PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

シナリオ
18
「鍛冶師への道」

 リゼルは、木のウロ亭で出会ったドワーフの鍛冶師、カックスに弟子入りをした。果たして、リゼルは見事に、鍛冶師の技を身に付けることができるのだろうか?



GM

 リゼルは竜追いギルドに向かった。

 - 特殊シナリオ達成! -

リゼル:
 機械弓Lv.0+SP0.1 機械弓Lv.0
 鍛冶Lv.0+SP4.0 鍛冶Lv.0→1!
 細工Lv.0+SP1.0 細工Lv.0



リゼル

 カックスから羊皮紙を受け取ると、背を向ける彼に向かって再び一礼すると旅仕度を開始する。旅仕度といっても数少ない装備品、例えば、ガントレットやショートハルバート、カックスから預かった金槌、先に修行で作成したアルバレストやショートスピアなどを手早く背負えるようにまとめる。ちょっと重いが、リゼルの頑強な体なら大丈夫だ。

 さて、これからどうしようか?ロード・ゴウロへは、シノン街道をシルヴァードまで先ず行くことになろう。シルヴァードか、懐かしいな。育ててくれた貴族にもきちんと挨拶しなければ。シルヴァードまでは、どこかの隊商に医術技能と鍛冶技能を売り込んで雇ってもらおう。

 カックスの工房を出て、後を振り返る。半年以上も寝食した場所が感慨と共に目に入ってくる。孤児の私は、多くの人たちに助けてもらってここまで生きてきた。何時か名を挙げ功成りとげたら、必ず恩人たちに恩返しをするのだ。そのためにも今はがんばらねば。

 そのように考えると毅然した態度でカックスの工房を立ち去っていく。


カックス

一瞬、虚をつかれた顔をして、それからにやりとする。

リゼル<

「しっかりした奴だな。
 普通は、こういうときは、何も言わずに背を向けて旅立つもんだ」
 笑うと、羊皮紙を取り、何かを書き付ける。
 インクを砂に吸わせて乾かすと、丸め、蝋で封をする。
「ほれ、持っていけ。
 地底王国ロード・ゴウロ、鍛冶職人は数いるが、ゴルゴダの奴ほどの優れた打ち手はおらん。奴を訪ねてみろ」
 言うと、今度こそ、別れと言わんばかりに、自分が背を向ける。
「じゃあ、さっさと行け。
 いいな。手紙なんか書くんじゃないぞ。わしはそういうのは……」
 得意じゃないとか何とか、なにやら口の中で呟きながら、黙り込む。


リゼル

カックス<

「あっ、ありがとうございます。」

 両手でカックスから金槌を丁寧に受取る。急に感激してきて涙腺が緩んでしまうが、必死に涙をこらえる。

「師匠の名前に恥じないようにこれからも精進します。永い間、教えて頂きありがとうございました。」

 深々と頭をさげて感謝の気持ちを伝える。

「甘えついでですが、出来ればロード・ゴウロのお知合いに紹介状を書いて頂けないでしょうか?いきなり、何も知らない所に行くものですから」


カックス

リゼル<

「そうか、重畳だな」
 頷く。
 それから、リゼルの考えを聞き、しばらく黙っている。

「……そうか、当然というものだな。どんな徒弟でも、一人前になるためには修行の旅に出るもんだ」
 ため息をついて、立ち上がる。
「いいだろう。わしにいわせればおまえさんはまだまだひよっこだが――ま、そろそろ、一人前な半人前にはなっただろう。
 行ってみろ。
 一人前になるまで、もう、この工房の入り口はくぐらせんからな」
 言うと、手にしていた金槌を突き出す。
「持ってけ。
 ろくな道具も持たせんで、放り出すわけにもいかん。
 あんまり質がいいわけじゃないが、わしが見習いのときから使っている鎚だ。必ず返せよ」


リゼル

 とりあえず、機械弓の試射報告をしよう。

カックス<

「城門を出た所でアルバレストの試射をしてきました。ちゃんと機能しているようです。もっとも、私の弓の腕では完全に的を射抜くことは出来ませんでしたが・・・」

 一呼吸おいて、思い切って、考えていることを口に出して見る。

「えーっと、これからのことなんですけど、何かまとまった課題とかあるんでしょうか?私としては、可能ならば、ロード・ゴウロに行って見聞を広げて見たいなとも考えているのですけど、いかがでしょうか?」

 いっ、言ってしまった!どんな反応がカックスから返ってくるか緊張して待つ。


カックス

 工房の金床に向かい、何かの作業をしている。
 帰ってきたリゼルの気配がすると、背中を向けたまま、

リゼル<

「ああ、戻ったか」
 ぼそりと言う。

 それから、何を言うでもなく、金属をいじっている。

「…………」


リゼル

 外れたか。しかし、これは私の技能の問題。苦笑して、弓を回収するとカックスの工房に引き返す。

 さて、カックスに師事してからどれくらい経っただろう。一通り鍛冶師としての基本技能は教えてもらえたような気がする。次にカックスに何を教えてもらおうか。そんなことを考えながら工房への帰り道をたどる。漠然とだが、ロード・ゴウロに行って、もっと他のタイプの鍛冶師とも面識を得たいと思ったりもする。

 工房に戻ってカックスを探す。カックスを見つけて、次の一言に何を言うか迷ってもじもじしている。


GM

 命中判定:分類/アルバレスト・中距離 > 的
  リゼル:技能なし-20%
   > 失敗!


 次に放った矢は、残念ながら、だいぶ外れた場所に突き刺さる。とはいえ、弓の動作に問題がないことは間違いないようだ。


リゼル

 フレイ!当たった。うれしい。自分で作った弓が適切に動作するのを目の当たりにして率直に喜ぶ。次は、もう少し距離を取って試してみよう。的から、さらに十数メートル離れて矢を番え、第2射目の試射を行う。今度はどうだろう。的に当たるだろうか?


GM

 命中判定:分類/アルバレスト・近距離 > 的
  リゼル:技能なし-20%
   > 優秀な成功!
    > ど真ん中!


 リゼルが放った矢は、風を切り裂いて飛び、見事に、狙った的の中心に命中した。鈍い音を立てて、矢が土壁に食い込む。そう深くはなさそうだ。


リゼル

 うぅーん、どうしようか?
やはり、弓の扱いは慣れていないので崖の所まで行って、土の壁に打ち込むことにしよう。木を的にして外した時に矢がなくなるのはこまるし。

 そう考えて崖まで歩いていく。土が壁のようになっている適当な場所を見つけて、的になるような印を土に刻んだ。14、5mの距離を取って、試射を開始することにする。鐙に足をのせて両手で弦を張ると矢を番えてゆっくりと照準を合わせた。数秒の間ずっと的を狙っていたが、意を決してトリガーを引いた。


GM

 城兵に見送られながら、リゼルは試射の場所を探す。
 程なく、太い幹の木々が立ち並ぶあたりにやってきた。
 そこで視線を遠くにやってみれば、当初、リゼルが探していたような崖らしきものが見える。小一時間もあれば辿り着けそうだ。


リゼル

 いや、まあ、土がむき出しになった崖の方が刺さった矢を回収するのに楽かなと思っただけなのだが・・・カックスの言うように別に木を的にするのでも問題はない。

カックス<

「では、これから、城門のそばの木立で試し射ちにいってきます。」

 軽くカックスに会釈すると、アルバレストを肩に担いで外に出かけていく。城門を出て適当な試射の場所を探す。


カックス

リゼル<

「崖だ?」
 きょとんとする。
「そんな限定的な場所には心当たりはないが……。
 試射くらいだったら町中じゃなけりゃどこでやっても良いと思うぞ。
 城門を出て、すぐに木立があるだろう。その辺りで、木を的にして撃ってみたらどうだ」


リゼル

 カックスから紐のような物を受け取り、ちょっと伸ばしたりして見て感触を試してみる。確かに弓の弦としては優秀な素材のようだ。さっそく、アルバレストの麻の繊維と交換してみる。

