PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

大魔術師王国イ=サード
ロトッカ地方の大国、自然を重んじる緑の国。
若王セイフレイが統治する。彼は緑色の賢王と呼ばれており、
その名に恥じない素晴らしい政を行っている。

:大魔術師王国 “矜持”の大図書館:
 最大の蔵書料を誇る大図書館。
 “矜持”とは、この図書館が発見されたときに大扉に描かれていた文字を取って、つけたものである。建築様式や構造は騎士王国の図書館に酷似している。そしてまた、同様に、地下には迷路のような通路が広がっており、膨大な数の資料が保存されている。
 こちらは6階建てで、「今発見されている通路・書棚の蔵書のだいたいの内容は確認された」とされており、目録もつけられている。とはいえ、実際のところは、それも書名から推測された主題で判断された程度のものである。図書館の管理人である、司書アンヘルらによって、日々、調査が進められているが、それも遅々としている。太古の書物には複雑な仕掛けや、魔法による保護がなされている場合が多いから、というのが主な理由だ。賢王セイフレイは図書館の蔵書の整理を「可及的速やかに完了させるべきである」としているが、彼も、今のところは地下の探索に注力していて、上階については後回しにしている段階である。(実際問題として、地下から何かが溢れ出してくるかもしれないところで、おとなしく本など読めるわけがない)
 現在、地下への扉は封印が解かれており、冒険者や叡智の塔の学者たちによって編成された調査隊が探索を行っている。その目的は、地図の作製と、調査の妨げとなる“守護者”の排除もしくは機能停止である。

投稿(件名…大魔術師王国 “矜持”の大図書館)
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グラース

アーシュラ&マリン<

「ああ、気をつけて行ってこいよ!」
 忙しい奴らだなあ、と、地下に向かう二人を見送る。


マリン

アーシュラ<

「あっ、はい。行きましょう。」

 出発しようとして、慌ててグラースの方を振り返る。

グラース<

「私たち、他に調べる当てはありませんので、地下一階を調べることにします。
 先生、助言ありがとうございました。」

 急いでアーシュラの後を追う。


アーシュラ

「なんだ、地下一階か。施設が崩れた所はないじゃない・・・」

 口惜しそうに新品のスコップを見つめると、ロープやフックを袋に詰めて出発の準備を整える。

マリン&デニット<

「さあ、出発だよ。地下一階を虱潰しに調べるからね!」

 直ぐに立ち去ろうとする。


グラース

マリン<

 受け取り、生真面目な顔で甲冑の欠片を見つめる。
 やがて、首を振った。
「いや、駄目だな。
 これに刻まれている紋章は、一般にいう“紋章魔術”と全く同じだ。つまり、この鎧を動かすのに――動いていたんだろう?――必要な魔術が描かれているだけだ。
 ……だが、今ふと気がついたんだが。
 集中的に、整備に必要な施設が迷宮の奥深くにあったとして、そこに近道を造ったなら、普通は、浅い場所にその入り口を作るんじゃあないか……?
 それこそ、地下一階とか……」
 なかば独り言のようにつぶやく。


マリン

 何かを思い出して、アーシュラの袋の中をゴソゴソと漁っていたが、リビングアーマーの一部だったものを取り出すと、グラースの前に持ってきて、表面に書かれている文字を見せながら話す。

グラース<

「この鎧に描かれている文字と同じ文字が集中的に書かれている場所がありませんか?古代人が魔法を発動させるために使っていた文字ですので、ひょっとするとその場所に隠れた機能があるかもしれません。」

 グラースの返事を期待して待つ。


アーシュラ

 一人呟く。

「直通の道かあ・・・ここが直通の道ですなんて、まさか書いてあるわけないよね・・・
 転移の魔法が使われているとすると、それらしき場所を探せば・・・」

 考え込んでいる。


グラース

マリン<

「元に戻ったようだな」
 ぼそっと呟く。

アーシュラ<

「施設の場所か。ふむ、これがさっぱり分からん。
 ……というわけでもないがな、他の建物なら分かる。だいたい、そういう重要な部分は中央にあるもんだ。
 だが、この地下にあるのは迷宮だろう?
 それも、恐ろしく曲がりくねった、角だらけの迷宮ときた。
 中央なんてのがどの辺りに位置するものなのか、判断するのは難しいんじゃないか。
 だが、一つ可能性があるとすれば、だが……。
 遺跡全体の保護を司る機能があったとする。もしも今回のように機能に支障をきたすことがあった場合、古代人たちは、わざわざ迷宮を潜っていっただろうか?
 転移の魔法を使用したのかも知れんが、わたしなら、何かしらの直通の道があるのではないかと考えるね。
 それは魔法陣かも知れないし、隠された階段かも知れないが」


マリン

 黙って、グラースとアーシュラのやり取りを聞いている。

 やおらハーブを弦が切れるほど強く爪弾くと、すっくと立ち上がって背伸びする。

ALL<

「あ・・・、もうどうでも良いや、シア様には次の機会にお願いしよう。歌はもうお終い!」


アーシュラ

 マリンの方を一瞥する。
 グラースに向き直って、

グラース<

「いや、少し黄昏ているだけさ。
 その内、急に元気になるから平気、平気」

 すっぱそうに口をすぼめてみせる。
 アーシュラとしても現状どうしようもない。
 話を本題に持っていく。

グラース<

「ふーん、集中施設ね・・・そんじゃ、目的は集中施設の発見と改修だ。」

「指輪が壊れた・・別に指輪の方はかまわないな。いくらでも代替がきくから。むしろ、レシピと特性データ表を必ず返して欲しい、それが条件。何百時間も実験して集めたデータだから、もう二度とあんなことは出来ないし、やりたくないよ。」

 当時を思い出して憮然とする。

「ところで、言葉尻を取るようだけれど、古代人の構造物に関した一般論から見て、集中施設の場所っておおよその見当がつくのかな?」

「やみくもに潜っても簡単に集中設備が見つかるとも思えないけど?」


グラース

マリン<

 マリンの挙動を見て、はてと首をかしげる。

アーシュラ<

 小さな声でアーシュラに訊ねる。
「おい、なんかやらかしたのか」
 それから、
「一応な。上層部というか、遺跡調査を取り仕切っている幹部の一人にだが。
 結論からいうと……だ。
 遺跡の機能自体に異常が起きているのは間違いないだろう。それが、部屋に個々にかけられた魔術が消滅したのか、どうかは分からん。
 だが、他の古代人の建造物を見る限りでは、大図書館全体の保護を行う機能が、集中的に集められた施設があるだろうと推察される。
 恐らくそこに何らかの異常が発生しているため、地下二階は魔法による保護が効いていないのだろう。
 これを修復できるかできないかはともかくとするが、お前さんがその施設を発見し、我々に報告できたなら、要求を認めてやってもいいそうだ。つまりは、研究記録だな。
 だが、試作品についてだが……」
 ここで首をかしげる。
「おれはよく知らんが、試作品の指輪、事故の衝撃で吹っ飛んだんだろ?
 そのときのショックか何かで壊れたか何かして、ただの指輪になってたって聞いたぞ」


