PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

“商人の国”ボン・ノドン
イ=サードの隣国にして経済大国。
国王自身が商売人としての経験が豊富で、豊富な外交技術を誇る。

:商人の国 竜追いギルド:
 経済力にかけては大陸一と自負する、商人の国の竜追いギルド。
 竜を探せとの檄に対して真っ先に応じたこの国によって建てられた。
 どうもこの国の場合、この竜追いギルドという施設とそのネットワークを、各国の経済状態の把握と操作に利用しているような所がある。

投稿(件名…商人の国 竜追いギルド)
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ギルド張り紙




ライライ翁

ルカ<

「ほほう、それはまた」
 なんだか髭の奥で笑みを浮かべる。
「それはそれは」
 いうと酒杯をあおる。
「習いたいとはいうが、ほれ、お前さんも持っているのはするとそれは飾りか?
 それとも、独学でなにかやったか?
 ちょっと聞かせてもらえるか」



ルカ・ウィスタリア

 運ばれてきた酒を受け取り、小さく腕を上げて乾杯の手振り。酒を飲む相手をしばらく眺めた後、自分もそれを一口飲んだ。

ライライ翁<

「ああ、音楽に詳しい師を探しているんだ」
 相手の言葉にうなずき、再び酒を口にする。
「私自身はあらゆる音楽を学びたいと考えている。が、今は弦楽器の技術が一番欲しい。リュートやギターやバイオリン……といったところだろうか。そうだな、今一番学びたいのはリュートの技術だ」

 コップを置き、考え込む様子を見せる。
「ある時、楽師や吟遊詩人の旅団に出会ってな。その時に出会った音楽が忘れられないんだ」
 小さな手振りも交えながら、言葉を選ぶようにつぶやく。
「村で音楽を夢想するだけでもよかったんだがな。外の世界にまだ知らない音楽があふれていると思うと、どうしても留まっていることが出来なかった。好奇心に動かされた……と言えば、納得して貰えるだろうか?」


ライライ翁

 やがて、ルカの注文した酒が運ばれてくると、乾杯もせずに無遠慮に喉に流し込む。

ルカ<

「ふぅっ、やれやれ。
 で、お前さんは何が聞きたいって?
 楽器だったか、音楽に詳しいだかって奴を探しているとかいっていたか?
 さてさて、どう答えてやったもんかね。
 楽器ならほれ、笛なり鼓なり、色々とあるだろうが。
 お前さんは何を学びたいんだね?」
 聞いてから、ひねた笑みを浮かべてみせる。
「ノームードゥ、だったか。お前さんらの種族が山を下りてくるのも久しぶりにみたもんだが。何か訳でもあるんかね?」


ルカ・ウィスタリア

 相手の言葉に頷き、財布から合金貨を取り出した。あたりを見回し、店員に目配せをした。自分と目の前の人物へ、一杯ずつ同じ酒を注文する。

ライライ翁<

「そうして勧められる酒なら、飲んでみるべきだろうな」
 純白の毛皮で覆われた指を顎にあてがい、興味深そうに瞳を細めた。
「気に障らないのなら、相席して構わないだろうか。……私はルカ・ウィスタリア。山を下りてからまだ日が浅いが、この国に着けたのは幸運だと思っている」
 ギルドを見回し、そこに飾られている酒や装飾品を眺める。村では見る事の出来なかったそれらに興味津々のようだ。


ライライ翁

ルカ<

「ウィノリアの麦酒よ。この国の酒はどいつもこいつもしょんべんみたいな味がするが、これだけは褒めてやってもいい」
 ルカに意図が通じたと見て、にっとしてみせる。

 知識判定:分類/雑学・酒・ロトッカ地方
  ルカ:成功!


