PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

シナリオ

「モラッカ山の薬」

鼻に酷い痛み、激しいくしゃみと鼻水。
一見、只の風邪のようだが、実は治療の困難な奇病だ。
普通の診断では風邪と区別が付かないが、魔術の心得のある者に見せれば、それと分かるはずだ。
その病気の特効薬となる、スローマーの実。
その実が、大魔術師王国イ=サードの首都の近辺にあるモラッカ山の頂上に生っているらしい。
冒険者カイ=フォーティラスは、その実を採りに、モラッカ山へと足を向けた。
目指すは頂上。
破格の報酬900金が待っている!

GM…カイVS虎

足を引きずって、虎が再び先制攻撃を仕掛けようと身をを縮めた刹那。
カイの姿が掻き消えた。いや、虎にはそう見えた。
猫族としては当然だが、虎の動体視力は並ではない。カイの動きはその能力を上回っていたのだ。
反復横跳びをするようにして接近し、虎の眼前まで迫る。
虎は呆けたように、その姿を見るしかなかった。

魔力を帯び、光を纏った蹴りが虎の顔にめり込む。
唾液を吐きながら、その巨体は宙に浮いた。その動きが、泥の中で行われているように、今のカイにはゆっくりと見える。
カイは蹴りを打ち込んだ姿勢のままの身体を回転させ、続けざまに、後ろ回し蹴りを放った。先ほどの一撃で完全に無防備になっていた虎は、反撃することはおろか、避けることも出来ずにそれを喰らった。

カイ:
「魔力格闘」攻撃2Hit! クリティカルヒット!!
>虎にダメージ! 撃破!

「…っ」
吹き飛んで動かなくなった――どうやら、生きてはいるようだ――虎を一瞥し、カイは魔力を身体から解放した。同時に、圧倒的な倦怠感が彼女を襲う。魔力を練り、操っていた代償として、精神力と体力が持っていかれたのだ。

カイ:MP−2

しかし、これで妨害はなくなった。
その後の山道には、特に魔物も出ず、順調にイ=サードへと帰り着くことが出来た。

「ありがとうございます!
これで、娘も鼻水に悩まされる事はありません!!」
「ありがとうございますっ」
カイが訪問した時には、
「こんな子供が?」と怪しんでいた依頼人だったが、彼女がスローマーのみを取り出して差し出すと、態度を一変させた。
彼等は気の済むまで礼を言うと、カイに約束の報酬を手渡す。
…収入があったのはいいのだが、何故か釈然としないカイであった。

それもそのはず。

鼻の病気の治療の為に、彼女は命を賭けたのだから。

シナリオ1終了!
それぞれ経験値2を得た!
カイ:収入900

舞台は大魔術師王国イ=サード「竜追いギルド」へ戻ります。



 
GM…カイVS虎

先手必勝とばかりに、虎はカイの喉笛目掛けて飛び掛かった。
待ち構え、かわしざまに反撃を入れようとしていたカイは、思いのほかに早い虎の攻撃にタイミングを合わせられず、ただ避けることしか出来なかった。
身を横に流して攻撃を避けたカイの胸元を虎の爪が薙ぎ払い、クリスタル・シールドがそれを受け止め、砕けて消える。

虎:
牙の攻撃失敗!>カイ
爪の攻撃1Hit!>クリスタル・シールドにダメージ! 破壊!
「っ…」
カイの精神力に魔法被損によるダメージ!

カイ:MP−4

虎の爪によって、カイは精神を消耗した、しかし虎もその攻撃で体勢を崩している。カイはその隙を逃さず、一瞬歪んだ視界に構わず、目の前を過ぎて行く虎の後ろ足を鉄の爪で、全力を持って切り裂いた。
「ゥガァッ!?」
虎は空中で身を崩し、地面に転がるように着地した。
後ろ足は無惨に裂け、値を流している。

カイ:
「格闘」攻撃1Hit!>虎にダメージ! 足を負傷!