 -アレンジ鍛冶-
アルバレスト『グリフィン・ヘッド』

 弦(麻の繊維)⇔弦(動物の腱/馬)
 
 評価

 形状: アルバレスト(足掛け式)
 
 命中精度: -10/-15/-20
 威力補正: =130%
 威力確実性: 25%
 射程 近/中/遠 5-35/-50/-70
 重量・容量 8.5/40
 特記: 部品の消耗率-10%


 うーん・・・、作業が終わると、やっぱり試射がしたくなってきた。

カックス<

「すいません。試射がしたいのですが、広い場所で土がむき出しになって崖のようになっている場所を知りませんか?」



カックス

「ふむ……」

 手にとって、細部から全体のフォルムまでじっくり観察する。
 軽く振り回し、また、構えを取って照準を確かめる。それから、弦を引いて、弾力を確認する。

リゼル<

「まあまあ、だな。
 お前さんの修練は、とにかく鉄をいじることに集中してやってきたからな。こういった作品とはある種、畑が違う。ここまでやれれば上々だろう。
 あとは、練習を繰り返していけば、もっとうまくできるだろう。
 失敗しやすいのは、各材料を組み合わせるときにバランスを整えること、歪みが生じることと、台を平たく保つこと、これくらいだ。このあたりを誤らなければ、クロスボウなんてものは簡単に造れる。
 ……そうだな。
 ちょっと、こいつを使ってみろ」
 懐から、繊維をなった紐のような物を取り出す。
「こいつは、まあ、馬の足の腱を使ったものでな、硬く頑丈で、弾力性にも優れている。弓にぴったりの材料だ。麻や何かと比べたら、値段が張るが、大したもんじゃない」


リゼル

 完成したアルバレストをカックスにゆっくりと手渡すと期待を込めてコメントを待つ。
 自分だけではどうしても直せない未熟な技量をカックスの適切なアドバイスで改善出来るかもしれない。
 今はカックスの一言、一言が値千金だ。

 師がどのような反応を示すか、半分期待、半分不安になりながら見守る。


カックス

リゼル<

「どれ、できたか」
 リゼルが太矢を造り終えたのを見て、近寄ってくる。
「まあまあ、様にはなっているようだな」


リゼル

 仮鍛造の結果を見て、苦笑する。

「う・・ん、射程、命中精度、威力補正、威力確実性、みんな、いまいちだなあ。今の私の実力じゃ、こんなものか。
 もう少し調整して見て、あとは、付加技術の重量調整ステップに期待しよう。」

 今の設計仕様を大幅に変えない範囲でしばらく性能アップのための微調整を行うと、余った材料を元に戻して完成のためのステップに入る。

 機械弓 完成
 弓 + 弦 = アルバレスト『グリフィン・ヘッド』


「あっと、忘れ物だ」
 慌てて、残った鋼と木材から機械弓用の太矢を5本作る。アルバレストが完成したら試射してみよう。


GM

 機械弓の鍛造
  
   台座/木材:10 革:2
   ベルト/革:4
   板ばね/鋼:5
   トリガー/錬鉄:2
   照準器/錬鉄:1
   あぶみ/錬鉄:1
   弦/麻の繊維:2
   井戸水による処理 ニカワを使用
  
   麻の繊維(2.0)からの作成

 
仮鍛造
 弓 + 弦 = クロスボウ

 評価

 形状: アルバレスト(足掛け式)
 
 命中精度: -10/-15/-20
 威力補正: =125%
 威力確実性: 20%
 射程 近/中/遠 5-25/-40/-60
 重量・容量 8.5/40
 特記: 部品の消耗率-10%



リゼル

 カックスの助言に従いながら、クロスボウの製作を開始する。

STEP.1 〜使用する材料を選択
 →鋼 錬鉄 木材 革 麻の繊維 ニカワ
STEP.2 〜作成する部品を選択
 →台座 ベルト 板バネ ベルト トリガー 照準器 あぶみ 弦
STEP.3 〜部品に使用する材料を割り当て
 台座/木材:10 革:2 ニカワ
 ベルト/革:4 ニカワ
 板ばね/鋼:5
 トリガー/錬鉄:2
 照準器/錬鉄:1
 あぶみ/錬鉄:1
 弦/麻の繊維:2
STEP.4 〜性能に対する力配分を決定
 殺傷/5 命中/6 防御/0 特殊/0
STEP.5 〜作成段階で使用する“水”を選択
  井戸水を選択


こんな感じかな?今回はオプションの取り付けもないので、このまま仮鍛造を行っても良いかな?


カックス

 リゼルが描いて起こした製作図を見ながら考える。

リゼル<

「ふむ、どうだろうな……」
 頭の中に完成図を思い浮かべ、製作過程を一つ一つ描きながら答える。
「台座にはもう少し材料を使う必要があるだろうな。
 ベルトは……握りの滑り止めか? そうだな、それなら、減らしても大丈夫だろう。
 板バネ……これは弓の部分だな? そうだな、材料は鋼で問題ないだろう。
 重量はかさむかも知れんが、まあ、試作品なんていうものはそんなもんだ。造ってみて、具合が悪ければ次は調整すればいい」


リゼル

カックス<

「えーっと、こんな感じでどうでしょう。80cmくらいある、やや大きめのクロスボウを考えています。

(リゼルによる説明)

 矢の番え方は、クロスボウの先端のあぶみに足をかけて両手で弦を引こうと思います。
 あ・・ちょっと重いかな?」


カックス

リゼル<

「そうだな……。あまり詳しくはないが、そうさな、木材に鉄材、動物の尾だので充分だろうな。それとも、何か変わった材料も使ってみたいか?」


リゼル

カックス<

「はい。それでは機械弓を製造するに当たっての基本的な部材を集めて見たいと思います。何か手持ちの使える材料をお持ちでしょうか?」


カックス

 首を傾げてから、頷く。

リゼル<

「まあ、構わないがな」
 肯定してから、釘を刺しておくことは忘れない。
「別に、向学心が旺盛なのは良いことだと思うが、お前さんが学ばなきゃならんことはいくらでもあるのは忘れるなよ。
 お前さんが基本的な武器の造り方をマスターしなきゃならんことは変わらないからな。頭に詰め込みすぎてパンクしないんなら、機械弓だろうが、わしの知っていることは教えてやるがな」


リゼル

 先ずは基本的な機械弓の製作技術を勉強することが先かな? そのように気持ちを切り替えると再びカックスに話を切り出した。

カックス<

「えーっと、しばらく考えてみたのですが、先ずは基本的な機械弓の機構を勉強するために、クロスボウかアルバレストを製作してみたいと思います。ミニチュア化や連射機能については見聞を広めてから将来トライすることにしました。いかがでしょうか?」


リゼル

 師からの厳しい指摘だ。とりあえず、カックスの前からお辞儀をして退き自分の部屋に戻って考える。
 カックスの言ったことを一言、一言反芻するように呟きながら機械弓に関する参考文献を調べて見る。

 弦を金属で作ることは難しいか・・・多分、細い金属をコイル状に巻きながら長いバネを作ればそれらしきものになるだろうが、所望の弾性を得ることも耐久性/重量の観点からも使用には耐えられないだろう。

 小型化という観点では、カックスが言ったように商人の国の機械弓・・確かミニチュアクロスボウだっけ・・・が参考になるが、それでも片手で装着したまま武器が扱えないとなると本末転倒だな。やっぱり、クロスボウやアルバレストのように独立した武器として扱った方が合理的か。


