PBeM
〜Dragon Pursurs〜
竜追い達の唄

遺跡都市シューレスク:
十数年前に発見された遺跡を改良した、森の中の都市。
地面を掘り下げて地階に造った建物が並んでおり、街通りなどの構造は迷路のように入り組んでいる。
巨大な神殿が町の中心部に建っているが、その扉はここが発見されてから一度も開いた事がないという。

投稿(件名…長姉の館 情報部)
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長姉の館
四国の天幕
訓練場
講堂
義兵の営舎
武具の間
詰め所
地下第二層
厩舎
情報部 幕舎 司令部



カウス

 大きな声で強く言われると、従ってしまうのが、叩き上げの兵士の習性である。
 カールがそれを意識してかしないでか、とまれ、カウスは反応した。

カール<

「連合軍の裏方だ。情報を集め、整理し、選択し、提示する。
 それが我々がなし、我々にしかなしえないことだ!」

 それから、うなずいた。

「私が悲しんでいるのは、友情を失ったことが分かったからだ。だれかに見放されたというならば耐えられようが、ここにおいて、私が誰かを見放した。私が向けていた友情が失われたのが辛いのだ。
 まったく、こういった感情は毒にも薬にもなる。
 ……心配は無用だ。忠誠心というものは二種類、公のそれと私のそれがある。殿下には、前者で仕えることになるだろうし、それならば、何をか迷わん」

 まだ痛みを感じさせる表情で嘯く。
 だが、この四十過ぎの士官に、今は屈託はない。
 憤懣やもどかしさ、見放しきれなかったものを打ち捨て、やや虚ろながら、さっぱりした気分らしい。

「……さて、この部屋に来たのは年輩の知己を得るためだけではあるまい?」
 対等の友人に対するような態度で問う。



カール

カウス<

 カウスの言葉を聴き、重々しく頷く。
「貴公の言葉確かに受け取った…これからは貴公にそのような真似はさせぬ…私も酷 く言い過ぎた…すまない」

 そういって、頭を下げる。

「確かに、忠節にはそのような二重反律が確かに存在する…『親が不儀を働いた際、それを告訴するか、せざるか…』等だ…だが、貴公はこれから忠義よりも軍律、職務を優先して欲しい…
 尤も、総司令官はシルヴァードの人間…貴公が忠義を感じる必要もないから、これは杞憂かも知れぬが…」

 そして、無気力に息を吐くカウスを励ますように声のトーンを上げて、

「何をそんなにしょげている! カウス殿! 恥は雪げいい! 貴公は生きている。我らが軍も健在、貴公は五体満足で目も見えれば耳も聞こえる。
 大事なのは『何が出来たか』と悔やむことではない! これから何が出来るか! ではないのか? もう一度聞こうカウス上級士官殿! 貴公は何が出来る? 何をなそうとする!」

 そう目を輝かせ、眼前の男に問いかける。


カウス

カール<

 顔色が赤くなり、白くなり、また赤くなった。
 そして、黙り込む。

 それからブラッドの言葉を受け、天を仰いだ末に、椅子の上に座り込んだ。
 周囲からもため息が聞こえ始める。

ブラッド<

「了解した」
 小さく答える。

カール<

「あの方は、何も言っては下さらなかった……。
 友人と思っていたのに」

 呟いてから、顔を上げ、カールを見据える。

「我々は命令でここに留まっていた。その理由は『起死回生の作戦に必要な情報は全て集まった』というものだった。
 完全に内密に準備をしているということだった。
 不審ではあった。不審ではあったが……ならば我々に何が出来た?
 忠誠の心から敢えて命令を破る者もあろう。だが、敢えて虚無となって命令に付き従うのもまた、忠誠の心ではないか?
 まして、我々は……隔離されていたのだぞ」

 無気力に息を吐く。
「何も言っては下さらなかった……」



ブラッド

カール<

 やや後ろから、思案げな表情で見ている。
 それから、ひとつ頷き、

カウス<

 踵を合わせて敬礼し、口を開く。
「上級士官殿、失礼ながら申し上げる。
 総司令官殿が、自らの更迭の連絡や、その他の“ご不快な”事実を握りつぶしていたということ、先ほどこの天幕に来られたイ=サードの魔術顧問ベリアル様が明らかになさいました。貴官ら情報部が盲目となっていたのは、それだけ総司令殿が“心を尽くした”結果と言えましょう。
 その罪、それに数々の失態を付け加え、三国の協議の末、騎士王国シルヴァードの王太子、シーザー・H・クライベル殿下が総司令官位を引き継ぐこととなりました。
 当然のことながら、これは、サノット上層部の方々も了解のこととなっています」



