悪魔の子供と子守歌

「ああ、僕もそれでいいと思う。
　それで、おしまいにしよう」

「いや、俺の方こそ１人危険な目にあわせてすまなかった。これからなんだが、いったんイ＝サードで休もうと思う。おまえさんも俺も疲れてるからな。それからシルヴァードのオッシュのところへ以報告に行こうと思ってるんだが、それでいいか？」
 
　ヴィッシュは頭を下げるシーザーに向かって自分も頭を下げて謝った。それからこれからの予定を話すと、シーザーに同意を求める。

「ううん。まあ、よくは分からないけど、要領は得た。
　まあ、仕方ないと思うよ。僕だってまだ死にたくないしね」
　ひょうきんに肩をすくめてわらうと、改まって頭を下げた。
「君の迅速な判断で命を救われたよ。ありがとう。
　…で、これからどうしようか？」

「実はあの箱は女の子の宝物だったんだ。」
ヴィッシュはそう言うと何の事だかさっぱりわからず首をかしげるシーザーに事情をひとつづつ話し始めた。
　気絶して１人になり、少女と出会った事。そして少女の宝物である。悪魔の箱と子守唄の事。そして少女によってこの場所に導かれた事。

「・・・・で、箱はその少女に返した。お前さんを死なすわけには行かなかったからな。すまなかった。」

ひとしきり話し終わるとヴィッシュはシーザーに対して改めて謝った。

「あ、ああ。怪我はないけれど…。
　一体、どうしたというんだい。そして、箱は？」

「シーザー。大丈夫か？」
霧と気配が消えるのを確認するとヴィッシュは呆然と立っているシーザーの方へ駆け寄る。

　圧倒的な気配が、それに伴って消える。
　周囲の霧が、空気の中に溶けるようにして、消える。
　風景が消え、代わりにイ＝サード近郊の草原が現れる。
　シーザーが、呆然とした面持ちで突っ立っていた。

「なんだって？」

シーザー＜

「シーザー。悪いが箱を返したほうがよさそうだ。おまえさんをここで死なすわけにはいかない。」

「ヴィッシュ！　無事だったのか」
　ほぅと、安堵したような息を洩らす。
　そのとき、気配の変容に顔を強張らせる。

シーザー＜

「シーザー！！」
　シーザーの近くまで来るとヴィッシュにもシーザーの戦っているものの気配が感じられた。
（・・・なんだ。この気配は）
気配しかしない敵にとまどいながらも剣を抜き、彼のもとへと向かう。
 「シーザーすまなかった。俺が軽率なばかりに。」
 　シーザーの前に立ち、彼をこれ以上傷つけさせまいと気配の主と向き合った。いや、正確には姿が見えていないので気配のする方に向いた。
　そして彼は大切な相棒に一番言いたかった言葉を言う。もちろん、シーザーに背を向けた状態で言う言葉ではない。しかし、正体のわからない敵と向き合っている今、ヴィッシュは気を抜くわけにはいかなかった。

「まったく正体が分からない相手を、どうやって倒せばいいんだ！」
シーザーは悲鳴を上げる。
そう、気配の主は、確かに攻撃を仕掛けくるものの、その実体がまったくつかめない。まるで、悪夢の中の殺戮者のようだった。恐怖を撒き散らし、敵意を投げつけ、襲い掛かってくるものの、決してこちらが死ぬことはないし、また反撃することもできない。
逃げることもまた。

次に来た場所は…どこかの山道だった。
呆然と立っていると、どこからか剣戟の音が聞こえてくる。
山道を、登ったところだ。

「玩具か。それにしちゃぁ、危ない代物だな。」
ヴィッシュは苦笑いしながら少女に言う。
「返してあげたいんだが、そいつはあいにく相棒が持っていてな。相棒を探さないとどうしようもないんだ。嬢ちゃん、相棒の居場所を知ってるか？それなら返してあげられるんだが」
ヴィッシュはそう続ける。ここにきてしまったのは彼の軽率な行動のためである。今はなんとしても相棒を探したかった。