カックス

リゼル<

「ふうぅぅむ」
 深く深くうなって、考え込む。
 かなりの間、沈思黙考し、それから、ようやく、口を開いた。
「素人考えというのか、それとも、とんでもない素質があるのか、わしにはまだ分からん。いずれにしても、なまなかな案じゃないな」
 頭を振る。
「とりあえず、結論としていえることは、だ。
 わしがやるのならともかく、今のおまえさんじゃ、なんとか形だけは取り繕うことができても、動作不良を起こして役に立たなくなるだろう、ということだ。
 機構が複雑だから、手を掛けなきゃならん所が多すぎるわけだ。
 後、何点かだな」
 指を折りながら、考えを述べていく。
「一に、弓はともかくとして、弦を金属で作ることは無理だろう。わしも詳しいわけではないが、弓弦に必要な柔軟さと強度を、ワイヤーで達成させることは難しい。どちらかというと、あれは、装飾品にしか使えない代物だからな。
 二に、ハンドルを回して、一定以上に弦が張られると自動的に矢を発射するということだが、その場合、狙いは自然と乱れるだろう。命中精度をあまり考慮しない――近距離用の弓にするなら問題はないだろうが。
 三に、なんとか折り畳みの機構を完成させることができても、重量はお前さんの想定している以上のものになるだろう。わしは、商人の国で作られたという隠し武器の機械弓を見たことがあるが、その二倍以上にはなるだろう。片手にそれだけの重さをぶら下げて、うまく武器を使えるかは疑問だ」
 ざっと思いつくのは、とりあえずこんなところだろうな。と、締めくくる。


リゼル

カックス<

「ええ、左手のガントレットの手首から肘までの間に装着する付加的な装備を考えています。普段は外していますが必要に応じて装着して矢を発射します。装着するものは小型のボウで大きさ20cmくらい、弓も弦も金属製を考えています。12cmぐらいの金属製の矢を3本装填します。内臓しているギアをハンドルで巻くことによって一回一回弦を引き絞ります。一定以上弦が引き絞られると自動的に弦の留め金が外れて矢が発射されます。ハンドルを回し続けることにより三本の矢を連続して発射することが可能です。
 このボウを装着したままでハルバード等の武器を扱う場合は、張り出している弓を真ん中から、こう肘の方にガチャンと折りたたむことが出来ます。これで張り出した弓の部分がなくなり武器操作の邪魔にならなくなります。ちょっと重量があるので少し武器操作上のペナルティになりそうですが、それはしょうがないと思います」

 カックスに一生懸命考えていたことを説明する。

「どうでしょう?難しいでしょうか?」


カックス

リゼル<

「ふん?」
 あごひげを撫でながらリゼルの言葉を吟味して、答える。
「そいつは、どういったイメージで考えてる?
 籠手にちょっとしたスペースを作って、いわば隠し武器のようにするのか、それとも、外側に取り付けてしまうのか。
 前者だったら、少しばかり荷が勝ちすぎかもしれんな。まあ、挑戦してみることは止めんが」


リゼル

 そうか、もう半年も修行しているのか。
 そういえば、修行を始める前に所有しているガントレットを改造して見ようと思っていたのを思い出す。

カックス<

「あの、前からの希望なのですけど、私のガントレットの付加機構として、ボウを取り付けたいのですけど、やってみて良いでしょうか?」


カックス

リゼル<

「まあまあ、というところだな」
 しかめつらしい顔で答える。
 眉をひそめて、じっとリゼルを見る。
 やがて、にやっと笑う。
「だが、まあ、半年程度の経験にしては、なかなかだ。よくやった」


リゼル

 感慨深く目を細めて出来上がったショートスピアに見入る。

カックス<

「これで完成なのですか?
 出来映えはどうなのでしょう?」



GM

 カックスに見守られながら、リゼルは最終的な処理を行う。その間、カックスは一切の口出しをしない。
 ただ、最後に、出来上がったショートスピア(無銘)を手に取ると、別の作業台に運び、丹念に研ぎを入れる。

 槍 完成
 スピアヘッド + シャフト = ショートスピア

 評価

 形状: 片手槍(直刃)
 殺傷: -/1-15/-
 行動力: 1/1 1/1
 命中/防御: 20%/5%
 射程: 0-1
 硬度/耐久: 8/30:15
 重量/容量: 0.5/2.0

 そして、槍が完成した。
 まだ未熟な腕ながら、確かにそれは、一つの武器だった。


カックス

リゼル<

「よし、やってみろ」


リゼル

 カックスが言ったように、先ずは身に着けることになる「匠の技」重量調整で今回は行くことにする。

カックス<

「重量調整で行きたいと思います。」


GM

 込み入ったオプション作成の場合は、仮鍛造の前段階で指定しておく必要があります。今回は、ニードルを取り付けるだけでしたので問題がありませんでしたが。手順としては、このショートスピアの場合は「仮鍛造→仕上げ→カスタマイズ(ニードル取り付け)」になりました。
 ニードルを取り付け終わり、武具のほとんどを完成させようとしているリゼルに、カックスが訊ねる。
「さて、それでお前さん。今回はどっちの方向で行くんだ?
 長期耐用か、先行防衛か」


リゼル

 ニードルを取り付けた手槍の最終イメージを描きながら、作業を進める。前に作成した短刀より大きいものなので、色々と考慮すべきことが多い。それすらリゼルには楽しいことではある。


カックス

 片眉を上げてみせる。

リゼル<

「初めての挑戦の割に、そんなことを思いつく余裕があるとはな」
 どれ、と言いながら、作業場を離れ、部屋の片隅にまとめてあった用具入れを探す。
 ややあって、小振りの金属片を手にして戻ってくる。
「ほれ。
 前に、別件で造っておいた鋲だ。大斧の先端に取り付けようと思っていた奴だが、最終的に使わずにいて、余っていた。こいつで代用が利くだろう」
 ニードル(鋼・容量0.5・重量0.6)を手渡す。


リゼル

 頭に思い描いたショートスピアの完成イメージに従って作業を進めていく。
 確か、ショートスピアにはある程度の性能の余裕(スロット2が利用可能で)あって、ニードルとかファングといったオプションを実装出来るはず。今回は、ニードルを取り付けて見ようか?カックスにニードルの材料があるか聞いてみる。

カックス<

「今、ショートスピアを作ろうと思っているのですけど、オプション部品としてニードルに挑戦して見ようと思います。ニードルの材料になるような鋼の針ないでしょうか?」


GM

 槍の鍛造
  スピアヘッド
   鉄(3.0)からの作成
   井戸水による処理
  シャフト
   木材(8)からの作成 革(3.0) ニカワ(1.0)を使用

 
仮鍛造
 スピアヘッド + シャフト = ショートスピア

 評価

 形状: 片手槍(直刃)
 殺傷: -/1-15/-
 行動力: 1/1 1/1
 命中/防御: 17%/5%
 射程: 0-1
 硬度/耐久: 8/30:15
 重量/容量: 0.5/2.0

 その後はカックスの助言はなしで、リゼルは槍を形にしていった。中途で、最終的な槍の姿が、リゼルの脳裏に描き出される。
 このまま打っていけば、このような武器になるだろう。


リゼル

 何を作成しようか?少し本格的なものとして手槍に挑戦してみることにする。修行の合間を見つけて少しずつ作業していく。

それでは、カックスの助言に従って製作を続行する。

STEP.1
 〜使用する材料を選択
 →鉄 木材 革 ニカワ
STEP.2
 〜作成する部品を選択
 →スピアヘッド シャフト
STEP.3
 〜部品に使用する材料を割り当て
 スピアヘッド(鉄:材料3) シャフト(木材:材料8 革:材料3 ニカワ:材料1)
STEP.4
 〜性能に対する力配分を決定
 殺傷/5 命中/6 防御/0 特殊/0
STEP.5
  井戸水を選択

さて、どんな具合だろうか?


カックス

リゼル<

「どれ、見せてみろ」
 リゼルが書いた製作図を見る。
「ふむ……。む?
 とりあえず、お前さん、それぞれ材料をどの程度の容量だけ用いるのか決めていないようだぞ。それも考えてみるといい。
 基本的に、スピアヘッドは大体3くらい、シャフトは8くらいの材料が必要になるな。長くしたり、大きくしたりするなら、それに合わせて材料を増やす。
 性能配分はな……。
 一人前になったばかりの鍛冶師なら、大体、15くらいの力があると考えてみろ。お前さんはまだ半人前に毛が生えたくらいだから、そうだな。11くらいだろう。
 大体、一つの性能に対して5を割り振れば、その性能は無難に仕上がる。8なら高い方で、全力なら10だ。3や4なら手を抜いている方だし、0なら何も気にしていないわけだ。
 ま、なんだ。別にこの生涯で一つしか作れない武器というわけではない。気楽に考えて造ってみたらどうだ」


リゼル

 何を作成しようか?少し本格的なものとして手槍に挑戦してみることにする。修行の合間を見つけて少しずつ作業していく。

STEP.1
 〜使用する材料を選択
 →鉄 木材 革 ニカワ
STEP.2
 〜作成する部品を選択
 →スピアヘッド シャフト
STEP.3
 〜部品に使用する材料を割り当て
 スピアヘッド(鉄) シャフト(木材、革、ニカワ)
STEP.4
 〜性能に対する力配分を決定
 殺傷/? 命中/? 防御/? 特殊/?


