ウィルバー・ラング

リア<

「よし。引き受けた」

ウィルバーはシルヴァードへ移動しました。



 

受付嬢リア


ウィルバー<

「これは、シルヴァードの方の依頼なのですけど。
シルヴァードの共同墓地の墓守のギュンターというおじいさんが、最近、毎夜毎夜現れる悪霊、幽鬼などに困っているそうなんです。
魔法の心得があるひとか、祝福された武具を持っている人が欲しいみたいなんですけど…。やってみます?
報酬は、まあ、満足できる額を用意すると仰っていますが…」
こそこそと耳打ちしてから、「どうでしょう?」と微笑んで見せた。



 

ウィルバー・ラング

リア<

「何々?教えて」
 ウィルバーは妙に嬉しそうに顔を寄せた。



 

受付嬢リア


ウィルバー<

「あの…ギルドに届出のある仕事は確かにもうないんですが…」
リアは周囲の様子を確かめてから、ウィルバーにこっそりと耳打ちする。
「ギルドを通さない依頼でしたら、一つあるんですが、聞きます?」



 

ウィルバー・ラング

(残念だね。仕事はないのか)
 内心の無念とは裏腹に、ウィルバーは微笑んだ。リア嬢に向けてのものである。
「手間を取らせたね。ありがとう」と、礼を言う。
 働かざるもの食うべからず―。幼年期に叩き込まれた教えの所為で何となく落ち着かない気分ではあるが、無闇に慌てても仕方がない。
(まあ、リアちゃんは可愛いし。彼女に巡り合えたことを、神に感謝しようっ♪)
 いい年をして、気楽な男だった。


 

GM

ウィルバー・ラングは、一人、ギルドに入った。
竜追いとして登録してもらうためである。
この「竜追い登録制」を無視しようとする者も多い中、彼は律儀だった。
「可愛いお嬢さんが受付にいてくれるといいねぇ♪」
彼のそんな思いは、図に当っていた。
受付に座っていたのは二十前程度の小柄な女性だった。
ウィルバーは喜んで彼女の受付に行き、竜追い登録の申請を出した。
−100ルディ
申請の間情報収集をしていた彼が知りえたことは、
・今、此処には割のいい仕事は無い。
・受付の女性は名前をリアという。
・リアは現在、特に決まった相手が居ない。
この三つだった。


 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員<

苦笑とも微笑とも判断つかない笑顔を浮かべ、
「では、また後で・・・」
小さく頷き返した。

以降、舞台はシナリオ10へと移行します。



 

戦士フリーダン

レナ<

「では、行くか」

以降、舞台はシナリオ9へと移行します。



 

レナ・ラーカ・フォノエスタ

身も蓋もない言い方をすればただ単に1人で手柄を立てるために先走る…と言うだけの仕事だろう。
でも、確かに公に……また仕事を受けるかどうかわからない相手には言う事は出来ない。
言った時点でそこから情報が漏れてしまう可能性が大きい。

彼女は覚悟を決めて大きな深呼吸をした。

フリーダン<

「……はい」
その返事は今自分に出来ること、その覚悟の篭った瞳だった。



 

ギルド員

リューイ<

「ああ、可能だよ。
元々冒険者に対する情報提供が俺達の仕事だからな」
任せておけ、と言う様に親指を立てて見せた。
「じゃあ、もう行くんだな?
さっきも言ったように、後から魔術師の奴を追わせる。
奴には奴でそれなりの準備もあるだろうから、少し遅くなるかもしれないが、まあ、確実に追いつけるはずだ」
何せ、魔術師だからな。
と頷きかけた。



 

黒髪のノーイ

リューイ<

彼が考えていることを見透かしているように、くすりと笑む。
既にその表情からは不安は見えない。
リューイに対して、安心しきっているようですらあった。
「ええ、よろしくお願いします」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員<

少し考えるように首を傾げ、頷く。
「はい、そうします。」
言った後、苦笑に近い表情を浮かべて言葉を続けた。
「無事に帰ってこれたら、彼女の記憶探しをしたいんです。
行方不明の女性の情報・・・もしくは、そんな事件・事故が今までにあったかどうか、ギルドは調べてくれるでしょうか?」
本来はそれが目的だったと付け足して頬をかいた。