 ウィノリアの麦酒についてルカも知っている。
 なかなか高い酒で、このくらいの店であれば一杯で合金貨一枚(10Rd)くらいで売っているだろう。

「お前さんも飲んでみたらどうだ、喉を降りていく感触が溜まらん」


ルカ・ウィスタリア

 差し出されたカップをじっと見つめ、ほんの少しだけその深い青の瞳を揺らした。

ライライ翁<

「生憎、持ち合わせは多くないのだが……安い酒でも構わないだろうか?」
 酒の匂いに鼻を少し鳴らした後、そう呟く。どうやら、酒を所望していると受け取ったようだ……一杯奢るつもりらしい。ルカ本人も酒の匂いは嫌いではない。
 さて、財布は重いわけではないが、自分と老人の喉を潤すだけの酒は注文できるだろうか……。尤も、ルカは酒豪ではないし、安いジュースでも全く問題はないのだが。
 相手がどんな表情を返してくるか、慎重に待っているようだ。また、悪酔いするような人物でないか、少々警戒しているようだが。
 空になった相手のカップをじっと覗き込み、再び鼻を鳴らす。
「酒……どの産地のものだ、これは?」
 純粋に興味があったらしい。口調と相反し、その声は好奇心を湛えている。


ライライ翁

ルカ<

「ほ」
 質問をされて、見返す。
「これは珍しい客人がきたもんだ」
 もぐもぐと口を動かして、呟くように答える。
「名のある楽師、詩人とな。ふむ。
 これは面白い。
 わしは別に親切なじじいじゃねえが……。そんなでかい図体で丁寧に頼まれちまうとな」
 答えてやってもいいんだが、というと、空になった手元のカップをそれとなくルカの方に押し出してみせる。


ルカ・ウィスタリア

「少し、聞きたいことがある。いいだろうか」
 酒場の隅にいるその男に声をかける。あいかわらずの仏頂面だが、声は優しくうつくしい。

「この国に、名のある楽師や詩人はいるだろうか? 師を探している」
 種族に偏見があるものではないといいが……。ギルドに赴くのはほぼ始めてだから、緊張は隠せない。
「もしくは、楽器店や音楽に詳しい場所はないだろうか。教えていただきたい」
 表情と目つきはともかく、声からは精一杯の敬意が感じられた。知識をもつものに対する敬いは、持たぬべきものではない。


GM

 ルカが師事するに値する人物は見あたらなかったが、少なくとも、彼の求める情報を持っているかもしれない者は見つかったかも知れない。
 酒場の隅っこで、一人ちびちびと麦酒を飲んでいる、みすぼらしい男。ぼうぼうに伸びた髪に、髭、いずれも真っ白に染まっている。
 すっかりと椅子と同化しているように風景と同化している。
 何年も、何十年もこの酒場にいたような風情であり、少なくともこの町に住んで数ヶ月は経っているだろうと思われる。


ルカ・ウィスタリア

 リュートを背に担いだノームードゥの青年が、険しい表情をしながらギルドの扉を潜る。
 特に挨拶をするでもなく店内を見渡し、そこにいる冒険者たちを眺める。
 張り紙を眺め、≪カイノの南ヶ原の縦断≫に目を留め、しばし目を伏せて考えているようだった。

(危険がないのなら、一人でこの依頼を受けても平気だろうか?
 しかし、この国で楽器や音楽家を探すことにも時間を割きたい。
 時間が掛かるのなら、日を改めた方がいいか……)

 また、≪灰ノ草の採取≫のことにも考えた。
 灰ノ草の知識はどれほどあるだろうか?

 しばらく考えた後、結論が出たのか目を開け、再び店内を見回した。
 ここに長く住んでいるものを探し、このあたりで名のある音楽家がいるかどうか、また彼が弟子を取るような人物かどうか調べるつもりだった。
 有名な楽器店や詩人の情報もほしいところだ。
 それがなければ、今日は日が暮れるまで楽器を演奏し日銭を稼ぎ手ごたえを調べてから、近いうちに依頼を受けるつもりでいた。

 さて、めぼしい人物はいるだろうか……?


グロス

ウェルブム<

 手を挙げて、その背中を見送る。


ウェルブム

グロス<

「ご助言、感謝します。グロスさんもお元気で。
 失礼します」
 そう答えて戸口に向かう。

(思い出に耐えられないのなら、忘れればいい。
 人間にはそれが出来るのだろう?
 ……でも。もし、あの男が本当にアスタを忘れたら。
 アスタは悲しむだろうか?)

