PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

北海王国シリィン
大陸の北部。北の遺跡群と魔物の大地を監視する。
国王はモノンド。名はオムネイツ。近辺のドワーフの集落からも敬意と信頼を受けている。

:北海王国 魔術師ギルド:
 遺跡には、数知れないほどの種類の罠がある。
 その中には技術や知恵、観察眼だけでは対抗できない罠もある。
 そして、そんな罠の中に落ち込んでしまったときにはどうするか。
 たとえば、高さ50mを越えるスロープに落ち込んだら?
 扉も窓も無い密室に閉じこめられたら?
 他の冒険者の助けを待つか、餓死するかしかない。
 そういうときに、自分が知っている場所に一瞬で移動できるような方法があったらどれほどか。

 そのような理念の元に設立された施設である。

投稿(件名…北海王国 魔術師ギルド)
戻る



 
アシュレイ

シース<

 首肯いて同意する。
「ならすぐに出発だ」

シナリオ5「三人の魔術師」



 
シース

アシュレイ<

 しばらく思案したのち、口を開く。
「いえ、この場は急ぎたいです。考えてみれば、あなたと再開するまでにかなり無駄に時間をとってしまいましたし」



 
アシュレイ

ギルド員<

「感謝する」

 魔術師とは良くも悪くも知識の探究者なのだなあ、などと埒もない事を考えつつ指
輪を受け取った。
 何はともあれ、これで亡霊に触れることが出来る。

シース<

「どうする?手助けをしてくれそうな魔術師か使徒を探すか?」



 
ギルド員

 アシュレイとシースのやり取りを見たギルド員は、嬉しそうに笑顔を深めた。

アシュレイ<
 
「では、商談成立ですね」
 箱をしまい込み、指輪を彼に差し出す。
「もちろん、遺跡で見つかったその他の品々も、適正な値段で買い取らせていただきますよ。そういった遺物の研究から我々魔道師の技が生まれていくのですから。
 …と、そうそう。使い方はですね。難しい事なんてありません。
 ただ持っているだけで効果を発揮しますよ」



 
シース

アシュレイ<

 目線に対して、頷き返す。
 もとより、彼自身は魔道書にはそれほど興味は無かったのだから、ハルークの身を助けるためならばその程度、代償のひとつにも入らなかった。



 
アシュレイ

(まったく、魔術師というものは油断がならないな)
 苦笑するが、魅惑的な取引だ。
 マナエンチャントと同等の力を有する指輪―。喉から手が出るほど欲しい逸品だ。
 さてどうしよう。
 決定権はシースにあると思ったので、目顔で問う。

 
ギルド員

アシュレイ<

「いや、わたしがついていこうというのではないですよ?」
 アシュレイの心を見透かしたような台詞をいって、手に持っていた箱を開き、その中からひとつの指輪をつまみあげる。
「これは、わたしが知己の鍛冶屋と賭け事をしたときに、賭け質としてふんだくったものでして。
 その鍛冶屋が造り上げたもので、この指輪をはめていると、多々ある魔術の叡智のひとつ、“マナエンチャント”を掛けられている時と同じ能力を得られるとか。
――マナエンチャントとは、物理的な身体のない存在、すなわち亡霊や精霊などにも接触する事ができるようになるという叡智ですが――
 “わしは細工師ではないから確かさは保障せんがな”といっていましたが、わたしが知る人族の中でもっとも有能な鍛冶屋ですからね、効果は信頼できるでしょう」
 そうもっともらしく説明した後、
「もしもその遺跡の中でその魔術師の蔵書を手に入れられたらなのですが、そのなかから一冊ばかりこちらに都合してくれると約束していただければ、これをお貸ししますが」
 人の良い笑顔で取引を持ちかけた。



 
アシュレイ

ギルド員<

「必要ならば」

 そうは言ったものの、亡霊に対して有効な手段など何一つ持っていない。
 シースが指摘した通り、魔術師か使徒がいなければ心許ない。
 人の良さそうなギルド員を見詰めて推し量る。
(頼めば同行してくれるだろうか?)



 
ギルド員

話を興味深そうに聞いていたギルド員は、ふと何かを思い出したような顔をして、いったん奥に引っ込んでから手に小さな箱を持って戻ってくる。

アシュレイ<

「戦士さん、あなたがた、亡霊相手に戦いを挑んでみる気なのでしょうかな?」



 
シース

アシュレイ<

「やはり、遺跡でしょうね…」
 呟きは、シースもアシュレイと同感だったという事を示している。
「僕は、罠には強いのですが魔物には大したことはありません。
 アシュレイさんの実力は僕も知っていますが、……しかし、亡霊相手では魔術師か、使徒(神術使いの称)がいないと心許無いですね」



 
アシュレイ

 死した後も研究に邁進するとは、そら恐ろしい執念だ。
 研究の邪魔が入る事を厭うた魔女が、地震を起こして遺跡を封じたのだろうか。冷気と水を操る術に長けているのなら、それも可能な事だろう。土は驚くほどの水を懐に抱えているものだ。
 何にせよ、それほど切羽詰まった状況では、術に失敗しても無理はないと思う。
 努めて悪い方へは考えないようにしていたが、無事別の場所に転移していたのなら、ハルークはシースに連絡を寄越しただろう。遺跡に閉じ込められて、自力では脱出できない状況にあると思える。
 壁の中に転移―、不安そうなシースの言葉が思いだされたが、すぐに打ち消した。
 ハルークの生存を信じていなければ、例え目の前に足跡があったとしても見過ごしてしまうだろう。