ノーイ<

「・・・何かわかるといいね」
わかるよ、と断言できずにそんな台詞を返す。
(頼りにならない言葉だな・・・)
そんなふうに思いながら、小さく笑みを浮かべた。
「まずは仕事がんばろう。よろしく、ノーイ」



 

戦士フリーダン

レナ<

「……よし、よろしく頼む。
それじゃあ、依頼の内容を話そう。
――といっても、別に口外し難い仕事という訳でもないがね」
フリーダンは、やや声を潜めてその仕事に付いて話した。

最近、ミノッツ周辺に、ある盗賊団がやって来るらしい。
名を“ホルン歓楽隊”というもので、迅速な「仕事」が得意だとか。
その盗賊団と因縁があったというフリーダンは独自の筋からその情報を得て、自分の手でホルン歓楽隊を壊滅させようと企図した。
だが、聞いた情報よりやや早く、盗賊団はミノッツの近辺まで来てしまったそうだ。これ以上時間が経つと、国にも知られてしまい、他の冒険者達に先を越される恐れもある。だが、予想以上に早い決戦の為に、フリーダンの方は準備不足で、やや心許無い。
為に、相棒の盗賊を偵察に残し、彼はギルドまで急行して、援助を求めに来たという。
「出来るだけ無関係な者の介入は避けたいからな」
それが、依頼の内容を明かしたくなかった理由だそうだ。

レナ<

「レナ、お前さんには、奴らの撹乱を頼みたい。
だから、それほど気負う必要は無いだろう。
……今すぐにでも奴らの場所に赴きたいが、用意は出来ているか?」



 

レナ・ラーカ・フォノエスタ

フリーダン<

「あっ、ごめんなさい。私ったらすっかり忘れて」
お嬢さんと呼ばれてふと思い出したかのように慌てて大きなお辞儀をする。
「私はレナ……レナ・ラーカ・フォノエスタです」
そう言って次の言葉を言うのに少し時間があった。
「ところで……否応ってことは、口外しづらいようなお仕事ってことですよね?」
そう言い返答に悩む。

心中で<

(みたところフリーダンさん……普通の一介の冒険者って言うほどのレベルじゃなさそう。
さらにこの人が好き嫌いは出来ずに戦力を探すってのが、この人の抱えている仕事の大変さを何よりも語っている。
実際私のような中途半端な……なによりこんな格好をしているけど闘った記憶があるかすらわからないのにそんなに安請け合いをしてしまって…………………)
彼女自身も気付かないような特技…いや、彼女からみたら常にこれが日常だから他のひともこうあるものだと思っているかもしれない。
意味が有る無い関係なしで思考の回転が普通の人よりも何倍も早い。
実際これ以上の考えが頭の中を駆け巡っているのだがやはり実世界の時間で表すのならそれほど時間がたっていない。
…………人からみたら決断ごとを何も考えずに直ぐに受け答えしているような感じにも見えるところが哀しいかもしれない。

フリーダン<

レナは意を決したように言葉を発する。
「私で宜しければお手伝いさせてください」
――――と

心中で<

(今は自分のことすらわからないけど……今の私は、私に出来ることをやるしかない)



 

ギルド員

リューイ<

「ああ、解った。
じゃあ俺から連絡をつけておくから……、
どうする?
先に向かうか?」



 

黒髪のノーイ

リューイ<

少し不安そうに、頷く。
「ええ、勿論、構いません。
…魔術師の方ですよね。その方は、私のことも何か解るでしょうか?」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員<

「はい、お願いします。僕も駆け出しですから、経験者がいてくれると心強いですし。…もちろん、その方が良いと言ってくださったらですけど」

ノーイ<

「それでいいかな?」
確認するように尋ねた



 

戦士フリーダン


胸中で>

「あまり、理解しているようには見えないが…」

レナ<

「そうか。
ああ、失礼をしたな。
俺はフリーダン。見ての通り、冒険者などをやっている。
出来るだけ少数で仕事をするのが常なんだが、今抱えている仕事の内容が、な。
好き嫌いをいっていられない状態にある。
だから、少し戦力を探していてな。
もし、お嬢さん。君が良ければそれを手伝って貰えないか。
その仕事の内容は、否応を聞いてから話そう」