 ウェルブムはオウドノの工房へ向かった。


グロス

ウェルブム<

「あんたが、いつかあいつの足跡を追って、そして何か見つけたら。運良く、その後に会えたら教えてくれ。
 あいつが……いや、まあ、いいさ。
 あんたは死ぬなよ。それに、どこに行くつもりなんだか知らんが、同行者を見つけるか、もしも金に余裕があるんなら護衛の一人でも雇っておけ。
 おれはあんたについて行くことはできないけどな。思い出しすぎる」


ウェルブム

グロス<

「ありがとう」
 素直に石を受け取る。
 あらためてグロスの顔を見なおした。
(アスタはこの人と一緒にいてなにを思っていたのだろう。
 もっと一緒にいるつもりだったのか。
 ……なら、どうして一人で行ったりしたのだろう)
 
 石をきれいな布でくるみ、カバンの中にそっとしまうと席を立つ。グロスに軽く頭を下げる。
「お時間とらせてすみませんでした。
 いつか、アスタが何を見つけたのか探しに行こうと思います」


グロス

 率直に過ぎる言葉に傷みを覚え、顔をしかめる。

ウェルブム<

「やはりそうか」
 手の中にある石を見下ろす。
 窓から射し込んでくる陽光を反射して、それがきらりと光った。
 しばらく黙って石を見つめ、それからウェルブムを見る。
「あんたの瞳は緑色だな。
 ……なるほど、“エメラルドの男の子”か」
 意味ありげに呟くと嘆息して、再度、石を見つめる。
 石を乗せた手をウェルブムに差し出す。
「持って行け。
 いつかアスタに再会したら、あるいはあいつの死を認められたら――墓でも立ててそこに埋めるつもりだった。
 だが、故郷に帰すべきだといわれたら、その通りなんだろう」


ウェルブム

グロス<

 男の取り出した石に目を落とし、深く息をつく。
 こんなにも早く”遺された記憶”に出会うとは思ってもみなかった。

「そうですね、アスタとはもう会えない…」
 会えないけれど、彼女が消えてしまったわけではない。
 アスタがどこへ行って何を見たかは、すべてここに遺っている。
 彼女の額にあった時と変わらないきれいな赤色の玉の中に。

 顔を上げ、グロスの顔を見据える。
「それを僕に渡してくれませんか?
 あなたが持っていてもなんの意味も持たない、ラミュイニュの野に還るべきものです」


グロス

 問われて、アスタの事を思い返す。

 アスタ・スラフと初めて出会ったのは3年前だった。
 彼女は人間でいえば二十半ばくらいのマインドフレイアで、魔術に長けた竜追いだった。
 そこは北海王国のとある遺跡の中だった。地底の奥に築かれた氷の城塞に仲間と共に潜り、仕掛けられていた罠にかかって一人だけ迷路の中で取り残されてしまった、その中でアスタと遭遇したのだ。
 アスタは創造竜の痕跡を求めると共に、古代人の知識を探して遺跡に潜っていたらしい。そして、グロスと同様に罠にかかり、迷路に落とされたのだった。
 彼女を初めて見たときに、グロスは異世界の住人を見たのだと思った。三つの、紅玉のような瞳の輝きは今でも鮮やかに思い出せる。
 協力して遺跡を抜け出すこととし、そして何とか迷路を脱出してからは、何故か二人で組むようになった。

ウェルブム<

 そのようなことを話しながら、続ける。
「おれたちはいい相棒だった。我ながら不思議な取り合わせだったが」

 幾つかの依頼を共にこなし、幾つかの遺跡に潜った。
 アスタは寡黙で、こちらが彼女の事を聞いても答えなかったが、ふと思い出したように自分のことや、故郷のことを語った。
 そして、2年ばかりを共に過ごした。
 ある時、アスタはどこからか、創造竜を祭っていたという神殿の遺跡があるという情報を仕入れてきた。
 その話をグロスにした翌日、そして何故か一人で遺跡に向かっていった。

