PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

大魔術師王国イ=サード
ロトッカ地方の大国、自然を重んじる緑の国。
若王セイフレイが統治する。彼は緑色の賢王と呼ばれており、
その名に恥じない素晴らしい政を行っている。

:大魔術師王国 叡智の塔:
 魔術師を志す才能ある若者や、魔術に関する研究者を広く集めている、魔術学園ともいえる場所。
 設立者は、漂泊する賢者であった“烏”のカラディステイ。
 運営は国家に援助されており、強い志さえあれば入学できる。

 政務の合間に賢王セイフレイが訪れることもある。
 セイフレイ自身、大陸で有数の魔術師で、失われた魔術もいくつか会得しているそうである。
 その片鱗でも掴もうと、彼が訪れた時には引く手数多。多くの生徒達が議論を吹っかけるようだ。
 普段は笑って躱すセイフレイだが、気分が乗れば、時も忘れて話に興じる。

投稿(件名…大魔術師王国 叡智の塔)
戻る




GM

 受付がある場所はすぐに分かった。
 大体、こういった建物の、こういった機能の施設は一番目につくところの、一番人が多く集まっているところにあるものだ。

「………」

 受付の奥で、術師らしいローブをつけた女性が、何やら興味深そうに泉を見ている。風体が珍しいからだろうか。



 リュンクスの子供の頭を不安そうにしながら撫でてみる。

独り言<

「とにかく、聞いてみなければ何もわからないじやない...」

「よし!」

 小声で気合をかけて、一番大きな塔に入って受付を探す。


GM

 泉たちは叡智の塔にやってきた。
 真っ白く塗られた塔が幾つも立っている。その中でも、一際高く大きな塔を、多くの学徒が出入りしている。
 そこが、総合的な機能を持っている場所だろうと推測される。
 受付を探すなら、そこではないだろうか。



 叡智の塔に入って目立たない隅に移動すると恐々と中の様子を調べて見る。
 先ずは、ギルド員イッサに言われたとおりに受付の女性に声をかけるべきなのだろうが、それらしき感じの人がいないかどうか探し始める。


フラック

「これが叡智の塔かー」
 きょろきょろみまわしている。
 泉が進んでいくならついていくが、もしかしたら途中で面白そうなものをみつけたらそっちにいってしまうかもしれない。
 てくてくと歩いている。


GM

 次にマナは、アスファ導師の研究室の前へやってきた。


アーネー

マナ<

「はいよ。ま、いつでもいる訳じゃないが。いつでも来て見りゃいい」
 背中を見送り、研究室へ戻る。


マナ

アーネー<
 
「ありがとうございます。おかげで色々分かりました。
 立ち話が長くなるのも何ですし、あとは何か面白いことが分かったり、お尋ねしたいことが出来たらまたお伺いしますね。
 それでは、失礼しましたー」


アーネー

マナ<

「なるほどな」
 頷く。
「ま、調査の術程度に、極端なカウンタースペルが施されていることはなかろうが。ものによってはあるぞ。
 わたしなんかが潜る、研究所の遺跡の中とかな。そこの主が記録していた秘密のメモ――の機能を果たす魔法具――なんかがそうだったりする」

ブルーシーカー<

 眉をひそめる。
「聞いたことがないな。……いや、“シーカー”か。聞いたことがあるかも知れないな」
 頭を掻く。
「いや、思い出せん」

紋章魔術の空白部分<

「主幹部分。
 アナライズでいうなら、その他のさまざまな補助的な式はありながらにして、肝心の“解析を行う”部分の式が抜け落ちている状態だ。
 推測はできるぞ。お前さん、テレポート……無理か。アポートマジックは使えるか?
 あの辺の式と似たようなものが入るんだろう」

防御の魔法陣<

「そういやそうだな」
 今更気がついた、という顔をする。
「危険か。あるかもしれんな。
 何かを召還するんなら、召還した奴から身を守るか……使用する環境が危険で満ちていたのかも知れないな」

面白い研究<

「そうだな、自律的に防御陣を維持する魔法具ができれば、それこそ戦闘から研究から、いろいろと役立ちそうだ。
 おまえさん、作って見りゃいいんじゃないか?」
 けしかけてみる。


マナ

アーネー<
  
 防護の術が刻まれていることを聞いて、目を丸くしながら、

「アナライズはわたしが偶然成功させたんですが…
 防護の術とかの可能性もあったんですねぇ。
 妙な効果は起こりませんでしたが、危ない危ない」
 
名の紋章<

「“青”と、“探す”、“魔”ですか…”アナライズ”で調べたところ、
召還されるものが”ブルーシーカー”という名称らしいんですが、更に“魔”という言葉が追加されましたか…
 魔物関係だったら危ないですし、重々注意が必要ですねぇ」

魔術式の途中に空白<

「空白部分ですか…”ブルーシーカー”とか名前を魔術で唱えてみるとかかな?
 空白部分について、どういう部分が欠損してるかとか、判りますでしょうか?」
 
“陣”と“防壁”を現す紋章<

「防護の魔術がかかっているということは、
 何かしらの危険に遭う可能性があったということでしょうか。
 だんだん危険な代物に見えてきましたねぇ。
 でも、わたし達が使う”魔力の防壁”とは少しタイプが違いそうですし、この防御の魔法陣は実験してみたら面白い研究になるかもですねー」


アーネー

マナ<

「汚い状態で客を入れるなって弟子からいわれているんでな」
 苦笑いして頭を掻く。

「“アナライズ”が効いたのか。イリアの姉貴がうまくやったのか? あの時代の魔法具には大抵、防護の術が刻まれているから、相当注意して無効化しなきゃならない。もしくは、調査の魔術を強引に食い込ませていくかだけどな。
 さて……本格的な話になりそうだな。ま、手短に行くか」

魔法具が見つかった遺跡や状況<

「住居兼研究所だ。
 場所は北海王国、氷湖の南東にあたる山岳だ。
 さまざまな魔法具が埋もれていた(遺跡に物品があることをさして、こう表現することがある)。
 その魔法具は、研究室のひとつにあった。机の上に置かれていたという方が正しいな。
 恐らくは、遺跡の持ち主のさまざまな研究の、成果のひとつなんだろう」

魔法具に使われている紋章魔術<

「おいおい、残念だがわたしは紋章魔術は専門じゃないぞ。
 使うのに慣れちゃいるがね。
 まあ、いいか」

「主なエレメンタルは、空間と夢。多くの細かい紋章や、意味を成さない意匠に巧妙に隠されているがね。
 これは、ある時代の、特定の種類の魔術師たちの中で行われていたことで、競合者や敵に、技を盗まれないためにされる。そこから、あの魔法具が造られた時代は古代王国の中期から後期であり、作り手は純粋な研究者としての魔術師であることが推測される。

 それから、名の紋章が刻まれている。あまりに長い上に装飾的過ぎてわたしには読めなかったが、“青”と、“探す”、“魔”だけは分かった。

 それと、幾つかの紋章は魔術式だ。
 一番明確な機能は、お前さんの言うとおりに“召還”だろうな。空間と夢のエレメンタルはこのために刻まれているんだろう。名の紋章で対象を定め、門を開き、召還するのだと思う。
 だが、魔術式の途中に空白がある。意図的に外したのか、それとも完成直前で止めたのかは分からん。式の主幹となるべき部分がないから、何らかの手段で――声音なりなんなりの魔術――で補ってやるか、それか紋章自体を刻んでしまなわきゃ、この機能は働かないだろう。

 そんなところか……?
 いや、あともう一つあったな。
 “陣”と“防壁”を現す紋章があったな。魔術式は単純で、トリガーも簡単に分かった。
 地面に魔法具を置き、青水晶に触れながら、魔術を使うときの集中を保持しながら『術を成すものの保護』ってのを古代語で唱えればいい。
 大体2.5m程度の直径の円が生成される。機能を試しちゃいないが、防御の魔法陣を生成するんだろうな。