 途中で少し悩んでしまう。配分に関してはカックスに相談してみよう。

カックス<

「すいません。手槍を作成しようと思うのですが、こんな感じでどうでしょうか。
 それと性能配分なのですが、少し悩んでいます。性能配分するに当たっての一般的な指針とかあるのでしょうか?考え方を教えてください」



GM

 時間は飛ぶように過ぎていった。
 鉄を打ち、ひたすら鍛えていく日々がやってくる。カックスは単調な作業といっていたが、かれが細かい部分で工夫を凝らすことを要求し、その内容も色々なところまで及ぶものだから、その実は新しいことの連続であった。
 確かにリゼルがまだ金槌を持ち慣れない頃は、すべての作業がまったく同じことの繰り返しだったが、現在はできることも増え、学べることも多くなっていたのだった。
 更に三ヶ月が経過し、リゼルは、灼けるように暑い炉の前にいることに慣れ、赤熱した鉄を、同じように暑い鎚を使って鍛えることに慣れ、弾けて飛んでくる真っ赤な破片を浴びることに慣れた。
 ある時、カックスはリゼルに告げた。
「修行の合間を見て、短刀、短剣、槍の中から選んで、一つ、作品を作ってみろ。お前用に選っておいた材料の中で何を使っても構わんが、修行の時間は減らさないように。あくまで、空いた時間を使ってやってみろ」
 カックスが分配しておいた材料は、次の通りだ。

 ・鉄
 ・錬鉄
 ・青銅
 ・鉛
 ・材料各種(木材、石材、皮、革、鋼材(鉄))


カックス

リゼル<

「ええい、師匠などというなというに」
 顔をわずかに赤らめて、乱暴に言う。
「カックスと呼べ、カックスと。
 まあ、いい。
 さて、短刀の製造を再開するぞ。早速、いつもの材料を持ってこい。今日はだな、試しに……」
 あれこれと指示を出していく。


リゼル

「あははっ」
 思わず苦笑してしまう。しかしながら、一度鍛冶を極めようと思い立ったからには是非にも達成したい。リゼルはそういう性格だ。真顔に戻ると、

カックス<

「はい、簡単に身につくとは思っていません。カックス師匠、これからも宜しくお願いします。」
 静かに頭を下げる。


カックス

リゼル<

「良いだろう。よく考えた上での結論のようだな」
 もう一度、頷いた。
「重量調整はわしの得意分野だからな、特にみっちりと教えてやる。お前さんに適正があれば、一番最初にお前さんが身に付ける、“匠の技”は重量調整になるだろう。それはお前さんの自信となり、誇りになっていくはずだ。
 長期耐用は、その後からついてくるだろう。
 さて……。
 とりあえず、しばらくの間は、お前さんのすることは、ひたすら短刀を鍛え上げることだ」
 にやりとする。
「また、長い単調な修行の日々だ。お前さん、耐えられるか?」


リゼル

 しばらく、カックスの言ったことを噛みしめながら考える。長期保存は良いとして、先行防衛はどうしようか? 心の中に迷いがある・・・やはり、先行防衛ではなくて重量調整にしよう。カックスに鍛冶師としての専門用語で答える。

カックス<

「少し考えを改めました。長期耐用と重量調整でお願いします。」


カックス

リゼル<

「ふむ、なるほどな」
 応答を受け取って、黙考する。
「分かった」
 深く頷いた。
「お前さんには、その辺りのことを重点的に教えてやることにしよう。
 わし自身は、武具に細工を刻むことと、バランスを調整して扱いやすさを高めることの二つに長けていると自負している。わしとお前さんの方向性は違うが、どちらが正しいということはない。どちらの選択も正解の一つだろう。
 集中力は有限だと、前に言ったな?
 鍛冶師としての方向性も、制限がある。当然だがな。
 高い破壊力を持ち、宝石にも負けぬ美しさを持ち、長期の使用に何よりも耐え、更に、小さな小さな道具よりも扱いやすい武器、というようなものなどは、作れん。才能にも限りがあるのだからな。
 だから、わしは、お前さんに聞いたのだ。
 もう一度確認するぞ。
 お前さんの選択は、『長期耐用』と『先行防衛』で良いのだな? それとも、他に、何か求める方向性があるか?」


リゼル

 カックスにばかたれと言われて、舌をちょろっと出しておどける。カックスの問いに対して暫く考えてから返答する。

カックス<

「やはり、頑丈で長期の使用に耐えることが一番です。そして出来れば、どんな楯でも貫ければ良いにこしたことはありませんが・・・美麗さや使いやすさは、どちらかというと後回しでよいです。」


カックス

リゼル<

「馬鹿たれ」
 ぴしゃりといい、それからにやりと笑う。
「お前さんはまだまだひよっこにもなっとらん。これから、飽きるまでこういった小品を作っていく。そのうち、夢の中でまで鎚を振るっているくらいになる。
 そうなったら、また新しいことを色々と教えてやる。
 ……そうだな。
 先に、一つ聞いておこう。
 お前さんが作るとしたら、どういった性質のものにしたい?
 武器なら、どんな楯でも貫くものか、あるいは扱いやすさを重視するか。外見の美麗さを求めるか、それとも、どれほど長期の使用に耐えるような頑丈なものか、とかだ」


リゼル

カックス<

「はい。とても興味深いです。防具の作り方とか、もっと色々と教えてください。」
 少し興奮して、普段なら遠慮して言わないようなことを思わず話す。


カックス

リゼル<

「元からそのつもりだ」
 頷く。
 短刀に愛情を込めた視線を注ぐリゼルを黙って見つめる。
「どうだ」
 問いかける。
「面白いだろう」


リゼル

 出来上がった短刀を不思議そうに見る。これがあの鉄鉱石から出来上がったものなのか。手に持ってみてその感触を試すように軽く上下に振ってみる。自分で初めて製作したものだと思うと急に愛着が湧いてきた。

カックス<

「この短刀、記念にもらって良いですか?」


カックス

リゼル<

「ほれ。
 これで、終わりだ」

 そして今、見違えた輝きを放つ、鉄製の短刀が、リゼルの前にある。


GM

 短刀の製造
  完成


 すべての行程を終わらせるのに、三日を要した。
 リゼルの造り上げた短刀は、カックスの手によって研がれ、最終的な処理を施された。


リゼル

 初めて鍛冶を行った記念作品となる。自分としては最後までやり通して成果物を確認したい気持ちになっている。カックスから伝えられた内容を理解すると軽く頷き返して鍛冶作業を続行する。


GM

 リゼルは、カックスの指導を受けながら、鉄を熱し、叩き、引き延ばしていく。炉の中に入れて赤く熱して、金床に戻して叩き、再び熱して、と繰り返す。
 少しずつ、ほんの少しずつ、金属が形になっていく。

 短刀の鍛造
  ブレイド
   鉄(0.8)からの作成
   井戸水による処理
  ヒルト
   木材(0.3)からの作成 革 ニカワを使用

 
仮鍛造
 ブレイド + ヒルト = ソード

 評価

 形状: 片手剣(直刀)
 殺傷: 1-12/1-10/--
 行動力: 1/1 1/1
 命中/防御: 11%/9%
 射程: 0
 硬度/耐久: 10/40:35
 重量/容量: 0.5/2.0
 特殊効果: 部位狙い+5%