「それで、帰ってこなかった。それが1年前だ。
 消息は探したが、アスタから遺跡の場所を聞いていなかったし、アスタにその遺跡について教えた奴のことも分からなかった。
 ……ある夜、あいつに名前を呼ばれた気がして目が覚めた。
 もちろん、部屋には誰もいなかったが、ふと、窓を開けた。
 そこに、こいつが落ちていた」

 ポケットから、赤い、まるで紅玉のような丸い石を取り出してウェルブムに見せる。
「これがなんだかは分からないが、何となく、もうあいつには会えないと思った。
 それから、北海王国には一度も行っていないな」


ウェルブム

「アスタ・スラフ…。ええ、知っています」
 答えながらもう一度、男の顔を見直す。
(ふーん。この人にラミュイニュの野のことを話してるんだ)
 そのことの方が意外だった。別段、村のことは秘密でもなんでもないが、あえて吹聴する必要もない。少なくとも自分ならそうしようとは思わない。まあ、いまのところは。

 するりとグロスの前の席に着く。
「グロスさん。
 アスタとはどこで別れたのですか。いつ頃ですか?」
 オウドノ氏を訪ねるのがすこし遅れそうだな、と思いつつ。


槍を磨く男

「知っている人か」
 小さく呟く。
「100人くらいしかいない村だといっていたな」

ウェルブム<

「おれはグロス。
 ウェルブム・スマラグディナ……教えることはできる。
 おれが知っているマインドフレイアの名前は、アスタ。アスタ・スラフといったはずだ」

 アスタはどんな人物だっただろうか?
 そして、ウェルブムにその名前の聞き覚えはあるだろうか?
 ウェルブムの友人かも知れないし、もしかすると家族ですらあったかも知れない。あるいは、まったく知らない人物だったかも知れないが……。


ウェルブム

 彼に表情というものがあったら、笑みが浮かんだかもしれない。
 旅の始めに同族の消息が分かるかもしれないというのは、幸先がいいのか悪いのか。

「差し支えなければ、その人のことを教えていただけませんか?
 僕の知っている人かもしれない」
 男の痛みには気付かずに続ける。

「ああ、失礼。申し遅れました。
 僕は、ウェルブムと言います。ウェルブム・スマラグディナ。
 教えていただけませんか?」


槍を磨く男

 ウェルブムが近づいてくると目を伏せる。
 そして、質問されて少ししてから、顔を上げた。

ウェルブム<

「ある。
 ……つまり、知っているということだ」
 真っ直ぐにウェルブムを見つめた。
 その目の中には痛みがあったが、そこまではウェルブムには分からないかも知れない。


ウェルブム

 扉に手をかけたまま立ち止まる。
(会ったことは…ない、よな?)
 記憶にない男の他の者と違う視線にしばし戸惑う。
 この男は以前に他のマインドフレイアと会ったことがあるのかもしれないな、と思う。

(もしそうだとしたら…。
 それは僕の知ってるひとだろうか?)
 何年も旅に出たまままだ戻らない者やら、自分よりも先に出発した者やら、幾人もの顔が思い浮かぶ。
 もしかしたら、彼らの消息を少しだけ知ることが出来るかもしれない。

 きびすを返し、男の近くまで戻る。
「失礼します。不躾にすみません。
 少々お尋ねしたいことがあるのですが。
 あなたは、僕のような者と会ったことがありませんか?」
 言いながら、これは唐突だったなと思った。でも言ってしまったものは仕方がない。
「えっと、つまり、だれかマインドフレイアをご存知ですか、ということです」


槍を磨く男

 ふと、視線を感じてウェルブムに目をやる。
 初めて、その存在に気が付いたらしい。
 その表情が動く。
 ギルドの店主や、他の人族とは違い、奇異なものを見る視線ではなく、何か別の懐かしいものを見るような顔をする。その違いは、ウェルブムにも分かった。

 一呼吸の間、二人の視線が交錯する。


ウェルブム

「わかりました。
 どうもありがとう」
 木札を受取り店主に会釈してから、戸口に向かう。

 自分が来た時から居続ける冒険者につかの間目を止めた。
 (あの人はいつからいるのだろう。
 ひとを待っているんだろうか?
 ここは待ち合わせにも使えるのだな)
 そして、そのまま扉に手をかける。


