重に確認する。
 何か生き物の気配は感じられるだろうか?

ダニエル<

「・・・想像していたより、大きな砦ですね。
 このままでは無理でしょうが、少し手を入れれば充分使えそうです」
 低く、ささやくような声でそう言いながら意識を研ぎ澄ませていく。
 何事もなければ、ふたりの動きに合わせ砦へと近づく。


アッガ

ダニエル<

「塔ってのは、巨人も入れるくらいに大きいもんなんですかね」
 巨人の大きさが分からないからよく分からない。
「もし巨人が塔に入れるんなら、塔も探索しなきゃならんですね」


GM

 一行は森を抜けた。
 森を抜けた場所は開けており、身を隠す場所はない。
 向かう先に100m程進んだ場所に、傷だらけの城壁と、その奧に尖塔が突き出ているのが見える。
 あれがイスハ砦だろう。
 そこかしこが朽ちており、穴も開いているが、遠目にも、その造りの堅牢さが分かる。
 日は落ち、周囲が闇に包まれていく。
 まだ、夜というには明るい程度だが、ちらちらと星の姿も空には現れている。
「イスハ砦は大型の拠点で、三つの塔を持っていた。激しい戦いの果てにひとつは打ち壊されて後もないが、残りは瀕死の体を見せてはいるが、未だに地に足を着けている。
 そのほか、見張り塔や兵舎の残骸などがあるが、人の住めるような状態ではあるまい」
 ダニエルが説明する。


アッガ

リューイ<

「じゃ、機会があったらどうぞ」
 こちらも嬉しくなるような反応に気をよくする。
 豪快な笑顔を浮かべる。 
 それからかくりと首をかしげる。
 “そんな恐ろしいことをいうな”とばかりの反応だった。深くつっこまないことにする。

ダニエル<

「こちらも準備オッケーですよ。
 っても、おれの場合は手を動かせるようにしとくってだけですがね」


リューイ

アッガ<

 持ち上げて運べる、という言葉に、僅かに呆気にとられたような顔をみせた。
「ご迷惑じゃなければ、是非!」
 続けて、弾けるような――年相応の――笑みが一瞬、その顔をよぎる。
 だが、続けられた「槍を使う相棒」という言葉に、見事にその顔が青ざめる。
「・・・・・・あい、ぼう?」
 誰が、誰の、と。
 聞き取れないほどの声で呟いた後、ぶんぶんと首を振る。
「いえ違います、そんなんじゃないです。全然、相棒なんかじゃないです。」
 そんな恐い立場は嫌だ。何故か叔母のことを敬愛していた友人なら、別の反応をするだろうけど。

ダニエル<

 気持ちを落ち着けるように、深く息を吐く。
 一度瞳を伏せ、再び目線をあげる。
 確かめるように剣の柄に指をかけ
「――僕も、大丈夫です。いつでもいけます。」
 静かに言葉を返した。


GM

 アッガが戦闘で偵察役を務め、リューイとダニエルが後へ続く。
 夕暮れの朱が深くなっていく。
 後小一時間もすれば、夜のとばりに包まれると思われる。既に東の空は濃い群青色に染まっているようだ。
 二頭の馬のひづめが乾いた音を鳴らす。
 風が通り抜けていき、木々を揺らしていく。
「もう、すぐそこに砦があるはず」
 ダニエルが抑えた声で知らせる。
 なるほど、両側から道に張り出した枝が邪魔になってよく見えないが、その先は森が開けているようだ。
 そこに、砦の跡があるのだろう。
「おのおの、武器の用意をした方がよかろう」
 いいつつ、ダニエル自身も槍の被せものを外す。


ダニエル

リューイ&アッガ<

「しからば、そのようにいたそう。
 では、参ろうぞ」


アッガ

リューイ<

「そりゃもう、気持ちいいもんですよ」
 にっと笑う。
「おれたちも生まれつき飛べるわけじゃないですからね。
 訓練次第じゃ飛べない奴だっているんです。
 生まれてはじめてまともに飛べたときにゃあ感動でした。
 その日は夜も眠れませんでしたからね」
 付け加える。
「一度リューイもどうです?
 ちょっとくらいなら人を持ち上げて飛べますよ」

「槍を使う相棒でもいたんです?」
 懐かしむような表情を見て。
 それから、提案に答える。
「もちろんオッケーです。
 じゃあ、一緒にぶん殴りにいくとしましょうか」