 ひな形が出来上がっていく。
 このまま造っていけば、こういった武器になる。その明確な予想図がカックスの頭には即座に浮かび上がった。
 カックスは、それをリゼルに伝えていく。
 ここで中断して材料に戻すことも可能だし、このまま完成まで鎚を振るい続けるのももちろん、良い。


リゼル

 ごく普通の短刀をイメージして性能を決めることにする。

STEP4 殺傷/3 命中/3 防御/2 特殊/2
SREP5 井戸水


カックス

リゼル<

「さて、じゃあ、……考えてみろ。
 この鉄が姿を変えて、一本の刃になるところを、だ。
 赤く熱かった刃は冷えて、後は柄に収められるだけになっている。それはどんな代物だ――?」

オリジナル鍛冶を行います。
作成対象/短刀
 STEP.1
 〜使用する材料を選択
 →鉄:0.8 木材 革 ニカワ
 STEP.2
 〜作成する部品を選択
 →ブレード(刀身) ヒルト(柄)
 STEP.3
 〜部品に使用する材料を割り当て
 ブレード/鉄:0.8 ヒルト/木材 革 ニカワ
 STEP.4
 〜性能に対する力配分を決定
 殺傷/? 命中/? 防御/? 特殊/?
 STEP.5
 〜作成段階で使用する“水”を選択
 カックスの鍛冶場には、「井戸水」「獣脂」があります。

 それぞれのステップで使用するもの、行うことを選択してください。
 現在、カックスによって、ステップ3までは選択されています。
 ステップ4では、リゼルは合計10ポイントを割り振ることが可能です。



リゼル

 カックスの言葉を心の中で反芻してみる。特に、注ぎ込むことのできる集中力は有限であると言う言葉にずしんと年輪の重みを感じる。これから習い始める自分にとって、集中力の上限はさらに低いものであるに違いない。

カックス<

「はい。」

 短く簡潔に返事をして、カックスの次の言葉を待つ。


カックス

 リゼルが持ってきたものを眺めてから、頷く。

リゼル<

「まあ良いだろう」
 彼女が持ってきたのは、通常の品質で、重量1ほどの鉄材だった。
「徹底的に鉄を鍛えると、1/3くらいに目減りするから、造ろうとするものによって、分量を選ぶべきだ。今回、造ろうと考えているものは短刀で、そこまで鍛えるつもりもないからな。ま、このくらいで良いだろう」
 それから、鉄材を台に置かせる。
「さて、次だ。……造ろうと考えているのは短刀だ。短刀には柄が必要だな。ソード(剣)は、ブレイド(刃)とヒルト(柄)でできている。
 別に、刃を造った後でも構わんが、今回は最初から用意することにする。
 聞くまでも無いな。木材と革、ニカワがあればいい。そいつを持ってきて、あとはどうする?
 短刀だから片刃なのは変わらん。真っ直ぐな刃で造るか、形を変えるか、刃の長さはどうするか、などだ。
 また、致傷性を優先するか、扱いやすさを優先するか、武器は楯になりうるが、防御性能を優先するか、短刀の武器としての特異さを優先するかだ。
 お前さんだろうが、わしだろうが、一つの仕事に注ぎ込むことのできる集中力は有限だ。今、自分が造ろうとしているものの、何に重点を置くべきかを決める必要がある。そうしなければ、金属が作品になることはない」


リゼル

 倉庫の中から短刀を作成するための材料を探し出す。短刀用の材料だからそんなに大きなものは必要ないだろう。適切な大きさと思われるものを選ぶとカックスのもとに戻ってくる。

 技能判定:分類/鍛冶・材料選定
  リゼル:技能無し・師事 成功!


 材料を両手で持ってカックスの前に差し出す。

カックス<

「こんなものでいかがでしょうか?」


カックス

リゼル<

「よし」
 とりあえず、頷く。
「まずはな、何を造るか決める。そうさな、今回は、短刀でも作ってみるとするか。
 後は、材料だが……鉄だな。適当に選んで持ってこい」
 カックスの秘蔵の物とは別に、河港で買ってきてある金属がしまってある倉庫を指さす。


リゼル

カックス<

「はい?」

 しばらくカックスの意図する所を計りかねていたが、ようやくにしてこれから鍛冶を教えてもらえるのだと気づく。この機会を逃すことはできない。慌ててカックスに再度返答する。

「はい。やります。お願いします。」
 とは言ったものの何から手をつけて良いのか急には思い浮かばない。しばらく、もじもじしている。


カックス

 単調な修行の日が続いていた、ある昼下がり。
 河港から帰ってきたリゼルは、いつものようにカックスの指示を待っていた。

「ふむ」

 カックスは、そんなリゼルを見て、ふと声を漏らし、その顔をじっと見た。
 そして、唐突に、

リゼル<

「やってみるか?」

 と、金床と、すでに火の入っている炉を指さした。


GM

 リゼルは、心の中で、自分の重んじるところを定めた。
 修行のうちに、カックスも、リゼルのその心中を感じ取ったようだった。自然、教える技術も、その方面に偏っていく。
 そして、リゼルがカックスに弟子入りしてから、早くも三ヶ月が経過した。
 リゼルの生活は、朝、日の出と共に起きては、まず井戸に水を汲みに行き、工房の掃除をし、定日の定刻になったら河港に出かける。大抵はカックスと共に、たまには任されて品物を見る。
 容易には使い切れないほどの備蓄を持っているカックスだったが、彼にとってはあの品々はただの材料ではないし、事実、あそこにある材料はどれも最上の物だった。もっと、日常的に使えて、かつ、性能の良い材料が必要だった。
 そのときによって、船に積まれた品の産地は様々だ。武具に使うような鉄は、一番良いのが、地底国のあるヒルデリア山脈だったが、そこの鉄はほとんどドワーフたちが独占していて、なかなかこちらまで入ってこない。次はサーマヴァーロフ山のとある鉱脈から切り出された鉄鉱石だ。色合いが独特で、カックスが妥協する最低限の品質を保持していることを、リゼルははじめのうちに知った。
 昼になれば、鍛冶仕事をこなすカックスの手伝いをする。いわれたとおりの材料を倉庫から運び、その仕事を観察し、来客者があればその相手をする。どうやらカックスには、このあたりにいる鍛冶師の中では一番の腕を持っているとの評判があって、客足が三日以上途絶えるようなことはほとんど無かった。
 夜になれば炉の火を落とし、食事をして、工房の片づけをする。使用した工具に手入れを施し、倉庫の備蓄を調べる。
 最近になって、ようやくカックスは、リゼルに工具の手入れを任せるようになってきた。
 そんな、ある時だった。


リゼル

 リゼルはこれからのことを考えてみる。自分はどのような鍛冶師になりたいのか。やはり興味があるのは「金属を熱し、鍛える技術」であろう。火と金属を一緒に扱う技術は鍛冶師の基本だ。無視するわけにはいかない。次に興味があるのは「金属を折り曲げ、刻みを打つ技術」だ。機能的な武器や防具を最終的に作り出す技術だ。これも是非必要だ。「鉱石や金属の性質に関する知識」これは、どうする?これは鍛冶師として常識の範囲で知っていればとりあえず良いのではないかと考えた。鍛冶師としての見聞を広めていけばいずれ様々な鉱石や金属のことを深く知ることになろう。


GM

 地道に、リゼルの修行は進んでいきそうだ。
 しばらくは、興味深いながら単調な日々が続いていくのだろう。
 鍛冶師の修行の中で、特にリゼルが重視するのは、どの技術だろうか?

・金属を熱し、鍛える技術
・金属を折り曲げ、刻みを打つ技術
・鉱石や金属の性質に関する知識

 特に重視するものと、そこまで重視しないものは?