 他にも紋章があったが、残念だが解読できなかったな」


マナ

アーネー<

「そんなに長くはならないつもりですので、ココで大丈夫ですよー。
 部屋が余所様に見せられるようなもんじゃないって…今更ですよ?
 整理が必要になれば、お手伝いしますので声掛けてくださいな」
 
 すこし声のトーンと落とし、
 
「水晶球の魔法具なんですが、イリア先生から、研究の許可が出たんです。
 ”アナライズ”で断片的な情報は分かったんですが、
 どうも、異界からの召還を行う魔法具らしくて、下手に実験が出来ないので、まずは、導師からのお話や図書室での調べ物が研究の中心となりそうなんです。
 それで、この魔法具が見つかった遺跡や状況、魔法具に使われている紋章魔術についてお尋ねしたくて。
 遺跡研究や紋章魔術については、アーネー導師にお尋ねするのが一番ですしね」


アーネー

 がちゃりとドアが開き、見覚えのある顔が出てくる。
 三十半ばほどの男で、ぱりっとシワの伸びたローブを着込んでいる。

マナ<

「イリアんとこのマナか」
 あくびをひとつ。
「悪いが弟子が長いこと外しててな。
 部屋の状態は、弟子曰く余所様に見せられるようなもんじゃないらしいから、ここで良いか?」
 足元を示す。
 立ち話を希望しているようだ。
 それからふと、頭を掻き、呟く。
「姉貴のとこにやった奴か……」


マナ

アーネー<

「この前、アーネー導師からイリア先生の所に持ち込まれた水晶球の魔法具について研究しようと思っているんですが、少しお話大丈夫でしょうか?」


GM

「おー」
 間延びした声が答える。
 いるらしい。


マナ

「打ち壊されたアーネーの砦、ですか…
 ココ、色々な物が散乱してるから、片付けようとすると
 資料や物の内容が気になって全然進まないんですよねぇ」
 
 苦笑しながら控えめにノックを行う。
 
「マナですが、アーネー導師、居られますかー?」


GM

 マナはイリアの研究室を出て通路を渡り、階段を上っていく。
 アーネーの研究室は、“新層階”(イリアの研究室があるような、塔が建てられた当初から、新たに建てました部分をいう)にある。
 これはアーネーがイリアよりも若手であることを示すわけではなく――二、三歳は年下だったはずだが――、単に彼が、旧層階の研究室ではとても収めきれないほどの荷物を持ち込んでしまうために、手広い新層階への引越しを余儀なくされただけに過ぎない。
 もっとも、彼のようにさまざまな資料や、種種の物品を溜め込む導師というのは珍しいことではない。
 そういった導師は、基本的に自分で整頓したり、自分の弟子に片付けさせたりする。
  アーネーの場合はそこに問題があり、彼自身が片付けが苦手でしないこと、弟子もなぜだかこないし、来てもすぐにいなくなってしまうことなどが合わさって、 「アーネーの砦」なる言葉(意味は、「整理しなければならないが、とても片付ける気の起きない、部屋の様子」)が塔の中だけで通じる用語として生まれてし まったりすることになっている。
 もっとも、イリアの話では、アーネーにも久しぶりに弟子が入ったらしく、「砦」も見事に打ち壊されてしまったようだが。

 ……マナは、そんなアーネーの研究室に到着した。



イリア

マナ<

「気をつけてね」
 一時期の、混沌とした研究室の様子を思い出してそんなことをいう。


マナ

イリア<
 
「アーネー導師が不在でしたら、メモでも挟んでおきましょうかねー。
 この魔法具が見つかった遺跡や状況、魔法具に使われている紋章魔術とか色々お尋ねしたいですし。」
 
 暫く行き先について思案し、考えを纏めながら、
「研究の事でご相談がありますので、戻ったらお知らせください。 マナ」
 と、アーネー導師宛のメモを書いておく。
「まずは、アーネー導師の居室と図書室に行ってみようと思います。
 ある程度研究が進むか、行き詰ったらアスファ導師に相談してみようかと。
 それでは、ちょっと行ってきますねー。」


イリア

マナ<

「そう……」
 イリアは聞いたことがないようだ。
 もっとも、自分の研究と関わらない同僚の名前など全く知らないという導師など、この塔には幾らもいる。
「20代半ばというのは、かなりのものね。セイフレイ陛下が導師級として認められたのは23歳で、最年少の20歳に次ぐ記録だったから、もしかしたらその次かも知れないわね」
 それから、頷く。
「機会があったらわたしも会ってみようかしら。
 持ち出すのもいいけれど、くれぐれも扱いには気をつけて。
 ……でも、アーネー導師は役に立つかしら?
 あいつ――」
 といいかけて言い直し、
「彼は留守にしていることのほうが多いから。でもまあ、聞いてみるのもいいわね」


マナ

イリア<
 
「はーい、なにかあれば相談しますねっ」
 
 心配するイリアにくすくす笑いながら、アスファ導師のことを答える。
 
「アスファ導師は、前に研究のお手伝いで知り合った導師ですね。
 時空間の研究が専門で、20代半ばで導師になった優秀な方ですよー」
 
「そういえば、この魔法具、持ち出しても大丈夫ですか?
 見て貰った後はここにすぐ持ち帰りますけど、アーネー導師とアスファ導師に見て貰おうと思うんですが」


イリア

マナ<

「じゃあ、あなたに任せるわ。
 こういった研究をしてもらうのって、初めてだったかしら。くれぐれも、気をつけてね。
 何か気になることや分からないことや不安なこと、何でも相談しなさいな。いいわね」
 このあたり、母親めいた話し方になってしまっている。
「アスファ導師……」
 首をかしげる。
 イリアの記憶にはないようだ。
 それも仕方のない話であり、この塔で導師の肩書きを持つ者の数は100を優に超える。
「どんな人?」


マナ

(勢いよく首を縦に振って)
 
イリア< 

「ぜひぜひ、喜んで研究させてください。
 見習い程度の腕では難しそうですが、何事も挑戦ですし。
 扱いは慎重にしますので、お任せください。」
 
(少し考え、苦笑しつつ)
 
イリア<

「アーネー導師、ですか。研究室の掃除は大変だったでしょうね。
 詳しいこともお聞きしたいですし、後でアーネー導師の所に行ってみますね。」
 
(さらに考えつつ、時空間に詳しい導師で親しい導師がいないか考える)

 幸運判定:
  マナ:完全な成功(クリティカル)!


 そういえばマナは、時空間を研究している導師に知り合いがいる。

 魅力判定:対人関係
  マナ:優秀な成功!


 仲も問題ない。

 その導師は男性、年齢は27歳。
 その年齢で、そしてこの叡智の塔で導師級と認められているのだから、相当な腕を持っているか、よっぽど優れた研究をしているのだろうと思われる。
 マナは、個人的にその導師と知己の間柄だ。

イリア<

「時空間の研究については、アスファ導師が専門かな?
 専門的な話はアスファ導師に聞いてみますねー。」


イリア

 マナの解析の魔法が効果を発揮したのを見て、目を瞠っている。
 実のところ、彼女自身も既に解析の魔法は試しており、なんの収穫も得られていなかったのだ。

マナ<

「強力な魔法具……なるほど。
 何かの祭器程度かと思っていたけれど、その線は潰れたわね。何かを召還するものなのだとすると、慎重に取り扱わないと、致命的なことになりそうね」
 “門”を不用意に動かした術士見習いが、門の奥から伸びる巨大な手に掴まれて異界に連れ去られた。というまことしやかな伝説は、大抵の見習いが最初に聞く話である。
 恐らくは教訓話であり、事実ではないだろうが。

「異界からの召還、ということはつまり――」
 と、マナが知っているような事をおさらいを兼ねて話す。
「わたしも専門じゃないから、詳しく調査する必要があったら、わたしよりも時空間を研究している導師に聞くべきかしらね。
 ブルーシーカーというのは、分からないわ。
 何かしら……」
 片腕を組んで考え込む。

「持ち込んできたのは、あなたも知ってると思うけどアーネー導師よ。前に潜った遺跡から発見されたそうなのだけれど、彼自身はあんまり魔法具そのものに興味がないものだから、物置に放置していたそうよ。
 最近、久しぶりに弟子を取ったらしくて。
 その弟子が研究室を大掃除したのね。
 それで、いらないものだからって、わたしのところに持ち込んできたわけ」

 どうしようかしら。と呟く。
 マナが興味津々で水晶を調べていたのを思い、
「あなた、研究してみる?」


マナ

 ”異界からの召還”、”ブルーシーカー”?

