遺跡には、数知れないほどの種類の罠がある。 その中には技術や知恵、観察眼だけでは対抗できない罠もある。 そして、そんな罠の中に落ち込んでしまったときにはどうするか。 たとえば、高さ50mを越えるスロープに落ち込んだら? 扉も窓も無い密室に閉じこめられたら? 他の冒険者の助けを待つか、餓死するかしかない。 そういうときに、自分が知っている場所に一瞬で移動できるような方法があったらどれほどか。 そのような理念の元に設立された施設である。 |
アシュレイ |
シース< 首肯いて同意する。 |
シース |
アシュレイ< しばらく思案したのち、口を開く。 |
アシュレイ |
ギルド員< 「感謝する」 魔術師とは良くも悪くも知識の探究者なのだなあ、などと埒もない事を考えつつ指 シース< 「どうする?手助けをしてくれそうな魔術師か使徒を探すか?」 |
ギルド員 |
アシュレイとシースのやり取りを見たギルド員は、嬉しそうに笑顔を深めた。 アシュレイ<
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シース |
アシュレイ< 目線に対して、頷き返す。 |
アシュレイ |
(まったく、魔術師というものは油断がならないな) 苦笑するが、魅惑的な取引だ。 マナエンチャントと同等の力を有する指輪―。喉から手が出るほど欲しい逸品だ。 さてどうしよう。 決定権はシースにあると思ったので、目顔で問う。 |
ギルド員 |
アシュレイ< 「いや、わたしがついていこうというのではないですよ?」 |
アシュレイ |
ギルド員< 「必要ならば」 そうは言ったものの、亡霊に対して有効な手段など何一つ持っていない。 |
ギルド員 |
話を興味深そうに聞いていたギルド員は、ふと何かを思い出したような顔をして、いったん奥に引っ込んでから手に小さな箱を持って戻ってくる。 アシュレイ< 「戦士さん、あなたがた、亡霊相手に戦いを挑んでみる気なのでしょうかな?」 |
シース |
アシュレイ< 「やはり、遺跡でしょうね…」 |
アシュレイ |
死した後も研究に邁進するとは、そら恐ろしい執念だ。 研究の邪魔が入る事を厭うた魔女が、地震を起こして遺跡を封じたのだろうか。冷気と水を操る術に長けているのなら、それも可能な事だろう。土は驚くほどの水を懐に抱えているものだ。 何にせよ、それほど切羽詰まった状況では、術に失敗しても無理はないと思う。 努めて悪い方へは考えないようにしていたが、無事別の場所に転移していたのなら、ハルークはシースに連絡を寄越しただろう。遺跡に閉じ込められて、自力では脱出できない状況にあると思える。 壁の中に転移―、不安そうなシースの言葉が思いだされたが、すぐに打ち消した。 ハルークの生存を信じていなければ、例え目の前に足跡があったとしても見過ごしてしまうだろう。 シース< 「その遺跡に行ってみないか」 |
GM |
それは、ここから西の海岸線にある祠だった。 “ヒルキニーの墓所”といわれる祠で、はるか昔の、強大な力を持っていた女魔術師ヒルキニーを祭った祠だそうだ。 ヒルキニーはある無名な魔術師に生まれた双子の姉だった。 炎や風を得意とする妹に対照的に冷気や水を操る術に長け、このノースパール地方の嵐ですら静め、さらに雪精や氷女(雪精を統べるとされる精霊)までも使役したという。そこから“雪の女王”とよばれていたそうだ。 ハルークは以前からこの女魔術師に興味があり、彼自身この魔術師が著した書物から幾つかの魔法を創り上げていたと、シースはいった。 この遺跡の情報を顔なじみの情報屋から得たハルークたちは、早速この遺跡に潜った。そこは凍りついた森の中に隠れるようにあり、空から調べでもしない限り発見できないような遺跡だった。 その遺跡には、多くの魔物が棲み付いていた。 「そして何とか魔物たちの餌にならずに僕達は目的とする書庫にたどり着いたわけです。それは良かったのですが…」 書庫には、大量の書物が収められていた。 「墓所を目的として造られた遺跡には、亡霊が出ることも多いのです。こういった魔術師の遺跡の場合、その魔術師自身が亡霊となって、死後も魔法の研究を続けていることもあります。僕たちも最初はそれを警戒していたんですが、野生の動物や魔物が侵入していたので、油断していました。
ほんの少しだけふたりは抵抗を試みたが、すぐさまそれを諦めて撤退したという。身体を失う事によって、魔術師の最大の弱点である“身体が弱い事”を克服した亡霊の魔術師はかなりの難敵となる。ハルークが魔法を封じられ、唯一の攻撃手段を失った彼らは、すぐさま書庫から逃げ出した。 地震に耐え切れず、遺跡のそこここで落盤が起きた。 「それで、テレポートです。気が付いたときは遺跡の入り口に、僕だけが立っていたというわけです」 |
シース |
アシュレイ< 「そうですね…。疲労していたかといえば、確かにそうだと思います。その遺跡は魔物だらけでしたから。 |
アシュレイ |
ギルド員< 「ありがとう」 ギルド員に礼を言い、シースに視線を移す。 シース< 「ハルークはどんな様子だった?」 |
ギルド員 |
アシュレイ< 「ほほぅ、転移の魔法のミスですか」 |
シース |
事情を話すアシュレイの横で、不安げな面持ちをしている。 |
アシュレイ |
思いつきだけで魔術師ギルドを訪れたものの、その判断が正しいかどうか自信はない。 ハルークは無事だろうか? ギルドの係員に事情を話す。 |
GM |
中は、外の厳寒の風が嘘のように暖かい空気に満たされている。 木製の大きな建物で壁と床は知を象徴する紅色の布で飾られていた。 隙間と見れば書棚で埋めていったような構造で、魔術師の学び舎というよりは図書館を思わせる雰囲気だ。 |