ヴィッシュ＜

「わたしには宝物。ニンゲン、ニンゲンたちには玩具。
ニオイがする。
テキが集まる。戦う。
テキが集まる。戦う。
戦う。
戦う。
戦う。
戦う。
戦う。
…。
死ぬ」
表情は動かない。

「ああ、そうだった。」
苦笑しつつヴィッシュは少女に言う。
「いまは相棒が持ってるんだが、小さな箱だ。嬢ちゃんの宝物はその箱のことかな？」

少女＜

「宝物ってのは小さな箱のことかい？嬢ちゃん。」
ヴィッシュは少女に問う。

ヴィッシュ＜

「ニンゲン、わたしの宝物、返して」

ヴィッシュはそう思いつつ小屋の周りを探す。

　ふたつのお山に鬼がいて

声だ。
幼い、少女の声が聴こえる。

　お山は谷にはばまれて
　鬼はふたり、さびしくて
　いつか会おうとちかいます
　いつか会おうとその日のために
　おみやげいさんで作ります
　鬼はいっぴき剣もって
　鬼はいっぴき盾もった
　
草原の風の方向から、そんな少女の歌が聴こえて来るのだ。
まだ先にその姿は見えない。
背の高い草に、陰になっているのかもしれないが…。

幾程の時が経ったのか、ヴィッシュは冷たい空気に目を醒ました。
身体中で悲鳴をあげる関節を無視して起き上がると、そこは広大な草原だった。地平線は遠く空気に霞み、樹木の一本すらも見えない。
辺りにあの霧は無く、何の気配も感じられない。
確かめると、自分の持ち物は何一つ消えては居なかった。倒れるときに手に握っていたはずの剣は傍らに転がっている。

「突入ってんだから踏み込むのが当然だろ。」
ヴィッシュは微笑んで、シーザーを見る。
「じゃ、行くぜ！！」
ドアを開け勢いよく中に入っていった。

「了解」
と身振りで伝えて、シーザーも武器を準備した。
「それで、どのように突入するんだい？
踏み込むか、こっそりと入るか…」
小声で問う。

「（・・・・俺が先に中にはいるから後に続いてくれ）」
少々危険だが、ひっそりとした気配のほかに中の様子がわからないので、突入することにした。シーザーに小声で伝えるとヴィッシュは剣に手をかけ、シーザーの準備が出来るのを待つ。

「順番に見ていくか。兵士詰め所から。」
ヴィッシュにはとくにこれといって考えがなかったのでそう答えた。
「普通なら一番人の良そうな場所だしな。」
ヴィッシュはシーザーが見える範囲まで近づいてそう言った。

「……すまない、ありがとう」
感謝を示してから、シーザーは関所を手で示した。もっとも、その身振りは霧に阻まれて、ヴィッシュには見えなかったが。
「――じゃあ、まず、何処から調べようか。
イ＝サードの関所は、割と規模が大きくてね。
兵士詰め所、見張り櫓と連絡用の馬厩舎があるけれど」

シーザー＜

「よし、まずはこの辺で生き残りを探してみるか。誰かいないと箱のこともわからんしな。シーザーの意見に従おう。」
考えた結果。
ヴィッシュはシーザーの言うようにこの辺を調査することにした。

「……僕はここを調査していきたい。
君の言う通り、誰か生き残りがいるかも知れないしね。
なにより彼等――生き残りがいると仮定するけれど――には、何が原因で起きているか、その察しはつかないだろうから。
しかし、大局的で見ると、それは間違っているかも知れない。
僕たちがこの箱を持っているためにこの奇妙な現象が起きているのなら時間を浪費すればするだけ、危険が増えるだろから。
僕たちの危険だけではなく、ね」
言って、そして一息を吐いて告げる。
「判断は任せるよ」