カックス

リゼル<

「そりゃ、そこまでわしも期待しとらんわ」
 笑い声を上げる。
「料理も鍛冶師に取っちゃあ腕の見せ所の一つでな、食材を加工するのも、金属を物にするのも、本質的なところじゃあ大して変わらん。
 じゃあ、お前さんに今日の食事は任せよう。
 作業をしながら、鍛冶の注意事項を話しておくことにするか……」

 カックスはリゼルを伴って、厨房に向かっていく。


リゼル

カックス<

「料理ですか?はい、簡単なものであればできます。一流シェフというわけには勿論いきませんが。」


カックス

リゼル<

「ふむ」
 思案気な顔をする。
「そいつは、わしらの秘伝でもあり、もっとも基本的なことでもある。鋼っていうのはやたらと硬い鉄で、錬鉄ってのは柔らかい鉄だといったな?
 わしらもよく分かってはいないが、こいつらは別なものだが、同じものだ。鉄の中に何かがあると鉄は固くなって鋼になり、何かが無いと柔らかくなって錬鉄になる。
 わしらは、その何かを調整することで、用途に応じた鉄を造り出す。簡単にいうと、鋼を炉で熱して、叩くということを繰り返してやる。そうすると、そのうち、何かが燃え尽きてなくなって、錬鉄になるんだ。熱し方と叩き方を加減することで、硬さも調節できるというわけだ」
 腹の空いてきたらしいリゼルを見て、眉を上げる。
「そういえば、もう昼も過ぎたな。……お前さんは、料理はできるか?」


リゼル

カックス<

「鍛冶技能そのものについての質問になるかもしれませんが、鉄は加工の仕方でいくらでも堅さと柔らかさの調整ができるとおっしゃいましたが、それはどのようなやり方で行うのですか?」

 そろそろ少しお腹が減ってきたようだ・・・。


カックス

リゼル<

「銀か……」
 髭を撫でる。
「お前さんは今、優秀といったがな。何をさして優秀という?」
 ちろりと、黒い丸い目を覗かせる。
「硬ければ優秀か?
 粘り強ければ優秀か?
 軽ければ優秀か?
 ある面では、それはそれぞれ正しい。
 だが、ある面ではそれはすべて劣っているといえるのだ。
 分かるかな?」
 ま、良いだろう。と頷く。
「銀は、そうだな。加工している段階ではひどく柔軟で、武器として鍛えると途端に強靱さを獲得する素晴らしい金属だ。鍛冶の神が我らドワーフに与えたものだから、それももっともな話だがな。
 しかしな、それでも鉄には劣るぞ。特に、硬度や耐久力に於いてはな。鉄は加工の仕方でいくらでも堅さと柔らかさの調整ができる。柔らかくすれば青銅ほどには柔らかく、硬くすれば石も切断できるほどだ。銀は、そういった汎用性は持っていないしな。
 銀は武器にも向いているし、細工にしても美しい。邪悪なものに畏れを抱かせ、神秘的な力を秘めている。わしらの信仰であるといっても良い。わしらドワーフは、必ず銀製の宝物を一つは持っているもんだ。
 だが、細工の面で見れば錬鉄に、扱いやすさの面で見れば白鉄に、硬さと鋭さの面で見れば黒鋼より劣る。しかし、それでも、銀は優れた金属だ。
 これは、さっきわしがいおうとしていたことに通じるが、分かるかな?」

 魔法銀とかいうものについて問われ、
「ああん?」
 何を言うのだ、という顔でリゼルを見る。
 それから、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「どこで仕入れてきたんだ、そんな妙な話は?
 少なくともわしは聞いたことがないな。大体、わしは、鍛冶にあのけったいな魔術とかいう奴を関わらせようとする奴は嫌いなんだ。炎と炭がやるはずの仕事を、魔法でやらせようとしていた奴を見たことがあるが、全く、そんなことでろくな鋼ができるものか」
 憤懣やるかたない様子で頭を振る。


リゼル

 カックスの話を聞いて一人つぶやく。
「錬鉄は柔らかく細工に向いている、白鉄は脆いけど軽い、黒鋼は硬いけど脆い・・」言われたことを反芻しながら必死になって覚えこもうとする。

 しばらく部屋の中の様々な鉱石を仔細に調べていたが、再び銀の鉱石類に眼に移した。

カックス<

「銀についてはどうですか? ある意味で、錬鉄・白鉄・黒鋼より優秀な素材であると考えて宜しいのでしょうか。それと銀については、魔法によってさらに強化されているものがあると言ううわさを聞いたことがあります。あくまでうわさとして聞いただけなんですけど、そのような特殊な魔法銀って存在が確認されているのでしょうか?」


カックス

リゼル<

「ふむ」
 黙って、少し離れた場所で、あれこれとなにやら手入れをしていたカックスがやってきて、リゼルの手元を見下ろす。
「錬鉄はな、半分だけ溶かした状態で何度も鍛えた鉄だ。こうやってやると、柔らかい鉄が出来上がる。こいつは細工に向いていてな、鎖帷子なんかを造る時に重宝する。
 柔軟で衝撃に強いからな。他にも用途はいくらでもある。
 白鉄は、いってみりゃ合金だ。主成分は鉄だが、銅が少し、錫もちょいと、あとはあれこれと加えてあるな。普通、合金にすると硬くなるんだが、こいつは少しばかり逆でな。鉄よりは幾分、脆い。それと引き替えに、軽量だ。
 黒鋼は、地底国のあたりに良く群生している木を炭にしてな、そいつで包み込んで焼き入れてやった鉄だ。普通に鋼と呼んでもいいが、わしらは色でも区別するからな。
 これは特別な炉で造る。ここいらじゃ“ドワーフ鉄”ともいわれていて、わしら以外の連中は造っていないし、わしらも造り方を教えてやりゃあせん。教えたって、ろくに造れるとは思えんがな。
 鋼は、知っているかもしれんが、硬い。堅さと脆さは紙一重だから、使う際にはよっぽど慎重にせにゃならんがな」


リゼル

 カックスの許可をもらえたので指示された通り軍手をはめて慎重に鉱物やその精錬物の観察を始める。先ず両手でしっかりと銅鉱石を持って仔細に観察する。銅と言えば赤銅色を予想するがこれは黄色い色をしている。白い石英にくるまれて、分厚い黄銅色の結晶の帯が煌いている。綺麗だ。次に鉄鉱石、粉のような赤錆が石の表面の全体を覆っており手で持つとずっしりとする。赤錆を透してその奥に凝縮された鉄の成分が黒々として固まっているのが良くわかる。見た目にだまされて、うっかりすると重くて指の間から滑り落ちそうだ。気をつけなければ。

 慎重に鉄鉱石を元に戻すと、錬鉄、白鉄、黒鋼を見比べる。色つやや外見の違いはわかるが、これらの精錬物の持っている機能的な特徴は、リゼルには良くわからなかった。製法の違いもあるのだろう。あとで、カックスに質問することにしよう。

 それから、ゆっくりと銀の入った鉱石類に目を通す。大きな銀の結晶、針状の形状をしている。意外と柔らかそうな輝きであるが銀製の武具の性能は優秀だ。自分としては、今持っているハルバードを銀製にして強化したいと思っているのだが、何時か自分でアレンジして鍛冶をする機会も来るのだろうか?