アーシュラ

 マリンの様子を見て顔をしかめる。

「あちゃー」

 デニットと目を合わせて諦めたような仕草をする。

 導師グラースに向き直ると、しばらく考えてから唐突に話しかける。

導師グラース<

「でっ?お願いした件ですが、上層部とかけ合って見てくれましたか?」

 言い終わった後に、ちょっと、かっこつけて、肩から下げたロープの感触を手で確かめたり、新品のスコップをいじったりしてみる。再び、地下に潜るためのやる気十分だ。


マリン

話すのはアーシュラに任せて自分はハープを取り出すとぽつぽつと奏ではじめる。

その内小さな声で歌い始める。
  ・
  ・
  ・
つりばりぞ

そらよりたれつ

まぼろしのこがねのうおら

さみしさに

さみしさに

そのはりをのみ。

(山村暮鳥)


デニット

グラース<

「大事ない。昨日の手当が効いたんだろう。感謝する」
 腕を回してみせる。


GM

「出頭ってなんだ……」
 デニットがぼそりと呟いたりなんかする。

 一行は、グラースの詰めている医務室へ向かった。

 グラースは、朝から医務室の机に向かって、何か書き物をしている。
 ……どうやら、患者のいない暇な時間に、研究の内職をしているようだ。

「ああ、起きたか。
 傷の具合はどうだ?」


マリン

「夜が明けた・・・・」

 アーシュラのあとをついてグラースの部屋に移動する。
 導師グラースを探す。


アーシュラ

「さてとっ。
 今日も元気に出かけよう!」

 自ら気合を入れて立ち上がると、マリンとデニットに手で合図を送る。

マリン&デニット<

「二人とも行くよ、グラース先公の所に出頭するよ」

 グラースのいる部屋へと移動する。


GM

 二人は、傷の治療を受けてゆっくりと休む。

 HPとMPが回復した!

 いつの間にか、夜が明けていたらしい。
 二人ともすっかりとリフレッシュすることができた。


アーシュラ

「塔の学徒に復帰する」グラースの言葉を反芻してみる。

 まさかね。今更だし、あたしは真面目な学徒タイプじゃない。
 フィールドワークが性に合っているのは自身で納得している。
 でも、もう少し魔術の修行が必要だとのグラースの指摘は考慮すべきだろう。
 真面目に勉強するか!

 頭を振りながら寝室に入って見ると、
 マリンが静かに歌を歌っている。

 マリン・・・悲しそうだな、そんなに嫌なのか、虫が・・・
 でも、あたしには何もしてやれない。マリンが決めることさ。

 腕組みをしながら寝室の壁に背をもたれて、マリンの歌を聴いている。
 これはこれでリラックスできるな。

 しばらく、何をするともなく休むことにする。


マリン

寝室のベットの端に静かに腰掛ける。
思いついたようにハープを取り出すと小さな声で歌い始める。
何処で覚えたのかもう忘れたが、昔に通った街の古い詩だったような・・・

夏に 貴方を愛した
夏に 貴方を求めて
夏に 貴方を見つめる

恋人よ 私たちは巡り会えた

・・・・
・・・・

冬に 貴方を愛した
冬に 貴方を求めて
冬に 貴方を見つめる

ずっと夏からの気持ちのままに
(出典 フェイルーズ/レバノン)

アーシュラ<

「ねぇ、アーシュラ、私たち何時まで旅を続けるのだろうね?」

別にアーシュラの返答を期待しているわけじゃない。


グラース

アーシュラ<

「そんな研究をしていたのか」
 苦笑を浮かべる。
 そういえば、この導師はほとんど二人の研究や修行自体には関わったことがなかった。
「しかし、今のお前さんの技量で制御可能かというと、若干疑問が残るぞ。
 指輪を与えられるほどまでにはならんと、魔術具関係の研究は危険が大きいからな。
 昔わたしが事故をやらかしてから、塔も過敏になっていたんだろう」
 さらっと重大なことを漏らしたりする。
「まあ、とりあえず塔にはあたってみよう。
 お前さんが学徒として戻ってくるつもりがあるんなら、かなり有望なんだがな」
 肩をすくめる。

 寝台のある方に向かっていくのを見送り、塔への使いを出すために人を呼びに出て行った。


マリン

アーシュラ<

 アーシュラに促されるままに奥の部屋に行って休むことにする。
 そうしたら少し気分も落ち着き、前向きにものを考えられるようになるかもしれない。
 虫のことはそれから考えよう。


アーシュラ

グラース<

 上目遣いで舌を舐めながら話す。

「見返りですが、魔導技術研究のレシピとデータ、試作品を返していただきたい。

 例の事故を起こした時、実は魔導技術の単位を履修中でした。そもそもあの事故は魔導技術の実験中に起こしてしまったもので、もう少しで完成という段階だったのです。その後、実験データやレシピメモ、試作品は制御不能で危険ということで取り上げられてしまいました。」

 残念そうに溜め息をする。

「今は錬金術を勉強してみて何が不味かったのか分かりました。だからもう制御可能です。

 取り上げられたレシピメモと特性データ、試作品の表題ですが、<魔法具制御のためのメカニズムと基本ロジック開発>だったと思います。魔術師の指輪などの魔法具の機能をアップさせたり、新しい機能を発現させたりする研究です。

 試作品も含めて、どうか返してもらえるように上の方にお願いして欲しいのです。私たち部屋で休んでいますから。」

 哀願するようにグラースをじっと見る。

マリン&デニット<

「じゃ、奥の部屋に行って休もうか。」

 両人を促すと、心なしか疲れた様子で奥の部屋に移動して休むことにした。


グラース

アーシュラ<

 しばらく考える。
「調査、報告か。
 なるほど、それならば否とはいえない。
 王城に確認してみなければ何ともわからんが、恐らく通るだろう。
 で」
 言葉を句切る。
「おまえさんがそれをする見返りは?」

マリン<

「虫嫌いは治らないんだな。もっとも、私も嫌いなものはある。
 あの黒い悪魔には耐えられん。塔の防御機能も、ああいった小さな虫には効かないからな。

アーシュラ&マリン<

「まあ、話し合って決めることだな。
 彼女の腕が完治するのは少なくとも3時間はかかる。
 そろそろ日も暮れる頃だ。いつから潜っていたのかは知れんが、一休みしたらどうだ?
 奥に、休憩所があるぞ。簡易寝台もついているから、寝られんこともない」