 

レナ・ラーカ・フォノエスタ

フリーダン<

「えっ……えっ?」
イキナリ声を駆けられて戸惑う

心中で<

(視線に気付いたって????
で……でも、いきなり話し掛けて…………
あっ…でもギルドとか言う所って冒険者が仲間とか探すからそれでいきなり話し掛けることもあるとかないとか。
でも、この人はどうして私なんかに話し掛けたのかな?
やっぱり、この真っ黒な服と妖しげな鎌のせいなのかなぁ…)
口にして表したとするならその間約3秒……ものすごい勢いで頭の中を様々な思考が駆け巡っている。

フリーダン<

「え……えっとぉ……はい。仕事……探してます」
かなり口調が固い。そして何か言い辛そうにして次の言葉を紡ぐ。
「あのぉ………あなたは?」



 

戦士フリーダン

ギルド員<

「…何かいい人材が見つかったら教えてくれ」
告げて、その場を離れてレナの方へ向かう。

レナ<

「俺の視線に気がついていたようだな、お嬢さん?」
ギルドの隅に立っているレナにそう声を掛ける。
「仕事を探しているのか?」



 

レナ・ラーカ・フォノエスタ

ギルド員<

「えとえと……そ、それじゃ、お願いしますね」
どもりながらもギルド員に大きなお辞儀をする。

レナは落ち着かないような素振りで、他にギルドに用事のある人の邪魔にならないように隅に移った。



 

戦士フリーダン

フリーダンは、ギルドに入ってきた少女にふと目を向ける。

胸中で<

「……ふむ、鎌か、珍しい武器を使う。
……しかし、まだ年端も行かないがそこいらの駆け出しよりは使えるようだな。素質も、あるようだ。案外、育てれば化けるかも知れんな」
数秒観察して、それだけの事を見抜いてみせる。



 

ギルド員

レナ<

ギルドに入ってくるなり仕事の有無を聞いてきた少女を凝視して、一言呟く。
「参ったな…」

胸中で<

「少女か…。参ったな、ある程度の年齢を行っていれば仕事に失敗しても未熟の一言ですむんだが…」

レナ<

「ああ、いや、気にしないでいい。
…それで、仕事か?
初心者にでも出来る仕事…か。
……ちょっと待ってくれ、調べてみる」
ギルド員は纏めてあった書類を全て机の上に散らして調べ始めた。



 

レナ・ラーカ・フォノエスタ

「にふ〜〜〜〜」
それは彼女の口癖とも言うべきものだった。
ギルドの扉を潜り抜けてきたのは奇妙な弧を描く武器をもつ少女だった。
全身を黒い色調の服で覆い、死神の持つ鎌をその手に……
それだけ見るのならば死神と思ってもいいのだったが、そんな雰囲気を微塵にも出さない物があった。
まだ年端も行かない少女だったことだ。
これが…彼女の物語の始まりだった。

(えっとぉ……目が覚めたらここの裏手の森だったし……まずは何よりお仕事をして信頼を得なさいって神のお告げが)
レナは思うなり窓口に進む。

ギルド員<

(んっと……何も覚えてないんだし冒険者でいいよね?)
意を決したように彼女は口を開いた。
「あのぉ、駆け出しの冒険者なんですけれど、何か初心者に任せても大丈夫そうなお仕事ってありませんかぁ?」
微妙の気の抜けるような語尾だった……どうやらまだ堅いらしい。



 

ギルド員

リューイ<

「なるほど、記憶喪失か。それは、大変だねぇ…」
感心したような息を吐き、ノーイを見やる。
「すると、あながち俺の勘も間違いじゃないかもな。以前、魔法使いだったんじゃないか? ――って、今使えなけりゃ意味はないか。…手の空いている奴か…、そうだな、駆け出しよりは箔のついている程度の魔術師の男がいるが、そいつにあたってみるかい?
今のところ、それ以上に使える奴は居なくてね」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員A<