カール

カウス<

 激昂するカウスに剣を突きつけたまま目つきは冷淡になり…
「愚弄?…貴公等の仕事振りを見てみればそのような言葉しか出てこぬではないか…情報部といえば、情報を扱うのに命を賭ける筈であろう! 我らが戦場で剣に命を掛けるがごとく!
 しかし何だこの体たらくは! 最高指揮官が代わったことも知らぬ、遊撃隊長として来た人間の顔すら知らぬ、挙句の果てにこの部屋の中にいる人間…
 現在我らは苦境に立たされているのだろううが! それならば何故率先して動かぬ! 情報こそ機先を制し、手にするべきものではないのか! 」

 そして、ダンと机の上に剣を置き、
「最高指揮官は『我らがサノットの』だと? そんなに身内の恥を広めたいか! この苦境の中において部屋に篭り臆病風に拭かれる最高指揮官なぞ。
 貴公等こそが積極的に動き、自国の恥を削ごうとするのではないのか?
 ココの一平卒ですら、既にボア=ルドゥ殿の事など見限っておる!
 それを言うに事欠いて『我らが』だと?貴公等の目は節穴か!
 そのような言動こそ、無見識と罵られるに十分ではないか!」

 そして、一息つき、机に叩き付けた指揮刀を腰につけて、
「…更にいうなれば我が国が連合国を裏切るのなら、今の機を逃さずに連合国を泥棒のように奪い取るか、内部の人間と呼応してこの砦を背後から襲撃する…それぐらいは考えておかれよ…兵団もつれずに王太子と騎士隊長がここにいる時点で人質になったも同然ではないか…」


カウス

カール<

「愚弄するかっ、貴様……!」
 椅子を蹴って立ち上がる。
 横を向き、情報部の士官の一人に、

「調べてこい!」
 怒鳴るや、再びカールに向き直る。

「騎士王国だと……ふん、本当に味方なのかどうか、怪しいものだな。それに、あの若造が連合軍総司令官だと? 何の話だ。総司令官は、我らサノットのボア=ルドゥ殿だ……」
 改めてカールが示した剣を見て、少し青ざめ、
「……いや、……しかし……。
 騎士王国は、我ら連合軍を裏切るつもりかっ?」



カール

カウス<

 眼前のその男の言葉に腰の剣を鞘のまま抜き、示してみせる。
「私は、シルヴァードから来た…この剣は剣王ハルッサム陛下より拝下した指揮刀である…これでもまだ疑われるというのなら、連合軍総司令官であるシーザー殿下に伺えばよろしかろう…」
 そして、唇を僅かに吊り上げ、
「しかし、この情報本部というのもタカが知れるというもの…敵の情報はおろか、味方の士官が来たことすら知らぬとは」
 と、少々苛立ちを隠せぬ調子で相手にそう告げる。


カウス上級士官

カール<

「私だ。……カール遊撃隊長? 聞かんな。
 いつ、どの国から配属された?」


GM

 カールたちが入ったのは、大して広くもない石造りの部屋で、通路や他の部屋と特に区別されてはいなかった。
 中には、外から持ち込んだものと見られる棚や机が置いてあり、数人の士官が何かの作業をしていた。
 カールが呼ばわると、一番奥の机に座っていた男性が顔を上げ、その他の士官たちは胡乱げにカールを見た。


カール

ブラッド<

「…ココでは副官は手放せないな…文字通り、自分のそばに置いて離さないようにしないとな」
 そう苦笑しつつ言うと、情報部の部屋の中に入る。

「私はカール・グスタフ。遊撃隊の隊長を命ぜられた者だ…コチラを情報本部とお見受けする。責任者の方とお話がしたい。責任者はどちらか?」
 そう毅然とした態度で発する。


ブラッド

カール<

「もう少しです。……この道順を覚えるのはなかなか骨が折れました」


GM

 天幕の内部に入り、複雑な構造の通路を進んでいく。