 マナは自分の知識を総動員してみた。

異界からの召還<

 これは馴染みがある。
 魔術師たちの間では、自分たちが歩き息をしているこの世界とは、また別の世界というものがあることが確認されている。
 その世界には、人族や亜人族とは違う、全くの混沌とした生物が住んでいるとさえいわれる。
 古代人の遺跡などにおいて、未知の生物が守護者として配置されていることがある。はじめからそこにいることもあれば、何かしらの罠として、突如として出現することもある。
 これらの生物を、遺跡探索を行う魔術師の間では“異界からの召還者”と呼び、前述の混沌の生物であるとしている。

 いずれは、その世界の住人を呼び出す魔術理論も構築されるのではないかと考えられているが、実現はされていない。


ブルーシーカー<

 全く見当も付かない。
 代名詞ではなく、固有名詞だろうとは思える。
 何か特定の個体だ。


 しばらく考えた後、マナは目を輝かせて話し出す。

イリア<

「わたしに分かるのは、主に、古代中期の魔法具であること。 
 魔法具自体に大きく純度の高い魔力があること。
 ”異界からの召還”の魔法具であること。”ブルーシーカー”と呼ばれる存在を呼び出すこと。までですね。
 やはり、魔法具の術式、構造を理解するためにはまだまだ知識が足りませんねぇ。
 先生は、”異界からの召還”、”ブルーシーカー”についてなにか知っていますか?
 それと、この魔法具はどこから持ち込まれたものなんでしょうか?」


マナ

 マナは鑑定を始める。

 知識判定:分類/紋章魔術
  マナ:失敗!

 知識判定:分類/目利き・細工
  マナ:通常の成功!


 一見でつかみ取った限りでは、古代期の中期頃に造られた魔法具だろうと思われた。ある特徴的な装飾があることと、また別の特徴的な装飾が欠けていることなどが理由だ。
 魔術的な能力については何ともいえなかったため不正確だが、芸術的な価値としては、『かなり高い』と思われた。


「よろしければ、訓練にもなりますし、魔術でも鑑定してもいいですか?
 魔力に反応する妙な仕掛けとかは無いと思いたいですが」

 少し首をかしげた後、イリアは頷く。

 魔術判定:分類/アナライズ
  マナ:完全な成功(クリティカル)!


 マナは、驚くほど完全な魔術が行使されていくのが分かる。

 魔術具を通し、魔力が不可視の紋様を宙に描き出す。
 知覚の触手が水晶球を包み込み、一つ一つ、組成を分解していく。

 この置物を成している鉱物、金属はどれも非常に純度が高く、いずれも大きな魔力を秘めていることが分かる。
 まだ紋章魔術を修めていないマナには理解しがたいが、複雑きわまりない魔術が形作られている。
 解析の魔術が伝えてきたその効果は、“異界からの召還”。
 何らかの存在を呼び出す門を生みだすものと知れた。
 そして、最後に一つだけ分かった名詞が“ブルーシーカー”。その、呼び出されるべき存在の名前だろう。



イリア

 興味津々の様子を微笑ましく眺める。
 一考した後、

マナ<

「いいわよ。ただ、いうまでもないとは思うけれど、不用意に触れないで」
 魔法具には、○○しながら触れる、というような起動条件が存在する場合がある。


マナ

「少々相談したいことがあったんですが…特に急ぐ話でもないですし。
 それよりも、コレ、どうしたんですか?」

 マナが見た限りでは、“一般的な古代期の魔法具”だが……。魔法具とは、魔術の使い手によって操られそれを補助する魔術具とは違い、ある条件を満たした場合に何らかの魔法的な作用を引き起こすものをいう。

「水晶球であれば、遠見か魔力集積系の道具でしょうか。
 台座に何か文字とかあれば何かわかるかもですが…
 文様、石の配列自体も術式に関ってるかもしれませんね。
少し触ってもいいですか?」


GM

置物<

 青水晶と翡翠と金属の集合体とも呼ぶべき、不思議な置物だ。
 深みのある青い水晶球が銀の台座に填め込まれており、台座には様々な形、大きさの石英の結晶や翡翠で作られた紋様で飾られている。
 マナには見覚えがない。イリアの新しい研究対象だろうか?


イリア

 テーブルの上の、ごてごてと水晶や翡翠で飾られた不思議な置物を調べていた目をマナに向け、笑顔を浮かべる。

イリア<

「この時間に遊びに来るのは珍しいわね」
 身体をくつろがせ、伸びをする。
「どうかした?」


GM

 マナは導師イリアの部屋に入り、扉を閉める。

 イリアの研究室は、導師たちの中ではやや手狭だ。
 これは、実は彼女が塔の中でも古株の導師であることを示す。というのも、塔は建設から何回か増築されており、破損部分の修繕に加え、住環境の改善(中でもスペースの問題)をしてきた。
 結果、最初は狭く小さな部屋ばかりだった研究室も、最近は広く快適なものに変わっていった。古い研究室は、大体において、学生寮の空きを待つ学徒の仮住まいや、幾らあっても足りない導師の倉庫になった。
 そのようなわけで、未だ狭い研究室に住んでいるのは、彼女のように何らかの理由で昔からの部屋に居続けている古株の導師、ということになる。

 マナは、頑丈な木製のテーブルの前に腰掛けている導師の姿を見つける。
 柔和な顔立ちで、赤い髪と対照的な緑の目には知的な光が灯っている。
 昔よりもしわが増えたが、40という年齢には相応な程度で、老けた感じはしない。


マナ

「お邪魔しますね。」


GM

「大丈夫ですよー。お入り」
 中から返事がある。導師の声だ。

 導師イリアは、孤児だったマナの親代わりの女性だった。
 マナが叡智の塔の学徒となり、学生寮に入って自活できるようになってからは、導師と弟子としての関係になった。
 他の弟子との兼ね合いもあり、指導の場ではどうしても一線を引かざるを得ない場面はあるが、それでも彼女にとって、マナは変わらず、自分の娘であるようだ。