マリン

アーシュラ<

「だって、あんなに大きなムカデ、貴方も見たでしょう?」

 話している内に声が小さくなっていく。
 情けない。涙が出てくる。

 ふくれてアーシュラから目をそらす。
 今回はパーティから離脱しようか・・しかし、それはそれで悔しい。
 どうしようか、逡巡した。


アーシュラ

「精密な魔法技術ってわけか・・・面白そうだな」
 それにデニットの考え方に賛成だ。デニットに頷くとグラース導師に執拗に食い下がってみることにした。

グラース<

「もう少し状況を詳しく調査して報告するなんてどうですか。
 何が起きたのか原因を調べて可能ならば復旧を試みる程度です。それすら意味がないとは言いませんよね?」

「ひょっとしたら、原因さえ取り除いたら自動的に復旧するかもしれませんし、進行を食い止めることも可能かもしれない・・・何れにしても古代魔法技術の粋を見ることが出来るかもしれません。またとないチャンスだと思います」

 珍しく、まともなことを話す。めったにないことだ。

マリン<

「マリン、何時までもダダこねてないの。虫とアンタといったいどっちが強いっていうの?
 虫なんかよりずっと怖いもの、あたし達もっといっぱい見て来たでしょう?
 しっかりしなさいよ。」

 目に力をこめてマリンをじっと見据える。


グラース

アーシュラ<

 いかにも、腹に一物隠した様子に、胡乱げな視線を送る。
「まあ、お手柄にはなるだろうな。
 とはいえ……」

マリン<

「まあ、難しいだろうな」
 あっさりと、マリンの言葉を肯定する。

ALL<

「そもそも、歯車が一個取れたから壊れた、歯車を戻したからまた動いた、とかそういった代物でもあるまい。
 お前さんたちには説明するまでもなかろうが、魔術とは繊細なものだ。
 一度動かなくなったものが、単純に元通り、といった訳にはいくまい」


デニット

 テキパキとした治療を受けている間、じっと耐えている。
 最後に包帯を巻かれたところで、一息ついた。

マリン<

「わたしは挑戦するつもりだが?」
 当たり前のように答える。
「とはいえ、施設の修理などはするつもりはないな。
 探索を続けるために修繕が必要ならばする。
 でなければ、しない。
 そもそも、可能かどうか」


マリン

ALL<

「えっ、また、あそこに戻るの?」

 アーシュラの提案に慌てて割り込む。
 群生した多足外骨格生物の群れを思い出して、さっと顔から血の気が引く。

アーシュラ<

「たとえ、施設の故障箇所が分かったとしても私たちでは修理できませんよ。
 だから、誰かエンジニアの人が一緒に行ってくれない限り意味がありません。」

 きっぱりとした口調で否定する。

デニット<

「デニットさんも、もうあんな所は嫌ですよね?」

 懇願するような表情で同意を求める。

グラース<

「と言うことで導師、施設の修理なんて、やっぱり、私たちでは不可能だと思います。」

 無理やりに、やらないと結論に持っていく。


アーシュラ

 グラースに指摘されて懐のものを慌てて触ろうとしたが、寸でのところで思いとどまる。

下を向いて小声で独り言<

「ちっ、妙に勘の良いおっさんだな。
 まっ、お見通しってわけかな・・」

 苦笑する。
 そして、グラースの説明を聞いてちょっと考える。
 待てよ、ひょっとすると遺跡の拾得物の所有に関して有利な状況を作れるかも。

グラース<

「コホンっ。
 えーっと、導師、じゃ機能不全に陥った施設は復旧させる必要がありますよね。
 私たちで何とかしましょうか、これって出来ればお手柄になるってことで良いですか?」

 自分の考えに思わず、ニヤリとした表情が出てしまう。


グラース

マリン<

「ふ、む」
 話を一通り聞いて、頷く。
「とりあえず」
 マリンのイーサンクとアーシュラの出した鎧の破片を見、

アーシュラ<

 さらに、ちらりと意味ありげにアーシュラの懐に視線をやり、

マリン<

「地下から拾ってきたものは確かに報告するように指示が出ている。
 大小余さずにな。報告の後、どうなるかは何ともいえん。
 単純な金銀財宝の類なら、ある程度はそのまま自分のものにすることを認められるだろうし、多すぎれば徴収されるだろう。
 魔法具の類は、少なくとも一時的に預からせてもらうことになるかな? それが非常に貴重なものであれば、代価と引き替えに渡してもらうことになると思う。そうでなければ、金銀と同様に与えられるのではないかな」

 それから、講義口調になる。

「わたしは別段、遺跡調査に詳しいわけではない。古代人についてももっぱら、一般的に知られていることしか分からんが……。
 お前さんの推測はおそらく正しい。
 わざわざこのように巨大な施設にしたことから、古代人にとっても知識は貴重な宝物に等しかったものと推測される。

 さて、その施設の地下に、迷宮が造られている。
 果たしてこれは、何を目的としたものか?

 答えはおそらく、単純だ。
 宝物を守るためだろう。

 宝物とは、つまり知識、それもとりわけ、重要な知識だ。
 民や土地を守るために城壁があり、王を守るために城があるように、知識を守るために迷宮があり、ガーディアンがいるのだろう。
 
 つまり、だ。

 生ける鎧などの守護者や、複雑な迷宮、恐らく存在するだろう罠などを抜けることで、その宝物に辿り着けるのではないかな?」

 ふと、困った表情になる。
「しかしお前さんが言うように、施設の機能に不全があるのだとしたら問題だな。
 本来、地下というのは湿っぽく、書物を保存するのに適していない。土というのは塗れているものだし、石壁というのは水気を通すからな。
 だから、古代人の遺跡には大抵、“保護”の機能が備わっていて、湿気やら――お前さんが見たような――虫の侵入やらから建造物を守るようになっているわけだ。
 地下二階だけの異常なのか、三階以降もそうなのか分からんが、もしも古代文明の崩壊から幾星霜、保護の魔法もなしに書物が保管されていたのだとすると……」


マリン

 アーシュラから急かされて、グラース導師に質問する。

グラース<

「あの・・・、この地下迷宮について、ご存知のことがあったら教えてほしいのですけど・・・私とアーシュラで古代逸失魔法に関した情報を手に入れようと思って、とりあえず潜ってみたのですが、残念ながらそれらしい場所はありませんでした」

 地下で経験したことを思い出して話し始める。

「地下一階では、リビングアーマーがいただけで何もありませんでした。そして、この魔法アイテムを見つけました」

 “青い星”イーサンクを導師に見せる。それとアーシュラに合図して、リビングアーマーの破片を導師の前に出させる。

「これらは貴重なものなのでしょうか? セイフレイ王にやはり報告した方が・・・」

 “青い星”イーサンクを惜しそうに見つめる。

「地下二階は何だか施設が故障しているみたいで、む、虫だらけです。・・・デニットさんを傷つけた大ムカデもそこにいました。そこまで行って戻ってきました。」

 虫を思い出して気分が悪くなったが、気を取り直して再び話し始める。

「私たちの予想では、地下に膨大な書籍が眠っていて、地下図書館みたいになっているのではないかと思っているのですが、それとも何か間違っているのでしょうか?」

「導師のお考えを教えてください」


アーシュラ

「けほん」

 ちょっと咳払いをして、注意を引く。
 とりわけマリンに向かって目で合図を送る。
「わかっているだろ」

 自分でグラース導師に質問するのは遠慮したい。


グラース

アーシュラ<

「ま、元気そうで何より」
 手を上げただけの返答に笑って、そう続ける。

マリン<

「ふむ、ムカデ、ね。
 すると、毒ということか?」

デニット<

「そこに腰を掛けたまえ」
 デニットをいざない、座らせる。
 真っ赤に腫れ上がった腕(傷自体は、マリンの神術によって塞がれている)を見て、顔をしかめる。
「なるほどな。まさしく毒だ」