カイと虎は、お互いに睨み合ったまま微動だにしなくなった。
虎は足を負傷し、満足に攻撃も出来ないだろうが、カイの疲労も激しい。損傷したクリスタル・シールドは破壊されないうちに消しておいた方が良かったようだ。
おかげで精神に手痛いダメージを負うことになってしまった。
暫く動かず、そして次の瞬間…



 
GM


魔物たちを蹴散らして、カイはその疲労を引き摺ったまま山道を登っていた。さすがに歩調を緩めて、疲労を少しずつ逃がそうとしているようだ。
しかし、そんなカイの判断を裏切るように、山道は更にその険しさを増していった。
岩が転がり砂利が埋まり、枯木は横たわって道を阻む。
気を楽にして休めそうな場所は無い。
何処にいても気を使ってしまいそうだ。
疲労は行き場のないまま蓄積していった。

カイ:MP−2

更に進んで行き、カイは空気の匂いが変わったのに気付いた。
視界が少しずつ開き、夕焼けの光がその太さを増して差し込んでくる。木洩れ日、ではない。明らかに、太陽から直接注いでいる光だ。
足元も、心持ち安定してきたような気さえする。
「もしかして…」
つまりそれは、頂上が近いという事ではないのか?
カイは足を速めた。

頂上はこんもりと盛り上がっており、その付近だけが芝や草の生えた、普通の山道と変わらない。
そして、盛り上がったそのてっぺんに、目的の物があった。
ギルド員に聞いていた通り、独特の形の針葉樹。
その木に、一つだけ小ぶりの実が生っていた。
スローマーの実。
カイはその木の根本まで走っていく。
手際よく木を登って、実をもぐと、注意してバッグの中に入れた。
木の枝に腰掛け、山の頂上から麓を見下ろした。
「……」
それほど高い山ではない。せいぜい、少し小高い丘程度だ。
しかしそこは険しく、魔物も徘徊している為に入る人は居ない。
だから、
…カイは息を呑んでその風景を見下ろした。
沈みかけた夕日に照らされた、イ=サードの街並みを。
この上もなく美しい、人の営みを。
この風景は、だから彼女だけの物なのだ。

野宿の用意も何もしていなかったカイは、日の沈みきらないうちに山を降りようと、歩を早めていた。
行きは良い良い帰りは怖い。何かの歌にあったが、この場合は降りる方が楽だ。
行きと同じ道を通って帰途を進んで行くと、途中に見た広場へと出た。
ここで休んでいくより、早く帰った方がいい…そう思いながら広場を抜けようとしたカイは、ぞくりとしたものを感じ、足を止めた。
…目の前、山道へと入る側の茂み、その中。
カイは自分を見詰める両の瞳を捉えた。
「虎…」
何故、このような山の中にその獣はいたのか。
黄金色の毛皮に黒の斑模様。獰猛なる猫族の王。
その野生の虎は、茂みから飛び出して襲い掛かってきた。

《戦闘突入》
カイ=フォーティラスVS虎



 
GM…カイVSゴブリン三体


ゴブリンたちと完全に接敵する前に、カイは行動を起こした。

「太陽の粉、月の雫、大地の屑。
夢の欠片、竜の涙、夢幻の力に形を宿せ…。
…輝きよ、爪牙を妨げる楯と生れ!」

カイ:クリスタル・シールド発動!>カイ

初級魔法、クリスタルシールドが紡がれ、カイの前に生まれた。
それを確かめると、カイは弾けたような勢いで駆け出した。
「!」
まさかカイが向かってくるとは思っていなかったゴブリンたちは意表を突かれて立ち竦む。二匹の内、手前右側の一体の懐に入り込み、カイは手に嵌めていた鉄の爪でその身を裂いた。
悲鳴を上げて棍棒を取り落すゴブリンに、続けざまにカイは胴体へと痛烈な蹴りを打ち込んだ。
哀れなゴブリンは2mほども後方に吹き飛び、倒れて動かなくなった。

カイ:
「格闘」攻撃2Hit!>ゴブリンAにダメージ!
ゴブリンAを無力化!
ゴブリンBは戦意喪失! 撤退!

一瞬にして仲間がやられたのを見て、片割れのゴブリンは我を忘れて逃げ出した。残った弓を構えていたゴブリンは、孤立しながらも気丈にも…そして愚かにも留まり、カイに矢を放った。
狙いは大して狂わず、未だ残身の解けていないカイの胸元へと走る。
しかし、その矢は、意思持つ魔力の楯によって阻まれ、折れ飛んだ。

ゴブリンC:狙撃1Hit!>クリスタル・シールドにダメージ!

必死の攻撃も虚しく無効化されたゴブリンは、茫然とした。
そこへ、カイの詠唱が届く。

「万物なる存在にして無なる存在。
大気に遍く夢幻の風。
…魔力よ、空を焼きて灰と為せ!」

カイ:マナ・フレイム発動!