「キナ臭い・・・確かに、そんな感じがします。」
何か隠されている、そんな気がした。
気をとりなおすように視線をあげて、軽く頷く。
「忠告、感謝します。・・・ありがとう。」
ギルド員の言葉にノーイに視線を移し、
「彼女が魔法使いかどうか・・・彼女自身にもわからないんです。
実は―」
手短に、自分達がここにきた当所の理由を告げる。
「もちろん、僕は彼女を守ります。
でも、・・・そうですね。彼女の安全を確保するなら、もうひとりかふたり一緒にいってくれる人を探した方がいいのかな。
誰か、信頼できそうな人を紹介してもらえませんか?」



 

戦士フリーダン

ギルド員B<

「訊きたい事があるんだが…。
今手の空いている、俺とまでは行かないまでも腕の立つ奴に心当たりは無いか。
いたら、すぐにでも連絡をつけたいんだが」
野性的な顔立ちの視線に色の感じられない男は、やや性急に告げる。



 

GM

受付に早足で向かう者がいた。つい今しがた入って来た、旅装の精悍な男だ。


 

ギルド員

リューイ<

リューイの言葉にやや考え込み、そして頷き掛ける。
「俺もその解釈でいいと思うよ。
国には、こちらから確認しておこう」
言ってから頭を掻き、やや声を潜めて告げる。
「…これは俺の勘ってだけだから、大して注意して聞かなくてもいいんだけどさ。この依頼、何だかキナ臭い。
国から降りてくる依頼の大抵は、なんていうか…そう、もっと『清潔感』みたいなものがあるんだけど、これにはそれが感じられないんだ。
妙な手が回っているんじゃないか、っていう気はするな。
いや、君の言葉で改めてそう思ったんだけどな」
そして、ノーイの方に向かい、
「ところで、さっきの話、つまりお譲ちゃんは別に魔法使いって訳じゃないのかい? 何だか、ここにくる魔法使いの連中と同じような空気を纏っていたからそんな気がしたんだけど」
続いてリューイに、
「だったら、この娘は連れて行かないほうがいいかもな。
何かの安全策か、身を守る手段がこの娘にないなら、君が守ってやらなくちゃいけないね」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員<

「それじゃあ、依頼の内容を確認しますね。
『黒衣の魔女の討伐』 ・・・これは、『ノーム森林の魔物の沈静化』と
同義と考えていいでしょうか?
この依頼のそもそもの理由は森近隣の町村からの上訴ということですし。あくまでも『魔女の討伐』が依頼達成の条件というのなら、1度依頼主にお話を聞きたいのですが。」
人の生死に関わる依頼に、何も聞かずに行くわけにはいかない。
口調は静かなままだが、視線を強いものへと変えて尋ねた。



 

黒髪のノーイ

リューイ<

リューイの言葉を真面目に取って、不安そうな面持ちながらも頷く。
「あの…、はい、あなたがそう言うのなら」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア


ギルド員<

「・・・とりあえずその『魔女』に会わないと何もわからないということなんでしょうね。関わっているのは確からしいですから。」
問い掛けというより、自分に言い聞かせるように呟く。
「・・・魔術師?彼女が、ですか?」
やや呆然といわれた言葉を復唱した。

ノーイ<

振りかえると、自分と同じような困惑の表情がそこにある。
(今初めて知りました、って顔だよな・・・)
(記憶をなくしているんだから、あたりまえか。)
肩をすくめるようにして、体ごと向き直る。
「・・・実践あるのみで、試しにいくかい?
頭じゃなくて体で覚えているかもしれないし。」
つとめて明るい口調でそう尋ねた。



 

黒髪のノーイ

ギルド員<

「え? わたしが……ですか?」
呟き、

リューイ<

戸惑った風にリューイの顔を見上げる。
(わたしは魔法使いに見えるのだろうか)
(だとしたら、以前のわたしは、そうだったのかもしれない……)



 

ギルド員

リューイ<

リューイの言葉に、「確かに」と頷く。
「よく考えるとそうだなぁ。あやふやだ。
国から降りてくる依頼は、そういえば普段はもうちょっと具体的なものだったんだが……」
首を捻って暫く考えるが、特に閃くものは無かったらしい。気を取り直した風に顔を上げる。
「あれ、魔術師をご所望なのかい?
オレはてっきり、その娘が魔法の使い手だと思っていたんだが」
と、リューイの傍らに寄り添うノーイを示す。