 マリンとアーシュラを横目に見て、

マリン&アーシュラ<

「ある種類のムカデは、その牙に毒を持っている。
 これくらいの」
 と、親指と人差し指を軽く開いて見せ、
「小さなムカデでも、噛まれると飛び上がるほど痛いのは、その毒のためだ。
 軽く噛まれただけでも赤く腫れ上がり、しばらく痛みが続く。
 赤ん坊などが首筋なんかを噛まれたら、命にも関わりかねん。
 治療自体は容易い。この毒は変性しやすく、特に熱に弱い。火傷しない程度の熱湯で洗ってやれば、それだけで違う」
 しかしながら……と続け掛けて、顔をしかめる。
「講義している場合ではないな」

デニット<

「お前さん、痛みには強いか」
 訊ね、デニットが頷くのを見て、こちらも頷く。
 机の脇に置いてあった鞄を持ってくる。
 アーシュラやマリンには覚えがあるが、導師が持ち歩いている、治療用の道具の入った鞄だ。
 そこから、清潔そうな布と包帯、鋭い小さなナイフ、薬瓶を取り出す。

「熱湯による手当をするには毒が中に入りすぎているし、傷自体が塞がってしまっているため――この綺麗な跡はマリンだな?―その方法は使えん。よって……」
 さっと、デニットの腫れ上がった腕にナイフを滑らせる。
 皮膚とその下が浅く切り裂かれ、一筋、鮮やかなピンク色の傷が開いた。すぐに真っ赤に染まる。
「表面を開き、そこに解毒剤を施す」
 薬瓶を傾け、とろりとした液体を傷口に塗っていく。
「その上で、傷を閉じる」
 布を押し当て、手早く包帯を巻いていく。

 サーマヴァーロフの医術の使い手が見れば、「消毒の行程が抜けている」と批判したかも知れないが、迅速な治療といえた。

マリン<

「以上だ。
 念のため小一時間様子を見て、その上でお前さんがもう一度、傷を塞いでやればいい」


マリン

 導師グラースの言葉に、顔を見ずに手をあげて答える。
 まあまあ、上手くやっていると言いたいところだが。
 それ以上は何を言っても負けるから・・・

 まっ、導師グラースがいるってことは、いろいろと有用な情報が聞けるかもしれない。
 デニットの治療が終わるのを静かに待つことにする。


マリン

「あっ」

 慌ててデニットを紹介する。

グラース<

「こちらはデニットさんです。
 私たちと一緒に地下を探索してもらっていたのですが、大ムカデに咬まれてしまいました」

 心配そうにデニットを見て差し招き、導師グラースの側にいる自分の位置とデニットの位置を入れ替えた。

「大丈夫でしょうか?」


グラース

「げほっ。ごほん」
 何度か咳払いして、ようやく落ち着いた。

マリン<

「久しぶりだな、全く」
 苦笑いして、ぽんぽんと暖かくマリンの頭を叩く。
「急に逃げ出したと思ったら、こんなところにいるとは。
 元気だったか。まあ、聞くまでもないか。
 魔法と……あと、竪琴は上達したか?」

アーシュラ<

「お前も久しぶりだな。いやはや。
 相変わらず金儲けのことを考えているみたいだな?」
 おろおろしている様子を見て、にやりとする。
「少しは周りを巻き込まずに、炎の魔法を撃つことはできるようになったか」

 ちらりとデニットを見て、

マリン&アーシュラ<

「とりあえず、話しは後にするか。
 お前さんたちは、怪我人を連れてきたんじゃなかったのか?」


マリン

 導師グラースに気づくと、わっと寄って行き、親しげに手を取って挨拶する。
 マリンは導師のことが好きでたまらない。

導師グラース<

「グラース導師、お会いできて嬉しいです。
 あーっ、何からお話しましょうか」

 何か、今まで経験したことを一気に物語りそうな勢いだ。


アーシュラ

「はにゃ?」

 導師グラースに気づいて、スットンキョな声をあげる。

「うっ! 参ったな。この親父は苦手だ。」

 外見にもおろおろして、どう挨拶しようか迷っている。


導師グラース

 救護室の中で、座席に腰掛けてお茶を飲んでいた壮年の男性が顔を上げて三人を見る。
 途端、お茶を吹き出した。

 すぐにアーシュラたちは気がつく。

 目の前にいるのは叡智の塔の導師だ。
 塔の導師の中で、なぜだか二人を気に入って塔の中でも何度か庇ってくれた人間だった。


GM

 三人は“救護室”と書かれた奧の部屋に通される。
 先に部屋に入って行った図書館員が、「導師、怪我人です。お願いします」と喋っているのが聞こえる。

 アーシュラたちは中に入った。


アーシュラ

「賢王セイフレイとは言え、手回しの良いことだな・・図書館の地下に何があるか予想しているということか・・・。
 ひょっとして、あたし達が何を拾ってきたか知っているのか?」

 プレートメイルの破片はさて置き、水色の宝石らしい原石3つが入っている大袋を大事そうにかかえる。


マリン

役人<

「はい」

 デニットに頷くと急いで救護室に入っていき、役人の指示に従う。
 デニットがどのように扱われるのか、それとなく注意している。


GM

 役人が奧から慌ててやってくる。

 アーシュラが見る限り、図書館内にも、役人にも特段変わったところはない。

マリン<

「ああ、参りましたね。
 陛下の仰るとおり、救護室を作っておいてよかったというものです。奧へどうぞ、薬師が待機しています」
 デニットたちを奧へいざなう。


アーシュラ

 一階の広間に戻って、辺りを眩しそうに見回す。
 デニットもぶっ倒れるという程もなく、特に、変わったことはないと思うが・・・


マリン

 デニットの様子を気にしながら図書館の一階に戻ってきた。
 図書館の役人を小走りして探して、慌てて声をかける。

 すぐに、見覚えのある役人の姿が見つかる。

役人<

「すいません。私たち、地下二階から今戻ったところです。
 けが人がいます。今直ぐに手当てをお願します。」

 デニットを指差して、緊急性をアピールする。


GM

 一行は地下に戻っていく。


マリン

 サイーディアに対するイメージは「過去強大であったが没落した国家、そして没落した貴族達」。何となく親近感が湧くな。
 それに聖大森林の御参りも一度行っておいて損はないだろう。