我を失ったゴブリンを包む空気が、瞬時に変化した。
小さい輝きの粒子がその身を取り巻いたかと思うと、それは赤い灼熱の炎へと姿を変える。
「ッ、ギュアァァァ!?」
全身火だるまとなったゴブリンは、矢も楯も捨てて、仲間の後を追って逃げ出した。

カイ:
「魔術」マナ・フレイムHit!>ゴブリンCにダメージ!
ゴブリンCは戦意喪失! 撤退!

「……ふぅ」
カイは一つ息を吐いて、構えを解いた。
立て続けに魔法を行使して、身体中に薄い疲労の膜が纏わり付いているようだ。
辺りを見回してももはや自分に危害を加えようとする者は見えなかった。
割と簡単にゴブリンたちを撃退できたが、それは相手の数が少なかったことに主な理由がある。
ゴブリン達は集団であればあるほど、強くなっていく魔物だ。
今回は三匹だったから、一匹を倒しただけで残りは恐慌に陥り、まともに彼女に対抗することが出来なかった。
これが十匹、二十匹が相手だったら、逃げるしか方法はなかったろう。
…ともあれ、山道に静寂は戻った。
カイは足を山頂へと向け、歩き出した。
未だにふよふよとその身を護って漂うクリスタル・シールドの姿は、どこか滑稽だった。

カイ:ゴブリン一体を撃破! ゴブリン二体を撃退!
戦闘終了!

カイ…HP−0
  …MP−8
HP:69/69
MP:11/21 



 
GM


カイ<

カイは山頂を目指して進んで行く。
大した距離を進んでもいないのに、道は険しく、岩なども転がっている。
それを軽く飛び越え、迂回し、乗り越えて進んで行く。
二十分ほどもそうして進んだだろうか?
少し、視界が開けた場所に出た。
円形に木が生えていない為、一見人為的な広場になっている。
その場所だけ、地面はなだらかになっており、登山家だったらここを休憩場所に選ぶだろう。

広場を抜けて、また険しい山道に入る。
傾斜はそれほどでもない、ただ険しいだけの道だが、足元は安定しないし障害物も多い。苦労しながら歩を進めるカイは少しずつ神経が擦り減って行くのを感じた。

カイ:MP−2

しかしそれでも、一般人が進むよりは苦労をしていない。
身の軽さには自信があるカイなればこそだ。
広場から山道に入ってから、五分ほどが過ぎた。
「?」
ふと…
カイは後ろを振り返る。その刹那、今にも自分に突き刺さろうとする矢が彼女の目に入った。
「ぅわっ」
声を上げて身をかわすカイ。矢は一瞬前に彼女がいた場所を過ぎて行った。視線をめぐらすと、後方の茂みから何物かが姿を現した。
「何、何あれ?」
赤肌――ゴブリン。
彼女には魔物の知識は無いのでその名称は分からなかったが、最もポピュラーな魔物だ。
知性もそこそこあるため、強い者にはへつらい、弱い者には襲い掛かる。
こういった者には、常に弱みを見せないようにしていれば危害を加えられることは無いのだが、一見した所は弱々しい少女であるカイは彼等の目には格好の得物に見えたに違いない。
今日の早めの昼食にでもするつもりだろう。
数は三匹。常に集団で行動する彼等にしては少ないが、一匹、簡易な弓を持っている者がいる。
その一匹は後方で弓を構え、残りの二匹がそれぞれ棍棒と錆びたナイフを持って襲い掛かってくる。まだ少し(約10m)距離があった。
カイは身構えて、戦術を練り始めた。
幼い容貌の彼女の頭の中で、不似合いに剣呑で戦闘的な計画が組まれているのだ。
そして…

《戦闘突入》
カイ=フォーティラスVSゴブリン二体、ゴブリンアーチャー一体



 
GM…モラッカ山


モラッカ山。
大魔術師王国イ=サードの首都に住む者ならば、日々大して意識をしないで眺めている。背景の一つだ。
山と名がついているが、高度だけならば、只の、大きくて小高い丘でしかない。
だが、丘にしては道が険しすぎる。
棘を生やした樹が其処此処に生え、地面は砂利の上に枯葉で覆われていて、極めて足元が不安定だ。
樹は、背が、成人した人間の五倍ほどはあり視界も利かない。
その上に、魔物の棲みかともなっているらしい。
それほど頻出するわけではないが、
それでも危険な事には変わりが無い。

其処へ、一人の少女が足を踏み入れようとしていた。
彼女の名はカイ=フォーティラス。
齢十歳にして一人前半の冒険者。
「危険! 魔物が出るぞ!」
なる看板を避けて通り、カイはモラッカ山へと入っていった。