マナ

「先生、マナですが少々ご相談がありましてー。今大丈夫ですかー?」


GM

 マナは自分の導師の研究室までやってきた。


マナ

「さて、どう切り出しましょうかねぇ…」

 ずいぶん前から、塔の外に行きたいと思っていた。

 塔の暮らしに不満はない。わざわざ旅することもない。
 それでも、見知らぬことを見てみたいと思う。

 知識を求めるなら、此処で研究に励むのが一番だ。
 それでも、此処では解らないことを知りたい思う。

 なにより、自分は半人前。そもそも旅ができるのか。
 それでも、何かできることを探してみたいと思う。

 動機にもならない動機。根拠にもならない根拠。
 問題は山済み。迷いは盛り沢山。
 だけど、答えは決めてしまった。
 だから・・・


GM

 人通りの少ない塔の通路を、一人の学徒が思い悩んだ様子で歩いている。


学徒

アリシア<

「え?」
 ぽかんとした顔をする。
「それは、また、すごい、早いね。
 普通なら、他にも性格や信仰の審査とか、導師の方での審問とかがあるはずで、もっと後になるのに……」
 どこかのお偉いさんの縁者なのかな?
 などと、問うでもなく、呟くように言う。
「アーネー導師様、っていう名前は知らないけど、まともな先生なら良かった」
 と、にこり。
 それから、資料室について聞いて、得心したようにうなずく。
「ああ、なるほど。何か探していると思ったら、資料室か。
 あれは古い部屋だからね。
 叡智の塔は昔、何度か建て増しされているんだ。色々とあったらしくって、全壊した場所もあったりして。
 資料室は、昔の部分にあるんだ。
 この辺は全部、新しい場所だから、このあたりを探しても見あたらないんだよ。
 そこの通路をあっちに行って……」
 東の方を指さし。
「突き当たりを左に行くと、明らかに壁の作りが違うところに通じるはずだから、そうしたら、二番目の階段を下りればいいよ。資料室は導師以外は基本的に入室禁止なんだけど、お師匠様のご用っていうんなら、たぶん、大丈夫だからね」


アリシア

学徒<

「あー!昨日は世話になったなあ!!おかげで助かってん!ありがとーな」
 見た顔に、お礼をいうアリシア。
「いやな、適正試験はもう受けて、師匠も決まったんよ。アーネー先生、言うんやけどな?」

「それで、いまお師匠様関係の調査をさせてもろてんけど・・・なあ、資料室って、どこかわかる?」



学徒

アリシア<

「やあ」
 叡智の塔のあれこれについて教えてくれた、学徒だった。
「適正試験でも、受けに行くところなのかな?」


GM

 アリシアは、最初に案内を受けた事務受付の存在を思い出す。
 そこに聞きに行けば分かるはずだ、といったところで、覚えのある顔と声に呼びかけられた。


アリシア

「あー・・・わたしも。もすこし魔術を掘り下げんとなあ・・・。」
 塔での知識不足や、ガーディアンに対しての魔術の効きの鈍さに、自分の非力さを感 じているアリシア。
 魔術論議に耳を傾けながら、しみじみとつぶやく。

「むむむ・・・どこや??」
 アリシアはあたりを見回す。
「こういうときは・・・受付案内とかあるんかなあ・・・?」


GM

 アリシアは研究室を出て、階段へ向かった。
 塔内は、活気があり、とてもにぎやかだ。
 高価な紙の束を無造作に持って歩いていく導師や、廊下で魔術の議論を戦わせている生徒たちなどがいる。
 独特で、ある種、外とは隔絶された世界が確立されているようだった。

 階段は、一階まで来たところで終わってしまっている。
 五階から直通では行けないようになっているのだろうか?
 辺りを見渡しても、すぐにそれと分かるようなものはないようだ。


アリシア

「ふむ・・・ほな、せんせ、ちょっといってきまっす♪」


アーネー

アリシア<

「身分証みたいなもんだな。
 形と色で、私の名前と階位を示してる。
 そいつを見せれば、まあ、問題ないだろ。
 学徒が単に資料室に行くときは手続きがなんだかんだと面倒だからな」


アリシア

「せんせ、これは・・・?」
 ブローチをいじりながらその詳細を聞こうとするアリシア。


アーネー

アリシア<

「ああ、そうだな」
 うなずく。
「たいした調査ができたわけでもないようだが、覗かないよりは覗いておいた方がよっぽどいいだろう。
 そうだな……、確か、そいつらはもう保存庫行きになっているはずだから……、資料は五階にはないな。
 保存庫は地下一階で、そこに資料も一緒に置いてあるはずだから、こいつを持って、見せてもらってくるといい」
 と、ローブの襟元に付けていた、簡素な飾りのブローチを外し、アリシアに放ってくる。


アリシア

「ほな、早速今回の戦利品をしらべてみよかなー・・・とはいえ、どういう風にしらべればええんやろか・・・。
 一応、いままでの調査資料も覗いたほうがええんかな?せんせーはどうおもいます?」


GM

 アリシアたちは、遺跡から帰ってきた。
 いつの間にやら、大分、時間が過ぎ、もう正午になっていた。
 塔の中も賑わしい。


GM

 アーネーが先に立ち、アリシアと共にアーチをくぐる。
 そして、探索終了間近の遺跡に跳躍した。


アリシア

アーネー<

 先生について、遺跡に潜る。
「さー、せんせー。いってみましょー!」
 ひさしぶりの遺跡潜りにうれしそうに声を弾ませる。


アーネー

アリシア<

「まあ、魔術師の杖、という奴だ。
 こいつを持っているのと持っていないのとでは、魔術の詠唱にけっこうな差が出る」
 そういって、自分の持っている奴を示した。
「さて…行くか」


アリシア

アーネー<

「ん〜と・・・これは??」
とりあえず、その棒についての説明をきいておく。


アーネー

アリシア<

「今回に限って、貸すだけだからな」
 と前置きして、その棒状を渡す。

アリシア:
 「魔法の棒状」×1 入手

 すべすべとした、細い金属製らしい棒だ。
 螺旋状に細かい模様が描かれており、触ってみるとほんのりと暖かい。

「杖も何もないんじゃ、いくらなんでも連れていくわけにはいかないからな」


GM

アリシアは、

「残念でした、私のは減るんですー。」
 冗談交じりに、そう返す。師匠がこういう性格なら、自分があわせようという判断だろう。
それから、
「ふむふむ・・・。」
 教えられた理論などをブツブツと口の中でつぶやきながら、手元の紙に必要なところをメモしていく。

「ん??なんです???」
「まあ、待ってろ待ってろ」
 手を振って出て行ってから、程なく、アーネーが戻ってくる。
 小振りの、灰色の棒状を握っていた。


アーネー

アリシア<

「別に減るもんじゃなかろう?」
 まるっきり、乙女心とか、マナーとかいったものを無視した発言をして、肩をすくめてみせる。

 知力判定/分類:人物鑑・交渉
  アリシア:優秀な成功!


 アリシアは、この男が、「照れ隠し」か、「誤魔化し」などで、あえて露悪的にしてみせていることに気がついた。

「まあ、なんだ、とりあえず教えてやろう」
 アーネーは気を取り直したように言う。
 それから、複雑な理論を口伝した。
「でも、儀式まではしてやらんからな。後は、自分で掴み取れよ」
 言うと、少し考え込み、
「ちょっと待っていろ」
 といって、部屋の外に出て行く。 


アリシア

アーネー<

「教えてくれるもんやったらなんでも教えてもらいますよーせんせー。」
 にこにことアリシアは志願する。

 アーネーの、まるきり無防備に眠っていた、との台詞に、
「せんせー・・・・乙女の寝姿を、そんなじろじろみるもんちゃいますよ・・・??いや、マジデマジで。」

 それから、装備の話に対して、
「もともとは、ちゃんと装備整えて潜ってたんやけどね。ほとんど飛び出るように家をでてきたさかい。
 あんま荷物がおもなっても旅先じゃ難儀やし。こっちでいろいろ買おう思てたんですよ」

「まあ、今日はせんせの後ろついていきますよ。装備はつぎまでにととのえときますー。
 ささ、いきましょいきましょ」


アーネー

 とりあえず質問に答えていく。

アリシア<

「まあ、研究の成果だな。
 効果については、どちらでもない。
 疲労を忘れさせるという奴だ。だから実際は疲れているんだが、眠気で集中できないとか、だるくてやる気が出ないという時に有効だな。ま、あんまり多用し て無理をしていると、元気なのにぶっ倒れて、二度と起きあがれなくなったりもするから……そういう意味では扱いに注意した方がいい魔法だ。
 何なら教えてやろうか?」