独り言<

「サイーディア、行って見ようかな・・」

 そんなことを考えながら、アーシュラの指示にしたがって階段を昇ったり下りたりする。再び、地下を進む。


アーシュラ

 辺りを見回して、
「なあんだ、秘密の小部屋ってわけじゃないんだ。
 地下一階に戻ろう。」

 たった今昇ってきた階段を直ぐに下りることにする。
 デニットやマリンに戻れ、戻れと身振りで合図する。

 階段降りて左側に曲がり、再び壁沿いに進もうとする。


GM

 アーシュラたちは1階へとあがってきた。
 出てくると、そこは、大図書館の書架の一角だ。
 今は彼女たちが出てきたことによって、隠されていた入り口が開いている。


GM

 一行は地下に進んでいきました。


デニット

アーシュラ<

「よし、行こうか」
 アーシュラの後から続いていく。斧を手に取り、いつでも何にでも対応できる姿勢だ。


アーシュラ

デニット<

「さて、あたしらも行くとしますか。護衛、宜しく頼むわ。」

 デニットに出発を促すと、マリンに続いて地下に入っていく。

 先ずは、地下の施設の状況を大雑把に把握することから始めるつもりだ。どんな所なのか辺りを観察することにする。


GM

 役人が案内していったのは、すぐ隣の書架の間にある、柱と柱が並んだ、その隙間だった。
 彼が隣の壁の一部を探ると、ただの白い壁だった部分が揺らぎ、地下へ続く階段が姿を現す。一種の隠し扉のような物のようだ。
「ここから入れます。
 どうぞ、くれぐれもお気を付けて」


役人

マリン<

「それなら、こちらです」
 にこやかな表情を浮かべて、案内し始める。
 マリンの不穏な気配には気が付いていないのか、気が付いていない振りをしているだけなのか、とりあえず反応は示さない。結構な食わせ物なのかも知れなかった。


マリン

 依然として微笑んでいるが、コメカミの辺りに怒りの血管が浮き上がって見えるのは気のせいだろうか。

王宮役人<

「そうですか・・・それでは、ここから一番近い、誰もまだ探索したことのない入り口を教えてください。」

 王宮役人の示す入り口から地下施設にスタスタと入っていく。怒っているようだ。


役人

マリン<

「いや、それがですね」
 頭をかく。
「先頃もお話ししたとおり、地下の様子はさっぱりと分かっていないものでして。何名か、探索に出て戻っては来ているのですが、当方で調査結果のまとめは出せていないのです。
 ですから、こちらから、明確にこの入り口だ――というような情報はお出しできないのですよ」

 マリンにも分かったが、この役人は、例えば後に何らかの問題が発生したとして、自分が明らかに責任から逃れることができる場合以外には、何かを確言することをできる限り避けようとしているようだった。


デニット

アーシュラ<

「正直な奴だね、あんた」
 にやりと笑うと、意味ありげに目配せをしてみせる。


アーシュラ

 苦笑しつつ、デニットの言った言葉に鸚鵡返しで答える。

デニット<

「違いない、運が良ければこっちに発掘品もまわしてもらえるかもね。くっくっ」

 アーシュラとしては発掘品の一つや二つ、くすねたい所だが、まあ、機会を窺ってのことで成行き任せで考えている。当然、危険を冒すに値するものが出てくればの話だが、賢王セイフレイの厳罰も怖いし・・かといって単純に引き下がるつもりもない。地下を探検することだけでなく、これも大いにスリルを感じるテーマではある。ひょっとするとデニットも同じ考え?いやいや、これからの探索の中で、おいおい確かめることにしよう。水ごころ有れば魚ごころ有りだ。


マリン

デニット<

「神聖王国から来られたのですか?一度行きたいなと思っていますので、その時は宜しくお願いします。」

 親しげに微笑むと王宮役人の方に向き直る。

王宮役人<

「では、私たちデニットさんと地下の探索に出発します。魔術関連図書の探索ですと数ある入り口のどこからアプローチすると良いでしょう?」


デニット

アーシュラ<

 少し胡乱げに見られていることを感じ、片眉を上げてみせる。

アーシュラ&マリン<

「ああ、よろしく」

マリン<

「竜追いとしちゃあ、目的は一つだろう?
 創造竜の痕跡がないかどうか、その手がかりはないか、さ。少なくとも、調べるべき場所は一つずつ潰していけたらと思ってね。まずは手近な所から調査しようということで、ここに来たのさ。
 あとは、古代人の遺跡には貴重なものが数多く眠っている、ってところも理由になるか。
 もっとも、この図書館の地下に限っちゃ、発掘品はすべて国に提出しなきゃいけないらしいんだけどね。ま、報償はもらえるだろうし、運が良ければこっちに発掘品もまわしてもらえるだろうさ」


役人

アーシュラ<

「あなた方と同じように、こちらにいらっしゃいましてね。
 デニットさんは神聖王国の竜追いの身分証をお持ちになって、ご依頼にいらしたのですよ。
 図書館の地下を探索に同行してくれるお仲間を捜しているということでした」


アーシュラ

 マリンから紹介されると、図書館の壁にもたれたままで片手を上げて挨拶する。

デニット<

「やあ、よろしく」

 風体がちょっと薄汚れているのが気になる。どういう素性のものか確認するために役人に話しかける。

役人<

「ふーん、デニットさんとは、どういうお知り合いなの?」


マリン

 大きく目を見開いてデニットを観察する。運良く女性の戦士が見つかって良かった。嬉しそうな顔をしながら近づいていき、さっそく挨拶する。

デニット<

「デニットさん、初めまして、ようこそお出で頂きました。私はマリンと言いまして、魔術と神術を行います。こちらは、アーシュラで、同じく魔術とその他に鍵開けや探索などを少々と言ったところです。
 私たち図書館の地下に潜って逸失した古代魔法の探索するために、一緒に行ってくださる前衛の戦士の方を探しておりました。デニットさんにご担当頂けるということで非常に心強いです。それで、デニットさんはどのような目的で図書館の地下を探索するのですか?」


GM

 二人が図書館の入り口に戻ってきてみると、ちょうど折良く、先ほどの役人の姿が、その扉をくぐってきたところだった。

アーシュラ&マリン<

「どうも、お待たせしました。ちょうどお出かけだったので、お連れするのに時間がかかってしまいました。申し訳ありません」

 役人がぺこりと頭を下げる。
 その脇から、全体的に少し薄汚れた雰囲気の女性が現れる。腰に、柄の長さに対して刃が小振りな、斧を下げている。
 役人が二人を示す。
「こちらが、先ほどお話ししたお二人です」
「どうも」
 ややつり目気味の女性は、アーシュラたちを見て、軽く会釈をする。
「わたしは、デニット。斧を使う、見ての通りの戦士だ。あんたたちは……魔術師だね?」


マリン

アーシュラ<

「ええ、探しに戻りましょう。」

 アーシュラについて、役人を探しに戻っていく。



アーシュラ

 マリンと顔を見合わせて、

マリン<

「ふひぃぃ、危なかったね」

 ちょっと周りを見回して、
「役人の人、まだ、来ていないよね。こっちから見に行こうか」

 マリンに合図すると、役人と出合った場所に戻って彼を探すことにする。


GM

 抵抗判定:分類/忌まわしい呪力
  マリン:神術・シルバーリング 成功!


