PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

シナリオ

「虚無の楽園」

夢魔の宝石を以って夢魔に捕らわれたフォレスティのシーラ。
シエラ、霧雨、ミネルヴァの三人の冒険者はクロードの願いで、
彼女を夢の世界から救い出す為に、宝石の魔力へその身を委ねた。


 
GM

霧雨は、ふと、クロードの姿が無いことに気がつく。そして、それに虚を衝かれた瞬間、「誰!」という言葉と共に、剣を突きつけられていた。
その剣の主は…ミネルヴァだった。

霧雨とミネルヴァは合流しました。
以後は、こちらで進行していきます。



 
紫堂霧雨

「ちぃっ!またかっ…!」
すぐさま二本の刀を抜き、辺りを警戒する。
「クロード…敵が来るかもしれん、気を付けろ…」
クロードに助言しながら、霧雨はふと考えていた。
(しかし、何故墓なのだ…シーラの姿も最初の時とは違う……クロードの出した光の球に導かれて来た。となると…今のは本物のシーラ…?)


 
GM

人影は、シーラだった。
墓の前に蹲り、俯いている。
霧雨の声に振り返った、顔は、今度は鮮明だった。

透けるような白磁の膚に、森の葉のような深緑の瞳。三流の吟遊詩人程度しか言わないような陳腐な言葉だ。しかし、それほど的確にこの美貌を表現する言葉は、他にはあるまい。

その目は、静かに涙を流している。
流しながら、無機質に霧雨を見上げた。
口はやや開かれたままで息を洩らし、時折、嗚咽に動く。
「あ」
一つ、擦れた声を上げた。
「あああ…」
声は涙と混じる。
そして、再び墓に向き直り、墓石を抱きしめるようにして―消えた。

シーラの姿が霞み、消えると、それと伴ってあたりの風景も消える。
花畑は影も残さずに消え、大地は荒野へと変じる。
清浄な空気は瘴気混じりの風と変わり、周囲は冥界めいた様相になる。



 
紫堂霧雨

(花畑…?)
霧雨は一瞬呆気に取られるが、すぐいつもの平静さを取り戻し、辺りを見回した。
(これも罠か…?)
警戒し始めた時に、墓と人影を見つける。
霧雨はゆっくりと人影に近づき、手に刀を握り、臨戦態勢で冷たく言い放つ。
「貴様…何者だ?」


 
GM

霧雨が、白い色だけの空虚な空間を進んでいってから暫く経った。
何の変化も無かった世界に、異変が起きる。
(屍の臭い…)
それを感じた瞬間、辺りに色が満ちていた。

其処は、広大な花畑だった。
空は澄んだような青空で、清らかな風が吹いている。
地平の何処までも、色とりどりの花が満ちていた。
…いや、違う。
正面、遥か彼方に、何かが見える。
墓と…、人影だ。



 
紫堂霧雨

正面、左、右、後ろと、順番に一目見る。
そして、また正面に向き直り飛んでいった赤い球を見つめるように言った。
「…赤だ」
赤、この色に霧雨はある物を連想させていた。
命ある者は必ず流す物を…。
足早に、霧雨は正面を進む。


 
詩人クロード(?)

霧雨<

「さて。…ところで、私には、ちょっとした信号を発することが出来ます」
言うと、霧雨の前に、平を上にして手を掲げる。
彼が念を凝らすと、其処から光の球が三つ生じた。
一つは真紅、一つは深茶、一つは湖沼の色の球だ。
球は宙に飛び上がり、何処ぞへと消えていった。
赤色は霧雨の正面、茶色は右手、青色は左手へと。
「ちなみに、今の球は、シエラさんとミネルヴァさん、そしてシーラを示します。どの色がどなたを表してしているかは、私には判りません。
霧雨さん、あなたに選択をお任せします。
赤色を追うか、茶色を追うか、青色を追うか。
それとも、どの色も追わずに、そちらに向かうか」
霧雨の後ろを指差してみせる。
そちらには、紫色の光が広がっていた。
そしてから、はたと気が付いたようにして、肩を竦めて見せる。
「今のはちょっとした特技です。お気になさらず」



 
紫堂霧雨

「………」
無言でクロードへ向けていた刀を納める。
「良いだろう・・・信じよう」
(偽物であれば、切り捨てればいい…)
霧雨は、口では信じると言ったが隙を見せず、クロードの行動を細かく見ることにした。
「残り二人も会っていないようだが…これからどうするのだ…?」


 
詩人クロード(?)