リューイ

アッガ<

「・・・そうですね。目立たないようにするには、飛ばない方がいいでしょうけど・・・」
 先ほどの、彼の翼の羽ばたきは強く印象に残っていた。
 真面目な表情のまま、
「少し残念です。アッガさんの飛ぶ姿が見られないのは。
 ・・・空を飛ぶ、というのは、きっととても気持ちがいいんでしょうね」
 ほんの少ししみじみとした口調でそんなふうに言った。

ダニエル&アッガ<

「――槍、ですか。槍使いと組むのは久しぶりです。」
 先ほどとは違う、何か懐かしむような表情を一瞬浮かべる。
「・・・団長が側面からの攻撃をされるのなら、僕は陽動に回ります。
 正面からつっこめば、相手も無視はできないでしょうし」
 意見をのべると同時に、自分自身で考えをまとめるように言葉を紡ぐ。
 そこまで言って、視線をアッガの方へうつした。
「――アッガさんとタイミングがあわせれば、結構効果があると思うんです。
 ・・・どうでしょう?」

 ふたりの動きに合わせ、先へと進んでいく。


アッガ

ダニエル<

「おれに何を期待してるんですか?団長?」
 にっと笑う。
「おれが、正面からぶん殴る以外の、何ができるってんです?
 時と場合によっては、相手が巨人だっていうなら、空を飛んで頭を蹴っ飛ばしてもいいですね。
 飛んでいる間は、上手く体重を使えないですが。
 あと、目立つのが難点ですがブレスもありますよ。
 前をあけてくれりゃ、光と熱の息を吐いて攻撃できます」

リューイ<

「リューイはどうします?
 肩を並べて戦うのも楽しそうですけど、何かあります?」


ダニエル

リューイ<

 リューイの目線に何か感じるところがあったが、
「うむ、いざ。参ろう。
 アッガ殿――もとい。
 アッガが先に立ち、リューイとそれがしが後に続こう。先に申しておくが、それがしの得物は槍であるがゆえ、戦いになったならば、槍の風に巻き込まぬよう、それがしは側面にまわるつもりでいる。
 言うなれば。相手が巨人ならば、それがしは些か恥知らずの向きもあるがその脇から槍にて突き刺す所存。
 リューイとアッガはどのように戦われる?」


アッガ

 団長とリューイの話に耳をうごかして聞く。
 とりあえず口を挟まないことにする。

リューイ<

「おお、任せてくださいって」
 胸を手で叩くと笑顔で応じる。
「飛びながら先導してもいいですけどね。
 ここは隠密行動が基本でしょう」
 指をぽきぽきならしながら前に立つ。

 二人がよければ先に進む。


リューイ

アッガ<

「・・・ではアッガ、さん。先導をお願いしてもよろしいでしょうか?」
 大らかな笑顔につられるようにして、表情をゆるめる。
「――夜の巡回、は・・・僕も以前したことはあるんですが。何人かで組んででしたし・・・。
 アッガさんならとても頼り甲斐がありそうですね。」
 生真面目な口調でそう言ったあと、にこりと笑った。

ダニエル<

 ひとりごちるようなダニエルの声に、リューイの瞳から笑みが消える。
「――ええ、彼女は・・・そんな人ではありません。
 ですが・・・どこで話が変わってしまったのでしょうね?」
 彼の家系に多い、淡い色合いの目を僅かに細めて、そう呟いた。
「では、団長。イスハの砦へと向かいますか?」
 一瞬の、張り詰めたような表情が消え、生真面目だが穏やかな顔。
 何事もなかったような表情で、指示を仰ぐ。


ダニエル

リューイ<

「黒衣の魔女が?」
 きょとんとした様子だ。
「ふぅむ、これは怪奇千万。それがしが聞いた話では、ノーム森林の騒ぎはかの黒衣の魔女が悪しきたくらみのために引き起こしたもので、ギルドから派遣された冒険者が魔女を退治したとのことであった。
 したが、解決した当人がいうことの方に間違いはあるまい。
 いささか聞き違えていたのかも知れぬ」
 ひとりごちるようにいう。
 それから、殿と付く方が困るらしい二人の様子に頷く。

リューイ&アッガ<

「されば、それがしもお二人を名で呼ぶことといたそう。
 それがしもダニエル、とのみ呼んで頂きたい。ないしは、あくまで形式上の名称として“団長”でも適切かも知れぬ」