 マリンに向かって閃いた光は、反射的に突き出されたマリンの……シルバーリングの填められた手とぶつかり、一瞬の停滞の後に分散、数条かの細かい光線となって飛散し、消える。

 その直後、アーシュラによって本が閉じられ、不可思議な光は消えてなくなる。

 ――あたりに静寂が戻った。


マリン

 胸元を守るようにして両手で光を遮ろうとする。半分無意識の内に、手の指に嵌めているシルバーリングがちょうど光の進行方向を邪魔する位置にくるように。


アーシュラ

 慌てて本を閉じる。


GM

 アーシュラは、その本に手を掛け、そして、表紙を開いた。

 幸運判定:分類/不幸な者の選別
  アーシュラ:優秀な成功!
  マリン:通常の成功!
   不幸な者 > マリン


 瞬間、本の中から光が迸り、中空に、真っ赤な魔法陣を描いた。
 それはさらなる閃光を放ち、マリンに向けて光を撃ち出す。
 その光は、マリンの胸元に走り、今にも命中しようとしている。

 敏捷判定:分類/一瞬の判断
  アーシュラ:通常の成功!
  マリン:優秀な成功!


 何が起きているのか理解するより早く、ほんの一瞬の時間の間、意識と無意識の間の中に、二人は何かをすることができる。


マリン

アーシュラ<

「ええ、良いですけど十分気をつけましょう。」

 覚悟を決めて、怪しい魔法に関わる本をアーシュラと一緒に読み始める。


アーシュラ

 一冊目を読み終わって、辺りを見回す。

マリン<

「まだ、役人はやって来ないみたい・・・もう一冊、このやばそうなやつを読んで見ようか。」

 マリンと顔を見合わせて、頷くと一緒に読み始める。


GM

 予定の時間が来たが、まだ役人がやってくる様子はない。おかげで、アーシュラは文献を読み解くための挑戦ができた。

 技能判定:分類/文献読解(神学)
  アーシュラ:専門知識なし 辛うじて成功! 失敗! 成功!
  マリン:優秀な成功! 成功! 失敗!


 アーシュラは本のページをめくって思った。
 ――難解だ。
 この本の書き手が想定しているだけの基礎的な神学の知識がないためだろう。それでも、何とか読み進めていく。
 対して、マリンは読み手の論述を正しく理解し、読解していった。

 マリンは、書物の中で興味深い文章を見つける。
 
『では、神とはなんであろう。我々は神について語り、聞く。そして神に奇跡を希う。
 しかし、神は我らに何も語らず、そして神意を見せることもない。奇跡を目の当たりにしたものはなく(神官以外では、だが)、聖蹟とやらが人為的に、あるいは天変地異でなされたものではないという証拠が見つかったこともない。
 だが、それでも私は確信している。
 神は存在すると。
 これは諧謔で言うのではない。神とは、いわば我々自身である。我らの心の中に神はおり、神に語りかけるとき、我々は自信に向けて言葉を発しているのである。そして、神は奇跡を起こす。そう、我々の心に対して』

 これは、初めて触れる概念だった。
 神の奇跡のあり方については、マリンも論じたものを知っているが、神の存在自体について語り、そしてそれ自体を人の心であると定義するのは、きわめて珍しいものだといえよう。

 マリン:神学SP+0.5

 また、アーシュラは神話について語られたものを見つけた。
 そこでは、神の忠実な使徒が、神にあだなす敵を追い詰め、神の奇跡を乞い、打ち倒している。その奇跡とは、天空より裁きの光を呼び起こし、白い稲妻と化して打ち倒すというものであった。
 こういう“奇跡”もあるのか。アーシュラは感心した。


マリン

 こくりと頷くと、アーシュラに続いて二冊の神に関する本を読み始める。


アーシュラ

 四冊の本をテーブルの上に乗せると、急いで塗り薬を目の下から落とす。しばらく視力の回復を待って、再び四冊の本を注視する。

マリン<

「四冊ね、一冊はやばそうだから後回ししようか。」

 ランゲージの魔法を自分にかけると、神に関して記述されていると思しき本に手を伸ばして閲覧してみる。

 魔法判定:分類/ランゲージ > アーシュラ
  アーシュラ:成功!




GM

 幸運判定:分類/魔法の本・存在の有無
  アーシュラ:優秀な成功!

 アーシュラの錬成した「現世の塗り薬」は確かにその効果を発揮した。彼女の視界は青の濃淡で染まった。そして、ぼんやりと、白い輝きが浮かんで見える。それは、まるで蛍の光か、燐光のように、ふわふわと漂い、たゆたっている。
 これが魔力の輝きだろう。見回せば、辺り一面を、この魔力の光が飛び交っている。それはとても美しく、現実離れした景色だった。
 その中でも、この建物の壁や床、天井から、特に多くの魔力の輝きが生まれては飛んでいく。そういえば、この太古から存在する大図書館は、魔法によって保護され、朽ちることがないという。
 同様に、書棚の中においてある書物には、魔力の輝きを生み出しているものがある。
 探してみると、その数は六冊。
 アーシュラは書棚に手を伸ばし、慎重に本を引き出して行った。

 知力判定:分類/文献調査・主題の選り分け(表題のみ)
  マリン:成功!


 二冊の本が除外され、三冊の本が神に、一冊が魔法に関わる本であると判断された。ただし、最後の魔法の本に関しては、少なくとも闇を操る術について記述されたものではないようだと思われた。それでいて、なにやら禍々しく、嫌な気配を感じさせる気配を放っている。


マリン

 へえ、アーシュラにしては随分と理路整然と話をしている。こんな一面もあったんだ。

アーシュラ<

「ええ、わたしは神術知識が目当てです。わたし達を苦しめる邪なるものとはいったいなんであるのか、それを祓う聖なるものとは何であるのか、このような聖邪に関しての情報であれば十分興味が惹かれます。」

 アーシュラの一連の動作が完了するのを待ち、本のピックアップに出発する。アーシュラの手を引いて、ゆっくりと先頭を進む。アーシュラが選んだ本の表題を読んで、ピックアップするものと、そのままにしておくものとに選り分けていく。


アーシュラ

 呆然と辺りを見回して、

マリン<

「うーん、どうしようか。そんなに時間はないから手際良く調査しないとねぇ・・・」

 ちらっとマリンの表情を読む。幸運にも、もう怒ってはいないようだ。彼女もこれらの雑然とした書物を前にどうしようかと悩んでいる態。しばらくして、思いついたように所持品の中を中を探り、現世の塗り薬が入った入れ物を取り出してマリンにさし出す。

「マリン、これね、あたしが作った塗り薬なんだけどね」思わせぶりに話し出す。「これを目の下の所に塗ると魔力の存在が白く見えるようになるんだ。それで魔力の宿った本ならば貴重なことが書いてあると期待出来るよね。逆にやばい本かもしれないけど・・・それで、あたしがこの薬を目の下につけて本を選ぶから、マリンは本の表題から私たちの欲しい本かどうかを判断して、ピックアップしてよ。マリンには、ちゃんとランゲージの魔法をかけてあげるから、本の表題もそれなりに読み込めるんじゃないかな。あたしは塗り薬のせいで細かい文字は読めないからね。
 でも、先ずやることはピックアップだけだよ。二人で持てるだけ持ったら、開くときはテーブルの上に持ってきて、やばい本かもしれないから、覚悟して開けるからね。
 それで、あたしは勿論、魔術関連図書、特に闇系魔法に関するものが見たいな。マリンは神術関連だよね?
 じゃ、良ければ始めるからね」

 マリンにランゲージの魔法をかける。

 魔法判定:分類/ランゲージ > マリン
  アーシュラ:成功!