霧雨<

はじめ怪訝そうに霧雨を見詰め、その後納得した風に頷いた。
「夢魔の迷宮に落ちていたのですね。
……私は正真正銘のクロードです。
お疑いならば、何でもご質問くださって構いませんよ」
言って微笑む様子は、少なくとも霧雨の目には彼の知っているクロードそのものに見えた。



 
紫堂霧雨

霧雨はクロードの姿をしげしげと見つめ、観察する。
(…俺が最初に見たクロードは幻影だった)
霧雨は目の前のクロードを疑っていた。
先の忍者との戦いのせいか、こんなことを思い出した。
任務先で味方とはぐれ、また出会った時、その者を信用するな、と。
その者も敵の手に落ちている可能性があるからだ。
霧雨はその理を思い出し、目の前のクロードに刀を構える。
「貴様は…本物か?」


 
詩人クロード(?)

クロードの姿形をした人物は、じっと霧雨の様子を見詰めてから、安堵した風に息を吐いた。

霧雨<

「良かった。夢魔の闇に呑まれながらも、その心を喪失しては居なかったようですね」



 
GM

霧雨がその手を掴むと、それは強く握り返し、同時に彼を引き込んだ。
あまりに突然の出来事の為、ろくな抵抗も出来ずに霧雨はそのまま引っ張り込まれた。
闇の口が開き、白い光が彼を包みこむ。

「む…」
放心していたのは僅かの間だった。
我に返ると、霧雨は自分を掴んでいた手を振り払い、飛び退る。
そして改めてその手の主を見やると…
「クロード?」
彼は困ったような顔でこちらを見ていた。



 
紫堂霧雨

「!?」
闇より伸びた手に驚いた霧雨は…。
(手が…?面妖な…)
一時、思考を巡らせる霧雨。
だが、この変わらぬ現状を打開するため、その手に触れようと手を伸ばす。


 
GM

霧雨が周囲の様子を改めた、その瞬間、彼の目の前の空間が、再び揺らぎを見せた。
漆黒の壁が歪み、淡い灰色が混じる。
黒と灰色が混じり、渦を巻くように回転する。
その渦の中心から、すっ、と手が伸びた。


 
紫堂霧雨

「ふぅ……」
昂ぶった心を落ち着かせるように息を吐く。
「しかし…」
誰にでもなく呟いて。
「嫌なモノを見せてくれる…」
忍。霧雨にとって懐かしくもあり、思い出したくないことであった。
…雑念を振り払うかのように、頭を左右に振る。
霧雨は辺りを見回し、もう敵がいないことを確認する。
(結局、状況は何も変わっていない…倒した忍はもう見えない…さて、どうするか…)


 
GM

最後の忍者が倒れると、その亡骸は闇に霞むように溶けていく。初めに倒した忍者は既に消えていた。
霧雨は、戦闘に昂ぶった心が、先程までの恐怖を消していたことに気づいた。

霧雨:
気力+7
…35/37



 
戦闘

(ふむ…)
霧雨はこの空間の仕組みを理解し、体勢を整える。
(…これだけ広いと、幻霧などはあまり役に立ちそうにないな……)

霧雨は忍者に向かい、素早く苦無を構え、二人に二本ずつ投じる。

霧雨:
「忍術」(投擲)
『多段投擲』>忍者A、B
命中!>忍者A
命中!>忍者A
失敗!>忍者B
痛打!>忍者B
3回Hit!

苦無が命中すると同時に、霧雨は片方の忍者に向かって疾駆する。
相手は腕と肩口を負傷し、怯んでいる様だった。
霧雨はその忍者に相対し、刀を鞘走らせ、抜き様に一撃した。
「食らえ…!」

霧雨:
「刀術」『居合抜き』>忍者A
命中!>忍者A
1回Hit!
忍者Aを撃破!

霧雨の居合抜きは違わず、逆袈裟に忍者を払い、斬り捨てた。
その身体が仰け反り、力を失うのを確認もしないで、霧雨は素早く後方に位相をずらした。下がる彼に、横合いから残りの忍者が仕掛ける。
構えていた苦無を投じると、すかさず刀を握って接近する。

霧雨:
回避!<「投擲」忍者B

霧雨
―神業的成功―

回避!<「刀術」忍者B
≪反撃≫
命中!
≪連鎖攻撃≫
命中!
2回Hit!