店主

ウェルブム<

「そうなります。たぶん、ですが」
 断言できないことを申し訳ないことのように言う。
「ウェルブムさんですね、了解しました。
 では、オウドノ氏にご紹介します」
 どこからか木札を出して来て、ウェルブムに手渡す。
 ギルドの印章が入っており、ギルドからの紹介であることを証明するものらしい。
 それから、錬金術師オウドノの工房の場所を告げる。
 ギルドからそう離れてはおらず、行くまでにたいした時間はかからないだろう。

 見返してくる目がまるで鏡のように綺麗なので、店主はなぜだか少しばかり怯みながらも、にこりと笑顔を返した。


ウェルブム

(……凝視されてる。
 これほど大きな街でも珍しいのだろうか。
 困ったな。
 もの珍しいことはなにも出来ないのだけど。
 こういう時はどうしたらいいのだろう)
 仕方が無いので、こちらからも見返してみる。
 その顔になんの感情も浮かんではいないが。

「なるほど。
 では探索場所は1週間で戻れるところまで、ということですね」
 独り言のようにつぶやいてしばし考える。
 詳細はオウドノに会ってからでなければわからない、らしい。
 それなら直接話を聞く方が早い。
 北海沿岸の様子もそこで聞くことが出来るだろう。
 
「わかりました。依頼をお受けしようと思います。
 僕はウェルブムといいます。
 オウドノ氏の工房を教えていただけますか?」


店主

 退屈だなあ、と思っていたところに、思わぬ客が来て目を丸くしている。

ウェルブム<

「オウドノ氏……ああ、あの錬金術師の依頼ですね。
 “灰ノ草”の採取、確かに受け付けていますよ。
 詳しい話ですか、そうですねえ……。詳しい話とはいっても、元からあまり詳細を明らかにしてくれる依頼人ではないものですから、私からお話しできることは多くはありません。

 “灰ノ草”という植物があるそうです。
 これは、錬金術師の方が行っている研究に使用する材料だとか。私はあまり錬金術というものに詳しくはないので、良くは分かりませんが、一定時期にしか生まれず、一定の環境でしか育たず、しかもすぐに枯れてしまうのだとか。
 あまりその所在地や採取方法を広めたくはないということで、場所についてはあまり情報がありません。
 ただ、北海沿岸――つまり境界都市オウロからボン・ノドンにかけての三日月状の海岸線のどこかだそうです。

 依頼はその“灰ノ草”の採取。
 灰ノ草1株につき150Rdの報酬です。
 灰ノ草は地面から抜いてから一週間経ってしまうと力を失ってしまうそうですので、採取後は急いでこちらまで戻ってきて、お渡しくださいね。

 この条件で依頼を受けてくださるという場合には、オウドノさんの工房で、直接、詳細についてお話をしていただくことになります」
 つらつらと依頼について説明をしながら、初めて見る種族に好奇心に満ちた視線を注いでいる。
 ふと、(綺麗な目だなあ)と、場違いな感想を覚えている。


ウェルブム

 扉をくぐり、しばし立ち止まる。ひとわたり店の中を見渡す。
(これが竜追いギルド。
 大都市にしては案外ギルドは閑散としてるのだな。
 これで創造竜にたどり着く者が現れるのだろうか)
 そんなことを思う当人も創造竜を追うために訪れたわけではないのだが。
 問題は、人間の社会で過ごすということは案外と金銭が必要ということだ。
 ラミュイニュの野を出る際に用意していたいくらかの現金は底をつきかけている。
 竜追いギルドが竜を追うことだけでなく、仕事の斡旋も行っていることは聞き及んでいた。
 ギルドの店員とおぼしき男に軽く会釈をし、依頼と思われる張り紙が貼ってある壁の前まで進む。

 いくつかの張り紙をながめるうち、とある依頼に目が止まる。
(灰ノ草?)
 聞き覚えは………?