アッガ

リューイ<

「おれもアッガで構わないですよ。
 殿とかいわれたらくすぐったいですって」
 牙をむきだしてわらう。
 返礼に対してさらに拳をあげて礼をする。
「夜目ですか?
 そういや、もうすぐ夜ですか。
 そんなら任せてください。
 谷でもおれは夜回りでしたからね」


リューイ

ダニエル<

「・・・無謀だなんて。ただ、周りの方たちが心配しているだろうなと思ったんです。」 
 そう言って淡い色合いの目を眇め、微笑に近い表情を作る。

アッガ<

「――解決だなんて。ノーム森林の騒ぎは、黒衣の魔女が収めてくれました。
 僕はきっかけになっただけで・・・そんな風に言われると困ってしまう。」
 軽く眉を下げる、と片方の拳を胸の前にあて礼を返した。
「よろしくお願いします、アッガ殿。あなたのような戦士とご一緒できるなんて、とても心強いです。
 ・・・あの、どうか僕のことはただリューイと呼んでください。」
「殿」なんてつけられるような立派な人間じゃないです、とダニエルの方にも気恥ずかしそうに告げる。

「――イスハ砦はこの森の奥だそうです。
 巨人族が目撃されたらしいのですが・・・アッガ殿は夜目は利きますか?」
 森の奥を指し示しながら訊ねた。


アッガ

 話を聞いて、にっと笑う。

ダニエル<

「へええ、そりゃあ良いですね。
 頼りになりそうじゃないですか」

リューイ<

 ばんと、握った両手の拳を胸の前で打ち鳴らして挨拶する。
「どうも、リューイ殿。
 そのとおりで、自警団所属の竜人のアッガです。
 っても、入ってあんまり日はたっちゃいないんです。
 ノーム森林の話は聞いてましたよ。
 何とかなったらしいと聞いていたけど、解決した人がうちに入っただなんて良い知らせですね」


ダニエル

リューイ<

「自警団の余のものは他の用事にて出払っており、かてて加えて、この森に巨人がいるとの確証もなかったゆえ」
 しかめつらしく答えるが、ややあって恥じ入った様子で、
「とは申せ、いささか無謀な勇であったかも知れぬ」
 さて、と言葉をつなぐ。
「紹介いたそう。
 遙か西の国に生まれし有翼の戦士、アッガ殿だ。
 格闘術の使い手にして、その拳は岩をも砕くという」

アッガ<

「アッガ殿。こちらはリューイ殿。ノーム森林に訪れた災禍を打ち払いし若き勇者にして、謙虚なる剣士だ。
 あいにくと、未だその技を目の当たりにはしてはおらぬが、まもなく貴殿とともに見ることになろう」


リューイ

 ダニエルの言葉に答えようとした時、近づいてくるはばたきに気がついた。
 なんだろう、訝しく思う間にはばたきはどんどんと近づいてきて――。
 そして目の前に人影が降り立った。
 目に鮮やかな色合いをまとった、大柄な体躯。
「・・・竜人・・・?」
 呆気にとられたように呟きながら、リューイは大きく見張った目を瞬かせた。

アッガ<

 まじまじとこちらを見る、赤い瞳に我に返った。
 身軽な動きでオニキスから降りる。
「・・・はい。今日入団したばかりなので、お会いするのは初めてです。」
 いかにも戦士といった体躯に、頭一つ分以上ある身長差。
 なんだか懐かしいような気持ちになりながら、こちらもまっすぐに視線を合わせた。
「はじめまして、リューイと言います。あなたも自警団の方ですか?」

ダニエル<

 ふたりの会話を聞きながら、軽く苦笑を浮かべる。
「・・・そういえば、最初にお会いした時にひとりで行くつもりのようでしたけど・・・。
 巨人族相手に、団長お一人ではいくらなんでも危険です。
 どうして他の自警団の方を誘わなかったんですか?」


アッガ

リューイ<

 まじまじとリューイを見る。
「あれ? 一人じゃないじゃないですか」
 ダニエルの方に抗議してからもう一度リューイを見る。
「自警団の人ですか? 多分会ったことはないですね?」


GM

 そこで、翼の羽ばたきが聞こえる。
 北の方からやってきた羽ばたきが頭上を通り抜け、
「ははっ、隊長殿!」
 二人の前に降り立つ。
 翼を折り畳みながら、言葉を続けた。
「一人で魔物退治だなんて水くさいじゃないですか、おれが帰ってくるまで待っててくださいよ」
 2mを越える体躯に、鱗をはやした異形の人影。
 現れたのは、竜人の名で知られる西方の亜人族の姿だった。