シーザー＜

「・・・・これもこいつの仕業なのか。それともさっきの気配の主が」
ヴィッシュは考え込んだ。この箱にいったい何が。関所の人間はいったい何処へ。
（やはり、この箱が原因なんだろうな。）
気配の主のほうも気になったが、やはり原因はこの奇妙な箱にあると、ヴィッシュは思った。町を出てからの霧、魔物をひきつける力、今までにこの箱が引き起こしていることを考え合わせれば人を消すことがあってもおかしくはない。
（だが、みんな消えたのか？一人や二人残っているものがいてもおかしくはないはずだ、ましてやここは大魔術師王国イサードだ。この現象が魔術によって、引き起こされたとすれば気づいてそれなりの対策をとれるものぐらいいるはずだ。）
ヴィッシュはしばらく考えてからシーザーの方に向いて
「残ったものがいるかもしれない。とりあえず、予定通り叡智の塔まで行って見ようと思うんだが、どう思う。」
と険しい表情のままシーザーに尋ねた。

ヴィッシュ＜

「関所に誰もいないという事があるはず無いよ。
彼等も僕たちと同じように魔物に襲われたという可能性もあるけど……
でも、戦いの痕跡も無い。
……どういうことだろう？」

「ああ。・・・・」
ヴィッシュも同じように溜息を吐いて、霧を眺める。
（さっきの気配・・・・あれも気になる。）
牛頭鬼に遭遇する前の圧倒的な気配もヴィッシュは気にせずにいられなかった。
あの圧倒的な力は今のヴィッシュには到底勝ち目のないものだった。
（嫌な予感がするな。・・・・おそらくシーザーも気になってるだろう。
・・・・まぁ、今はこの薄気味悪い箱を何とかすることが優先だな。）
そう頭で結論を出し、
「まぁ、もうすぐでイサードだ。なんとかなるだろう。」
軽く笑って言い、ゆっくりと歩きだす。

「あいたた……、あ、助かる。痛みが無くなったよ」
顔をしかめて肩を抑えていたが、
ヴィッシュの魔法で癒されると同時に傷みも引き、溜息を吐く。
「そうだね。
…それにしても、この調子で魔物と遭っていたら、何時まで保つやら…」
何時までも消える事の無い紫色の霧をうんざりと見て、頬を掻く。

「大丈夫か」
シーザーの方へ行き、ゆっくりと声をかけるヴィッシュ。
それから魔法「ヒールタッチ」をシーザーにかけた。

「傷付けられ、失われた生命よ。
歯車を回し、一つの流れを源に還せ…」
シーザーのHPが回復しました。

「やっぱり２人だと心強いな。」
ヴィッシュは笑顔で言った。

≪戦況≫
戦闘終了！

「傷付けられ、失われた生命よ。
歯車を回し、一つの流れを源に還せ…」

詠唱を終え、傷に手をかざす。
柔らかな温もりと共に、傷痕がその姿を瞬く間に戻していった。

ヴィッシュ：
「撹乱」行動成功！
＞トロルを撹乱！

ヴィッシュ：
ＨＰ−１１＋１２
…２３/５４
ＭＰ−３
…１２/２１

戦況の変化によって行動を変更する方は改めてご投稿ください

《戦闘突入》
ヴィッシュ、シーザーVSミノタウロス

「ああ、まだ大丈夫だ。それよりも急ごう。」
ヴィッシュはそう言って、歩き出した。

「まあ、それもいいかもしれないけど…
とりあえず、手当てはしなくてもいいのかい？」

「今のうちは大丈夫だが早めにいかねぇと持たないな。」
ヴィッシュは真剣なまなざしで言ってから、「スピードを上げるか？」とシーザーに聞いた。

「やれやれ…
この調子で敵に襲われていたら保たないね」

ヴィッシュ：
ＨＰ−４
…２２/５４
ＭＰ−６
…１５/２１

《戦況》
戦闘終了！

剣を構えて敵の出方を待つヴィッシュに、早速も二つの羽音が襲い掛かる。小さな気配の小さな攻撃。それは少しも隠されていない、一直線の攻撃だった。神経を全て索敵に向けていたヴィッシュにとって、それは自殺行為ともいえる行動といえよう。
「甘いな」
呟きながら、鋭い魔法の刃をやり過ごすと、通り過ぎて行く妖精の背中へと斬撃を送る。
「おりゃぁ！」
声も立てず、二匹の妖精が両断され、小さな光の輝きとなって消えた。
濃密な霧の中へとその輝きは溶けていく。

