| 十年の長きに渡って繰り広げられた“大陸戦争”の当初に建てられてそれを生き抜き、“サイーディア討伐戦”、また、“魔物掃討作戦”の激戦を生き延びた歴戦の城塞。 岩山の上に石造りされたこの建物は華美でなく、しかし質素に過ぎず、そして戦略上の合理性と生活のふたつを追求して改築が繰り返された大規模の王城で、その威容は北の大地まで伝わっている。 先代である正義王アールス、そして当代の剣王ハルッサムとともに様々な逸話を残したこの人の身ならぬ老兵は、今は平和な暮らしを営んでいるように見える。 ハルッサムと故王妃との双子は若輩ながらも、兄のシーザーは剣に、妹のリィジィーは魔術に才を見せており、ともに将来を嘱望されている。 この王家は民に絶大な人気を誇り、その治世は安定し揺るがない。 |
| 大牙の城 | ||
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| 槍の塔 | 剣の塔 | 弓の塔 |
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赤鱗騎士団・団長室 青鱗騎士団・団長室 白鱗騎士団・団長室 騎士隊長サーラ私室 他・騎士隊長私室 |
剣の将軍執務室 第一騎士団・団長室 第二騎士団・団長室 第三騎士団・団長室 騎士隊長ウォン私室 他・騎士隊長私室 |
弓の将軍執務室 梟騎士団・団長室 鷲騎士団・団長室 隼騎士団・団長室 騎士隊長私室 |
| 会議室 | ||
| GM |
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「開いてるぞ、入れ」 中からギムリアスの声がする。 サーラたちは団長室へ入った。 中では、執務机の上に気怠そうに頬杖をかいた団長の姿がある。 机の脇にあった、山ほどの書類は残りわずかになっているようだ。 「何かわかったか？」 |
| アルマ |
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サーラ＜ 「もちろんです、お任せください」 にこりとして応じる。 「サーラ様とお知り合いになれたのは私にとっても、望外のことでした」 |
| サーラ |
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「剣の騎士団に白衣の騎士団、そして今度は梟の騎士団か。 なかなか大事になってきたな。事後連絡をするだけでも一苦労だ。」 やれやれとため息をつきながら廊下を歩く。 気になるのか、それとも無意識にか。 傷を追った方の腕を軽く回すような仕草をしている。 アルマ＜ 「地下牢の修復はもちろんとして、城下への魔物の進入を防ぐ手立てがいるな。 ギムリアス団長にもこれからお願いするつもりだが、魔術師ギルドへの協力も依頼することになると思う。 その時はアルマ殿、口ぞえを頼むぞ。」 にこりと笑みを浮かべてそんな風に言う。 「今回は大仕事だったがが、魔術師ギルドの中に知己ができたのは幸運だった。」 宿直の騎士に声をかけ、部屋の扉の前に立つ。 「団長、サーラです。夜分に申し訳ありません。 少々お時間をいただけませんか？」 |
| GM |
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サーラたちは、騎士団寮の槍の塔へ来た。 騎士団寮には、騎士団長をはじめとして、従騎士や従僕の居室もある。（将軍が住むのは、国王の居室と同じ塔だ。これは、彼らの地位の高さを表してもいるが、警護上の理由もある） ギムリアスも、団長室の隣にある私室で休んでいるはずだ。 |
| GM |
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サーラたちは、大牙の城へと向かいました。 |
| アルマ |
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サーラ＜ 「もちろん、そうですよ」 にこりとする。 「有名ですよ、朱金の戦女神の武勇伝は。私だって、別に研究所にこもってばかりいるわけではありませんから」 それから、杖を持ち上げて見せる。 「ええ、もちろん。 私はそのことのためにもいるつもりですから。 援護は得意ですよ。どちらかといえば、直接攻撃の術は苦手ですから、頑張って援護をさせて頂きます。 相手が亡霊なら尚のこと、そうでなくても、お手伝いいたします」 |
| アイスバーグ |
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サーラ＜ 「隊長、お言葉ですが、ぶん殴る方はわたしの得意技ではありません」 さっと手を挙げて、さりげなく異議を申し立てる。 意識して真顔をしていたが、しばらくしてから、くすっと笑い出す。 「はい、分かっています。平和的に、ですね」 |
| サーラ |
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アルマ＜ 興味深そうに頷きながら話を聞いていたが、最後のくだりで表情が笑みに弾けた。 「アルマ殿はずいぶん私の性格がおわかりのようだな。」 「ぶん殴る」という言葉に大らかに笑いながら魔術師を見た。 目を眇めて笑う様子は、機嫌の良い大型動物にも似ている。 「意志の力か・・・今後の参考にさせていただこう。 魔術の講義など私にはわかるはずはないと思っていたが、こうして聞いてみると興味深い。」 しみじみと呟くと、今度はいたずらっぽい笑みを浮かべて槍を掲げてみせる。 「それでは、もし亡霊とやりあうようなことになれば援護をお願いしてもいいだろうか？ 『ぶん殴る』方は得意なので、おまかせ頂いても大丈夫なんだが。」 アイスバーグ＜ 「聞いたか、アイスバーグ？ 魔術師殿のお力を借りれば、どうやら私たちの得意技も使えそうだぞ。」 どこかわくわくとした様子で傍らを歩く少年を振り返った。 楽しそうな顔をしていたが、途中で気がついたように付け加える。 「あ、もし亡霊が犯人でも、いくらなんでも最初から攻撃をしかけるつもりはないぞ。 平和的に解決できればそれが一番だとは思っているからな。」 真剣な顔でそう言うが、言葉の先頭に「一応」とつくだろうということが彼女を知っているものには明白だった。 話しながらも、足はまっすぐに第五通路の方へと向かっている。 |