ダニエル

リューイ<

 リューイの答えを受けて、しばらく考えていたが、やがて頷いた。
「しかと承知した。なれば、それがしの一歩前を進んでもらえぬだろうか」
 言ってから、恥ずかしそうな顔をする。
「正直に申せば、それがしは森の中を警戒しながら進んだ経験など、思い出に過ぎぬ時分にくらいしかござらぬ。
 この森も、はじめは騎馬で正面から突撃するつもりであったゆえ」
 隠密のことなど考えてもなかった、という。


リューイ

ダニエル<

「・・・会ったらびっくりされると思いますよ。」
 そんな風に答えながら、さりげなく視線をそらす。 
 騎士以外に見えない、という言葉に、複雑な感情がその瞳に揺れていた。
 ずっと、そうなりたいと思っていた。
 ・・・けれど。
(・・・やめよう。今は、集中しなければ。)
 気付かれないよう、小さく息を吐き。視線を森の奥へと向ける。

 影絵に沈んでいくかのように、周りの風景が夜に溶けていく。
いかにも、といった気配を感じながらリューイはわずかに困惑の眼差しでダニエルを見た。
「――目はいいほうだと思います。
 ただ、日が暮れるこれからの時間、お役に立てるかどうかは・・・」
 わからないと言った後、こう続けた。
「ですが、僕達が森の中を進んだのは先日のことです。
 多少は落ち着いて歩けるかもしれません。・・・その程度でよろしければ。」
 前を行きます、と、まっすぐな視線をダニエルへと向けた。


GM

 二人はゆっくりと、砦と王都を往来した兵士の軍靴や、馬、馬車の轍が自然に作り上げた道を進んでいく。
 ついには日が落ちかけ、あたりはくれないの色に染まっていく。
 東の空は暗く、頭上は青く、西は橙。
 普段はうるさいくらいの音がするのが森というものだが、今はひっそりとしていて風と木々のささやき程度しか耳に入ってこない。
「いかにも、魔物の住処らしき気配」だ。
 道中を半ば程度進んだところで、ダニエルが不意にリューイに尋ねる。
「リューイ殿、口惜しいことにそれがしは風を聞き、気配を探る技には不得手。貴殿にその技あらば、是非とも先導頂きたいのだが、いかがか?」



ダニエル

リューイ<

「然り。まさしく、騎士とは民の剣であり、盾!」
 大声で肯定する。
「受け売りとは。然らば貴殿の師たるものも騎士たるを備えておったに違いあるまい。是非、一度お目見えしたいもの」

 それから、つ、とリューイを見やる。
「しかし、やはり騎士以外の何かには見えぬよ、リューイ殿」
 口元をほころばせながら言う。

 ダニエルは鞭を振り上げたところで、慎重に進もうというリューイの言葉を聞く。
「ふむ……」
 一瞬考え込み、それからおとなしく鞭をしまう。

「うむ、伏兵があるやも知れぬ。
 伏兵がなくとも、あえて我らの襲撃を彼奴らに教えてやることもあるまい。
 慎重に、静かに参ろうぞ」


リューイ

ダニエル<
 
 怒っているような愚痴のような言葉に、リューイは礼儀正しく沈黙を守った。
 ただ、「騎士、とは。国の・・・民の、剣であり盾であるものだと・・・」
 教わりました、と。ひっそりと囁きにも似た呟きをもらす。
 意識を切り替えるように軽く首を振ると、まっすぐな眼差しを前へと向けた。
 うむうむと頷いているダニエルにちらりと苦笑を浮かべ、首をすくめてみせる。
「・・・受け売りです。」
 僕は主に、走り回っているだけでした。
 軽口めいた口調は、照れ隠しのようだった。
 
 黒々と広がる森に、すっとその瞳を細める。
 日が暮れる。
 森の中では更に視界が利かなくなるだろう。
 しかし、一刻も早く砦の様子を確認しなければいけないのは確かだ。
「――はい。充分に気をつけて、行きましょう。」
 行くよ、と。オニキスに声をかけ、辺りの様子を探りつつダニエルに続く。 