 覗くな、の言葉に、
「覗かん、覗かん」
 苦笑いして、手を振る。
「そんなもん、手を出そうと思えばいくらでも機会があっただろうが。まるきり無防備に眠っていたんだからな」
 ひょいと肩をすくめた。
 という風に超然とした態度をしていたが、冒険の装備はなんもないと言われ、愕然とした。
「…………マジか?」
 流行り言葉まで使って反問する。
「いや、……まあ、確かにそれらしい荷物は持っていなかったな……。
 遺跡に潜ったりしていたと言っていたから、装備も完璧なんだと思っていたが、まあ、当然だが危険な遺跡ばかりじゃないし、危険でも、軽装なら逃げりゃいいし、その方がいいことも多いんだが……ふうむ」
 少し悩んでいる様子だ。


アリシア

アーネー<

「ふああ・・・。なんや、これ?? ひょっとして、古代の魔法?研究の成果っちゅーやつですか??
 眠気が覚める魔法・・・いや、疲労を抜く魔法??怪我とかに対しては効果あるんですか?」
 興味深々に杖を見つめるアリシア。

「あ、ホンマに潜るんですか?? いきますいきます。つきあいまっせー。」
 遺跡に潜ると聞いて、アリシアもテンションが高まる。
「ほな、ちょっとまってくださいねー。すぐきかえるさかい。」
 そういって物陰に隠れるアリシア。ひょっこりと顔だけをだして
「覗いちゃイヤン、ですよー?」

「あ。でも先生。潜るって、どのくらい危ないもんですか??
 私、それ用の装備とか用意してないんですけど…」


アーネー

アリシア<

「ほう、寝不足か」
 にやりとすると、何事か唱える。
 それからおもむろに、杖の先でアリシアの肩を、とんと突いた。

 すると、アリシアは、杖に触れられた辺りを中心に身体に熱が広がっていくのを感じる。
 熱は、広がっていったのと同じくらいの唐突さで冷めていく……、と、アリシアは、自分の疲労が綺麗さっぱりと消えているのに気がついた。

「これで問題ないだろう?
 付き合え。潜るから」
 むしろ、アーネーの方こそ、寝不足のハイテンションに取り憑かれているようだ。やけに生き生きと喋っている。


アリシア

アーネー<

「ん〜・・・なんや、せんせー・・・。あかんで、ヘンなことせんで、言うたやんか・・・」
 寝ぼけた目をこすりながら抗議する。
「掃除に手間取って、あんま寝てないんやけど、何の用ですか? どっか潜るならお付き合いしますけど」
 ごそごそと寝床を片付けながら、師匠の用件を聞く。
 寝起きはそんなに悪くないようだ。


アーネー

 夜が明ける。

 翌朝になって、アーネーは、朝も早い内にアリシアを起こしにかかる。

アリシア<

「おーい、弟子。弟子」
 声をかけても起きないようなら、愛用の杖で軽く突いてやるつもりだ。


GM

 アリシアは、夜半ちょうど辺りに、掃除を終わらせる。
 そうして、掃除が片づいたら、自分の寝床を整理して、ぐっすり休む。
「せんせー、おやすみー♪」
 声をかけると、「あー」という生返事が返ってくるばかりだった。まだ作業に集中しているらしい。
 ………。
 ………。
 そして、夜が過ぎていった。


アリシア

アーネー<

「うっしゃ、一気におわらせたろかー」
 中途半端は好きじゃない、といわんばかりに、残りの掃除に取り掛かる。

 掃除が片付いたら、自分の寝床を整理して、ぐっすり休む。
「せんせー、おやすみー♪」


GM

 掃除は、当初考えられたものよりは早く終わりそうだ。
 このまま集中して掃除をしていれば、夜が更けるより前には終わるように思える。
 少なくとも、寝室の掃除さえ済ませてしまえば、アリシアの寝床は確保できた――アーネーが一晩中机に向かっていると仮定しての話だが――と言えそうだ。


アーネー

アリシア<

「わたしは、古代人の言葉だと思っているがね……」
 言って、書き物に戻る。


アリシア

アーネー<

「ほな、まあ・・・練習しとこうかな。どこの言葉やろ・・??」  と、呪文を練習しながら掃除に戻る。


アーネー

 アリシアに答えながら、象牙色のアーチを撫でている。

アリシア<

「まあ、適当に『アーチ』とだけ呼んでいるがな。
 理論上はどこにでも繋げられるが……もしかしたら、距離に制限があるかも知れないな。少なくとも、まだ、帰ることが出来ない場所に行ったことはないな」

 それから、ちょっと小難しい顔をする。

「キーワードか……ちゃんと聞き取って、覚えられるか?」
 言ってから、ごにゃごにゃと複雑な言葉を口にする。
 なかなかに不明瞭で、アリシアには、あまり聞こえたような気がしない。
「分からんかな? こう発音するんだ」
 と、羊皮紙にさらさらと発音記号を書いていく。
 それだけ見てもとても難解で、正確に発声するにはかなり熟練が必要なようだ。


アリシア

アーネー<

「ふ〜〜ん。つまり、転移装置ちゅーわけやね。どこでもアーチとでもなづけるん??
 で、そのキーワード??って、なんなん??万が一のタメにおしえといてくれへんのかなー?」


アーネー

アリシア<

 さらりとした顔で聴いていたが、最後の方で吹き出してしまう。
「ああ、分かった分かった」
 書き物を止めて、隣室へ歩き出す。
 アーチの手前で足を止めて、
「こいつは、五年ほど前にわたしが見つけたやつだ。叡智の塔の管理下で見つかった訳じゃないから、別に調査報告もしとらんが……。
 対になったパーツを置いて、ちょっと気張った儀式をすれば、こいつとその場所が絆で結ばれて、いつでも、その場所とこのアーチのある場所とを行き来することができる。
 欠点は、使用する際に、毎回起動の儀式が必要なことと、一度動かしはじめたら一定時間はずっと動作しっぱなしになってしまうところか。あと、起動してい るアーチを使うのには何も必要ないが、“アーチのある場所”に戻って来るには、特定のキーワードを覚えておく必要があることだな。
 だから、キーワードを知らない人間が下手にこのアーチに近づいてあっちに行ってしまったら、自力では戻ってこれなくなるわけだ。
 だから、近づかない方がいい、というわけだ」


アリシア

アーネー<

「んで、せんせー?せんせーったら。あのアーチはなんやの??
 どっかにつながってたりするん?? どこの時代の何のためのものなん??」
 掃除をこなしながらも興味深々にアーチについて先生に問い掛ける。
「教えてくれんのなら、近づいてしらべるしかないしー。弟子を危険な目に合わせたくなかったら、おしえといたほうがええんちゃうかなー?」


GM

アーチ<

 アリシアはアーチの観察をする。
「・・・なんや??」
 なるほど、研究室の続き部屋の方に(こちらも物凄い散らかりようだ!)、堂々と、象牙色のアーチが立っている。
 高さは大体、アリシアの身長程度で、横幅は大人が両腕を広げたくらいのものだ。
 ゴミはアーチを中心に積み上げられているようだ。ただ、部屋の入り口からアーチを結んだ直線の上には、あまりゴミが集まっていないし、部屋の隅の方はむしろ片付いているくらいだった。
 アーチ自体は簡素な作りをしていて、ただの逆さまなU字をしている。装飾も何もなく、向こう側がそのまんま見えるだけだ。


アーネー

アリシア<

「………」
 書き物から目を離して、ねえねえとしてくるアリシアを見返す。
 じー、っと見返してから、笑い声を洩らす。
「まあ、良いんじゃないか?」
 首を振り振り、書き物に戻る。
「危険さはじゅーうぶん、分かっているだろうしな。今までの弟子よりよっぽど良い働きをしてくれそうだし」