シーザーは瞼を下ろし、「音」を聴く事に努めていた。
木の葉の揺らぐ音、風の音…
鬨の声、同時に振動音。そして…
（殺意の音！）
回り込むようにして両側面から抜けてくる、二体の妖精の気配。
「そこ！」
一つを躱し、一つに刃を放つ。

ヴィッシュ：
「片手剣」攻撃２Ｈｉｔ！
＞シルフ二体を撃破！

シーザー：
「片手剣」攻撃１Ｈｉｔ！
＞シルフ一体を撃破！

《戦況》
残存敵数十七体

戦況の変化で行動方針の変更のある方は、ご投稿ください。

「――いる」
ヴィッシュとシーザーは、互いにその気配に気が付いた。
林に入ってから五分と経たないうちに、自分たちに接近する何かがある。
「この林には魔物が棲みついていなかった筈だが」
木々が多く生えているところには神秘の力が溢れており、
魔物が毛嫌う清浄な空気が満ちている事が多い。
この林もその例外ではなく、魔物は生息していない筈だった。
「やっぱり、この箱が呼び寄せるんだろうね」
「ああ、そうだろうな」
それも、尋常ではない魔物を。
ヴィッシュが呟いた時、木々を揺らして風が吹いた。
その時だけ霧が薄くなり、彼らの目に周囲を包む気配の正体が見えた。
「…風妖精＜シルフ＞？」
人間の手に乗るくらいの大きさしかない、風の属性に密接な関わりをもっており、火蜥蜴と同じく生物と言うより、その存在は精霊に近い。
特に人間と敵対していると言うわけではなく、むしろ無関心な態度を取っている。気紛れに人間たちに手を貸すこともあり、あちらこちらに、風妖精にまつわる民話や説話が転がっている。
それが、今は明らかな敵意を持って彼等を囲んでいた。
「――来る！」

《戦闘突入》
ヴィッシュ、シーザーVSシルフ２０体

「そうだな、進むか。」
シーザーの言葉にうなずいて、そう言った。

「了解」
箱を受け取って、背負い袋の中に丁寧に収める。
「手当てはもう大丈夫かい？
だったら、進むのかな？」

「そうだな、いざというときに魔術が暴走したら今度こそしゃれにならんからな。それじゃあ、シーザー頼んだ。」
といって、笑顔で箱を渡した。

ヴィッシュ＜

「とすると、その箱は僕が持っていた方がいいんじゃないかな。
僕のほうは、距離があったからかもしれないけど、先ほどの魔法は成功したしね。だったら、僕がその箱を持っていれば、あなたは魔法を使えるんじゃないかな」

「どうやら魔術の暴走を引き起こすみたいなんだ。
おかげで俺もこのザマさ」
まいったな、という顔でヴィッシュは言った。

ヴィッシュ＜

「悪化するって、その箱が何をするんだい？」

「魔法は使わないほうが良い、悪化するぞ。こいつのおかげでな」
とヴィッシュは例の箱に視線を移して言った。
「ま、べランドラでも使うさ」
とのん気に言った。

ヴィッシュはベランドラを取り出し、それを使って凍傷の酷い部分の処置をした。

「手当て」成功！
成功度レベル：２

ヴィッシュ：
ＨＰ＋８
…２６/５４

ヴィッシュの出血が止まりました。

ヴィッシュ＜

「とりあえずはね。
それにしても、大丈夫かい。
見たところ、かなりきつい凍傷を負っているみたいだけれど」
急いで手当てをした方がいいんじゃないか…と続けた。

「・・・・終ったか。」
と、ヴィッシュは寒さで震えながら言った。

ヴィッシュが無事である事を確認して僅かに安堵の息をつきながら、シーザーは後退した火蜥蜴に追撃を掛けた。
「はっ！」
慎重に間合を計っていた火蜥蜴の予想をはるかに越えた速度で、彼はその距離を詰めた。踏み込みと斬撃はほぼ同時。
泡を食って悲鳴を上げ、彼の前から遠ざかろうと走り出す火蜥蜴に、
更に返す刀の追い討ちをかけるが、浅い。火蜥蜴は彼の間合の外へと逃げた。