 鉱物類を静かに戻すと、カックスの方を振り返る。

カックス<

「錬鉄、白鉄、黒鋼、これらの3つですけど、見た目の違いはわかりますが機能的な特徴がわかりません。それと製法の違いがあるのでしょうか?」


カックス

リゼル<

 カックスは大きく息をはいて、心の中で何かと格闘しながら、大儀そうに頷いた。
「よかろう。そこにあるのは、銅鉱石と鉄鉱石、そいつから造った錬鉄、鉄に白鉄、地底国から持ち込んだ黒鋼、それから、雑鉱石を混ぜ込んだ銀が幾つか、だ。
 他にも、名前も知られていないような鉱物やら、石やらがある。中には、わしがいじったことがないのもな。
 好きに見てるといい。
 もしも、鉱石や金属について知りたいことがあったらなんでも聞いてみろ。」


リゼル

 カックスが慌てた様子なのを見て、ちょっと驚く。余程カックスの思い入れが強いものなのだから軽々しい態度をとってはいけない。きちんとお願いすることにする。

カックス<

「はい。決して直接手で触りませんので勉強させてください。お願いします。」


カックス

「だ――」
 反射的に拒否しようとしてから、うなり声を上げて顎に手を当てる。
 このドワーフにとって、このコレクションは自らの宝物であり、信仰であった。すなわち、この倉庫は一種の聖域でもあったのだ。だから、人に見せびらかすのは良いが、触らせるとなると抵抗を覚える。カックスがこれまでに世話をした弟子たちが早々に根を上げてしまったのも、そういった部分が鼻についたというのもあったかも知れない。
 カックスは思い直した。今のところ、彼女には見込みがある。ここは、好きにさせてやっても良いではないか? 第一、弟子であるというなら、自分には鍛冶の技を教える義務があるわけであるし、優れた鍛冶師になるのであれば、多くの材料についての知識は不可欠だ。

リゼル<

「床に落としたり、他のものとぶつけたりはせんな?
 あと、触るときはそこの壁に掛かってる軍手を使って、決して素手では触れないと約束できるか?」


リゼル

 カックスのコレクションの量と質に圧倒され、瞳孔が自然と拡大し心の中で「おお!」と叫ぶ。良くもまあこれだけ集めたものだ。中にはかなり貴重なものもあるに違いない。

カックス<

「手にとってみても良いですか?」


GM

 それは確かに、コレクションと呼ぶに相応しいものだった。
 まず、目を引くのが、部屋の奥、壁の中央部にうずたかく積み上げられている、黒々とした金属の固まりだった。
 ごつごつとして、格子窓から入ってくる光を鈍く返している。
 片側の壁には、幾つもの箱が置かれている。そのどれにも、何かしらの金属が入っているようだ。赤、青、黄色、まるで宝石箱のようだったが、そう呼ぶにはあまりにも無骨な代物ではあった。
 全部を合わせたら、どれほどの重量になるのか、想像も付かないほどだった。
 カックスは誇らしげな声を出した。
「わしが、故郷から出てくるときに持ち出してきたものだ。かれこれ十年はこの町に住んでいるが、未だに使い切れんわ」


カックス

 続いてきたリゼルを顧みて、このドワーフにしては珍しく、口元に笑みを浮かべる。

リゼル<

「ほれ、見てみろ」
 と、部屋を手で示した。


リゼル

 カックスに続いて右手側にある戸口をくぐっていく。 さて、カックスのコレクションとはどれほどのものなのか。


GM

 二人は、連れだって工房まで戻ってくる。
 カックスは荷車を押しながら中に入り、購入したものをてきぱきと定められた場所に片づけていく。

「さてと」

 それから、頷いた。
「どれ、こっちに来い」
 それだけ言うと、工房の、入り口から向かって右手側にある戸口をくぐっていく。


リゼル

 カックスの材料ストックを見せてもらえるとのこと、一刻も早く工房に戻りたい。カックスの後をついて工房への帰り道を急ぐことにする。


カックス

リゼル<

「とりあえず、工房に戻る。
 そうしたら、さっきも言ったとおり、お前さんにわしの材料のストックを見せてやるつもりだ。
 まあ、そうそう簡単には覚えられんだろうが、鍛冶の技を身に付けるのであれば、同時に、あらゆる――少なくとも自分の手が触れるだけの――金属の特徴を理解していなけりゃならんからな。
 その後は、食事だ。食事の後は、ま、夜まで自由にやってみろ。なんでも構わん」


リゼル

カックス<

「いいえ、今は特にありません。
 実習していく中で質問させて頂きます。
 ところで、今日これからの予定は何でしょう?」


カックス

リゼル<

「ほう」
 きょとんとして、目をしばたたかせる。
「まあ、わしらの種族の中で聞いたことがないものは、そんなにはおらんだろうな。
 ダマスカスというのは、ある種の特別な造り方をした刀剣に冠せられる称号のようなものだ。あるいは、そういった剣を作るための工法に対していわれる名称だ。
 これはな、慎重に選び抜いた金属を数種類用意して、それを非常に高い温度で熱して合金にして、鍛え上げるのだ。
 そして出来上がった剣を『ダマスカスソード』といい、その剣は『ダマスカス綱で出来ている』という。
 こいつは、非常に硬く、しかも粘り強い。だから、並の金属で作ったときよりもよっぽど鋭い刃を与えることが出来る」
 リゼルを連れて歩きながら、説明する。
 井戸のところまで来たところで、再び、
「他には何かあるか?」


リゼル

 カックスから聞いた鉱石に関する話を頭の中で急いで整理してみる。工房に戻ったら現品サンプルと照らし合わせて入念にチェックしてみよう。リゼルはこのような学習が好きである。
 色々と知識を整理していく内に、ダマスカスと言う名称を思い出した。何度か聞いたことがあるが何のことなのだろうか?カックスに聞いて見ることにしよう。

カックス<

「特に欲しいものはありません。」
 カックスの後について歩き始める。しばらくして歩きながら再び口を開く。
「あの〜、ダマスカスと言う言葉を何回か耳にしたことがあるのですが、何のことだか知っていますか?」



カックス

リゼル<

「そういえば、そうだな。ふむ」
 顎先を指で掻く。
「見た目と、重さと触感だな。
 ちょっと磨いて色を見てみりゃ、純度についてはすぐに分かる。こいつに関しては、色々な鉱物を見てみるしかないな。わしの工房に、あれこれたくさんあるから、あとで見てみるといいだろう。
 重さ、あと、触り具合も重要だ。そいつで、その鉱物に含まれている混ざり物の状態を判断する。例えば、銅鉱石ならな――」
 カックスは、様々な鉱石についてリゼルに講釈した。
 三十分ばかり市場で話し込んでいたようだ。近くで露店を開いている商人が迷惑そうな顔をしている。
「とりあえずはこんなもんか。
 ……ふむ。
 特に欲しいものがなけりゃ、一回りして帰るぞ」


リゼル

 店先に並んでいる商品の鉱物をしばらく品定めしてみたが、まるっきり区別がつかない。
 自分はとても良し悪しを判断できるレベルではないと諦める。

カックス<

「いいえ。
 あの、わたし、これと言った鉱物関連の知識がないものですから。」
 そうか、鍛冶の技には鉱物に関する知識も必要なのか。今更ながらに思い当たる。
 良い機会だ。鉱物に関する知識の切れ端でも良いからカックスに教えてもらおう。

「カックスはどのようにして良いものを選ぶのですか?」


カックス

 並べられている品物を覗き込み、手で触れて質を確かめたり、重さを調べたりしている。たいていは、すぐに首を振って、先へ進み出した。
 銅鉱石や錫を扱う商人が品物を出しているところに来たとき、カックスは足を止める。
「ふうむ」
 呟きながら、鉱石の一つを手の上で転がしてみたり、手にした小さなハンマーで、軽く叩いてみたりする。
「悪くないな」
 リゼルにしか聞こえないくらいの声で言うと、商人とやりとりを始める。しばらく商談を交わして、銅鉱石を5kg、70Rdで買い上げることを決める。
 話が決まると、カックスは商人と、パン!と手を打ち合わせる。
 あと、石炭を一袋、木炭を一山買うと、台車に乗せていく。

リゼル<

「今回はこれくらいだな。
 いい銅が手に入った。
 お前さんは、何かめぼしいものを見付けたか?」


リゼル

 賑やかな場所での生活体験が少ないのでちょっとばかり不安になるが、カックスからはぐれないように気をつければ大丈夫だろう。
 カックスの後、2、3歩のところをついて行くことにする。
 カックスがこれから行う一挙手一足の全てを良く覚えておくことが鍛冶師になるための修行なのだと自身に言い聞かせながら。


GM

 二人は、石炭の地区の河港を目指して歩き出した。
 工房からは大して遠くもなければ、近くもない。工房にやってくるときと同じ道を通って、カックスはリゼルを先導していった。
「今回は、質の良い鉄があれば買うが、なけりゃ、炭を補充するだけだな。たいてい、良くもなけりゃ悪くもない金属しかないが、いつ、良いのがあるか分からん。機会があったら、逃すわけにはいかんからな」
 しばらくして、リゼルも見覚えのある河港へ戻ってきた。
 ちょうど、西にある炭鉱都市から、工業品を載せた船が入港してくるところだった。あたりは、他の船から荷揚げされた物品が、様々な大きさの箱や、樽のままで並べられている。
 山から切り出された石材や、乾燥させただけの動物の皮、木炭と、石炭、木材などだ。
 何人もの商人や職人が、売り物の状態を丹念に確認したりしつつ、商談を行っている。
 先ほどよりも更に、賑やかになっているようだ。