 

リューイ・イシル・ウィンダリア


ギルド員<

「・・・わかりました。この仕事、引き受けます。
けど、『魔女の討伐』といっても・・・具体的にはどうすれば?
何か、話を聞いているとその魔女が魔物を操っているのかどうかもあやふやですよね?」
パルマ四世陛下のお聞きになった言葉も、
『黒衣の魔女が全てに関わっている』
というだけですし、と首をかしげる。
無関係でないということと犯人かというのは、同じではないはず。
(何にしても、会ってみないとわからないか)
「ずいぶん力の強い人のようですね。
僕は魔法にはあまりくわしくないので・・・魔法を使える方で一緒に仕事をしてくれそうな人って、いますか?」
人で溢れたギルド内を見渡し、尋ねた。



 

ギルド員

リューイ<

「うん? ああ、勿論大丈夫さ」
頷き、ギルド員は<黒衣の魔女>とその依頼について述べ始めた。

黒衣の魔女とは、
何年も前からもう名の知れていた魔法使いの呼び名だった。
ミノッツの東部に渡るカルネニア山脈の西端、ミノッツ首都から五日ほどの行程にあるノーム森林の中に屋敷を構えているという。
滅多に人の前に姿はあらわさず、稀に見た人物によって、その言葉は様々だった。或る者は絶世の美女と言い、或る者は年老いた老婆と言いまた、或る者は奇形の化け物と言う。しかし、共通した言葉が、一つ。
『深黒色の衣を纏っていた』
だから、<黒衣の魔女>。
近隣には彼女の逸話が幾つかある。
未だミノッツに魔物の威が溢れていた頃のことだが、魔物の群れがある町を襲った時、稲妻の雨を降らせてそれを殲滅し、代償として一人の少女を連れ去ったというものや、生まれつきに視力を持たない者に目を与えたというものなどだ。
ここ最近は、使い魔に町まで買い物に来させたりギルドを通じてある薬草の採集を冒険者にさせるなど大して目立った事はしていなかったが、いずれにせよかなりの力を持った魔道士である事は間違い無いだろう。
一月ほど前からノーム森林に凶暴な魔物が巣食い、野生動物たちを殺し森を荒らすという事態が起きた。中には森から出て近隣の町村を襲うものもいるらしい。上訴を受けたパルマW世が神に問うた所、『黒衣の魔女が全てに関わっている』という応えがあったという。
そして、各地のギルドに依頼が降りたのだ。
『黒衣の魔女の討伐』

「で、どうだい?
結構な仕事だけど、君なら何とかなりそうな気がするよ〜」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ノーイ<

言葉に込められた信頼に耳元が赤く染まる。
それだけのものを向けられる資格なんて、自分にはないのに。
わかっているのに、嬉しいと思ってしまう。
「ありがとう・・・。」
何があっても、守るから。
言外にそう告げて、軽く瞳を和ませた。

ギルド員<

「では、まず依頼内容の詳しい説明をお願いします。
何分、その『黒い魔女』の噂というのを聞いたことがないので・・・。
受けるかどうかの返事はその後でよろしいでしょうか?」
向き直り、どこまでも真面目な表情で頭を下げた。



 

黒髪のノーイ

リューイの真摯な言葉を受け止め、くすりと笑む。
そう深く知っている相手でも無いのに、何故か安心できるこの人に、ノーイは穏やかに告げた。

リューイ<

「わたしは、あなたに全てを任せてしまいましたから」
言葉に揶揄は無い。そして、微塵の不安も無かった。
全面的な信頼、それが拠って立っている事が不思議なくらいに、全幅の信頼があった。彼女自身、何故それ程に彼を信じているのかは分からないが、しかし、それは先程から小揺るぎしない。
何もかもが分からない中で、それは確かなことだった。
「信じています。
だから、大丈夫。
良かれと思う事を、してください」



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

うーん、と小さく唸る。
自分の中での優先順位は、ノーイの記憶を取り戻すこと、だ。
しかし、この国でノーイの記憶が取り戻せない場合、他の場所へ行くことになる。
それまでの旅費や何やらを考えると、仕事をこなしながら移動するほうがいいとは思っていた。
けれど。