 ウェルブムに、そういった植物について聞いた覚えはなかった。

 依頼者が錬金術師となればそれは錬金術の材料に違いない。興味をひかれないといえば嘘になる。場所が北海沿岸だけに、少々荷が重そうではあるが…。
 とりあえず、話だけでも聞くことにしよう、ということにして。

 カウンターに歩み寄り、ギルド員に声をかける。
「失礼。仕事を探しているのですが、あちらのオウドノ氏の依頼は受け付けているのでしょうか。
 詳しい話をお聞かせいただけますか?」
 緑色の三つの瞳で彼を見据え、答えを待つ。


GM

 彼がここに到着したとき、ギルドの中には一人の冒険者と、後はギルド員しかいなかった。
 冒険者はテーブルにつき、真剣な顔で槍の手入れをしている。ウェルブムが入ってきたことにも無関心だった。
 ギルド員は手元に落としていた視線を上げる。
 目を大きく開いて、不思議そうな顔をしている。


ウェルブム

 ラミュイニュの野を出てまっすぐにボン・ノドンを目指す。
 理由は、まずは大勢の人族の集まる場所をこの目で見てみたかったから。
 大きな町ならどこでも良かった。
 ようやくボン・ノドンにたどり着いた頃には路銀も心細くなって来たので、手短に仕事を探そうと竜追いギルドへ向かう。


マリユス

店主<

「‥それだけ分かれば十分だわ、ご丁寧にどうも」
 店主に礼を言うと、酒の勘定を支払って店を出る。

 マリユスは、南方領泊の領地へと向かった。


店主

マリユス<

 マリユスに細かい道順を説明する。
 聞いてみると、そこまで複雑ではない。シノン街道を歩いていけば迷うこともないだろうと思えた。


マリユス

店主<

「そうねぇ…それじゃあマスターの言葉を信用して…
 行くだけ行ってみようかしらね。」
 うまく賊殲滅の依頼に参加できれば御の字、そうでなくても相手は貴族、会うだけ会ってうまく丸め込めば(美味しい仕事にありつけるってことも、あるかもしれないしね…)などと少々邪まな事も考えてみたりする。
「その辺境伯さんには、どこに行けば会えるのかしら?」


店主

マリユス<

「そうですねえ……、荒事が得意な連中は、けっこうな数が、バーナード地方の対魔物戦線に向かってしまいましたからね。
 ……そうですね、このギルド以外でも依頼がされている可能性は大いにあります。何せ、群盗の殲滅なんていう任務が、ちょっとやそっとの人数で出来るわけがありませんからね。
 南方伯の元に、もう何組かのグループが向かっていることも考えられますよ」


GM

周囲(ギルド内)<

 時間帯が悪いのか、ギルド内に、ほとんど、人の姿は見られない。
 ただ、店内の隅の方で、一人装備品の手入れをしていたらしい人物と目が合う。
 年の頃は三十の男性で、真剣な顔で、飾り気のない槍を磨いている。


マリユス

 店主の説明に、右掌を頬に当てた姿勢で暫し思案する。

店主<

「野盗殲滅の依頼だけど、アタシの他にも興味持ってる人達な
んていないのかしら?」
 正規の報酬にプラスもあるのは悪く無い条件だが‥人を集めようにもこの街に来て日が浅いマリユスにはその心当たりが無い。
「いるならその連中と一緒に依頼を受けられれば、話が早いのよねぇ〜‥」
 言いつつ、店内を見回す。
 野党退治を好んで引き受けそうな猛者めいた人物は、果たし
て見当たるだろうか?