GM

 太陽が西にかかって動き、夕暮れ前特有の、不安定な陽射しに変わる。
 丘の頂に馬を進め、ダニエルが眼下を指さした。
 そこには、左右に広く、森が広がっているのが見える。
「かの森に件の砦が眠っておる。いや、不届きな闖入者に眠りを妨げられ、屈辱に震えているやも知れぬ。
 さあ、友よ。参ろうか。
 砦までに道は一本、ただ木々の中を南に突き進むのみ!」
 いうと、ダニエルはイエロースターに鞭を当て、駆け出そうとする。


ダニエル

リューイ<

 得たり、と頷く。
「言うなれば生ける伝説、それがしのような武人にとっては特に感慨深き砦といえる」
 ふむ、と呟き、
「巨人の考えることはそれがしにも分からぬが、放置しておくには危険すぎる生き物ゆえ。
 それにしても不甲斐なきは我らが神聖騎士団が腰の重さよ。もっとも、彼らにも言い分がないわけでもない、南方の戦線に主力を差し向けたがため、真偽も不確かな情報に人手を割くわけには行かぬと、こう申した。
 まったく、おのが庇護すべき都、町を守らずして何が騎士か。
 騎士とは弱者を守り、勇ましき敵に果敢に立ち向かってこそその役目を果たせるというもの。
 しかるに、魔物が現れたやも知れぬ折りに、はなから調べもせずに、人は出せぬとは!
 人手が足りぬのならば我らに助力を申し出れば良いに」
 最後はリューイに話しかけるというよりは憤懣やるかたない愚痴といった次第だ。

 リューイの呟きには面白そうに眉を上げ、
「いかにも、情報とは見、聞き、話してこそ得られるもの。
 貴殿は既に名誉を勝ち得ておられるが、それでも未だ若い。しかるに情報のなんたるかを心得ているとは、つくづく感じ入る」
 うむうむ、と頷く。


リューイ

ダニエル<

 イスハ、と小さな声で復唱する。
「・・・ミノッツの方々にとっては思い入れのある砦なのでしょうね。
 ですが、その巨人はなぜそんな場所に現れたんでしょう?
 忘れられているとはいっても、王都からそこまで離れているわけではないのに・・・」
 問いかけるというよりは、考えを整理するように言葉を紡いだ。
 視線を砦があるという南の方角へ向ける。
 王都の役人が真剣に取らなかったという話に、僅かにその瞳を細めた。
「――それは、全ての陳情に騎士団が出るわけにも行かないのかもしれませんが・・・。」
 放っておいて、真実であったらどうするのかと、そう思う。
 思ったあとで、何かを思い出したように苦笑した。
「ああ、だから・・・情報は自分で取って来い、になるわけだ。」
 足で集めろ足で、と、何かといえば酒場に顔を出していた人の言葉を思い出した。


ダニエル

 声を掛けられて、リューイが到着したことに気が付く。

リューイ<

「おお、参られたか」
 目をすがめてオニキスを眺める。
 賞賛の光が目に浮かんだ。
「これは良い馬だ。それがしの愛馬イエロースターにも劣らぬしなやかな体つきをしていると見える」

 怪訝そうなリューイの質問に、手を挙げて応える。
「いやいや、さしたる事ではない。
 かの地平の奥ににくき魔物どもおり、我らのいにしえの砦を支配しているかも知れぬ。
 それを思っただけで心が燃え上がってな。
 では参ろうか」


ダニエル

リューイ<

「それがしの愛馬は言うなれば息子のようなもの」
 リューイと同様、馬を褒められ、まんざらでもない様子だ。
 彼の年齢に見合わない熟練した手綱捌きに目を瞠りつつ、質問に顎に手を当てた。
「さよう、魔物が現れたといわれているのは、元々は古代人によって建てられたとされているものを、我らの砦として利用していたもので、イスハという名を持つ砦。
 かの魔族掃討戦争の折りに、多勢の魔物に包囲されつつも、王都に騎士王国からの援軍が到着するまでの七日の時を見事に稼ぎきったのだ。
 砦を守っていた勇敢なる神聖騎士団は最後の一兵まで戦い、英霊として我らを守護しているのだが、激戦の中に砦も半壊し、今やうち捨てられているというのは誠に無念なことよ!
 砦は南の森林の中にあり、所々が朽ちた城壁に囲まれている。過去には弓兵たちがその鋭き弓矢を以て敵を寄せ付けぬ防壁ともなっていた見張り塔もいまやほとんどが倒壊している。
 城壁内には幾つか無事な建物があり、二つの塔が少なくとも人間が不自由ながら生活することもできる程度には残っているはずではある。他には瓦礫、塔の残骸など。