ギルド員<

「すいません・・・ちょっと待っていただけますか?」
ぺこり、と頭を下げてそう声をかけた。

ノーイ<

「君は・・・どう思う?」
軽い困惑を目に浮かべて、彼女に向き直る。
「いろんな所へ行って、いろんな場所や人を見るのもいいと思うんだ。
この国で、君の記憶をみつけることができれば一番だけれど・・・。
それが無理だったら、他の所へ行くことになる。
だから、今回仕事をするのはその練習にもいいとは思う。」
だけど・・・と言葉をとめて、視線をさまよわせる。
ほんの少しだけ、表情を変えて。
「・・・その、やっぱり危ないこともあるから。
君が嫌だったら、この仕事は受けない。
君の記憶探しが、一番大切なことだから。」



 

ギルド員

リューイ<

「ん、魔女に興味があるんだね。受ける?
それとも先に説明でも聞くかい?」
ギルド員はリューイのここへきた目的を完全に取り違えていることに気付かず、勝手に話を進めていた。



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ギルド員<

立て板に水、といった感じでまくし立てられ、リューイは反射的にひいていた。
(仕事の依頼ではなく、質問があっただけなんだけど)
と、つっこみたいのだが口がはさめない。
喋るのが苦手、ということもあったが、それ以上に
「人が話しているときはしっかり聞くこと」
と幼い頃徹底して言われてきたためだった。
何度か口を開きかけ、それでも結局は最後まで話を聞き終える。
「・・・『魔女』・・・?」
怪訝そうに―見た目ではわからないが―呟く。



 

ギルド員

リューイ<

「うん? ああ、仕事の依頼かい?」
ギルド員はリューイの顔を見て、そして早合点して頷く。
「うん、君は結構腕が立ちそうだね。
仕事だったら、これなんかどうだい?
『彼の“黒の魔女”の討伐者を求む』
まあそのまんま、あの有名な魔女を討伐してくれって依頼さ。
君だったら割と良い線行くと思うんだけどねー。
ああ、まあ、それなりの仲間も必要だろうけど。
どうだい?」
ここのギルド員は偉く軽い性格をしているらしい。
ぺらぺらとまくし立てるようにそう述べた。



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ノーイ<

「うん・・・そうだね。
とりあえず、若い女性の捜索願いが出ていないか聞いてみよう。
君がこの街の人だったら、知っている人がいるかもしれないし。」
人ごみを眺め、軽くため息をつく。
(受け付けまで行くのもたいへんだな・・・)
行こう、とノーイを促すと、リューイは人ごみをかき分けるようにして歩き出した。

ギルド員<

なんとか顔が判別できる距離までくると、ギルドの職員に声をかけた。
 「あの、すみません!ちょっと伺いたいんですが・・・」
喧騒に負けないよう、幾分声を張り上げる。
少年の域を出ない、澄んだ声が響いた。



 

リューイ・イシル・ウィンダリア

ノーイ<

「うん・・・そうだね。
とりあえず、若い女性の捜索願いが出ていないか聞いてみよう。
君がこの街の人だったら、知っている人がいるかもしれないし。」
人ごみを眺め、軽くため息をつく。
(受け付けまで行くのもたいへんだな・・・)
行こう、とノーイを促すと、リューイは人ごみをかき分けるようにして歩き出した。

ギルド員<

なんとか顔が判別できる距離までくると、ギルドの職員に声をかけた。
 「あの、すみません!ちょっと伺いたいんですが・・・」
喧騒に負けないよう、幾分声を張り上げる。
少年の域を出ない、澄んだ声が響いた。



 

黒髪のノーイ

竜追いの冒険者達が溢れんばかりにしているギルドの中を見渡し、ノーイは感銘を受けたように息を吐いた。
自分は、今までこれほど多くの人がいた空間にいたことはなかったのだろうか。あまりに新鮮な空気であり、感覚だった。もしかすると記憶が無いからかも知れないが、それでもそれは不快ではない。

リューイ<

「…、ええと、これから、情報を集めるのだったでしょうか」