アリシア

アーネー<

「ふーん・・・せんせー。それはわたしもついてってええんですか??
 ねえねえ、ええんですよねえ?弟子やもんね?ええんよね?」


アーネー

アリシア<

「そうさなあ……」
 やはり書き物を続けている。
「大体、九割方終了しているな。今までの構造から類推するに、残りは玄室だけだから」
 ごちゃごちゃとメモ書きのされた地図は、よく見れば一番右の辺りだけ空白になっている。緻密な立体図に、一本だけ長く突き出た長方形があり、その先がとぎれているのである。
 アーネーは、アリシアに答えながら、その先の切れた長方形の辺りに、「玄室? →」と記述する。
「もっとも、その辺りの調査が一番時間がかかるもんだがね。たいてい、やっかいなものが転がっているしな」

 アリシアの「アーチ」についてのつぶやきには反応しない。書き物に熱中していて聞こえないのか、聞こえないふりをしているのかはどうか。


アリシア

アーネー<

「それが、さっきいってたイ=サードの遺跡なんですか?
 まだ未完成みたいやけど、あとどのくらいで完了するんかな?」
 もし、まだ機会があるのならばぜひ同行したい旨を伝える。
 先ほどの「アーチ」の台詞に、
「アーチ?近づいたらどんなことになるんやろ?」
 ちらちらとそちらのほうを気にするアリシア。
「そういわれたら、気になてしゃーないやんなぁ・・・?」


アーネー

アリシア<

「ん? ……」
 覗き込んでくるのを反射的に遮ろうとしかけて、やめる。
「せんせーはだな、つい先ほどまでいた遺跡の調査結果とメモを、少しな」
 見てみると、簡単な図面が引いてあり、その中に細かい書き込みがされている。未完成の立体地図のように見える。

「ああ、そうだ、忘れていた」
 ふと思い出して、手元に目を落としたままで告げる。
「研究室のあっちの方に、象牙色のアーチがあるんだが、不用意に近づかんほうがいいぞ。掃除はその辺りはしないで構わないから」
 とかアリシアの方を見もしないで言いつつ、「調査は北、と…」などと紙片にメモ書きをする。


アリシア

「北か南か・・・。南は、私の故郷があるさかい、できれば北がええなぁ・・・」

アーネー<

「んで、せんせーは、なにしてるんですかぁ?」
 掃除の手を休め、アーネーの手元を覗き込む。


GM

 掃除は、アリシアの手で順調に進んでいくが……まだまだ、片づかない。二人ならばはかどると思われるが、アーネーはアーネーでアリシアに任せて、自分は何やら書き物をしているのである。


アーネー

アリシア<

「わたしの性格か…? ふーむ」
 はて、とわざとらしく腕を組んでみせる。

 アーネーは、自分の事となると話をはぐらかす傾向があるようだった。アリシアの見たところでは、この導師は自分なりの価値観、美学のようなものを確固と して持っており、それからずれた事はしないし、しないことに対する負い目のようなものは感じない人間のようだった。
 どこか達観しており、誰かが自分の意に添わない事をしても軽蔑はしないし、特に落胆もしない性質のようである。

「研究か…話せば長くなるが、わたしは古代人の生活や、その破滅に至るまでの経緯を研究しているといえるかな。その為に遺跡に潜ってそれを調査するし、 潜った人間の話を聞いたりとする。今は、既にイ=サード近辺に見つかっているものの研究を行っているが、もうすぐ終いだ。次は北に向かうか、あるいは南の 未踏破領域を目指すか、考えているところだ」
 先生としてダメという言葉には苦笑して、
「まあ、そうだろうな。わたしが教師に向いているとは思わない。だが、あいつらにも問題はあるんだぞ。ああ、というのは、別に弟子が今までいなかったわけ ではなくて、いたんだが、どんどんやめていったんだ。その理由って言うのが、遺跡研究が思ったより恐いだとか、汚いだとかそういうもので、わたしにはどう することもできないしな。
 おかげで、研究室はどんどん汚れるわ、一人だから遺跡に潜ったときに危険度だわ、護衛を雇いたくたっても金は研究に使っちまうから無理だわ、難儀していたんだ。塔に申請すりゃ、普通は援助金を出してもらえるがね。それにも限度がある。
 それにしても、穴に潜るのに清潔感をもとめるのはどうかと思うぞ――お前さんは、元からそういう事をやっていたようだから、大丈夫だろうな?」


アリシア

「んじゃ、いっちょ気合いいれてお掃除しますか!!」
 腕まくりをして、掃除に取り掛かるアリシア。
 掃除をしながら、アーネー先生の人となりと、研究について聞いておく。
「しっかし・・・3年もこんなカンジで、弟子が私ひとりって…。
 先生は、先生としてダメなんちゃいますか?」


アーネー

アリシア<

「ああ、もちろんだ。こう、一年だか三年だか覚えてないが、それくらい振りにきれいさっぱりにしてもらいたいもんだな」
 頷き、
「さしあたっては、掃除だろうな。それが終わったら……そのときに話すとしようか。弟子はお前だけだし、掃除は長引くだろうし……今夜は寝られないぞ?」


アリシア

「ほな、いろいろ本も読めるし、こっちにおせわになりますわ。あんじょうよろしゅう。
 で、このきちゃないのは、片付けてもええんやろ?」
 散乱している部屋を挿して言うアリシア。

それから、好きに呼んでいいぞとの言葉に、

「んじゃ、先生。さしあたって、弟子としてはなにをすればええんですか?」
 そして、
「・・・そういえば、弟子って私ひとりなんやろか・・・?」


アーネー

アリシア<

「酔っぱらいでもしたらするかもな」
 それから付け加える。
「酔ったことがないからよく分からんが。
 ……まあ、宿舎という奴もあるぞ。おそらく相部屋になるだろうけどな。わたしとしちゃ、どっちでもいいと思うが?」
 つ、と考え、
「呼び方は何でも。公式の場だったら導師様だとかアーネー先生だとか言わなきゃならんのだろうが、好きに呼んでいいぞ」


アリシア

アーネー<

「よろしくおねがいしますー。
 ・・・あ。これから、どう呼べばええんかな? 師匠? お師さま? 先生? アーネーさん?」
それから、アーネーの言葉に、
「・・・。」
 ぐるっと部屋を見回すアリシア。
「う〜〜ん・・・」
 手を頬にあて、考えることしばし・・・。
「ヘンなこと、せえへん??」
 明らかに冗談めかして、質問する。どうやらここを宿にすることにきめたらしい。


アーネー

アリシア<

「ああ、構わん構わん。そのうち分かるしな。
 じゃあ、お前さんはこれからわたしの弟子だ。よろしくな」
 宿無し、との言葉に考えてから、ふと、研究室を見回す。
 どっちらかった、研究室、部屋と言うよりは物置だとかゴミ箱だとかいった風情だ。
「――ここ、住むか? 何なら?」


アリシア

「ふむ…魔法を使っての建造へのツッコミちゅーのは…」
 いま聞いた話を、自分なりに考察をしてみる。
「ま、ええか。やってみればわかることやしな」

アーネー<

「私も同じですわ。独学のころから、遺跡とかにもぐりこんでいろいろ拾ってきたりしてましたし。
 実地メインちゅーなら、それはありがたいことです。後見をお願いしてもええですか? んで、いろいろとおしえていただければ思います」
 にこにこと弟子入り志願をするアリシア。
「あ、そんで。私いま宿無しなんやけど…どっか、宿舎とかそういうの、斡旋してもらえるんやろか?」


無精髭の男

アリシア<

「まあ、垢とかじゃあないから気にするな」

 アリシアの評価シートを全く気にする様子はなく、とりあえず彼女を研究室に招き入れる。
 部屋はやはりやたらと散らかり、至る所に書類や何かの機材が散乱していたが……この男の着ているローブを汚すようなものは見られない。