霧雨は、一撃目の苦無を軽やかに躱し、続けて打ち込まれてきた刀を避ける。その動きは、慣れぬ空間に在るとは思えないほど鮮やかで、滑らかだった。
斬撃を避けると、彼は斬新の解けない忍者に刀で痛烈な反撃を与え、連続して斬撃した。忍者はもがき、倒れる。

≪戦闘終了≫
紫堂霧雨
vs
黒忍者×2

≪戦況≫
戦場・広大
地形・特殊空間
視界・良好

≪状態≫
紫堂霧雨:
肉体…完全
精神…完全
状態…恐怖値による制限LV1



 
GM

霧雨が暗闇の海でもがいていると、不意に、彼の目の前の空間が、ある輪郭を象り始める。
漆黒の粘土めいて、暗闇がある二つの物体と変化した。
(……!)
黒装束を身に付け、覆面を付けた…そう、忍者だ。
暗闇は、二人の忍者の姿を形作る。
足場も定かではないこの空間でしっかりと立ち、忍者達は苦無を握って静かに霧雨を見詰めている。
霧雨は、奇妙な感情を覚える。
明確な殺意を木偶のような忍者から感じ、霧雨は安堵していた。
この完全な暗闇の中で、それだけが確かなものだったのだ。

片方の忍者が投じてきた棒手裏剣を霧雨は半身ずらして躱す。
落ち着いて動いてみて理解した。上下左右に広がる奇妙な空間だが、移動自体は簡単に出来る。行きたい方向を意識さえすればいいのだ。

≪戦闘開始≫
紫堂霧雨
vs
黒忍者×2
(魔法生命/実体)

≪情報≫
戦場・無限空間/魔法空間
属性・無し

≪状態≫
紫堂霧雨:
肉体…完全
精神…完全
状態…恐怖値による制限LV1



 
紫堂霧雨

「!?」
すべてが闇に染まり、恐怖に駆られた霧雨は…。
(…落ち着くのだ、落ち着け……)
と、自分に言い聞かせる。
(ここは夢の世界だ…何があっても不思議ではない…今はこの闇をどうすれば抜けられるかだ……)
だがわからなかった。
(しかし…あの女が悲鳴を上げ、消える…これも夢魔の仕業なのだろうな……くっ、すべてが後手に回るのか…!?)
方法よりも、霧雨は目をつぶり、冷静になることに努めた。


 
GM

霧雨が声を掛けると、二人は驚いたようにして振り向く。
彼の姿を認めると同時に、クロードの姿が掻き消え、シーラが悲鳴を上げた。
刹那、部屋の全ての景色から色というものが一切失せる。
そして、景色が【崩れ】た。
硝子のように罅が入って、そして霧雨を残して崩れ去る。

後にあるのは、ただ無明の闇だ。
何の音も聴こえず、何の光も無い。
ただ、虚ろな空間だった。
深海にも等しい闇の宙に、霧雨は揺蕩う。
闇がその触手を伸ばして、霧雨に侵入しようとしているかのようだ。
霧雨は、自己が消失するかのような恐怖に捉われた。

霧雨:
恐怖9>蓄積恐怖値9
…28/37
(夢魔の世界において、恐怖値が一定以上高まると、
その人物は気力を全て失い、夢魔に囚われます。
なお、恐怖値は蓄積している割合だけ、行動に制限を受けます)

何処にも何も無い。



 
紫堂霧雨

(む…顔がぼやけている…)
霧雨は女性の顔を見て、ここが夢の中だと再認識した。
(この家の形から見ると…あの女がフォレスティのシーラなのか…?そしてあのクロードは、先刻俺達が会ったクロードなのか…?)
全く未知の世界の夢の中。
やるべきこと、今やれるべきことを思い返し。
霧雨は扉を開け、二人に話しかけた。
「クロード、貴様はここで何をしているのだ?そして…」
女性の方を見て。
「貴様がフォレスティのシーラか?」


 
GM

霧雨は音も立てずに扉を僅かだけ開き、隙間から部屋の様子を覗った。
其処に見えたのは、食卓を囲む二人の人物の様子だった。
一人は、霧雨も知っているクロードだった。
もう一人は、判らない。
身体つきから恐らく女性であろう事は判るが、その顔の部分だけがぼやけているのだ。
二人は非常に楽しそうな、幸せそうな様子で食事をしていた。雑談の中に笑い声が混じり、そう、幸福という物の体現しているかのようだった。


 
紫堂霧雨

(…どうやら戻ってきてはいないようだな)
もう一度辺りを見回し、誰もいない事を確認する。
(…皆が同じ場所へ出るとは限らない、か……まぁいい、この笑い声…何者か突き止めなくては)
霧雨は身を隠しながら、気づかれないように男女の姿を見ようとする。
(しかし…この情景は……いったいなんなのだ?)


 
GM

霧雨が目を覚ますと、其処は元のシーラの寝室だった。
見回しても誰も、シーラの姿も見えない。
(自分だけ戻ってきてしまったのか……?)
怪訝に思って、ふと気づくと、部屋の様相は変化を見せていた。
しっかりとカーテンが閉められていた窓は開け放たれており、明るい光が部屋を満たしていた。そして部屋の至る所に画布が飾られており、みすぼらしい様子の木造の壁を一生懸命華やかにしているようであった。
ふと、扉一枚を挟んだ隣の部屋から、笑い声が聴こえたようだった。
男女の、とても楽しそうな笑い声だ。