 自分の目の下に塗り薬をつける。

 マリンの後について、ゆっくりと本のピックアップを開始する。


GM

 技能判定:分類/文献調査
  アーシュラ:不慣れな場所 大きな失敗!
  マリン:不慣れな場所 失敗!


 二人は、書棚の前にやってきた。
 なるほど、ここまで歩いてくる中でもよく分かっていたことながら、明らかにろくな整理がなされていない場所だ。
 紙の一般的でないこの時代、ここまで本が詰め込まれている建物は非常に貴重なものだ。そのはずだ。それが、こうまで雑多に、そして整理もされずにいるのは何故なのだろう。
 本を開いてみると、そのわけが分かるかも知れない。古代人の用いていた言語「古代語」は、言語構造は現在の公用語とあまり大きな違いはないが、それでも、所々に差異はある。それでさえ面倒だというのに、書かれている文字は見にくいし、秩序だっていない。ときには暗号めいたものにもなっている。まとまっていない、というか、おそらくは公用語と違う文法が用いられているのだろうと思われる。
 読み解くだけでも一苦労だ。
 この中から、目的のことが書かれた本を探し出すのには、まず幸運に恵まれなければならないだろう。その上で、自分が必要事項を見つけ出せなくてはいけない、さらに、それを理解できなくてはいけない。
 なかなか、やりがいのある仕事だと思われた。

(役人が予定していた時間まで、後、三回程度の行動を取ることができます。調査をする、魔法を使う、調査の役に立ちそうな作戦を考えたり実行する、などが一回の行動と判断されます。会話をするだけでは、行動とは見なされません)


アーシュラ

 マリンと王宮役人のやり取りを聞いていて、マリンの演技が失敗したのを知る。アーシュラにはマリンが内心かなり動揺しているのだろうと予想された。でも、表面上は上手く取り繕っているのを見て、ちょっと恐ろしいやら、可笑しいやら複雑な気分を楽しんでいた。

 その内にマリンから呼びかけられたので、王宮役人に軽く会釈するとマリンの後をついて移動する。この場は、とにかくマリンの言うとおりに逆らわないでいよう。

 教えられた場所に移動して、一通り辺りの状況を確認する。どんな本があるか、じっくりと調べてみよう。


マリン

 場所を教えてもらえれば、丁寧にお礼のお辞儀をするとくるっとアーシュラの方に向き直り声を掛ける。

アーシュラ<

「アーシュラ!!行きます。」

 かなり怒気を含んだ口調で、まだ、自尊心が傷ついているようだ。アーシュラがついてくるのを確認することもなく、スタスタと歩いて指示された場所に移動する。


役人

マリン<

「もちろん構いませんよ」
 言って、要求された文献がありそうな場所を案内する。
「とはいえ、わたしたちも書名や概観くらいでしか把握していませんし、たいした整理もなされていませんからね。ご要望のものがあるかどうかは分かりません」


マリン

 演技が上手く行かなかったことを悟って、かなり自尊心を傷つけられる。一瞬、演技が壊れて不機嫌な表情が表に出そうになる。それでも何とかぎりぎりのところで演技の仮面を外さずに王宮役人に話しかける。

役人<

「あっ、ありがとうございます。ご好意に感謝致します。そこで、お願いついでですが、今しばし時間がありそうなので図書を閲覧して時間を過ごしたいのですが、宜しいでしょうか?魔道や神術関連の図書がある場所を知りたいのですが・・・」


役人

 技能判定:分類/演技
  マリン:大きな失敗!


 マリンの演技は、あまりうまくいかなかった。
 あまり役人相手に演技をする機会がなかったのかも知れない。
 あまり効果的に説得を展開することはできなかったが、それでも、彼女の言葉を聞いて、役人も頷くところがあったようである。
「ふむ……ギルドから、そういえば、そうでしたね……」
 呟く。
「とすると……何かあっても、こちらは責任を回避することができるか」

マリン<

「よろしいでしょう。ちょうど、同様にお仲間を捜していらっしゃる方がおられましたから、お呼びして参りましょう。女性の戦士の方……ご要望に添えるかどうかは不確かですが。おられることには間違いはありません。
 といっても、宿だけ告げてお帰りになられたので、間違いなく呼んでこられるかどうかは分かりませんし、少し時間がかかってしまうかも知れません。
 いかがでしょう。三つ目の鐘がなるころに、お連れするということで」


アーシュラ

 マリンが演技モード全開になっているのを見る。思わず笑みが出そうなのをこらえて、王宮役人に背を向けて舌を出す。目立たないように極力気配を消して小さくなっている。

 マリンと王宮役人とのやり取りに、聞き耳を立てている。


マリン

 完全に演技モードに入っている。精一杯、援助が欲しい仕草を交えつつ、

役人<

「派遣されてきたギルドからも問題を起こさないように言われていますし、私たち、それに従うことを絶対に誓います。したがって、ご迷惑はお掛けしません。もし、私たちが何の手助けもなしに地下に降りていって、何か災難にあったら、それこそ後味が悪いでしょう?ですから、ここは頼りになる方をご紹介頂いて災難を事前に防ぐことをお願いしたいのです。お役人さまでしたら、必ずや頼りになる最適な方をご存知なはず。是非、おとりなしのほどお願い致します。
 それで、出きれば、戦士タイプの女性の方が良いのですが・・・」

 再びお辞儀をしながら、役人の反応を窺う。


役人

マリン<

「ふうむ、なるほど」

アーシュラ<

 アーシュラの顔も見やり、頷く。
「少女ばかり、お一人だけで潜り込んでいったような方もいらっしゃいましたが、確かに、普通は不安に思われることでしょう」

マリン<

「しかし、それは参りました。わたしは、冒険者の方に冒険者を仲介できるような権限は持っていないのです。
 知己がいないか、心当たりがないかと問われれば否定は致しませんが、とはいえ、紹介して、後になってから、『紹介された人物のせいでとんでもない目にあった』などということで苦情を持ち込まれるようなことがあるかも分かりませんし」
 と、ひとしきり困ってみせる。