アリシア<

「伝承・歴史か。まあ、……遺跡研究と要素は、そう大差はないかもしれないな」
 ぼりぼりと顎を掻きながら、
「わたしはアーネー・アイアノ。なんというんだ、こう、もっと薄汚れた不健康そうな奴が来ると思っていた。今までここに来た奴はみんなそんな感じだったんでね」
 先ほどの自分の態度に弁解するような様子だ。
「成果ね……。こっちに来てからはそんなにはないが、たとえば――」
 と、最近提唱されたばかりの遺跡研究の新論をあげてみせる。
「こいつは塔に入ったあとにわたしが唱えた論だな。
 一般に知られている、古代人たちが魔法で建築物を造ったとかいう論に対して、『アホか』と突っ込みを入れた奴だ。ま、他の連中の評価は悪いがね。
 ……でも、なんだ、わたしの本領はどちらかといえば、実地に出る方だな。実際に遺跡に潜ってみて、あれこれ調べたり見たりする方が性に合っている。
 だから、わたしのところに来ると、どうしても汚れる」
 と、自分の衣服を指さして笑う。
「それに、安全ではないしな。
 お前さんがやりたいのは、どんなことなんだ?
 それと食い違うようなら、他に行ってもいいだろうし……、何なら、別にわたしが後見になるだけで、自由にやっていてもいいが」


アリシア

無精髭の男<

「そーでーす。アリシア=ウェルウェイ16歳、本日より叡智の塔にご厄介になりにきましたー♪」
 にこにこと答えるアリシア。
「一応、適性試験はうけたんやけどな? 専攻は伝承・歴史研究言うたら、このへんやて教えてもろたんです。」
 評価シートをぴらぴらと見せる。
「一応、どんな方面にも行ける言われたし、他のとこでも別にええんですけどね…」
 男のわかりやすい眼差しにも、別に気にした様子もなくアリシアは続ける。
「ここでは、遺跡研究をやってるんですよね? たとえばどんな研究成果があったりするんですか?」

「・・・しっかし、きちゃない格好ですね」
 苦笑いとともに、アリシアは男への第一印象を口にした。


無精髭の男

アリシア<

 中から出てきたのは、三十半ばほどの、無精髭の目立つ男だった。叡智の塔で開発された魔術紋が刺繍されたローブを着込んでいるが、それはよれよれの上に 汚れており(ある程度の自己“洗濯”能力を持つこの衣服を汚れたままにしておくのは至難の業だ……)、色々な意味で生活感をアピールしていた。
「君が弟子か? 遺跡研究に興味が?」
 かれが想像していたものと、アリシアの様子は少し食い違いがあったようで、何やら胡乱げな眼差しだ。


GM

 …………。
 しばらく、何の反応もない。
 と、
「いるぞっ!!」
 何やら慌てふためいた様子で、がしゃがしゃと音を立てながら、何かが扉越しに騒いでいる。と、がちゃりと扉が開いた。


アリシア

「んー・・・?とりあえず、お勧めのところにいってみよっかな?」 とりあえずは、教えてもらった遺跡研究の導師の扉をノックする。
「ごめんくださーい!弟子一人いりませんかー?」


GM

 アリシアは、とりあえずは何の問題もなく、叡智の塔の研究所棟に到着する。
 どうも、他の階と比べて薄暗く、ひっそりとしているようだ。廊下を歩いている人も少ない。
 一定の間隔で、赤い扉が立ち並んでいる。扉にはひとつひとつにプレートが掛けられており、そこに研究所の主の名前が書かれているようだ。
 その中に、試験官から教えてもらった、遺跡研究を専門としている導師の名前も見られる。


アリシア

「とりあえず、いわれた研究室に向かってみようかねぇ」
 アリシアは鼻歌交じりに研究所に足を向けた。


GM

「ほな、お世話してくれてありがとなー。また縁があればよろしくなー」
 アリシアはそう挨拶を交わし、試験場を離れる。
 五階に向かうか、本当にあてもなく歩いていくか……。


試験官

アリシア<

「ええ、あとは、あなたと導師の問題になります」
 うなずくと、困ったような顔をする。
「おすすめ……」
 立場というものがあるのだろう。 「まあ、あれですか、遺跡研究を専門にしている導師さんならいらっしゃいますし。ええ、そんなにおかしな人もいらっしゃいませんから大丈夫ですよ。とりあえず、五階が研究所棟になっていますから、そちらに向かうのが良いかと思います」


アリシア

受付<
 その言葉に、アリシアは照れたようにはにかむ。
「まあ、簡単な問題やったし、そういわれても照れるわ」
 言って、評価シートをアリシアに手渡す。
「そうなん?
 んじゃ、これもって研究所のほうにけばええんかな??」
 渡されたシートをぴらぴらとあおぐ。自分に対して下った評価には、あまり興味がないようだ。
「なあなあ、それよりなんか、おすすめの導師とかおる?」
 これからの生活をどのように過ごすか、それがなにより重要なことである。
「せっかく導師が見つかったのに、それこそ性格があいませんでした、とかやったら、ほんまなくになけんしな」


試験官

アリシア<

「これは……、なかなか、ですねぇ」
 自らが紙に記したアリシアの評価を睨み、頬を掻く。
「どんな方面に適正があるとは、いえませんね。ふぅむ、伝承に遺跡研究でしたか……ふぅむ。
 どんな方面にもいけます。どんな導師に見せても、性格的な齟齬がなければ引く手数多ですよ、これは」
 言って、評価シートをアリシアに手渡す。


GM

 アリシアは試験に取りかかった。

 知力判定/分類:一般知識・地理・魔術学・統計・論理 ×3
  アリシア : 大成功/大成功/優秀な成功


 試験官が問い、アリシアはメモを取りながら意見をまとめて、答えていく。
 アリシアにとって、試験は楽勝以外の何物でもなかった。
 適正を測る試験、というだけあって、試験の難易度はそこまで高いものではない。といって、「論理」の項目は知識があっても解けるとは限らない代物で、そこで満点に限りなく近い点を取れたものは、ここ最近では一人もいなかった。
 たとえば答えが決まっている問題ではミスがなく、答えの決まっていない問題では非の付け所がない。


アリシア

受付<
「あいあ〜い。いつでもおっけーですよー。」  くるくると、指の先でペンを回しながら、アリシアは試験にとりかかった。


GM

 アリシアが通された部屋はやはり狭く、殺風景だった。
 中には机と椅子だけがぽつんと置かれている。
 受付の女性は椅子を勧め、机に何枚かの紙を置くと、彼女に告げる。
「では、適性試験を行います……といっても、ぜんぜん大したものじゃありませんけれど。準備はよろしいですか?」


受付

 綴りを確かめながら書き取って、また別の書類にさらさらと何かを記入する。
 それから立ち上がり、部屋の扉を開けて、

アリシア<
「ではどうぞこちらへ」
 と、別室に案内する。


アリシア

受付<
「はーい。アリシア=ウェルウェイ。
 ボン・ノドン出身、16歳。研究は、伝承、遺跡研究。よろしくおねがいしま〜す」  にこにこと答える。


受付

 だだっ広く先の長い廊下と、そう広くもない部屋を隔てた壁がを四角くくりぬかれた窓がつなげている。
 そこから中をのぞき込んでのアリシアの声に、にゅっ、と女性の顔がモグラのように出てくる。

アリシア<
 髪の毛を赤い布で幾重にもくるんだ、お洒落な感じの女性だ。
「ええ、こちらですよ」
 にこりともしないで応じると、
「すると、入学をご希望ですか。
 では――と」
 がさがさと棚を探って手元に書類を用意すると、続ける。
「まずお名前と、ご連絡先……無ければご出身でも構いません。年齢、それから、ご自分の研究の概要を教えて下さい」
 書き取る準備をして、アリシアの言葉を待つ。