 そこに、巨人の姿があったという連絡が南の森で暮らしている狩人から寄せられたのだが、いささか狩人の証言や人柄に真っ当ならぬところがある。そのせいか、王都の役人も真剣に取らなかったとみえ、狩人は我ら自警団に持ち込んできたようだ。
 それがしが話をしてみたが、かの狩人は確かに信用ならぬ人物ではあるが、見てきたことに嘘はあるまいと感じられた。
 だとするといささか由々しき自体。速やかに砦へ赴き、真偽を確かめ、可能であればすべて殲滅せんとの誓いを立てた次第だ」
 話しながらも、ダニエルはリューイと共に、愛馬を疾駆させている。


リューイ

ダニエル<

「ありがとうございます。オニキスは、僕の自慢の友人で・・・家族です」
 相棒への賞賛の言葉に、自然と表情がほころぶ。
 視線を交わし合っているオニキスとイエロースターを見上げた。
 穏やかに尾を揺らしている様子に、ふわりとした笑顔を浮かべ。
「・・・イエロースター号も、とてもきれいですね。」
 呟くようにそういう顔は、年齢よりも幼く見えるほどだった。
 もっとも、そんな表情は瞬きをする間に消えたので、ダニエルは気付かなかったかもしれないが。
 気持ちを切りかえるように表情を消すと、先ほどまでのダニエルと同じように南の方角を見る。

 技能判定:分類/馬術
  リューイ:優秀な成功!


「参ろうか」という声に頷くと、鮮やかな手綱捌きで愛馬の向きを変えた。
「――現在は放棄されている砦に魔物が現れた、ということでしたね。
 ・・・砦の様子や、魔物の目撃情報を詳しく教えていただけますか?」


GM

 オニキスとイエロースターはお互いに視線を交わし合っている。
 若駒のようにはしゃいだり、身体をすりあわせることもなく落ち着いた様子なのは、どちらも長い訓練を受けた馬だからなのだろう。
 ただ、お互いに相手が気に入らなかった訳ではないようだ。
 緩やかに長い尾を揺らしている。


ダニエル

 声を掛けられて、リューイが到着したことに気が付く。

リューイ<

「おお、参られたか」
 目をすがめてオニキスを眺める。
 賞賛の光が目に浮かんだ。
「これは良い馬だ。それがしの愛馬イエロースターにも劣らぬしなやかな体つきをしていると見える」

 怪訝そうなリューイの質問に、手を挙げて応える。
「いやいや、さしたる事ではない。
 かの地平の奥ににくき魔物どもおり、我らのいにしえの砦を支配しているかも知れぬ。
 それを思っただけで心が燃え上がってな。
 では参ろうか」


オニキス

 リューイの目を見返し、馬特有の何でも知っているような瞳をきらめかせる。


リューイ

 城門の近くにはそこに住む人々の姿も見られるが、その他には、どこまでも続く柔らかな緑と空の青。
 淡い色合いの目を軽く細め、遠く広く広がる風景を見渡した。
 オニキスの長首を軽く叩く。
「少し長い距離を駆けることになりそうだよ。
 日暮れまでには、という話だけれど・・・行けるね。」
 澄んだ濃い茶色の目を見て、軽く微笑む。

ダニエル<

 城門の脇に佇む姿を見つけ、声をかけた。
「サー・ダニエル、お待たせしました。
 ――どうかなさいましたか、団長?」
 僅かに怪訝そうな響きが、その声にはあった。


GM

 リューイは神聖王国の南門までやってきた。
 シノン街道と面している西門とは違い、南門にはあまり旅人の姿はない。城門近くに軒を連ねている農民たちの家屋や、田畑が広がっており、その中を行き交う住民たちの姿があるくらいだ。
 東の方に進めば、貴族たちの荘園があるのだろう。そこを更に東に進めばカルネニア山脈――大仰な名前がついているが、例えばサイーディア山脈などと比べれば丘のようなものだ――があり、その麓にはあの黒衣の魔女の館があったノーム森林が広がっているはずだ。

 さて、ドン・ブラウン自警団の団長ダニエルはというと……。
 すぐに見つけることができた。
 脇腹の方に流れ星のような茶色い模様のある、白馬を連れた男が、城門の脇にたたずんでいる。
 何やら南の方を、目をすがめてにらんでいるようだ。