マリン

 しばらく、無表情でアーシュラの顔色を見ている。しかし、彼女の逡巡は収まりそうにもない。しばらくして、ちょっと腹ただしくなってきたが軽くアーシュラを一瞥すると、次の瞬間には表情を完全に作り直して役人に話しかける。

役人<

「魔法的な仕掛けで動く守護者ですか?すみません、私たち多少魔法をかじっている程度で、そのような大変なものに対抗すべくもありません。どなたか、私たちと一緒に地下に挑んで頂けるような冒険者の方がいらっしゃらないでしょうか?何方かとご一緒させて頂ければと・・・」

 精一杯、困った表情をしてみせる。


アーシュラ

マリン<

「あはっ、魔法的な仕掛けで動く守護者ねぇ。上等じゃない。片っ端からぶっ壊してやるさ。それにしても、あたし達、地下迷宮が好きだよね・・・さて、どうしようかなぁ・・・」

 強がりを言っているが、顔には不安の影が見える。


役人

マリン<

「そちらになさるのですね」
 了承して、頷く。
「わたしに分かることだけ、とりあえずお答えしましょう。
 一に、地下へ降りていく階段は、ここ一階の様々な場所にあります。少なくとも、10個が発見されています。場所については後ほどご案内致しましょう。便宜的に、AからJまでの番号が振ってあります。
 今のところ、調査は始まったばかりの段階で、分かっていることはほとんどありません。ただ、古代人の遺跡の中でも特に警戒が重要なタイプであろうと推測はでき、魔法的な仕掛けで動く守護者がいるだろうと思われます。
 また、地下の構造は迷宮のようになっているようです。今のところ、迷宮の壁面は古代人がこのように造った意図は不明です。
 現在、数グループの冒険者が、地下に潜っています。地下でのことについて、基本的な部分では関知はしませんが、冒険者同士でのいざこざや犯罪行為、地下で見つかった遺物などの私物化は賢王陛下によって固く禁じられています。
 このくらいなのですが、いかがでしょうか?」


マリン

アーシュラ<

「分かりました。地下に行くのですね。」

役人<

「すいません。私たち決めました。地下の書物について調査することに致します。つきましては、お願いですが、現在分かっている、この図書館の地下についての情報をお教え願えますか?
 いえ、簡単なことで結構なのです。例えば、何処から地下に降りていくのかとか、大まかに知れている地下の構造とか、何か調査の手がかりとなりそうなものが地下の何処かで発見されたとか、敵対的なものの存在があるとか等々、今までの調査で分かっていることで結構です。」


アーシュラ

マリン<

「どうする?地下書物の資料構成が出来ていないってことは、やっぱり自分たちで調べに行くってこと?」

 ちょっと逡巡したが、間髪を入れずに

「よし、行こう、地下に。」
 マリンに力強く頷いてみせる。


役人

マリン<

「はあはあ」
 頷きながら聞いている。

アーシュラ<

「なるほどですねえ」
 彼女の方も見て、頷く。

マリン<

「だいたい、ご要望については理解しました。
 さて、どうしたものでしょうねえ」
 首をかしげる。
「お手伝いしたいのは山々ですが、どうも、情報に行き違いがあるようです。図書館立ち入りの許可を得てきた、ということは、お二人がお調べになりたいのは、地下の書物についてなのではないのでしょうか。
 もし、そうでしたら、お力にはなれないのです。というのも、地下の調査はようやく手をつけだした段階で、一切の資料構成が把握できていないからなのですよ。
 地上の書物についてでしたら、ある程度の区別分けくらいはできておりますが、地上部分の閲覧だけでしたら、立ち入り許可は必要ありませんし。
 地上部分の閲覧だけで良いとのことでしたら、ご要望にお応えできるかもしれませんが」


アーシュラ

 マリンと役人のやり取りを聞いている。マリンが大方話してくれたので助かる。マリンに続いて役人と話して内容を補足しようとするが、慣れない丁寧な言い回しに焦り気味である。

役人<

「あっ、えーっ、うん、闇系の魔法書籍に興味があるんだ、いや、あるのです。わ、私は、読解や解析の魔法技能があるので何とか上手くやり遂げられると思うんだ、はい。それに、そちらのマリンは神術も扱えるから実態のないやつらがいてもやりあえるしね。」

 そこまで言うと口惜しそうに下を向いて、マリンの後に下がる。ちくしょう、やっぱり、こいつら役人は苦手だ。昔、起こした事故でとっちめられたのを思い出す。アドナンのようなオッサンの方がなんぼか気が楽だ。


マリン

 アーシュラの方をちらっと見てから再び役人に向き直り、

役人<

「あっ、はい、特殊な魔法に関する文献調査なのですけれども、特殊というのは闇系の魔法だからです。現在、利用可能な魔法の中で闇系の属性のものは比較的少ないです。したがって、私たちは幾つかの闇系魔法が逸失している可能性があると考え、それらの情報を求めています。今回ギルド経由で図書館立入りの許可が得られましたので、関連しそうな図書を見つけ出し閲覧したく思います。とは言え、何処にどんな文献があるのか、私たちはまったく不案内ですので、先ず図書目録から当たって見ようと言うことになりました。」

アーシュラ<

「こんなところで良いのよね?」

役人<

「ご理解頂けたでしょうか?」


GM

 好感度判定:分類/対人交渉・礼儀作法
  マリン:成功!


 その役人は立ち止まり、マリンの言葉に応じる。
 忙しそうな様子だったが、

マリン<

「ギルドからの派遣? ほう、そうですか。図書目録を使うような仕事で冒険者が来るとは聞いていませんが……」
 首をかしげながらも、とりあえず、頷いてみせる。
「申し訳ないですが、目録はお見せできる権限は私にはないのですよ。代わりに調べることはできますがね。
 いったいどういった調査で?」
 答えながら、別の役人を呼び止めて、何かを伝える。自分がやるつもりだった仕事を引き継がせたらしい。


マリン

アーシュラ<

「うん、聞くしかないですね。こういうことは、わたしに任せて。」

 アーシュラにウィンクすると、近い所にいる役人に近づき丁寧に話しかける。

役人<

「あの、すいません。私たちギルドから派遣されてきたのですけども、初めてなので良くわからないのです。図書目録がある場所を教えて頂けないでしょうか?」

 困っている雰囲気を出しつつ、静かに微笑みかけて答えを待つ。


アーシュラ

マリン<

「さてと、やってきたね、“矜持”の大図書館。目的は調べ物だから、先ずは図書目録あたりから当たってみる?と言っても何処にあるのやら・・・」


GM

 アーシュラとマリンは、大陸に名高い、古代人の図書館にやってきた。現在、地下の調査が行われている真っ最中であり、非常に騒がしい。あちらこちらに冒険者の姿が見られるし、特徴的なローブ姿の人間がうろつき回っている。あれは、王宮の役人だろう。

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