アリシア

「さって…。どんな試験なんかなー。」  どきどきと軽く胸が鳴るのを感じる。まだ見ぬ世界に踏み込む第一歩に、少なからずときめいてるようだ。

受付<
「すみませーん。適性試験受けたいんですけど、こちらでええですかー?」


GM

 そつなく笑い返して、学徒が苦笑している。

 アリシアは言われた場所にたどり着いた。


アリシア

学徒<

「いや? 別に大変ちゅーことはないよ? 自分の選んだ道やしね。  この塔にいる人たちかて、自分の選んだ道を歩いて、ここにいるんやろ?」
 こちらに微笑みかける学徒に、にこりと微笑み返し、アリシアは答える。
「斡旋はないんか…。まあ、まずは導師を見つけるかな。
 ん。ありがとなー。ちょっと行ってくるわ。」
 教えてくれた学徒にお礼を言って受付事務に向かうアリシア。
「あ。」
 その途中、くるりと振り向き、 「また、機会があれば会おうなー。ほなねー」
 学徒に対して手をひらひらと舞わせる。
  「さって…。どんな試験なんかなー。」
どきどきと軽く胸が鳴るのを感じる。まだ見ぬ世界に踏み込む第一歩に、少なからずときめいてるようだ。
「すみませーん。適性試験受けたいんですけど、こちらでええですかー?」


学徒

アリシア<

 学徒は怯んだ様子もなく、アリシアの言葉にひとつひとつ応じていく。親切なのか、それともなにか下心があるのかは分からないが、やたらと髪を直したり、彼女の目に向かってほほえみかけたりするのは、やはり目をつけているのかもしれない。

「へえ、家を飛び出してきた……大変だね」
 興味がありそうな表情をする。
「塔では斡旋とかは特に行っていないなあ。
 そういったことは、大概が竜追いギルドに持ち込まれるからね。……こちらから持ち込むこともあるくらいだし。冒険者をやっているなら、やっぱりあっちの 方に行った方がいいんじゃないかな。まあ、ひとりだと危険だと思うけどさ。弟子についたら、導師からあれこれと依頼されることはあるし、それにはたいてい 報酬が伴うけど、どっちかっていうと現金じゃないことの方が多いからね」
 元気だなあ、とか思いながら続けて、
「まあ、行動の制限とかは受けないね。寮の、風紀的な制限やや門限ならあるけど。でも、弟子として導師から、なにかを言われることはあるかな。
 適性試験を受けるなら、あっち」
 対外用の事務受付のある方を指さしてみせる。
「それっぽい場所があるから、あっちの方に行けば分かるよ」
 と、大体の行き方を教える。
「後見人を捜すなら、導師達の研究所に行くのが一番いいよ。食堂に落ちてたりもするけど。研究内容を知りたいなら、研究所の方だね」


アリシア

学徒<

「いやあ、別に出稼ぎっちゅーわけちゃうんやけど、無一文で実家飛び出して来たか らなぁ。
 冒険者としても駆け出しやし、なんかええ稼ぎ口とか、しらんかな? 塔で斡旋とかしてる?」

 それから、続けて質問を浴びせる。

「別に、導師になるまでは、行動の制限をうけるわけやないんやね?
 なら、適性試験を受けようと思うんやけど、受け付けとかどこですればええんやろ か?
 あとは、後見人か…。そういうのって、どこに落ちてるもんなんやろかー?」

 アリシアとしては、受かっても落ちても、経験としてはプラスになるだろうと考え、 試験について前向きに考え出したようだ。


学徒

アリシア<

「寮は……あるって言えばあるけど、どうだろうなあ。君の才能次第。塔を訪れる人、ひとりひとりに開放してしまっていたら、屋根目当ての志のないひとまでやってきてしまうからね。
 適性試験後に申請して、認められれば部屋をもらえるよ。殺風景だし、簡素だし、場合によっては相部屋になるかもしれないけどね」
 アリシアの台詞を訊いて、首をかしげる。
「君は、どこかから出稼ぎにでも来たのかな?」


アリシア

 学徒の答えを聞きながらアリシアは続けて尋ねる。

学徒<

「でも、もうちょっといろんなところを旅してみたい気もするしなぁ…。悩むなぁ」

「まあ、でも先に住む所と稼ぎ口を見つけんとな。この塔って、寮みたいなとこって あるんかな?あるんなら、入ってもええんやけどなー」
 あはは、と笑いながら聞いてみる。
「もしないなら…宿でもさがさんとねぇ。いや…金もないし、先に働き口か…」


学徒

アリシア<

「試験っていうのは、当人の基礎学力を調べるのと……まあ、どんな研究が合うかを調べるって程度だよ。ちょっとした面接みたいなもんさ」
 愛想良く答えながら、更に指を一本立ててみせる。
「導師ってのは、叡智の塔である程度の研究成果を認められた上で塔に申請すればなれる地位でね。導師になると、研究成果に与えられる報償にくわえ、一定の賃金をもらえるようになるのさ。資材の制限も緩くなるしね。
 その代わり、一日の間の一定時間は、研究室への学徒の訪問を受け入れなきゃいけないし、質問には答えなくちゃいけない。
 その上で弟子を取る必要があるのさ。最低一人。誰を弟子にするかは自由に決められるけど。
 
 で。学徒が導師を得るっていうのは、別に弟子になるっていうわけじゃないんだ。後見人になってもらうってわけで、挨拶しにいって『後見人になってくれま すか?』と言えばたいてい、普通になってくれる。なんたって、お互いになんの義務もないからね。書類上の都合ってくらいさ」


アリシア

学徒<

「ふむ〜〜。学費なしか・・・。ちょっとええなぁ。」
 適性試験と、導師についてたずねておきます。
「でも、私いままで先生とかに教わったことないしな。どんなんやろ?」
 いままで独学で知識、魔術をその身に蓄えてきた分、「導師」という存在には、興味が尽きません。


GM

 矜持の大図書館の調査がどのような経過を辿っているにせよ、叡智の塔の内側は常とは変わらぬ状態を保っている。
 ……その中に、やけに元気の良い小柄な少女の姿が混じっている。

 少女は、自らも魔術を手にするものであり、また、たまに見られる「知識を貪欲に求める」類の人種だった。――つまるところ、叡智の塔に在籍している多くの人々と何ら変わるところがない。
 大魔術師王国を見て回っていた彼女の足がここに向けられたというのも、自然なことだっただろう。
「やっぱ、大魔術師王国に来たら、ここはおさえとかんとな〜♪」
 ……観光気分ではあったが。

 アリシアは、歩いて回ることが出来る範囲で見て回り、面白いものと見たら首をつっこんでいく。

「ん〜・・・ココって、入学費用とか、取られるんやろか・・・??」
「入学費用は取られないよ。入学希望者はちょっとした適性検査を行って、自分の導師を得られればすぐに在籍できるんだ。
 入学費用は取られないし、在籍中も特にお金を取られることはないけど、自分の研究があんまりお金や資材が掛かる場合は、そりゃ、負担することになるよ。 もちろん塔の支援はされるけど、限界があるんだね。僕らにとっちゃ嬉しくないけどね。昔は際限がなかったらしいけど、ある導師がやたら滅多と材料の必要な 研究を毎日のように繰り返していたせいで、資材の使用には申請が必要になったし、それが一定以上を超えたら自己負担になるようになってしまった。身勝手な 奴ってのはいるもんでね、協調性がなけりゃ学徒もやっていけないっていうことさ。まったく、困ったことだよ」
 やたらと喋る人。

「なーなー。なんか、最近おもろいことない??」
「私たちにとっては、全てが興味に溢れている。面白くないことなど、ない!」
 質問と一歩ずれた答えを返してくる人。

 もともと、好きなものや人生方針を同じくして集まっているものばかりなので、そこら中が同胞意識に溢れている。
 ちょっと話しかければ、こちら以上の熱意で応えてくれるようだ。……それが、こちらの求めているものであるかないかはどうでもいいような趣であるが。

NEXT