| アルマ |
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サーラ＜ 「先に答えだけ申し上げるなら、『はい』となります」 頷きかける。 「ただ、その効果は、サーラ様の意志の強さに大きく影響を受けますし、いずれにしても、そのままではそれほどの効果を与えることはできません。 ……生き物相手には素晴らしい威力を発揮しそうですけれども」 ほれぼれと、サーラの手を見つめる。 「ああいった幽霊や悪霊のたぐいは、意志の力や妄念が魔力を借りて形となったものとされています。 物理的なものではありませんから、たとえば石を投げても素通りしてしまいますし、損傷を与えることはできません。 その肉体を破壊するには、より強い意志の力をぶつけて、相手の意志を滅ぼす。あるいは魔力を以て、よりしろとなっている魔力を攻撃する、といった方法をとることになります。 その意志の力とは、信仰心や、克己心、磨き上げられた自らの技能への信頼や自信、相手を倒そうとする想いですね。特にミノッツの聖騎士たちは神の加護を得ているからか、亡霊たちに対して驚くべき攻撃力を持っています。 サーラ様の場合は、信仰の力よりも武術や技能への信頼で戦うことになるでしょう。 ですが、いずれにしても、そういった方法で亡霊を撃破するのには手間がかかります。 なぜなら、『倒す意志』よりも『倒されまいとする意志』の方が強いからです。それも、かなりの差で。 ですから、そこで魔術師が必要となってくるのです。 私たちは純粋な魔力を扱うことができます。私たちが放つ純粋な魔力の奔流は、普通の生物に対するのと同様に亡霊たちを傷つけることができます。 または、私たちは、たとえばサーラ様の槍に、魔力を宿らせることができます。サーラ様の意志は、槍を伝い、魔力を媒介として、より高められた力で亡霊を撃つでしょう」 指折り数えながら、亡霊を倒す方法をあげていったが、そこでふとサーラを見返す。 「簡単にまとめると、 １．意志の力を高めてぶん殴る ２．魔法で攻撃する ３．魔法の援護を受けてぶん殴る といった方法が亡霊に対しては取ることができるということですね。一番、効果が期待できるのは３番でしょうか」 |
| サーラ |
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団長室から出ると、足早に歩き始めた。 「踊るような」と形容されるほど優雅なものではない。 ただ、どこか楽しそうな足どりだった。 鼻歌でも歌いだしそうな顔のまま、第五通路へと歩を進めていく。 アルマ＜ 「そういえばだ、気になっていたのだがなアルマ殿。」 首を傾げるようにして、魔術師の顔を見ながら問いかける。 「今回の原因が、幽霊だとして・・・私の槍や拳というのは効果があるのかな？」 女性にしては大きく、骨太な掌を光にかざした。 幽霊の感触とはどんなものなんだろうと、考え込むような表情をみせる。 |
| GM |
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サーラたちは団長室に入っていった。 |
| サーラ |
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アイスバーグ＜ 半々、という言葉に唸るように息を吐き出した後 「副団長が代わりにいらっしゃればいいんだがな。団長の居場所を教えていただけるだろうし・・・」 こちらも小さな声で答えた。 返事が聞こえたのはその時だった。 間違いなく団長の声が中から聞こえた。 意外だ、今日はこの後雨かもしれない・・・と呟いた後、団長室の扉を開ける。 団長＜ 「失礼します・・・団長、当直の者が見当たらないようですが？」 部屋の中へ踏み込むと、慣れた動きで敬礼をする。 表情と言葉は真面目だが、前を見つめる金色の目には笑っているような光が浮かんでいた。 |
| GM |
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「あー、入っていいぞ」 すぐに、返事がある。 間違いなく、団長の声だった。 今日は、副団長を犠牲の羊にして、団長室を抜け出したりすことなどは、やっていなかったらしい。 |
| アイスバーグ |
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サーラ＜ 中に聞こえないように、小さな声で、 「半々といったところですよね。 扉の前に、当直の騎士がいませんが……団長が当直をどっかにやってしまうのは、いつものことですからね」 団長が部屋にいるなら、当直の騎士が、警護のために、また、何か用事があった際の使いとなるために、扉の前で立ち番をしているものなのだ。 |
| サーラ |
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「やはりこの時間は閑散としているな・・・」 人の気配の少ない塔の様子に、そんなふうに呟いた。 やっぱり先に訓練場をあたるべきだったかと考えながら、とりあえず団長室へと足を向ける。 颯爽とした足取りで目当ての部屋の前までくると、同行者たちの方を見てちらりと笑った。 「さ、ここで団長を捕まえられれば早いんだが。」 そんなふうに言った後、軽く扉を叩き中へ声をかけた。 「団長、サーラです。少しお話したいことがあるのですが、いらっしゃいますか？」 |
| GM |
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サーラたちは、騎士団寮の槍の塔にやってきた。 今、この騎士団寮にいるのは、非番で休養を取っている騎士を除けば、彼ら三人と、後は、部屋で仕事をしている上級騎士たちくらいのものだった。 |