火蜥蜴が霧をすかして、自分を傷付けてくれた人間に炎の編礼をしようとしたとき、彼の横に、現れた者があった。この蜥蜴は、シーザーに意識を集中しすぎて、その人間のほかにも敵がいた事を忘れていたのだ。
ヴィッシュは、無防備な火蜥蜴の横っ腹に攻撃を叩き込む。
「おりゃぁ！」
寒さで手がかじかんで、通常のような力は出なかったがそれでも、彼の剣は火蜥蜴を切り裂き、その命を絶つことに成功した。

ヴィッシュ：
「両手剣術」攻撃１Hit！
＞ファイア・リザード一匹にダメージ！
ファイア・リザード一匹を撃破！

シーザー：
「片手剣術」攻撃１Hit！
＞ファイア・リザード一匹にダメージ！

戦闘終了！

突如として生まれ、吹き付けてきた圧倒的な冷気に困惑し、その場に凍り付いていた二匹の火蜥蜴に、首尾よく彼等に回り込んでいたシーザーはヴィッシュの合図に応じて斬りかかった。
気配からその位置を判別して、切り掛かる。
シーザーも、ヴィッシュのいるはずの場所で巻き起こった異常に気を取られていたが、それは後だ。自分の役目は火蜥蜴たちに攻撃を仕掛けること。下手に動いて連携を破壊するわけにはいかない。
無言で白金の剣を打ち下ろし、火蜥蜴の背中を斬り裂き、斬り抜く。
火蜥蜴は悲鳴を上げる間も無く身体を分断されて倒れる。
もう一匹にも斬りかかろうとしたが、素早く反応した火蜥蜴が炎を吐き出しながら後退していった為、剣を引いた。

ヴィッシュ：
「魔術」フリーズ暴走！！
冷気の暴走！
＞ヴィッシュ、ファイア・リザード一匹にダメージ！
ファイア・リザード一匹を撃破！

シーザー：
「片手剣術」攻撃１Hit！
＞ファイア・リザード一匹にダメージ！　クリティカルヒット！
ファイア・リザード一匹を撃破！

《戦況》

ヴィッシュ：
HP−３６
…１８/５４
MP−３
…１８/２１

認知可能残存敵数一体。
ファイア・リザード一匹

戦況の変化で行動方針の変更のある方は、ご投稿ください。

ヴィッシュ：
ＨＰ−４
…５０/５４
《戦闘突入》
ヴィッシュ、シーザーVSファイア・リザード三匹

「すまんな。」
ヴィッシュはシーザーの方を見て、苦笑した。それからのんびりと歩き出した。

ヴィッシュ＜

「明かりと食料は冒険の基本なのに…」
仕方なさそうに肩を竦める。
「では、僕が代わりを出しておくよ」
言って、呪文を唱える。
「たゆたう小さき粉、光の粒。
集まりて、紡げ」
ライト・クリスタルの魔法だ。
シーザーの掌中から輝く光の晶石が生まれて、周囲を僅かに照らした。
「これが僕が唯一使える魔法だからね」

「あいにく持ってない。」
と言い、参ったな。と頭に手を当てて笑った。

「こちらこそね。
…それにしても、この霧は深いね。何も見えない。
明かりを付けた方がいいと思うのだけれど？
ランタンとか、持っていないかな」

シーザー＜

「そうだな。ゆっくり行くか、何時何が起きてもいいように。んじゃ、よろしく頼むぜ。これから」
と笑顔で言った。

ヴィッシュ＜

ひょいと肩を竦めて、
「あなたに全て任せるよ。
今はあなたがリーダーだからね」
表情を穏やかなものに変えてヴィッシュを見る。

目線を前方に向けたシーザーは、再び厳しい眼差しを霧に戻した。
腰から剣を引き抜くと、

ヴィッシュ＜

「どちらにしても、何時何が起きても大丈夫なように心構えはしておかなくちゃならないようだけどね」

シーザー＜

「さて、どうするか。慎重にいくか。一気に突っ切るか？」
とシーザーに聞いた。彼自身は、
（突っ切るのはおそらく無理だろう。・・・・この気配からしてが何かありそうだ）
と感じていた。