カックス

リゼル<

「うむ。ついてこい」

 先に準備しておいた台車を押しながら、先に立って歩き出す。


リゼル

 外出のための身支度をしろとのことなので、とりあえず自分にあてがわれた小部屋に入って辺りを見回す。
 身支度といっても別に化粧したり着飾ったりするわけではない。適当に身づくろいを正すともう終わりだ。

 河港に行くということは何か鍛冶仕事に関連した買い物をするのだろうか?鍛冶に関連したものということで重いものを運搬することになるかもしれない。また、ひょっとしたら自分も買い物をする機会があるかもしれない。多分、そのようなことはありえないだろえうが、お金だけは持っていくか。そう考えて全財産の50Rdをポケットにしまい込む。まるで、子供の頃に遠足に出発する直前のようにワクワクしている。

 小部屋から出るとカックスを探して、身支度が終わった旨伝える。

カックス<

「はい。支度終わりました。
 お供します。」



カックス

リゼル<

「ほう」
 一言、答えてから、水瓶を見に来る。
 軽く覗き込んでから、頷いた。
 それから、ぶっきらぼうにいう。
「終わったんなら、支度をしろ。さっきもいったろうが、河港に出かけるぞ」
 背中を向けて、自分の荷物を取りに行くが、途中で、振り返りもせずに付け加える。
「わりと、早く終わった方だな。良くやった」


GM

 水瓶は幅広で、瓶というよりは箱、小型の湯船のようなもので、満杯にするには少し時間がかかってしまった。
 リゼルに呼ばわれ、カックスがやってくる。


リゼル

 井戸からつるべを引き上げて持ってきた桶を水でいっぱいにする。
 それを持ってカックスの工房まで戻り部屋の中の水瓶に水を注ぐ。
 細い路地を水が入っている桶を持って行き来するのはちょっと骨がおれるしバランスが必要とされる仕事だ。
 水瓶がいっぱいになるまでこの作業を繰り返す内に少しばかり汗ばんできた。
 まあ、こういう力仕事はいつものことだし慣れているからペース配分にも自信がある。
 最後の一杯を水瓶に注ぐとカックスを探して声をかけようとする。

カックス<

「カックス、水くみ作業終了しました。」
 そう報告するとやや期待した目つきでカックスの反応をうかがう。


GM

井戸<

 井戸の深さはさほどでもない。
 見下ろしてみると、昼の太陽の光に照らされて、水面が、微かに揺れているのが分かる。

つるべ<

 よく観察してみると、つるべに巻き付いた蔦は、別段、絡み付いて固定している、というほどのものではないようだ。
 周囲には水が零れたあともある。つまり、普段から使われている井戸だということだ。
 だからこの蔦は、つるべと井戸縄(つるべ綱)に巻き付いただけのものを、使用する際の邪魔でもないからと、誰もが捨て置いたものなのだろう。

 リゼルは、井戸を使うことにする。
 井戸縄をたぐり、つるべを静かに井戸の中におろす。
 ちゃぽん、と、静かな音を立てて、桶が水の中に沈み込んでいく。引きあげていくと、ゆらゆらと揺れながら、桶があがってくる。問題なく、使用できるようだ。


リゼル

 古い井戸だなあ、使えるのだろうか?思わずそんな考えが心をよぎる。
 井戸のそばに立って中を覗き込んでみる。
 深さはどれくらい?水は中に入っているのか?

 そして、次につるべを調べる。蔦がこれだけ絡んでいるのは、しばらく誰もこのつるべを使っていなかったということか。つるべを使えるようにするためには植物の蔦を取り除かなければならない。

 つるべを静かに井戸に底に下ろして見る。
 水のところにとどけば、これで水をくみ上げることが出来るはずなのだが、果たしてどうだろうか?



GM

 知力判定:分類/記憶術・方向感覚・地図
  リゼル:成功!


 リゼルは、どうやら迷わずに来たとおりの道を辿っていけたようだった。
 工房のある路地を進んで、より大きな通りに出ると、すぐ左手の方に、年季の入った井戸が設えてあるのが見える。
 つるべには、何とも知れない植物の蔓が巻き付いている。


リゼル

カックス<

「了解です、カックスさん・・・カックス!」
 元気に答えるとカックスが教えてくれた工房の隅の小さな扉を開ける。
 中を一瞥して空いている場所を見つけると、装備しているガントレットとかハルバードを外してそこに置いた。これで身軽になって水汲みの作業を行える。
 次に転がっている桶のところに歩いて行きそれを持ち上げると部屋の外に出て井戸を探すことにした。
 カックスは来る途中に井戸があったと言っているがリゼルには記憶がなかった。とりあえず来た道をゆっくりと戻って井戸を見つけることにする。


カックス

 顎を撫でながら、しばらく、考える。
 それから、頷いた。

リゼル<

「今からお前さんの部屋を作ってやる。物置からものを取っ払うだけだがな」
 いうと、リゼルを伴って工房に入る。
 開きっぱなしの戸口をくぐり抜けると、そこは細長い平屋になっている。壁には様々な器具が掛けられており、全体的にすすで汚れている。部屋の中央には、大きな炉らしきものがあって、炉からは不可思議な物体が伸びて、V字の取っ手につながっている。
 炉の前には頑丈そうな金床あり、その周囲には、鉄板、鉄槌、木槌、シャベル、やっとこなどが整然と並べられている。
 床には、桶やら、ロープやらが転がっていた。
 カックスは、工房の隅にある小さな扉を示す。
「あそこが物置だ。あそこに荷物を置いておけ。
 そうしたら……そこに桶が転がっているのが分かるな?
 そいつで、来る途中にあった井戸で水を汲んでくるんだ。汲んできた水は、そこの――金床の脇にある水瓶だ。そこに溜めていくように。全部、いっぱいにするまでだ。
 今日だけじゃなく、毎朝、起きたらすぐにそれをするんだ。忘れずにな。
 それができたら、河港に出かけるぞ。だから、水汲みでぶっ倒れるんじゃないぞ。――ま、お前さんにはその心配はいらんようだがな、念のため、体力には気を付けておけ」
 それから、工房の奥に入っていくが、ふいと振り返る。
「あとな。
 わしは呼び捨てで良い。その堅苦しいしゃべり方もやめとけ。難しいんならどっちでも構わんがな」


リゼル

「武具師カックスの工房」と書かれた看板にしばし注目する。
 そして、思い出したように周囲を見回す。
 ここでしばらく生活することになる場所だ。
 周囲を良く覚えこむ必要がある。

カックス<

「はい、カックスさん。宜しくお願いします。
 先ず、何からお手伝いしましょうか?」



カックス

リゼル<

「ここがわしの工房だ。
 お前は、この場所で寝起きすることになる。構わんな?」


GM

 カックスの工房は、木のウロ亭のある場所から、少し離れた場所にあった。
 そこは、イ=サードに三つある河港の内でもっとも小さい港のある地区だ。そして、この港は、専属の契約を結んで、工業品ばかりを主に運んでくる商船だけが着港できる。
 工業品の中でも木材と石材、そして特に石炭が多く搬入されてくるため、「石炭の地区」と呼ばれている。
 カックスのような職人たちは、この港で、石炭や、仕事に使う鉱石類を仕入れるのである。
 彼は、この港に面した表通りを進んでいき、途中で路地に入っていった。あちらこちらで交わされる、賑やかな商談の音が遠くなっていく。
 路地をしばらく歩き、薄汚れた井戸の横を通り抜けてさらに進む、もっと小さな路地に入ったところで、カックスは立ち止まった。中程度の平屋で、戸口に「武具師カックスの工房」と書かれた看板が掛けられていた。