店主

 気に入ってもらえた様子に、にこにこと相好を崩す。

マリユス<

「ああ、あの依頼ですね。そうですねぇ……」
 頷いて、考えるような仕草をする。
 それから、説明をはじめた。
「カイノの南ヶ原の依頼は、書いてあるとおりの依頼ですね。
 南ヶ原は、この町の南にある山を一つ越えたところに広がっている草原で、野生動物が多く生息していますね。
 横に広い草原なので、旅の神さまのお恵みがあれば、二日で抜けることも可能ですよ。
 町のすぐ近くだし、我らが王様は、旅人や商人の保護に熱心ですからね。治安も良いはずですから、たぶん、何の問題もないんじゃあないでしょうかね。報酬は、全部で100Rdですね。何か危険があった場合は額の上乗せも考慮するそうです。
 そうそう、往復の食料などは、別に用意されておりますよ。
 次の街道の安全確保ですが、まあ、賊の根絶が依頼内容ですね。
 依頼主のキートン南方領伯という方は、自由貴族のお一人です。そこそこ大きな領地を持っておられますね。その方の領地と、境界都市オウロを結ぶ街道に賊が出るということで、それを退治して欲しいということで、こちらに依頼がまわってきた次第ですね。
 自由貴族の領地には、サノットもオウロも手出しするわけには行きませんので、こういうことになったんでしょうかね。
 報酬は、一人200Rdとなっていますね。
 もしも賊が何かの宝物を持っている場合は、伯が調査した上で、その量に応じた報酬を改めて考え得そうですね。こちらは、ある程度の人数を集める必要がありますね。
 ……こんなところでしょうか?」


マリユス

(遅いのよ!…ってかアンタ人の話聴いて無かったわね)
 グラスを運んできた店主を冷やかに一瞥すると、グラスを口
に運ぶ。
(まったく…あら、何よ結構美味しいじゃないの)

店主<

「美味しいわ…」
 ほぅ…と溜息を吐くと目の前につっ立っている店主に微笑を返す。
 どうやらグラスを満たした液体が口に合ったようだ。
 先程までの憤懣は何処へやら、である。
「そうそう、お仕事のことでちょっと教えて欲しいのだけど…

 一旦言葉を切ると片肘をカウンターに付いて店主に顔を寄せる。
「掲示板に貼ってある"カイノの南ヶ原の縦断"と"街道の安全確保"の依頼について、お話を聞かせてもらえるかしら。
 できるだけ詳しく、ね?」


店主

 三十前くらいの青年が、それまでぼーっとしてマリユスを見つめていたが、再び声をかけられてようやく我に返る。

マリユス<

「は、はい、ただいま」
 慌ててがちゃがちゃと酒を用意して、出しに行く。
 薄い灰色がかった液体で満たされたグラスを持っていく。
「えーと、何でしたでしょうか?」
 どぎまぎしながら聞き返す。


マリユス

(”灰ノ草の採取”ってのは却下ね。
 チマチマ野草摘みなんてアタシの性に合わないわ。)
 懐の薄ら寒さの割には随分身勝手な言い分である。
 ともかく、残る依頼は護衛か、盗賊(?)退治か。
(…しっかし、何時まで待たせる気よ!
 商売っ気無いわね、ちゃんと注文聞こえてんのかしら?)
「あの…お酒、まだなのかしら?
 それと掲示板に張られてる依頼について少し教えて欲しいのだけれど…」
 入店早々心の中で毒をぶち撒けながら、努めて平静な声色でカウンターの奥に向けて声を掛ける。


GM

掲示板<

 いくつもの張り紙がなされていて、雑多な印象を与える。
 身辺調査、依頼を踏み倒した冒険者の捕縛、星見の手伝い……様々な仕事がある。
 そのようなものの中から目についたのは、“灰ノ草の採取”、“カイノの南ヶ原の縦断”、“街道の安全確保”くらいだろうか。
 一つ目は少人数でもできそうだし、二つ目は一人でもいいのではないかなと思える。最後のは……おそらく、他の複数の冒険者と組んでやらなければならない仕事だろう。


マリユス

 一人の若者が扉を開けて店内へと入ってくる。
 肩口を越える長さの濃紺の髪が歩を進める度に更々と揺れる。
 男?否、やはり女だろうか?
 見た目から其れを判別するのは少々難しいかも知れない。
 カウンター前まで来て椅子に座り足を組む、その一連の動作が小癪なほど絵になっている。
 …と、若者が口を開く。
「軽めのお酒を一杯、頂けるかしら」
 外見を見事に裏切るハスキーな男声、この場に淡い期待を抱いていた男性陣が居たとしたら、まさに冷水をぶっ掛けられたような気分であっただろう。
「ふぅ…」
 妙に艶かしい溜息を吐くと、純情な田舎の小娘ならば眩暈を起こしそうな流し目を依頼の紙の張られた掲示板に向ける。