シース<

「その遺跡に行ってみないか」
 手掛かりが見付かることを祈って提案してみるが、二人だけでは心許なく感じる。



 
GM


 それは、ここから西の海岸線にある祠だった。
 “ヒルキニーの墓所”といわれる祠で、はるか昔の、強大な力を持っていた女魔術師ヒルキニーを祭った祠だそうだ。
 ヒルキニーはある無名な魔術師に生まれた双子の姉だった。
 炎や風を得意とする妹に対照的に冷気や水を操る術に長け、このノースパール地方の嵐ですら静め、さらに雪精や氷女(雪精を統べるとされる精霊)までも使役したという。そこから“雪の女王”とよばれていたそうだ。
 ハルークは以前からこの女魔術師に興味があり、彼自身この魔術師が著した書物から幾つかの魔法を創り上げていたと、シースはいった。

 この遺跡の情報を顔なじみの情報屋から得たハルークたちは、早速この遺跡に潜った。そこは凍りついた森の中に隠れるようにあり、空から調べでもしない限り発見できないような遺跡だった。

 その遺跡には、多くの魔物が棲み付いていた。
 罠らしい罠は一切ないため、住処を求めてやってくる魔物にとっては安住の地だったようだった。

「そして何とか魔物たちの餌にならずに僕達は目的とする書庫にたどり着いたわけです。それは良かったのですが…」

 書庫には、大量の書物が収められていた。
 だが、それを調べる事はできなかった。書庫に入ると同時に、魔法の襲撃を受けたからだ。

「墓所を目的として造られた遺跡には、亡霊が出ることも多いのです。こういった魔術師の遺跡の場合、その魔術師自身が亡霊となって、死後も魔法の研究を続けていることもあります。僕たちも最初はそれを警戒していたんですが、野生の動物や魔物が侵入していたので、油断していました。
 ヒルキニーは、“彼女の宝物を荒らす恐れのない”生き物の侵入だけを許していたんですね。それまで彼女の攻撃を受けなかったのは、運良く彼女が魔法の研究中で、気付かれていなかっただけのようです」

 ほんの少しだけふたりは抵抗を試みたが、すぐさまそれを諦めて撤退したという。身体を失う事によって、魔術師の最大の弱点である“身体が弱い事”を克服した亡霊の魔術師はかなりの難敵となる。ハルークが魔法を封じられ、唯一の攻撃手段を失った彼らは、すぐさま書庫から逃げ出した。
 ひとまずは諦めて街へ戻る事にして遺跡を歩いていた彼らは、途中で大きな地震が起こるのを感じた。
 ここノースパール地方では地震は滅多に起こらないものだった。記録を見ても、百年に一度あるかないかで、それも規模は大したことがないものばかりだ。故にこの遺跡も、大地震に対してはなんの処置もされていなかった。
 
 そこで、アシュレイと共に話を聞いていたギルド員が口を挟む。
「ちょっと待ってくれ。このあたりで地震なんて起きていないんだが」
 シースは頷く。
「ええ、僕も驚きました。どうやら自然的な地震ではないようですね」

 地震に耐え切れず、遺跡のそこここで落盤が起きた。
 魔物たちも慌てて逃げ出しはじめ、シースたちも出口を目指していった。
 ハルークはその時はまだ魔法の封印が解けていなかったため、テレポートでの脱出はできなかったのだ。
 何とか出口のすぐ手前まで戻ってこれた二人だが、そこへきて愕然とした。出口手前の通路が、落盤で通れなくなっていたのだ。
 地震は終わっていたが、遺跡は軋みの音を上げ、今にも崩れ落ちそうなほどになっている。さらに、行き場を失った魔物が彼らに襲い掛かってくる。…その戦闘の途中で、ようやくハルークに掛けられた魔法封じの魔法が解けた。

「それで、テレポートです。気が付いたときは遺跡の入り口に、僕だけが立っていたというわけです」



 
シース

アシュレイ<

「そうですね…。疲労していたかといえば、確かにそうだと思います。その遺跡は魔物だらけでしたから。
 …、あ、そういえば、まだその遺跡について話していませんでしたね」
 ふと気が付いて、シースは頬を掻く。
「やはり、動転していたようですね。それでは、お話しましょう」



 
アシュレイ

ギルド員<

「ありがとう」

 ギルド員に礼を言い、シースに視線を移す。
 その時のハルークの様子を知るのは彼だけだ。
 術に失敗するほど疲労していたのだろうか?
 それとも何か用があって別の場所へ転移したのだろうか?

シース<

「ハルークはどんな様子だった?」



 
ギルド員

アシュレイ<

「ほほぅ、転移の魔法のミスですか」
 ドワーフの工芸品である“眼鏡”とよばれる物品を鼻の上に載せた小太りの男性が興味深そうな声を洩らした。
「大概、魔法の失敗と言うのは、その魔法の構成…魔術式に複雑さ対して技術が足りなかったか、または正確さが欠けていたことで生じます。
 ハルークならば技術と冷静さに関しては問題はないはずですから、よほど疲労していたか、または故意に自分の転移先をシースさんと異なる場所に指定したということになりますか」



 
シース

事情を話すアシュレイの横で、不安げな面持ちをしている。


 
アシュレイ

 思いつきだけで魔術師ギルドを訪れたものの、その判断が正しいかどうか自信はない。
 ハルークは無事だろうか?
 ギルドの係員に事情を話す。


 
GM

 中は、外の厳寒の風が嘘のように暖かい空気に満たされている。
 木製の大きな建物で壁と床は知を象徴する紅色の布で飾られていた。
 隙間と見れば書棚で埋めていったような構造で、魔術師の学び舎というよりは図書館を思わせる雰囲気だ。